2025/09/19 のログ
ご案内:「魔族の国(過激描写注意)」にルージェさんが現れました。
ルージェ > 辺境、辺獄。
夜に閉ざされた森。

微睡むことを知らない皓月が。
偽りの可惜夜が降りてくる。


───醒めた光の中でより青白い死蝋の肌が月光を受け止めるように掌を上に向ける。

射干玉の黒髪、血赤の双眸をゆるく伏せ。
今宵も変わらぬそぞろ歩きに、狂い咲きの月季花の香りが馥郁とそのあとに続いた。

「─────変わりがないのが至上、とはいえ」

己が埋葬地は、変化を拒絶するように、ただ静謐に満たされている。
それが偽りであることも、その死棘の座に身を預ける女はよく識ってはいるが。

さりとて移ろう時間をすら拒む様なその場に在っては、変わりがない、というのは確かなのだ。

だから。

唇が弧を描く。

光を受け止めた掌が翻る。
さらさらと、月明かりの庭園の中で、一人舞踏のステップを踏むように。

瀟洒なレースで彩られた、ドレスの裾が翻る。

「踊りましょうか」

己の影絵に。
誘いの言葉を紡げば、ゾロリと戦慄く影の這いずり。

ルージェ > 花が散る。

光を受けて淡く光を宿したような繊細な花弁が、ひらひら、ひらひら。

月の影に、花木の影に。

己の影に。

潜んだ棘。死棘。

己の身を貫く杭が、無作為に地を抉りつきあげ、精緻に作り上げられた庭園を凌辱する。

己の記憶のままに。

かつてそうして誰かを蹂躙したように/かつてそうして誰かに蹂躙されたように

声なき咆哮が、空気を震わせる。否、咆哮じみたそのうねりは、死棘が次々に薔薇の庭園をいばらの園へと作り変えてゆく軋み。

伏し目がちだった赤い双眸が緩く影を認めて、演武を躍る。

くるり、くるり、円舞を舞うように、ドレスの裳裾を裂く音が甲高く悲鳴のように響く。

感情などないはずのその牙の上を爪先がトン、と軽く跳んで渡った。
刹那がちりと組み合うそれはまさに影の牙のよう。

──あの時は、そう、足首をすりつぶされた気はしたが。

「ぁ、 ハ……────…ッ」

弧を描く唇から、甘く嗤う声が毀れ。

躍って、踊る。

死を嘲笑うが故の、一人遊び。

ルージェ > 皓い月の光。

熱のないそれを浴びながら、死棘との戯れはいつ終わるともなく。
記憶の反芻、記憶の咀嚼。

忘れえぬ痛みと死と凌辱を。

その蒼褪めた頬が喜悦の朱に染まるまで。

戯れの一夜は過ぎてゆく────

ご案内:「魔族の国(過激描写注意)」からルージェさんが去りました。