2025/11/03 のログ
■宿儺姫 >
女鬼の剛力が無力化されたのを確認してか、触手はその身体を貪ろうとその先端が開き牙を剥く、
──しかし同時。
「……!」
女鬼の四肢を拘束していた光の鎖が砕け、その身体が大きく揺らぐ。
罠の効果時間が切れたか、あるいは女鬼がかなり暴れた結果として罠の耐久が0近くになっていたか。
どちらにせよ、自由になった脂環しきった身体は触手によって支えられるような形となり──。
「ぐ、ゥゥゥ…ッッ!!」
首から下には力が入らぬ、ならばと。
振り上げられたその角を、野太い触手に向け叩きつけていた。
鋭く伸びた角は深く突き刺さり──獲物からの強い抵抗を感じた触手はすぐさま逃げに転じる。
やってきた時とは打って変わった素早い動きで長い身体をうねりくねらせ、通路の先の闇へと消えろ──。
「ぜぇ…ぜえ……あやつ、め……」
身体に差し込まれたのは媚毒か。
どちらにせよ満足に身体に力が入らず、魔物の体液によって襤褸を溶かされ裸同然となった姿でただ、石畳の上へと崩れ落ちた。
ご案内:「無銘遺跡・地下深く(過激描写注意)」にタマモさんが現れました。
■タマモ > ふらりとやって来たのは、一人の少女。
どうしてこんな場所に?なんて質問は、この少女には不要だろう。
「………にしても、先のは何じゃったのかのぅ?」
ともあれ、何やかんやで訪れた、この無名遺跡の奥の奥。
理由は迷子だが、そんな事は、気にするな。
そんな折に、ふと先に感じた気配、この先で起こった出来事の元凶、触手っぽい魔物だった訳だが。
その気配にちょっとばかり身を潜ませれば、そうした事もあってか、己に気付かず、触手は通り過ぎて行く。
それを視線で追い、首を傾げた後、その触手がやって来た方へと視線を向ければ。
「あー…まぁ、行ってみれば?」
と、好奇心に誘われ、ふらりふらりと、逃げて来た先へと歩み進む。
さて、そんな感じで進んだ、その先には…
「ほほぅ…あれがやったのじゃろうか、これは?」
そこに居たのは、石畳の上に転がった、鬼が一人。
それを見付ければ、見付けた鬼の姿を視線で捉え、状況を確かめられれば。
無造作に歩み寄り、よいせ、と横に座り込み、脱力した鬼の姿をにまにまと笑みを浮かべながら見詰めるのだった。
■宿儺姫 >
転がった浅黒肌は汗ばみ、ぜえぜえと洗い呼吸で胸を上下させる。
不意に現れ近寄ってきた少女の気配を感じれば鋭く切り立ったような瞳が睨めつけるようにして、己を見つめる金紅へと交わされる。
「──、誰かと、思えば…」
見覚えがあるどころではない顔がそこにある。
可愛らしくも小憎らしいにんまりとした笑みを浮かべが少女の顔は、女鬼からしてみればただただ腹立たしかろう。
無防備に座り込む華奢な体躯を蹴り砕いてやりたいそんな意思も、弛緩し力の入らぬ四肢には伝わらず──。
「魔物の類がやって来たほうが如何ほどもマシではないか」
弱っている様子の女鬼であるが、まるで口は減らない。ある意味ではいつも通りの姿か。
■タマモ > こうして、近付いてみても、動く気配も見せやしない…いや、見せられないのだろう。
一応は、何かしらされたら回避でも、とは考えていたが、不要と判断出来たのなら。
「なんじゃ、酷い言い草じゃのぅ。
無力にされてしまった哀れな鬼を、妾ならば、助ける事も出来るのじゃろうが?
