2025/11/23 のログ
ご案内:「無名遺跡 (過激描写注意)2」にさんが現れました。
> 数日前にギルドを上げて行われた大掛かりなダンジョン攻略。
未だ誰も最深部への到達を果たしていない、マグマ沸き立つ未開の遺跡。
危険は重々承知の上で参加した冒険者たちを待ち受けていたのは、あまりに悲惨な結果であった。

――死者11名、負傷者15名。

参加者の半数、主に前衛に多くの死傷者を出し、攻略隊は一時撤退を余儀なくされたのだった。
得られた成果は僅かな魔道具と武具のみ。それに比べて被害は多大。作戦の無謀さが浮き彫りになるだけとなれば、さぞや無念であっただろう。

さて、ギルドから貸し出される魔道具は、大概が極めて貴重なものである。
薬草やポーション、魔法を封じたスクロールなど、使い捨ての安価なものであれば冒険者側で用意するのが当然で、そういったもの以外の珍しい道具……。
例えば、伝令に使用される対になった宝玉であったり。
例えば、魔物を弱体化させる高名な法術師が残したとされる杖であったり。
例えば、膨大な魔力が必要になるが、効果範囲内にいる味方と共に予め用意した魔法陣へ瞬時に転移できる首飾りであったり。
そう言った貴重な魔道具は、ギルドだけでなく、冒険者全体にとっても喪失は避けたい財産である。

今回の討伐で紛失されたのは、件の“法術師の杖”だった。
撤退する際、魔力を使い果たして意識を失った魔法使いを引き寄せ抱え上げることは出来たが、その際に手放された杖までは持ち帰ることが出来なかったのだと言う。
緊急事態であったことは誰から見ても明らかであり、一刻を争う中、撤退を迷わなかったリーダーの英断を責める者はいなかった。

その結果、作戦の立て直し、攻略パーティーの再編成等の準備が並行して進められる裏で、新たな依頼として出されたのが“杖の回収”である。
単独、或いは少数精鋭でダンジョンに潜り、先達の彼らが到達した場所にあるだろう魔道具を持ち帰ると言うもの。
そこまでして杖の回収を急ぐ必要があるのかと言う疑問は上がったが、杖の効力をその目で見た冒険者たちは必要だと言い、ギルドもまた執拗に依頼を急く様子であったと言う。

――そうして、白羽の矢が立ったのは斥候を得意とする冒険者。
名を上げるような功績こそ無いものの、これまで着実に依頼をこなし、一度のしくじりもない信頼に値する者。
ランクを二つ飛ばして昇級させることを条件に指名で依頼を出せば、篝はあっさりと了承したのだった。

> 黒い洞窟を抜けた先に待つのは、聳え立つ鋭い岩山とダンジョン全体に広がるマグマの海。
迂闊にマグマへ近づけば、触れる前に火が燃え移ってしまうだろう。
閉ざされた洞窟は、石窯の中に閉じ込められたのかのような高温で、大きく息を吸えば肺を痛めるてしまうことは想像に難くない。息一つするのも一苦労である。

そんな到底人間が生きられる環境ではないダンジョンの中ながら、灼熱をものともせず、俊敏に地を駆け、岩を飛び越え、足早に進む影が一つ。
黒装束に身を包む小柄は、火遁、火の術を得意とし、人より火への心得と耐性があった。

故に、万事ぬかりなく。
息を潜め、気配を消し、魔物と罠の埋めく迷宮の奥深くへと潜り至る。
時に魔物と接敵するかと思われた時も、獣の臭いを身に纏いコボルトに扮し上手くやり過ごし事なきを得て。
ここまで大した問題も無く、罠を躱し、階層主の目を掻い潜り来れたことは攻略隊が齎した情報の恩恵が大きい。
彼らの犠牲はけして無駄ではないと無事に戻れれば礼を告げよう――。

