2025/06/01 のログ
ご案内:「とある街道」にタレイアさんが現れました。
■タレイア > さてどこで目をつけられたやら、と。
男がそのように思うときには既に体にクロスボウの矢が突き刺さっていた。
ローブ越しに血肉、骨まで撃ち抜かれる衝撃に身体が半回転、ぐらりとバランスが崩れる。
それと同時に飛びかかって来る屈強な冒険者の振るう幅広剣が男の頭部を叩き、振り抜いていく。
首の骨は呆気なくへし折られ、皮膚ごとねじ切れ――ぶつり、と頭が吹き飛ばされた。
男は断末魔を上げることすらなく、ごぼ、と水気ある、血の溢れる音だけを響かせ。
まともな護衛や討伐隊と言うより近辺で盗賊行為に励んでいる、そんな出で立ちの冒険者たちが笑い声を響かせ。
首無し、重たい身体は立っていられずに地面へと倒れ伏して、しばらくの間痙攣を繰り返している。
担がれていたバッグからは薬瓶や薬草が溢れ出て、早速戦利品とばかりに其れを冒険者たちが漁る――
そんな中、倒れていたはずの身体が、いつの間にか、静かに音もなく起き上がっている。
欠けていたはず頭部には幾本もの触手がうぞうぞと絡み合って形を成しており。
同時に、ローブから這い出る触手たちが完全に油断していたらしい一人の冒険者の足を搦めとって
その体ごと引き摺り倒して、びたん、と玩具でも扱うかのように地面へ叩きつけた。
悲鳴と物音に気付いた他の冒険者と来たら、あまりに悍ましい化物の姿に短い悲鳴を上げ。
ある意味では賢明と言える、物理的に対処が不可能だと早々に判断して――脱兎のごとく。
哀れ一人残された男は既に気絶してしまったようで、しかし見逃されることもなく、哀れな獲物に。
唇から、耳から、幾本もの触手が内側に潜り込み、体にはつぷん、と触手から伸びる針が立てられる。
くぐもった悲鳴と幾度かの痙攣を繰り返したのちには、屈強な男の体は最早動くこともなくなって。
「あぁ……しまったな」「案外脆い」
なんて、『有効活用』し損ねたことをぼやく、未だ触手頭のまま。
異形の姿を晒しつつ、弱っているのか暫し、日の暮れかけた地面を彷徨って。
取りあえずは吹き飛ばされた頭部を触手で拾い上げて、片手にぶら下げる。
脚がひん曲がり、体中の穴から血を溢れさせて死んでいる冒険者らしき姿と。
頭部をもって、矢が突き刺さったままふらつく、何か、と言った、悪夢みたいな光景であった。