そんな言い方をされてしまうと…」
とか何とか、少女をある程度でも知る鬼からすれば、どの口が…とも思える言葉を紡ぎながら。
その動けない体へと、少女の手が、すっと伸ばされて。
「そうされた分、色々としたくなってしまうなぁ?」
にっこりと、笑顔を浮かべ…ぐい、と非力そうな手が、鬼の体を簡単に、仰向けへと寝転がせ直すと。
ぎゅむぅ、と遠慮なしに、仰向けになった事で晒された、弾力のありそうな爆乳を、指が食い込む程に強く握るのだ。
久々の感触を確かめるように、そうする事で、どんな反応をしてくれるか、楽しむように。
■宿儺姫 >
酷い言い草かどうかなど、この悪戯めいた笑みを浮かべる狐の次の行動ですぐに理解る。
どちらにせよ、宿敵…とまでは言わずとも、諸々の恨み節すら吐けるだろう相手からの憐憫など不要である。
言うが早いか、大人の男以上の目方はあろう女鬼の身体を容易く転がし仰向けにされ──。
「変わらずと、悪趣味な狐、め……っ。 ぅ、く……っ♡」
遠慮なくその小さな手が浅黒い乳肉を鷲掴む。
仰向けになっても然程形の崩れぬ砲弾のような形のそれは柔らかさよりも、指先を押し返す弾力に富む。
触手型の魔物の媚毒の影響か、乳輪は浮き立ち、その先端も程なくして突起する──腹の奥に熱いモノが爆ぜ、匂い立つ蜜までが太腿を濡らして。
悔しげな声色と共に漏れたのは熱い吐息。
やれ戦え死合えと喧しい女鬼の姿を知っていれば、今の状態が先の魔物によって何かされている…程度は察しがつこう。
■タマモ > まぁ、名前は…思い出せないが、どんな相手だったか、は覚えている。
睨み付けているだろう、そんな視線を涼し気に受け流しながら。
「いやいや、違うじゃろう?
ほれ、今回は妾の厚意を受ける間も無く、それに唾吐いたのはお主じゃ。
改めて受けるにせよ、相応のお返しとか、必要じゃろう?ん?」
それが当然、みたいな言葉に態度。いやまぁ、前回を考えれば、そんな考えになる訳ないだろう、と言われようと。
そうした事さえも、流してしまうのが、この少女である。
言葉を続けながらも、掴んだ乳房は離さない。
むしろ、ぎゅ、ぎゅむ、ぎゅちぃ、と引っ張ったり、押し戻し、圧し潰したり、軽く捻じったりと。
軽い痛みと、今は強い刺激となるような、悪戯を繰り返す。
「おやおや、まだ片方の胸だけだというのに…こんな風になってしまって、放置しておったら大変じゃろう?
妾が、しっかりと、これをどうにかしてやろうではないか」
と、ぱっと一度離れた手、その指先が、自己主張をする突起、乳首へと、乳房からなぞるように触れていき。
直接は触れず、周囲の乳輪をつま先でかりかりっ、と引っ掻くような、焦らすような動きの後。
再び乳房を掴もうとする、手を広げるような動きを見せるも…指先が乳首を挟むように、ぎゅ、と摘ままれ。
ぎちぃっ、と伸びる程に強く引っ張ってしまう。
そうして、引っ張ったらすぐに指を離し、再び、今度は動きの通り、乳房を鷲掴み、揉み解し。
時折、気が付いたように、乳首を弄ってと、媚毒の熱に加え、己の与える刺激の熱を鬼へと溜め込ませてゆくのだった。
■宿儺姫 >
「く、ぉ、おっ……♡」
たかが乳房を弄ばれただけ、にも関わらず…。
面倒な状態にしてくれたものだと触手型の魔物への恨みまで募ってくる。
呼気荒く、子供のような少女の手先で玩ばれ、
執拗に与えられた熱にその屈強な身体を震わせる始末。
「よ、余計なお世話ぞ…!