この通り、途中までは全て上手く行っていた。

予定が狂い始めたのは、件の杖を一匹のゴブリンが拾い上げたことから始まる。

> 攻略隊が到達した階層まで辿り着いた時だった。
トロールを従えた呪術師風のゴブリンが法術師の杖を所持している。それを目撃した小柄は急ぎ身を隠し、奴らの様子を盗み見る。

「――……?」

大きな岩陰に身を潜ませながら見た光景が信じられず、思わず首を捻り訝しむ。
己が知る限り、魔物は同種ならば徒党を組むが、種を越えて共闘することは滅多にない。
共通の敵、もしくは獲物が居ればその限りでは無いだろうが、縄張りを主張し合い争うことはあっても体躯の小さなゴブリンがトロールに命令を下し、従う姿など滅多にあるものではない。
それも、他の魔物と交戦させているのだ。
相手は見たところ悪魔(デーモン)の一種か。普通に戦えば、到底トロール数体で太刀打ちできるようなものではない。
大振りの拳で殴りかかったトロールの一体が、呆気なく頭を砕かれ、悪魔が軽く指を鳴らすだけで――

ぐちゃり。

バキバキバキ……ミチミチ、ミチッ。

トロールの巨体は見えない手に潰されて、捻じれた肉から血が噴き出し、拉げて骨を砕かれて、丹念にすり潰し捏ね回され肉塊へと姿を変えた。
うっかり先日作った牡丹餅を脳裏に思い出してしまったが、比べるまでも無くこっちは食えたものではないだろう。

> 圧倒的な力の差を見せつけられ、魔物たちは動揺を露にする。
逃げ出す者も出るかと思われたが、ゴブリンが手にした杖を掲げ、悪魔へ向けて光を翳す。
次の瞬間、戦況は大きく覆る。

「――っ!」

ギルドから聞いていた限り、あの杖は魔物を弱体化させる物だと言う話だったが……。
その本当の効果は、使用者の“敵”を弱体化させると言うものだった。
ゴブリンと敵対していた毒々しい色の翼を持つ悪魔が、下等なゴブリンより遥か高見にいるだろう悪魔が、膝を屈し(こうべ)を垂れてしまったのだ。
恐らく、あのトロールや、その背後で飛び交う無数の吸血蝙蝠の群れや植物も杖で弱らせ従えたのだろう。
早急に杖を奪還せねば、次の攻略では前回以上の犠牲を生むだろう未来が簡単に想像できた。

万が一に備え、ギルドからは転移魔法を封じた帰還用のスクロールを渡されている。
これを使えば瞬時に迷宮の外に設置された魔法陣まで移動することが出来るそうだ。
……冷静に立ち回るなら、一度撤退し応援を呼ぶべき状況である。

否。だが……、しかし――

> 突如、魔物たちの立つ地面から点々と小規模な爆発音が響き火の手が上がる。
のた打ち回り悲鳴を上げるアルラウネは自慢の花弁が焼け落ち見るも無残。コボルトなどの雑兵はそのまま息絶える者もいれば、かろうじて爆発を逃れ軽く炙られるだけで済んだ者もいた。

まだまだ襲撃の手は緩まない。
敵の襲撃に身構え地面を警戒する奴らの下へ、今度は一つ、二つ、三つと、白い六角形の光る板が宙に現れたかと思えば、板に浮かび上がった花の紋様と同じものが空にパッと広がり火の花が咲き乱れるが如く、雨となって降り注ぐ。
炎弾と呼ぶに相応しい礫が、トロールの頭へ向けて連続で撃ち付けられ、その巨体を攻め落とさんとする。
その攻撃を受け数体いたトロールの内、一体が気を失い崩れ落ちた。

――ド、シーン……ッ!

