2025/11/29 のログ
ご案内:「王都マグメール」に篝さんが現れました。
■篝 > 冒険者ギルドに依頼していた魔物の解体は少々苦労を掛けたそうで。
曰く、これが珍しい魔物の素材でなければ、解体料をもっとふんだくられていたらしい。
買い取り素材の一覧がまとめられた分厚い紙束には半分ほど目を通しただけで飽きてしまい、両手で持つには重すぎる布袋に詰められた報酬と、此方で貰う約束をしていた魔物の素材のいくつかをマジックバッグへ詰め詰めと。
詰め込み終えればあら不思議。
重さもサイズもどこへやら。身軽に戻って、次に向かうは街の市場――。
「んー……。何処に行けば……」
高く売る。或いは、素材の加工は何処に頼むのが良いのだろう?
安く買い叩かれないように、ギルドの目利きに頼んで鑑定してもらい『最低でも、うちならこれくらいは出すよ』と言われた額だけは忘れぬように念頭に置いて、魔道具店や武具店が立ち並ぶ通りを行く。
ご案内:「王都マグメール」にリスさんが現れました。
■リス > トゥルネソル商会……それは、ダイラスを中心に広がる、大商会。
港湾ダイラスに、王都マグメール、奴隷都市バフートに、神聖都市ヤルダバオートと、様々な所に支店を持つ商会である。
其処のマグメール店の店主であるリス・トゥルネソル。
商会の仕事が終わり、店からちょうど出てきたところ、ふと視線を向けて、通りを歩く篝を見つける。
「あら……?」
リスは、彼女の姉弟子である、ラファルの姉であり、二人の師匠である笠木氏の雇い主だ。
彼女たちが住まう、忍びの家に関してもリスの手配でその場所を笠木氏が買い取っても居たりする。
そういう意味で言うならば、リスは、彼女の直接では無いが関係者、と言える人物だった。
「こんばんは、ええと、笠木さんの生徒さん、よね?」
ただ、直接の面識もないので、ラファルに話に聞いていたことがある、程度の認識。
そう言うのもあり、リスは首を傾げつつ問いかける。
核心的に直球で言うのは、篝の身に纏う匂い。
気配とかそういうものでは無く、純粋に、笠木氏と、妹のラファルの匂いをかぎ分けたというだけ。
一応これでもリス自身、人竜なので、五感はとても敏感であるから。
「何か、お買い物、かしら?」
そういう質問をしたのは。
純粋に今いる場所が商店街だから。
■篝 > 暫く通りを観察してわかったのは、大きな店も、小さな店も、それぞれ需要があると言うこと。
大手は商会や貴族などの後ろ盾を持つ店が多く、武具店なら冒険者ギルドが推薦している店もある。品ぞろえが良く、品質にも一定の信頼がある。……代わりに、値段もそれなりにする。
逆に、こじんまりとした魔道具店であれば、個人の錬金術師や魔道具職人などがひっそりと営んでいるようで、かなりマイナーでニッチな層に刺さる商品を取り扱っていることが多いようだった。
これが武具店となると、お抱え職人のいない販売のみを行う店は一気に武器の品質が下がる傾向にある。大手には品ぞろえで負け、品質でも下回ってしまっては好き好んでその店で買おうとする者はいないだろう。
そう言う店で長年生き残っている店は、店主の目利きが確かであり、商才も持っている。
鍛冶師が営む店となればまた違い、個人の小さな工房でも腕さえよければ評判はうなぎのぼりである。
行き交う人々の噂話、店の奥から聞こえる商談の声を良く聞こえる獣の耳で聞き取りながら。
不意に掛けられた声にピタリと足を止め、チラリと振り返り声の主を見る。
「…………?」
綺麗な髪の女性だ。当然、見覚えは無い。“笠木”と言われても今一ピンときておらず、一度首を傾げるも出てきた店の看板を見て合点が行った。
なるほど、と会釈程度に頷いて、くるりと踵を返し身体も其方へ向ける。
トゥルネソル商会。そこから出てきた、娘。どことなく姉弟子を思い出させる容姿の共通点から、彼女こそが師の雇い主なのだろう。
「……はい、生徒……ではなく、弟子ですが。
影時先生の雇い主様とお見受けいたします。お初にお目にかかります。篝……と、申します。
――……いえ、売る方です。もしくは、加工できる腕の良い職人が居ればと」
淡々と抑揚のない声で言葉を紡ぎ、両手で帽子を押さえながら深々と一礼を。
■リス > 「ああ、やっぱり!」
聞いた話と、彼女の風貌、そして、彼女からの匂いで思っていたが、間違ってはいないようだった。
弟子という言葉に対しては、リスはニコニコと、笑みを浮かべたままである。
一応、知らないわけでは無い、しかし、彼はそれを大っぴらにするのは嫌がっていた気がする。
なので、あえてここは知らんぷりして、スルーをしておくことにしたのだ。
「改めて、初めまして。
私は、リス。リス・トゥルネソルと申しますわ。
ラファルの姉であり、ええ、笠木様に、ラファルの家庭教師をお願いしてますの。
あの方のお陰で、服を着る事、覚えたんですよ?