触れるなっ…♡ 色狐めが…っ♡ んぅくっ……♡」
口では抵抗しつつも、その緩急ある責め口に一溜りもなく鬼の身体は濡れゆく。
刺激された乳輪はよりぷくりと膨らみ、反り立つ先端はより固くその感触を少女の指へと返す。
呼吸はより熱く、荒く。力の困らぬ四肢を時折跳ねさせては、恨みがましくも熱の籠もった視線が狐を睨めつけて。
■タマモ > 「おや、可愛らしい声が出てきたか?」
わざとらしく、ぴん、と立てた狐の耳を顔に寄せ。
唇から零れる鬼の声を、聞き逃さんとばかりに、傾けるのを、見せ付けて。
声が洩れれば、その時に動いた手の動き、指の動きを再現し。
更なる快楽で、鬼の乳房を責め立てる。
甘い声を、より強く、はっきりと、その唇から零れさせる為に。
「ふむふむ、触れる程度では足りない、と?
ふふっ…ならば、お主には、こちらの方がお似合いじゃろうかのぅ?」
鬼の瞳に映るように、もう片方の手も動き出す。
それは、今弄ってる反対の乳房へと伸びていき…すっ、と手の平を返すと、ぱしぃんっ!と、強かに引っ叩く。
もちろん、痛みを与えるような、そんな衝撃ではなく。
より熱を抱き、火照らせ、耐え難い疼きを引き起こす、そんな力を加えた、快楽を叩き込むような衝撃。
ぱんっ、ぱぱんっ、と乳房を叩き、親指に中指を引っ掛けるような形にし…ばぢんっ、と乳首を弾いてみせ。
また叩き、弾いて、反対の乳房には、嬲るような衝撃が、何度も何度も加えられる。
…と、それがしばらく続けば、今度は左右が逆転し、元の乳房が嬲られて、新たな乳房が弄ばれる。
たっぷりと時間を掛けて、嬲り続ける鬼の乳房は、そう経たずして、普段の陰核並の過敏な性感帯に変えられるだろう。
■宿儺姫 >
誰もそのようなことは言っておらんが!!!
…と憤ろうにも、口を開けば熱い吐息が、濡れた声が出かねない。
きり、と牙を噛み締めて耐えるような女鬼の様子を他所に、狐の少女の責めは続き……。
「はっ…はっ……♡ ぉ、ぉ゛……ッ♡」
赤く小さな手の跡が刻まれた乳房はじんじんと熱が籠もり。
乳首もまた己自身が見たこともないサイズに起立して快感に震える。
まるで剥き出しの陰核が如く、触れられる度に──。
ぱちぃんっ♡ ──ぷしゃあっ♡
「───ッッ♡」
ついには股座から生暖かな透明な蜜を噴き散らしてしまう。
ぐるぐると、狐に向けられる快楽に揺れる視線には、まだ「覚えておれよ」といった意思が込められてはいたが。
■タマモ > 「うむうむ、良い塩梅になってきたか。
ほれ、どんな感じじゃ?答えられぬ程に、良いんじゃろうなぁ?」
もはや、言葉よりも嬌声しか上がらぬ鬼の唇。
その声を、もっと上げさせるように、執拗に続けられる乳房への施し。
叩き、ついに潮噴きまで見せられてしまえば、そんな状態であっても、強い視線を感じられれば。
見詰める瞳が、すぅ、と細められ。
「ほほぅ…ここだけでは、飽き足らず、か…
いやはや、まったく、贅沢な牝鬼じゃのぅ、お主は?