巨体が軽く地面を揺らし、悲鳴と呻き声が混乱と共に伝染して行く中、無数の魔物を掻い潜り駆ける黒い影が一つ――否、二つ。
まったく同じ姿、同じ動きで、鏡に映したような黒い影が目にも止まらぬ速さで大将首を奪いに掛かる。
だが、このままやられてたまるかとゴブリン呪術師(シャーマン)は後れを取ったが前方へ杖を掲げ、怪しげな光が放たれる。
光に照らし出された影の如く、黒装束は徐々に速度を落とし、やがてその歩みは止まる。

ニタリと嘲笑を含む笑みを零したゴブリン呪術師は杖を掲げたまま、怯んでいた魔物へと号令を出す。

『ギャギャッ! ギャギャギャッッ!!』

(ソイツら)を殺せ。腹を裂き、臓物を引きずり出せ。そう叫んだ。
蹲り動けなくなった二人の黒い小柄を踏みつけ、なぎ倒し、顔を覆う布を剥ぎ、鋭い爪を剥き出しにして血に染める瞬間。
これこそが至福、愉悦こそ最上の甘露。
勝利を確信し、悪趣味な見世物を心行くまで愉しまんと、高みから見下ろすのは魔物の王か。
はたまた飾りの王冠を掲げ喜ぶ道化か。
討ち取ってしまえば同じこと。物言わぬ屍と成り果てるのみ。

魔物たちが(分身)を踏みつけ、引き裂き、愉しんでいる最中。
音も無く、気配も無く、背後から――牙を突き立てるが如く、二突き。
光の届かぬ後方より、岩陰から大きく迂回し闇に潜んで背後へと回った小柄の本体がゴブリン呪術師の横腹へと双剣を突き立てた。

『――ギャッ……?! ァ゛、アァァ、ギャァァァッッ!!!』

呆気に取られ固まるゴブリンをよそに、刺すと同時に手首を捻り、抉り捻じ込み、掻っ捌いて血溜まりを広げる。
ぼたり、ぼたりと零れ落ちるは血だけに留まらず、引っ掻き捻じれた臓物の断片たち。
響き渡る断末魔の叫びは耳を劈き、聞くに堪えない醜いものだった。

> 爆発、火炎の最もたる効果は、実はその破壊力ではない。
音と光により敵を錯乱させ、正しい判断力を奪うことにある。その対象が群れとなれば効果は覿面。
御覧の通り偽りの力で従えた魔物の群れなど、烏合の衆と化してしまう。

狙い通り暗殺を成した今、残すは杖を回収するのみ。血に濡れた刃を引き抜くと、地面に転がる杖へと手を伸ばす。
そこでようやく傍にいたトロール二体が、縛る者が消えたことに気付き、驚き騒いで蹈鞴を踏む。
その騒ぎで手を止めた魔物たちは、先ほどまで屠っていたはずの白猫の躯がふわりと揺らぎ消えてしまい、呆気に取られ、傍にいた魔物が食べたのかと疑いまで掛け合う始末だった。
このまま仲間割れを始めてくれれば、この群れも瓦解する。

――……と、そう上手くもいかないらしい。
幻のように消えてしまった獲物が、こうしてまた生きて目の前に現れたのだ。
獰猛な獣の瞳が一斉に小柄に向けられた瞬間、我先にと爪と牙をむき出しにして襲い掛かって来る。

「――ッ、」

分身から返る二度の死の追体験(フィードバック)を一瞬の走馬灯のように見終えると同時に、急ぎ杖を手に取り逃げようとするも、懐から取り出したスクロールは蝙蝠に弾かれて。
ゴブリン兵の爪で引っ掻き裂かれたストールの隙間から覗いた少女の顔には、僅かに焦燥の色が浮かんだ。
紐解かれ、はらりひらりと地面へと舞い落ちるスクロールから、魔法陣の光が浮かび上がる。
傷を負いながら魔物の爪を掻い潜り、滑り込めば間に合うかどうか。
一か八かに賭けて、少女は身を屈め駆けて行く――
[偶数:成功/奇数:失敗]
[1d6+0→3+(+0)=3]
> 行く手を遮る有象無象の小物に阻まれ、あと一歩が届かない。
この杖を扱うことが出来たなら、まだ方法もあったかもしれないが、生憎、魔力を感じ取ることは出来ても使い方を知らない。
せめてもの足掻きとして、握りしめた杖を振り上げスクロール目掛け投げ放つ。
槍の如き鋭さで魔物の合間を通り抜けた杖は、何とか魔法陣の光が途絶える一瞬に滑り込み姿を消した。スクロールに問題が無い限り、杖はダンジョンの入口で待つ他の冒険者の下へと辿り着くだろう。

