2025/10/15 のログ
■ボルフライ > 男の疑問をあっさりと認める牝鬼。
気は立っているのも、寝床を取られたことと己を嬲り屠った男が目の前にいることからだろう。
それでも冷静さを保っているように見えるのは、この男に対する恐怖心からなのか、それともプライドの高さ故か。
「次の寝床にはオークの頭蓋でも飾っておくんだな」
ゴブリンは己より強い個体の亡骸があるところには来ずらいという、生物学的生態。
そうでないと寝床をあっさり取られてしまうのだ。
「人をなんだと思っているんだお前は…」
どの口が言っているんだと呆れた様子ながら、しかし話ができる相手であることにはそれなりに気分が良さそうにも見える。
「…ボルフライだ、お前の言う通り、蛮行ばかり行うロクデナシだな」
じいっと牝鬼を眺めながら改めて口を開くと、己の名を伝えてくる。
すぐに剣や拳を向けてくる命知らず、顔色伺いでゴマすりをしてくる有象無象、そういった者たちばかりを相手にしていると、彼女のような…とりあえず今のところかろうじて意思疎通しようとしてくる存在が希少なもののように感じられる。
■宿儺姫 >
「オークの頭蓋? それで連中の侵入を防げると?」
忠告、あるいは助言。
唐突なそれに牝鬼は首を傾げる。
調達は容易だろうが、牝鬼の浅い知識ではそれがどういう意味のあるものかは解らないらしかった。
「お主が我にしたことを思い出……いや、思い返せば我のほうから殴りかかりに行っていたような気がするのう…」
蛮行ばかりを行うロクデナシ。
しかしボルフライという名があり、それを名乗る男。
少なくとも意思の疎通は、短絡的な己より出来るのではないかと思えてきた次第である。
「"宿儺"じゃ。八卦山にもおったろう、お主。
我のことを知っておるのかと思ったが、そうでもなさそうじゃったな」
「で、その蛮行ばかりを働くボルフライとやらがこんな辺鄙な場所で何をしとるんじゃ。
口ぶりからして我の首を取りにきたわけではあるまい」
時折、人喰い鬼の賞金目的に冒険者が挑んでくることがあるが、相手方の反応を見ように、この遭遇は偶発的なものであろう。
■ボルフライ > 「ああ、例えば……」
上位存在の亡骸があるところに動物やモンスターは近づかないという説明が、強さで言えば遥か上位であるだろう彼女に理解してもらえるか少し考えてしまった。
「…例えば、ありえないが住処にしようとした洞窟の入り口の俺の死体があったら、その洞窟に入ろうとは思わんだろう」
彼女にわかるように簡潔いうには仕方なく、しかし一応あり得ないが…と一言添えて説明する。
「ああ、どちらもお前の方から飛び掛かって来ていたな。
覚えていてくれて幸いだ、記憶ごとすり潰してしまったのかと思ったぞ」
幸いにて都合の良い記憶の改変は起きていない様子で、しかしだからと言って反省のようなものは見受けられないのだろう。
軽い皮肉を織り交ぜるが、彼女にはあまり意味がないかもしれない。
「そう言えばそうだな、いにしえの鬼だったか? 古から封印されている奴らが方々にごろごろいるから覚えきれんのだ」
意外にも牝鬼のような存在は思ったより多くいるのかもしれない。
「散歩だ…本当だぞ?」
答えた瞬間いくら彼女であってもいぶかしむ表情をしただろうから、改めて強調しておく。
確かに強いものに興味はあるが、賞金には興味がない、そも己こそ賞金首であるから猶の事だ。
そして壮大な目的があるわけでもない、気まぐれに過ごしているだけだからこそ、たまたま出会っただけのこと。
「俺の気分次第じゃとっくにお前を嬲っていたということだ」
■宿儺姫 >
「…そういうことか。なるほどのう。
上位種を喰い物にする主がいる危険な場所には近づかぬ、か」
最も、昨今の連中の中にはオークよりも強靭な存在もいる気配がする。
いっそ火竜の顎でも飾っておくべきか。
「幸いだ、などと思うならば記憶ごとすり潰す様な真似をするな…。我が言えた義理もないが。
───散歩ぉ?」
こんな場所を?
