2025/10/13 のログ
軍鬼 > 「――客人、というか。その名を呼ぶのは姉君か。
この空気はいくら人ならざる身でも辛い物だろう?」

瘴気と毒素が入り混じる待機。並の冒険者では足も踏み入れない場所。
並の鳥類では立ち寄る意味もない場所。
それが故に仄かとはいえ桃を思わせる甘い空気というのは鬼の鋭敏な感覚に良く届いていた。
もちろん、その声も同様。以前に教えを説かれ道を増やした相手だ。忘れる事あらば人の道にも鬼の道にも外れよう。
閉じられていた眼は開かれ、釣目の筈の目尻が僅かな柔らかさを宿す。

「邪魔と言う事は無い。これで気が乱れ崩れる様ではまだ未熟という物。
いやこの姿勢は失礼かもしれんが。そこは、まぁ。」

宙に浮かぶ――実際には空を蹴る事で浮遊している“姉”と呼ぶ相手。
先日の様に何かの欲に取りつかれた様な様子もなく、目礼と言葉を向けている。
用件を聞くでもなく、用件が無くとも会えれば嬉しくも思う。
鬼でも仙人でもないモノだからこその中途半端ともいえる挨拶と目礼だった。

「その視線から察するに。……失敗した場面を視られた、か?」

桃花 > 「もちろんそこそこには辛いとも。
ただまあ、可愛い"弟"に会いに来る分には我慢できる程度じゃ」

呼吸によって毒と瘴気を弾いてはいるものの
吸い込む空気自体に毒が含まれていれば多少なりとも影響はある

ただ、その程度が障害になる関係ではないだろう、と笑って
この二人には血縁などは無いが、姉と慕われれば些細な事だ

そうして、話しかけても良さそうであれば笑って話を続けよう

「ああ、見ておったよ。だが失敗は付き物じゃ
むしろ、その凶悪な力をよく制御しておる」

乱れこそ生まれていたが、吹き荒れているというほどでもない
よくあの衝動を受け入れているものだと逆に褒めよう

「何、好きなだけ続けるがよい。儂も良い機会じゃし、隣の山を借りるとしよう」

剣山のように並ぶ尖った岩山群
弟の隣の山に降り立てば、同様に指一本を尖った山に付けて逆立ちを始める
す、と生命としての桃花の気配がほぼ無くなり…無機物のようになっていく
指先からつま先までは継ぎ足された岩のようにぴんと伸び
抑えられてもいないのに、ドレスの裾も翻らないままであった

ある種、見とり稽古にもなるかもしれないと、僅かに笑みを共に修行をしよう

軍鬼 > 「穢れ交じりの空気なのでな。業を修めるには役に立つ。
弟と呼ばれるのはまだ、些かに乱される物はあるが。」

ほんの僅か気の緩みはあれど気脈を通じさせた相手だ。
陰に陥らず適度に陽を心に取り入れるには良い機会とも言えた。
角の先端は岩肌に突き立てられているようで、薄い膜の様に気を練り続ける事で角も岩も傷つけずに肉と己の精神を。
己そのものを一本の鏃や樹木の様に動かさずにいた。

血の繋がり以外であろうと。自らが認めた姉という存在なら温厚な接し方になれる程度には落ち着きを見せている。
先日の一件もあり全ての欲がある程度以上に落ち着きを見せているのだろう。
桃の果実以外にも糧を得ているが、それも略奪したようなものではない。
陰陽の天秤も傾くことなく、その左右の瞳の紅蒼の輝きは静かな物だった。

「――刃を向けられたり、拳。牙。殺意。敵意。これらが向けられた時には解らんがな。
少なくとも独りならば乱れる事は少なくなった。
気を許せる相手がいるならば猶の事。」

からからと笑う。前はここまで笑う事も穏やかに言葉を紡ぐこともなかったが。
少なくともあの出会い以降は悪くない方向へと舵を切っている様に思える。
指に掛かる岩の圧は指の皮膚を喰い破り、真人なれど肉をも貫かんとその穂先を鋭くしている。
けれど“姉”は自分よりも先を歩む程の修練を修めているのだ。
自分の様な下手を打つこともないだろう。
互いに世界をさかしまに見つめながらの修行を行いつつも声は続いて紡がれる。

「桃、美味だったな。酒が溢れ返るほどに滴り、手や足についてしまったものまで舐めてしまった。
月に1つ。自らの鬼が出張る前に食すれば楽に抑え込めるかもしれんが。
……ここにこうして姉君が顔を出せると言う事はシェンヤンは平和か。」