それならば?お主の体中…たぁっぷりと、愛でてやらねばならんかぁ?」
最後に、すぱぁんっ!と、両手が振り下ろされ、両の乳房が同時に引っ叩かれる。
少し手首を捩って、弾くように叩く、もう少し強めの痛みを加えた一撃。
それで、新たな絶頂を迎えるか…まぁ、迎えられずとも。
その場所の感じようを、しっかりと刻み込んだ鬼へと、新たな性感帯を…との含みを持たせる囁きを、耳元で伝え。
ひたり、とまずは両手が腹部へと触れ、す、すす、すすす…ゆっくりと、下腹部へと下がり、腰回りを撫で上げ…
さて、その先は、前か?後ろか?みたいな動きを感じさせ、鬼の腰の動き具合を確かめよう。
まったく揺らす事が出来ないか、それとも、どちらかを逃すような、しかし、何ら意味のない動きを見せてくれるのか。
その動きによって、次を決めようと…そんな意図を持った、素肌に伝う指先の僅かな感触が、鬼を刺激する。
■宿儺姫 >
好き放題言いおってからに。
そんな抗議の意思を込めた視線も、熱に揺らめいていては説得力がない。
「お゛うッッ♡」
強く乳房を引っ叩かれ、嬌声まじりの濁った悲鳴が零される。
びく、と跳ねた下半身へと、今度は狐の少女の手が向かう。
焦らすような…否、まるで此方を図るかのような手つき。
──過去のことを想起し、僅かに逃がすようにを後孔を遠ざけてしまった女鬼に罪はあるまい。
しかしその僅かな猶予で女鬼に一つの悪巧みが浮かぶ。
「ま、待て……♡
そ・そのへんにしておけ♡
気色の悪い魔物が戻ってくるやもしれぬし、そら…向こうに何やら宝箱もあるぞ。
回収してさっさと帰るが無難であろう」
饒舌なのは、まあ焦りの裏返しか。
宝箱には己もかかったバインドトラップが仕掛けられている。
逃れんがため、それにこの狐の少女をかけてやろうというあまりにもな浅知恵であった。
■タマモ > 鬼の瞳を真っ直ぐに見詰める、己の瞳。
その見詰める瞳に何を見たのか、にっこりと、再び笑顔を浮かべる。
いや、正しくは、見詰めながらに見せてくれた、鬼の反応に対して、だろうか。
ある意味、予想した通りの動きだ、以前の事が、相当堪えているのだろう事は、すぐに分かる動き。
…と、そんな時、言葉を発するのも難しい鬼が、必死に己へと、それを伝える。
鬼に向けていた視線は、ちら、と一度、言われた通りに設置された、宝箱へと向けられて。
再び視線を戻せば、ふむ…と軽く思案する仕草を見せ、ぽむ、と手を打った。
「おや、可愛らしくなったお主の姿に目を奪われ、気付かんかったようじゃのぅ。
確かに、先の魔物が戻られても面倒か…あの宝箱の中身も、気になると言うものじゃ。
…まぁ、それならば?」
うんうんと賛同のような頷きと、納得したように、つらつらと並べられる言葉。
きっと、その言葉を聞いた鬼は、安堵の表情を浮かべるか、何とか顔に出さず、心の中で期待に胸を膨らませるか。
そうしてくれるのだろうが…そんな、都合の良い事が、己と関わって起こる訳がない。
一旦、鬼に触れていた手が腰回りから離れるも、その大きな体を、よいせ、と軽々とお姫様抱っこで抱え上げ。
ゆらり、と揺れ動けば、重さを感じさせぬ動きで、するりと宝箱の前にまで移動をしてしまう。
足元に、石畳の間と間に隙間、つい最近表面が擦れたような跡を目敏く見付けたのだ。
その辺りに、踏み込む重さで発動する罠がある、程度の認識は簡単に出来るものである。
「それならば、魔物が戻ってくる前に、この宝箱と、お主共々、しっかり回収するのが良いじゃろう。
場所を変え、たっぷりと、しっかりと…あの時以上に楽しい事を、お主に教えてやるでのぅ?」
どすんっ、と鬼の体を宝箱の上に、うつ伏せへとするように下し…
宝箱の冷たい表面に、刺激と快楽に苛まれ、すっかりと熱と疼きを抱く乳房を圧し潰すように。