まぁ、あれ程の理外の力を持っていれば散歩といえど尺度が違うものか。
怪訝な表情こそ浮かべるが、どこか納得した様子で腕を組み、続く言葉には辟易したかのように溜息を吐いていた。
「お主がそうしようと思えばそう出来るのじゃろうが…。
全く、何を喰って生きていたらそんな力を人の身に宿せるのか。
我とて力を封ぜられているとはいえ、古の時合には鬼神と謳われたものぞ?」
何か秘訣であるのかそれとも生まれ持っての厄災か。
それであればとんでもないものがこの王国を彷徨いていたものだと。
■ボルフライ > 「まぁ、命知らずな冒険者などを招くかもしれないが、野生で住む者の宿命だな」
彼女が住処に何を飾るかはわからないが、あまり派手な成果であると余計なお客を招くことにもなりそうだが、それはそれで望むべくかもしれない。
「だがそのあとの営みはよく覚えているぞ、記憶に残るほどの具合の良さだったからな」
さんざん好き放題にしてやったが、一番楽しかったのはやはりそっちではあった。
くくっと笑いつつも気兼ねなく猥談も口にして。
「ふん、俺は怨念で産まれたようなものだからな、出自を聞いたところで俺もよくわからん。
ただ混沌が好みであることは間違いないな」
古の鬼神もたいがいだが、怨念から生まれた魔人もまた次元の違う存在ということだ。
秘訣などという都合の良いものでもあればまだ人間味があったかもしれないが、生憎そのままの意味での厄災だ。
「俺の元に下るなら多少は手解きしてやらんこともないぞ」
少なくとも、より強くなる方法、あるいは力を取り戻すには近道になるかもしれない選択肢ではあるが、彼女のプライドが許すかどうかだ。
■宿儺姫 >
「呵々、其れは其れ。お主のような埒外でなければ望むべくもないがな」
彼の男のようなものが他にもいるなど考えたくもない。
早々いてたまるものではあるまいと軽々に笑い飛ばすが、続けられた男の軽口に再び眉根を顰めることとなった。
「物好きめが…お主程の者なれば相手も選び放題であろうが」
よりにもよって、と歯噛みする。
そうした態度を取ったところで目の前の厄災にとっては何処吹く風であろう。
「生憎。抑えられた力を一から取り戻して往くのも中々に愉快な道のりでのう。
当然敗北も喫することもあるが、次に相まみえた時に叩き潰す。良い刺激となるものじゃ」
お主のような相手は例外じゃがな。と。
自身に恐らく初めて恐怖というものを刻み込んだ傍迷惑な混沌を見やる。
結論として、その下に自ら下る腹積りはないのだということを告げて。
■ボルフライ > 好戦的な彼女らしい言葉だが、やはり己との交戦は避けたいようだ。
少なくとも己と同じような存在はいないだろうし、もしそういったものとぶつかり合った場合、この世界は真の災厄に見舞われるだろうな。
「皮肉なものでな、物好きでないとまともに愉しむこともできん。
破壊されても再生できるお前は誠に都合がいいということだ…」
今にも襲い掛からんというような雰囲気でずいっと半身を寄せてくる男。
優しく懐柔などするわけがなく、ヤリたいのであれば容赦なく手を出してくるだろう。
それに彼女も、力を取り戻したからとってリベンジをしてくるような様子ではない。
それだけの力の差を見せつけているのだから当たり前だろうが。
彼女の返答は予想通り、ここであっさり下ってしまっていてもつまらないところだった。
「俺には理解できない、相容れない感覚だ。敗北は死であり、終わりだ。
それ以上先は無い、やり直しもない…つまりお前もまた例外というわけだ」
誰もが欲する呪いでもある永遠の命に等しい再生能力という特権を持っているからこそ、敗北すら糧という感覚が産まれるのだろう。
■宿儺姫 >
「それよ。我は不滅である故な。より力を高め、捲るという楽しみが尽きぬ。
…まぁ、そこに仕掛けをされ力を封じられていることを考えれば良し悪しじゃが」
身を乗り出すようにしてその身体を近づけられれば、片眉を細め嘆息する。
牝鬼自身、目の前の雄との交戦、そして敗北から得られるものはないと判じていた。
多少なり食い下がれなければ伸び代も糞もない。
好戦的な牝鬼が目の前の強者に喰ってかからぬのは、ただ実力差があるというだけではないのだろう。
「女を壊さずには悦にも浸れぬと?