ここで修業をしている理由のもう1つはこの土地自体にある。
毒と瘴気。土地に封印されているモノが目を覚まそうとしているのか定かではないが、少なくとも予兆の1つと言える。
生き物が忌避する土地だからこそ自分の修行場所としてはうってつけなのだが。
僅かに曇るのは先日の出会いの場を思い出したからこそかもしれない。
言葉を切り目に宿すのは。人であれば心配というべき言葉が近いのかもしれないが。

「――この瘴気を吸っても平気、か?」

桃花 > 「なんじゃ。恥ずかしがりじゃのぉ
ふふ、甘えられる口実と受け取っておくが良い」

良い方向へ進んでいる弟
他の影響があればまた堕ちてしまうかもしれないが、その時は拳骨でも食らわせてやるまでだ
それが姉の役割だろう
自分を貫こうとする岩山。それを受け入れて自身も岩山の一部となる
無機物が話すという矛盾を抱えながらも、穏やかな会話を続けよう

「おお、そうじゃろ?
役に立つなら桃はどんどん食うが良い。儂が生きておる内は生るじゃろう
…あぁ、事件はあったが一応は小康状態じゃ
鬼も妖も均衡を保って居る」

大妖や大鬼などは今は現れていないが
それは良いものだけが多いわけではなく、悪さをする妖も居て均衡が保たれているということ
良いものばかりでも、世は歪んでいくから
とある事件はあったが、今は問題ないと判断しているようだ

「ん?言うとるじゃろ。本来なら平気ではない…が」

徐々に徐々に…人と比べれば牛歩のようだが、瘴気は効いている
3日ほどいれば倒れる、という程度だがそれでも損傷は受けている
ただ、次の瞬間…ぽ、と彼女の腹に紋様が浮かび
周りを覆っていた瘴気が真人に取り込まれずにその周囲に循環し始める
弾くのではなく、遠ざけながら循環させて…取り込まないようにする術式のようだ

「…ふむ。この程度の瘴気なら効果は十分か…。
ああ、これはお主の呪いを避けるための術じゃ
まだ試しに作ってみただけではあるが…蓬達の希望となるかもしれんものは、見せていかんとな」

以前に採取した精で試して、弾くことに成功はしたものの
実際に効くかはまだわからない状態だ
装具ではなく、身体に刻んだ紋様によって発動するタイプの術である
目標、あるいは希望があれば修行のモチベーションにもなるだろうとその術を披露している

軍鬼 > 「恥ずかしがるのとは違うんだがな。経験が無い事象に心揺れずに応対出来る域に届いていない。
……姉君の纏う空気とそこから流れる風は、身を委ねたくもなるが、それは互いに望む物ではないだろう。」

甘えてしまえばそこまでなのだ。それは自分も相手も望む物ではない筈。
鳥が宿木に止まるのは羽を休めるひと時のみ。鬼も同じだ。
休み、方角を定め、羽ばたき方を覚え飛び立つ存在。
稀に羽を休める為に語らうもよし、ふらりと立ち寄るのもいいだろうが。
甘えるために、それらを行うというのは明確に目的が異なってしまう。

岩山の一部となる“姉”は姿勢のみならず、気脈が見事に地脈と地を這うように流れる龍脈とも合一している。
言葉を口にしながらその乱れを見せることなく。腹部に僅かだが気脈の新たな流れが生まれ何かしらの紋様が浮かんだ――様に思う。
完全な知覚ではないが岩山と自らが気脈を完全ではないにしろ通じているからこそ、何かが起こる事はつかめていた。

「面倒見のいい姉君だな。
瘴気は外殻に流し自分の一部として取り込める範囲でのみ取り込む。
取り込み切れない分は今の姉君の様にそれを外殻で循環させ、取り込み、排出を繰り返す、か?」

術式は正確な把握とまではいかないが、概ね以前の話と合わせればその形に近い物と思える。
瘴気を毒素を己の中にある鬼の一部として受け入れる事もまた必要なのだから。
く、ふ、と。驚いたように。けれど敬う念を持ったかのような吐息が口元から漏れ出ていた。
見た目は年下の少女なのだが――その実、底が見えぬほど深く。
懐もまた広い。飛び込んだ相手の悩みに付き合うその生真面目な一面も眩く。そして陽を思わせる存在感を覚えてしまう。

「――敵わんな、姉君には。」

その呟きは喜怒哀楽の喜と楽。陰鬱な鬼が嫌う部分を十分に含ませた声音だった。
空に分厚い雲がかかるも僅かな切れ目から月の明かりが姉を照らす。
――見た目ばかりに目が行くが。彼女の本質。本当に素晴らしいのは内面なのだろうと、今の自分なら認識出来ていた。
だからこそ邪な輝きを帯びる事もなく。その眼は穏やかな輝きを崩さず、その扇情的ともいえる姿勢を目にして肉欲に支配される事もない。