――さて、問題はここから。

「ッ、……ンッ!」

右から襲い掛かる魔鳥の鉤爪を潜って躱し、同時に左後方から挟み込むように迫る蔓の鞭を転がり避ける。
一匹一匹は大したことのない吸血蝙蝠も、数十匹となれば雨霰の如くぶつかり、視界を奪うのが厄介だ。
蝙蝠が駆け抜け様に小さな牙で服を裂き、無数の細かな傷を小柄の肌に刻んでいく。
注意するのは小物の攻撃だけではない。
その後方からいかなる魔法で甚振ろうかとほくそ笑む悪魔もいれば、のろまだが油断して迂闊に一撃を受ければひとたまりもない怪力のトロール、自慢の花を焼かれ怒り狂うアルラウネの姿もある。
アルラウネは植物由来の魔物の癖にしぶといものだ。この環境に適応していると言うことか。

幻術や身代わりの術で上手く誤魔化し逃げられれば良いが……。
否、今の氣の残量では陽炎分身はもう使えない。
既に一度見せた分身よりも遥かに劣る動かぬただの陽炎では、もう誤魔化しはもう通用しないだろう。

致命の一撃を避け傷を増やしながら思考を回してみるが、逃走するための良い策は中々浮かばず。
この群れ全てを相手取り、生きるか死ぬかに賭ける方が勝算があるのではとさえ思う始末。
否、否、否……。生きて帰らねば叱られる。それは困る。

> 一つずつでは捉えきれぬと囲んで一斉に襲い掛からんとするならば、双剣の片割れを宙へと投げ放ち、空いた片手で印を組む。
途端に双剣が宙でピタリと動きを止め、パッと広がり展開するのは魔物たちを襲ったあの忌々しい六角形の光る障壁。
まるで縫い留めるかのように宙に漂うそこへ、地を蹴り身軽に跳んだ小柄がひょいっと乗る。
無論、爆ぜることは無く。

「――フッ、……ッ」

しかして、その避難場所も安置とはならない。空を飛ぶ魔物もいれば、宙にいようと攻撃できる蔓も魔法もあるのだ。
小柄の後を追って迫る蝙蝠の群れから逃れんと、袖口に潜ませた苦無で新たに障壁を二枚空中に作り、飛び石を渡るようにして上へ上へと登れば、ぐるりと上空から辺りを見渡して一考。
良い考えでも浮かんだか、追いかけて来る蝙蝠を引きつけながら、不要となった足場を取り払いつつ右の刃を引き寄せ、自由になった片割れを紐でも付いているかのように手元へと引き上げる。
少し遅れて追いついた魔物を残し、今度はこの場を囲う無数の岩山の一つへと跳び降りる。
また追いかけようとするだろう蝙蝠共には、障壁を花開かせて(爆発させて)手土産に火柱を贈ってやろう。
逃げ遅れた大半の蝙蝠が轟々と燃える火柱の中で焼き尽くされる様を背に、くるりと身を翻し、音も無く岩山へと着地し。

「――此処に至っては是非も無し。出し惜しみは、無し。

 火之迦具土神に加護乞い願い奉る。
 我 契約の下、神も魔性も一切合切を焼き尽くす焔とならん」

刃を持つ手で器用に印を組み上げ、神への祝詞を唱え上げれば、そこに姿を現すは一つの怪異。
ゆらり、立ち上がる白い尾に青い火を灯し、頭の上の獣の耳の傍らでは、バチバチと青い火花を弾けさせる五徳猫が如き者。

