2025/10/03 のログ
ご案内:「魔族の国 辺境の森(過激描写注意)」にルージェさんが現れました。
■ルージェ > ここは、己の森ではない。
夜の帳が降りる間は───己を阻む境界はほぼないといえるから。
その気まぐれめいた散策の途上
無感情に見上げるのは、己の影に喰らわれる魔獣の一騎。
貫かれ、磔になったような強靭な四肢が、その咀嚼にすでに命も意思もないというのに、びくりと跳ねる。
血赤の双眸がそれをやや恍惚とした色を帯び、見つめる。女自身は指一本動かさない。
その代わりのように屠り、喰らうのは女の影から伸びる無数の死棘。
血の一滴、臓物の欠片、肉片、骨髄に至るまで、仕留めた魔獣を影は飲み込み、咀嚼する。
ぞぐ、づぐ、づ───
粘着く音が、その牙の中で反芻され、やがて女の影の中にすべてが収まってゆく。
半刻もたたないうちにそれらはなされ、蠢く影は淑やかな女の容に収まった。
────葉を濡らした数滴の血だけがその痕跡としてこの場に残るばかり。
冷たさを帯びる秋の夜風が頬を撫で、艶のある黒髪をそよがせた。
森の中に不釣り合いな瀟洒な装束。
けれども魔族の国であればそんな不釣り合いも、場違いも、あまり意味はないものだから。
秋の夜長を楽しむ足取りは、さて、とくに目的もなく、さら、と衣擦れに似た音だけをのこして、森の林立する木々の合間を泳ぎ始める。
それに従う影も変わらず、女の姿のまま、その似姿を踊らせる。
ご案内:「魔族の国 辺境の森(過激描写注意)」にベルクさんが現れました。