ああっと。
篝さん、どうぞよろしくお願いしますね、私の妹のラファルも。」
ラファルが服を着るのは、彼のお陰であり、それまで全裸だった。今は不承不承でも、服を着ているのだ。
すごく助かってますの、とほんわかと笑いながら、伝えて見せて。
「ふむ。
販売、若しくは……加工、ですわね。
そうですわね、売っていただけるのであれば、買いますわ。
後、加工に関しては―――契約しているドワーフさんはいますが。
どのような加工でしょうか?
武器?装飾品?
その辺りのモノによって、紹介する先が変わってきますわね。」
商人ゆえに、その辺りに関しては、直ぐに出てくる。
彼女の一例に対しては、ご丁寧に、とスカートのすそを持って、カーテシーで返す。
■篝 > 認識阻害の術は見た目を隠す、記憶を曇らせる、そう言う意味で人混みに紛れてしまえば、よく知った相手でも近付かない限りは気付かれることもない。
しかし、それも目と記憶を曇らせるだけ。臭いまでは消せないと言う難点がある。
姉弟子同様、その姉君となれば鼻が利くことも納得がいく。恐るべしは野生の勘だ。
彼女は何やら嬉しいのか、楽しいのか、笑みを絶やさずにいる。
此れが彼女の常なのだろうか、と疑問符を浮かべながら、返された挨拶とその名を記憶し。
「ラファルの姉の、リス様……覚えました。
ああ……。それは、聞きました。大変苦労をしたと。
私からラファルへ指南できることはないと思いますが……ぁ。いえ、ありますね」
女としての最低限の恥じらいとか。
覚えてくれるまで、あとどれくらい滾々と聞かせれば良いのか。気と一緒に視線もどこか遠くに向いてしまった。
アレでもましになったのだ。そう告げた師の言葉と、自由奔放に過ごしていた姉弟子の姿を思い出しつつ。
姉である彼女も師と同等、或いはそれ以上に苦労しているのだろう。多分。
ほんわかと微笑む彼女はご令嬢と呼ぶにふさわしい所作で、一体全体、妹君はどうして?と言う困惑が内心にあったが、そんな素振りは億尾にも出さずに澄まし顔で頷き返す。
「……ん、買取……実際の品を見て、ご判断いただいてもよろしいでしょうか?
幾つか……迷宮で狩った魔物の素材と、用途は不明ですが魔道具が一つ。
加工は……、んと……まだわかりません。専門の者の意見を仰ぎ検討するつもりでした。
あ、えっと……毛皮は、武具になりますか?」
優雅な所作で返され恐縮しつつ、少しの逡巡を挟んで。
手元にある素材で何を作れるか、何になるかもよくわからず。まずは品を見てもらうのが手っ取り早かろうと。
■リス > それもあるのだけれども、それよりも、リスには、認識阻害は聞かない。
竜の目は、嘘を看破し、真実を見抜く、魔力を、霊視を行う目なのだ。
そういう意味で言うなら、彼女のような存在の大敵、ともいえる目を持っているのだ。
それと匂いでも。
とはいえ、それを見抜くのが趣味でも何でもない、ただ、出来るというだけのこと、でしかなかったりする。
宝の持ち腐れ、ともいえる。
「ふふ、様、なんてつけないで欲しいわ。
私は、えらいわけでは無いのだから。
今でも苦労はしてるけれど。
ええ、篝さんにも、お願いするわ、あの子は、未だ10歳。
本当に、子供なのよ。」
トゥルネソルの娘達、特に、リスとの娘たちは、クオーターだからか、見た目と外見が伴わない。
しかし、リスと、妹の竜胆、ラファルは、見た目と年齢が合致するのだ。
だから、見た目通りの年齢だから、そういう意味では、彼女の方がお姉さん。
先に生まれた人として、人の最低限のを、教える事は出来るだろう。
「ええ、良いわ。
其れであれば、ここでというのも。
お店に戻りましょうか。
鑑定も、お金を貰えればしてあげられるわ。
加工に関しては、そうね、私は専門では無いから。
仲介自体は出来るけれど、という所ね。
あと、毛皮なら、多分武器にはできないと思うの。
強度のある皮なら、なめして防具に、若しくは服や、手袋や帽子、靴にマントに、という感じ、かしら。」
流石に。
何が作れるか、と言う物は、見てみないと分からないが。
毛皮という物品を聞くなら、これならいけると思うと言う物を幾つか。
とりあえず、往来で荷物を広げるのもあまり良くないので。
お店に行きましょうか、と、篝を手招く。
後ろにあるお店は。
レンガ造りの4階建て、竜が出たり入ったリスぐらいに広大な土地の。
いわば、砦、と言った大きさの、商店である。