> ――再点火。
篝火が消えてしまうその前に新たな火の灯る松明を足す様に、尽きかけた氣を命を削って再び満たす。
底を尽きかけていた氣が、活力が、溢れんばかりに身体に戻り、負っていたはずの細かな傷が、ゆっくりと血を止め閉じて行く。
高鳴る鼓動は気分を高揚させ、燃える緋色の瞳を煌々と輝かせる。
覚えたての術の使い道を模索する修行の実験台として……、などと驕ったことは言うまい。

だが術は使う。こんな機会は滅多とないのだ。思う存分試してみたいと思う好奇心は止められない。
それに応えるように、火神の加護を与えてくれる。もう印を結ぶ必要もない。思うままに、願うままに、火は応えてくれる……。

遥か高見から見下ろす猫を追って岩を登ろうとする魔物もいれば、仲間意識など皆無で岩を砕いて猫を落とそうとする者もいる。
足の引っ張り合いの中で、空を飛べる魔鳥や悪魔は翼をはためかせ、あっと言う間に同じ目線まで辿り着く。
が、着くと同時にパッと目前に現れた光の障壁にぶつかり。

――ボンッ!

ゼロ距離爆破を見舞われ痛みに呻き、魔鳥はよろよろと高度を落とし下がって行く。
頑丈な悪魔はその場に止まることが出来たが、煙に視界を奪われ、再び目を開けば白い光の球体へと捕らわれていた。
球体は良く見れば六角形の平面を繋ぎ合わせたもののようで、無数に浮かび上がる花の模様は、先ほどぶつかり痛い目を見せられた障壁と同じ。また触れれば爆発が起きるのではないかと一瞬躊躇する。
が、捕えられ、あまつさえ一瞬で有ろうと怯まされたことが気に食わないと、怒りと共に魔力を膨らませて力任せに障壁をぶち壊す。
立て続けに起きる爆発と火炎の渦の中、ようやく外に出られたと思えば、そこに待っていたのは――

> そこに待っていたのは、空を埋め尽くした光の障壁と、次々に降り注ぐ青い炎弾の雨。
眼窩に広がる大地は青い焔が広がり、火に耐性を持つはずの魔物達苦しめ、骨も残さず焼き尽くさんと燃え盛る。

岩山の上にいたはずの娘の姿は何処へ消えたか、見渡し探すも姿は見えず。
だが逃げたとも思えず――。

直後、再び悪魔は光る球体の中へと閉じ込められる。
今度は先ほどよりも広く、羽をはばたかせる余裕もある。苛立たしげに再び魔力でその檻を破ろうと、大きく吠え唸り力を膨れ上げようとした。

「――万華鏡 篝獄」

何処から聞こえたか、その声の主は忌々しいあの娘。
直後、爆発音と共に羽に鋭い痛みが走り、振り向く暇もなく次々に爆発が起き、その度に身体を切り裂く何かが――居る。
次々爆ぜて開く焔の花が咲き誇り、悪魔の瞳に焼き付き残る。
爆発と共に縦横無尽に飛びまわるピンボールのような存在を感知しながらも、どんどんと早くなるその動きについて行けずに、空振る腕は空を切るばかりで。
やがて青い神火の焔が、羽を焼き、尾を焼き、身体を包み、悪魔の魔性の身を焼き清めて行った。

ボロボロと崩れ落ちる灰を拾う者は無い。

> 立て続けに起きた爆発音に引き寄せられたか、また遺跡の奥から密かに迫るもの達の姿があった。
火炎を纏った虎に、溶岩で出来た身体を引きずり歩くゴーレム、さらには小柄なアースドラゴンまで。
青い火に耐えられるものは進み、耐えられぬ者は足を止める。
岩山の上からそれを見下ろす娘は、上機嫌に火の灯る尾を揺らし呟く。

「次の獲物が来た……っ」

この遺跡から脱出するまでに、どれだけの命を刈り取り捧げられるだろうか。
殺しを愉しまないのが暗殺者。その教えに反し、娘は今ばかりは楽しみ心を躍らせた。

ご案内:「無名遺跡 (過激描写注意)2」からさんが去りました。