呵々、お主もお主で難儀なもの。我のような雌もそうはおらぬか」
世界広し、案外わからぬものぞと口にする。
しかしそうして口にしつつも手を出してこないのであれば、今日は男の言った通りに本当にただの散歩であったのだろう。
だから、という程ではないが牝鬼も必要以上に男を警戒はせず、不要に脅えを見せる様子もない。
ただ、その気であったならまた以前のようなことを繰り返されるというのであれば、それは少々困ったものだなと思案こそはしていたが。
「かの魔の国にはそれなりにいそうなものであるがな。
それこそ我を童のように転がす魔王なぞという者もちらほらと見受けられるぞ」
■ボルフライ > 「全盛のお前がどれほどの強さであったかは、俺も興味を持つところだな。
まぁ、それでも仕掛けんというあたり期待しない方がいいのだろうが」
例えすべてを取り戻しても己に挑むつもりはないと語る彼女。
交戦しても負けても、得られるものはなく、ただ使い潰されるだけである。
それは紛れもない事実であり、ただ差があるというだけではないのだ。
故にお互いが相容れることも無いのだろう。
「そも俺とヤッて壊れぬ女もまずいないからな」
ある意味では前向きな生き方ができる彼女と異なり、己は本当に悲劇しか生み出すことはできない。
だからこそ、談笑できているからといって手を出してこないという考えは全くの間違いである。
「ああ、探せばお前のような魔王などいくらでもいるだろうな。
だが姑息な連中とは違って、お前は手軽で気軽な都合の良い穴だからな…!」
男の屈強な腕が伸びる。
平素であれば容易く距離を取れたであろうそれは、談笑の油断か首根っこをがっちりと掴まれて、その身を持ち上げてくるだろう。
この男は、本当に気まぐれな蛮族なのだ。
■宿儺姫 >
「さて、のう。幾百も過去の話。
お主相手にどれほどやれるかはわからぬが。お主はどうも種類が違うじゃろう。───、ぐ、ッ…!?」
男の腕に取ってみれば、屈強な牝鬼の首もまた細首か。
そもそも逃げる腹積りもなかった牝鬼は容易にそれを許してしまう。
大人の男を遥かに上回る目方の身体とて、男の膂力を持ってすれば軽々と持ち上げられる。
「ッ──…」
翠眼を細め睨めつけるは厄災。
その目に止まったが運の尽きか、と。
■ボルフライ > 「抵抗せず運命を受け入れる…というのもある意味では抵抗と呼べるかもな。
どれだけまともでいられるか、見せてもらおうか」
首根っこを掴まれ、これからの命運が確定したからと言って喚き散らし、抵抗する素振りは微塵もみられない。
それが無意味であるとわかっているから、無駄な抵抗はしないということだろう。
ただただ長い悪夢を見ていただけであると……
首を掴む男の手の力がひどく強まっていき、メキメキと音を立てていく彼女の骨が、やがてボキベキを鈍い音を立てて損傷していく。
ぶちぶちぶちっと皮と肉が引きちぎられると同時に、首と胴が力任せに引きちぎられていき、脊髄ごとぶち抜かれてしまうのだ。
そうして事切れてからしばらくして意識を取り戻すと、彼女のいる場所は大きく変わっていただろう。
薄暗い牢獄のような場所にて、腕を拘束された状態で吊るされたままの彼女。
どうやらボルフライらの居城と言うべき場所であり、そこの地下牢獄…あるいは闘技場とも言えるし、実験場とも言えるような場所だ。
■宿儺姫 >
「──グ、が、がふ…ッ───」
人のものよりも遥かに強固な筈の鬼の頚椎が破壊される。
血泡を吐き零しながらの苦悶の声は、痛ましい肉と骨が引きちぎられる音と共に闇に沈む。
その暗転は長かったか、それとも一瞬であったか。
「──、ぅ… む」
意識が覚醒したのは、まるで見覚えのない場所。
両腕を拘束され吊り下げられていることを確認すれば、そこが牢獄のような場所であることに気づく。
彼奴に運ばれたか、此処が何処かは知らぬまでもそれだけは理解に及ぶ───。
しかして、この場の主であるだろうボルフライがどういった考えて牝鬼を此処へと連れて来たのか。
それを理解することになるのは──この場で再び彼と顔を合わせた時となるのだった。
ご案内:「九頭竜山脈・洞窟(過激描写注意)」からボルフライさんが去りました。
ご案内:「九頭竜山脈・洞窟(過激描写注意)」から宿儺姫さんが去りました。