次いでぱちんっ、と指を鳴らせば、周囲の光景が…正しくは、己の周囲、宝箱と鬼を巻き込んだ場所に、変化が起こり。
その後、部屋に残ったのは、宝箱っぽい何かが置いてあったという、それを感じさせる地面の痕跡だけ。
■宿儺姫 >
「───!?」
突如与えられる浮遊感。
持ち上げられることなど、よほど屈強な巨躯の者でなければ為さぬ故に。そんな不慣れな感覚に困惑を覚える。
しかし困惑はそれだけで済むことはない。
重さで反応する罠を発動させず宝箱の前ですいと移動させられたことに加え──。
「それならば、ではな───」
片眉を顰め、必死な言葉の続きを紡ごうというにも時すでに遅く。
振り返れば愉しげに笑みを浮かべる狐の少女を指を重ね、音を鳴らす仕草。
"あの時以上の"などという女鬼にとっては悍ましい言葉に反論を返す間もなく。
その場から狐と鬼、宝箱は忽然と姿を消した。
数々の痕跡だけを残し、流転した女鬼の視界は次の瞬間何処へと変わっているのか。
見覚えのある場所か、それともまるで知らぬ存ぜぬ場所か。
どちらにせよ、運悪く、最早天敵とも呼べる狐と再開した女鬼の行く末は決まったようなもので───。
ご案内:「無銘遺跡・地下深く(過激描写注意)」から宿儺姫さんが去りました。
ご案内:「無銘遺跡・地下深く(過激描写注意)」からタマモさんが去りました。
ご案内:「未踏破遺跡」に影時さんが現れました。
■影時 > ――容易い仕事、と思うとそこに間隙が生じる。
だが、万事抜かりなくと神経を張っていても、面倒は起こる。
それも想定を超える程の勢いで遣ってくるものである。現実は非情である。
九頭竜山脈の麓に点在する遺跡群。最近発見されたその内のひとつに、調査隊が送り込まれた。
調査のための学者、場を整えるための職人たちを、一定以上の実力を認定した冒険者で護衛する形式のものだ。
ただの遺跡如きでそこまで大仰な、とは言えない。遺跡の規模を勘案するとそれでもなお少ない。
奥も底も深いまるで都市ひとつが丸々埋まっているのではないか、とも思われる規模感だったのだから。
大所帯故に遅々としながらも足場を固めるような進行が続き、恐ろしく広大な広間に出たと認識したところで――不意に起こった。
『ふっざけろ、警報だからってこんなのありかよ……!!』
誰がそれを叫んだか。
壁も床も天井も。見た目は恐ろしく奇麗に磨かれた御影石を組んで作ったような広大な空間に、一団が到達した瞬間に。
突如甲高い音が鳴り響いた。
地下遺跡を行くものならば、聞いたこともあるだろう。侵入者を感知し、魔物を呼び寄せる“警報”だ。
遭いたいものは少ないとは思うが、ただその仕掛けだけなら、珍しくもない。だが、それが大規模であるならば、どうだろうか。
個を圧倒するのはそれ以上の個、若しくは物量。兎に角物量。只管に物量。
ごぅん、と。蠢動するように揺れる壁の幾つかが開き、倒れて、中に控えたものをぞろぞろと吐き出す。
ゴブリン、オーク、オーガ……――その他いろいろ。小さい、大きい、異形、何でもありだ。
そうとなれば、侵入者の一団はどうしようもない。逃げの一手。先に行くのは愚。戻るほかない。
盾持ちの守りが固いものを殿に、打たれ弱いもの、戦う力がないものを囲みつつ、物量に押し返される前に。
だが、物量の、数の過多というのは恐ろしい。粘体が獲物を包み込み、溶かすように、有象無象が押し寄せてくる。
そこに刃を振るい、魔術を叩き込めば、幾ばくかは削れる。削れはするが、殺しきるには足りない。
「……ひっ、さびさに血が滾るなァ。大盤振る舞いか……!」
それを実感する者が一人、殿の組の中に混じる。柿渋色の羽織に身を包み、刀を振るう異国の男だ。
声が張り上げられ、退避が合わなかったものが悲鳴を上げ、敵味方の断末魔が唱和する。
怒号めいた叫びと共に大盾が壁のように連なり、魔術の火球が撃ち込まれ、血肉が飛び散る。飛散する。
抜けてくる魔物が居れば、それを斬るのが遊撃隊じみた立ち回りを仰せ付かった男の仕事だ。
■影時 > まさしく修羅場。こんな場に抜け忍とはいえ忍者が交じるというのは、因果なものか。
後方攪乱、伝令等、様々な理由を付けて合戦場に引き出された時のことを思い出す。
死んだ大将の鎧を引き剥がし、母衣でそれらしく身を装って動けば、生死を分ける極限状況では分からぬもの。
分からぬものと云えば、此処で何か一つ仕損じてしまえば、護衛対象はおろか己すら死ぬものだが。
「少なくとも、この遺構のヌシからすれば俺らのようなものは、お呼びじゃあないらしい。
それとも獲物のつもりか、どうかまでは……ええい、考えてる暇ァ位寄越せ、全く……!」
死した地下都市めいた場にまだ主が居るのか。それともごく最近できたかどうかまでは、分からない。
ただ分かるのは、侵入者の対処として、兎に角生きた物量を以って良しとしている現実。
生きているからには食わせなければならない。そんなものを何処から呼び寄せたのか。それとも、住み着いたものを御したのか。
接敵するものたちには、飢えらしい眼差しは――あるとも云えるし、ないとも云える。
確実にあると云えるとするなら、女性も多く交じった編成に触発されてかの、下卑た眼差しだ。
――存外、この遺跡に今主が居るとするなら、それを望んでいるかもしれない。
内心で肩を竦めつつ、太々しいオークの間合いに入る。豚ではなく猪めいた顔つきは、同族の中では強い部類かもしれない。
何処から仕入れたのか分からぬ立派な大斧を振りかざす姿は、そう見えなくも無いが情欲まみれの目はよろしくない。
鋭く息を吐きつつ、右肩に担ぐように置いた刀を打ち込む。目は兎も角、斧の柄を翳して防ごうとする反応までは正しい。
「……一つ二つ、で、三つゥ!」
だが、温い。氣が宿る利刃を防ぐには心許なさすぎる。ず、と袈裟懸けに斬り下ろし、切り抜けた刃を返して切り上げ。
次いで、息を衝かせずに左から右への横薙ぎ。分厚い皮と脂もたっぷりのった肉を切り開けば、出血は後から生じる。
拍動に乗って間欠泉よろしく溢れ出す血飛沫を避け、死体に変えたオークを蹴って飛ぶ。
手近な大柄な魔物の頭に着地ざまに串刺しにして、その次ののっぽの種族も分からぬものの首を刎ねる。
すぽん、と間抜けな玩具よろしく訳が分からぬ面を晒す生首が、飛んで、飛んで、群れの中に転がって腐った果実のように潰される。
「あとどんだけ守れゃアいい。ご本尊よろしくでけぇのが来たら、守り切れんぞ」
己だけならまだ、生き延びる自信はなくもない。
しかし、それも例えばヌシやら上位魔族やら。己に匹敵しそうなご本尊でも出てきたら、どれだけ凌げるか。
■影時 > 「……うへぇ。云わんこっちゃねえ。……下がれ下がれ、守りを敷け! ぶち抜かれンぞ!」
ぼやいてみたら、嫌な予感が生じる。その嫌な予感は目に見える形を伴って現れる。
恐らくは進行方向になるであろう広間の奥、警報が作動した際に開いた通路、扉からではない通路から、それは来た。
通路といっても何人も並び立って歩けるほど広いもの。
それの幅いっぱいを占領しつつ、現れてくるものは――大きい。大変大きい。ばさりと拡げればオーガの腕の幅よりも更に広い。
最上質の革鎧もかくや、とばかりに頑丈そうな青黒い肌に蝙蝠の翼を背負った大物。デモン、大妖魔等と呼ばれる類のもの。
個体としての強度、戦闘力の高さに加えて彼らは魔術を使う。恐ろしいのは、それが一体のみでは現れないということ。
今回もまた、その類に漏れないらしい。
一体、二体、そしてさらに三体。地響きを上げておでましになり、腕を振り上げて唸るような詠唱を始める。
溢れんばかりの雑魚を前にしながら、というのは大変厄介だ。突破ではなく、守るための戦いをしていると余計に動きが取れない。
(……まずい、な……!)
刀の柄を口に咥え、咄嗟に両手を構える。ぱ、ぱ、ぱ、と立て続けに印を組み、足元を叩くように触れれば、地面が震える。
氣を流し込まれた地面が戦慄き、亀裂が走り、編成して黒い岩石の柱や大きな岩板を乱立させる。屹立させる。
それに続けて、魔術師たちが杖や手を翳して光の壁を幾重にも張り巡らせる。防護結界。
重ねる守りの成立と、大妖魔が放つ魔術の結実はほぼ同時。爆風、凍気、電撃、と。ご丁寧に違う術が広間を埋めるように爆ぜる。
「――!!!」
大妖魔にとっては、有象無象は雑兵、諸共にしても問題がない捨て駒なのだろう。たかがその程度で術の威力は減じない。
多くの肉が爆ぜ、大気中に飛び散った血飛沫が赤黒い霰に変じ、骨もまた雷で灰と化す。
最終的な標的と化した冒険者たちの一群も、耐えきれなかった、しのぎ切れなかったものは例外ではない。
初手の爆風で吹き飛ばされて即死したなら幸運。続く術でも死にきれなかったなら、不幸。否、それよりも大変なのは、
「がぁ、っ、そ……――生きてる、かぁ?」
最終的に各々の守りや装備等あって、生き延びた者達だ。
迷宮の最深部でも生きて到達できる実力者がそれに該当するが、足手纏いが増えると比例して負担が増える。
軍勢の指揮に慣れたものが音頭をとり、退避者を優先付けて誘導してゆく。怪我人を少しでも下がらせてゆく。退路の安全は確保できている。
男もまた、生き延びる要素、力量を持った一人だ。
忍術で守りを確保し、幾重に張られた防護結界で直撃こそ避けたが、切れた額や頬、打撲等、細かな負傷が蓄積している。
■影時 > (全く、俺独りだけであったなら……ああいや、それどころじゃねぇなこりゃ)
まだ思考出来るだけ、その余裕があるだけましだ。本当に致命的な場面はそんな余裕すら許さない。
走れる余裕がある。残っているが故に、走る。殿として。囮として大妖魔達に向かう。
動けるもの、やる気があるものは、声を挙げ、叫びを挙げて続く。
そうでないものは護衛を完遂するために、守れるものを守りつつ、下がる。
救い切れず、死んだものは回復役が遺髪を切り取り、認識票に結び付けて涙を堪えつつ逃げ往くさまも見える。
「……おうおう、皆気張りおるわ。
退避しなきゃなんねぇ奴らが退避しきるまでで、だ。逃げ切ったら――分かってるンだろうな?!」
理解している者は理解している。死ぬために進むわけではない。時間を稼ぐだけだ。
時間を稼ぎ切れば、ありったけのかく乱の手札、一足お先にとばかりに貴重な非常脱出手段すら使うだろう。
この状況で、文句を挙げるものは居るまい。
全員退避し切れば、最後に魔術師たちが広間の扉を強制的に封印してしまうことだろう。予めの打ち合わせにもあった事項だ。
血を振りまき、肉を断ち、骨を砕きつつ、数人がかりで大妖魔と渡り合い。
――最終的に多くの負傷者、死者すら出しながら、この遺跡より脱する。以降、かの地は危険領域として扱われる――。
ご案内:「未踏破遺跡」から影時さんが去りました。