桃花 > 「うむ。確かに
…克服出来た後も甘えてしまっては、勿体ないしの
蓬達ならば、世を渡り歩き、好きなだけ旅をすることもできよう」

今はまだ不安定に見えるが、それを克服すればもっと広い世界があるのだと頷く
頼られること自体は嬉しいことだが、成長を阻害してはならないと考えを改めて
そうして試作の術を発動すれば…山に籠る程度の瘴気は今のところ問題ないことを見せよう

「そうじゃな。よく観察できておる
加えて、ある妖魔の体液の情報を基に防壁も作っておる
媚薬等々…様々な性質に変化する液体故、お主の呪いにも適応しやすいじゃろう」

呪いを取り込んで合一するように作ってあると付け加える
完全に効力を発揮するかは何度か試してみる必要があるだろうが
万が一、循環術式が上手くいかない場合の安全装置である
変化する性質を持つ相手の呪いを最悪の場合、受け止めるための工夫であった

「今のところの問題は、儂の呼吸から得られる力で動かしておるから…
呼吸が完全に止まると消えてしまうことか。気を付ければ問題ないがの」

耐久性などは別として大本の力は彼女自身から提供されている
それ故に、弱点も気功と同じである
そこさえ気を付けていれば、ある程度は効果が見込めるはずだ

「これで…万が一お主の欲求が高まったとしても受け止めてやれるぞ♪
あとはまあ儂も、交わることに忌避は無い故求めることはあるかもしれんが」

陰陽のバランスを取るため、というのもあるが…以前の口淫といい、微妙に色ボケではあるのだ
まがりなりにも下位の仙人とも言える立場でそれはどうかというものではあるが、これが桃花という真人であった

軍鬼 > ごき、という奇妙な音が鳴ったのは最後の言葉が聞こえてきた時だ。
目に見えて動揺する程度には合一は崩れ、角が岩肌に突き刺さり先ほどまでの安定していた気の流れが乱れているのが手に取る様にわかる事だろう。
それでも首にかかる負担に肉体が負ける事は無く、異様なほどに発達している筋肉の鎧が首の骨を守り、肉体全体の崩れを防いでいる。
そしてまだ均衡がとれている為に陰陽の乱れは生じていなかった。
ここは先日の真人との一件以来で成長した、と言っても良い部分と言える。

「ん”ん”。姉君。今は行と業を修める段階。
まったく。鬼がその気になれば姉君とて無事に済まないというに。
求められれば応じるが、嵐の様に狂う際には――【俺】じゃなくなるかもしれんからな。
大鬼は狡猾でもある。違和感を抱いたなら、その時は――。」

言葉を区切る様に口を結んだ。
いかんせん自分の中の天秤は余りにピーキーだ。今の様に安定を保っているならともかく、片一方に偏ってしまえばその性質。
封印されているはずの大鬼の血により自らが狂えば先日よりも酷い事態に。相手が追い込まれてしまう可能性もある。
とはいえそこで心配をするのは相手を信用していないのと同じだ。
だから言葉を探す様に逡巡し、瞳が僅かに泳いだ後に。
山椒の実を齧った時の様に、苦みを覚えた時の様に口元を歪め、こう口に出す。

「姉君の拳で【俺】の性根を叩き直してくれ。
逆の立場になっているときは俺が姉君の頭を小突くとしよう。」

桃花 > 「ふふ。まだまだじゃの、弟よ♡」

ぱちり、とウィンクしてみせる真人
気の乱れを感じるも、大変なことになる予兆は無い
ならばからかう程度は問題ないだろう

それはそれとして、岩山から地を伝い…気脈を通して弟の岩山へ気を通し
乱れを調律する手助けはしよう

「…。そうじゃなぁ…対策を施したとはいえ…かつての仙人をも孕ませた大鬼じゃ。今の儂では負けが濃厚
それ故に、お主には、大鬼を受け止めるための器を鍛えてもらっている状況じゃ

ただ…うむ。知らぬ間に乗っ取られ、どうしようもない時は叩きのめして正気に戻そう。約束じゃ」

負ける確率の方が高いとわかっていながらも約束をする
それは、真人としての誓いである
例え結果としてかつての仙人と同じ道を辿ろうとも後悔はせず
全力を持って戦おうと

「はは、そうじゃな
もし儂が更に淫らな姉になっておったら、小突いてくれ
その大きな拳なら、よく効くじゃろ」

からからと笑う真人
話ながらの修行もまた良いものである

「―――なに、気にすることは無い
儂が勝手にお主を気にかけておるだけじゃ。お主には、何の負い目も無い
ま、儂が…大鬼を刺激するに足る美貌であることは否定せんしの♪」

真剣な声音から軽い声音に変化していく
そうして器用にも、空いている片腕でピースを決めて見せる真人
最後は場を和ませるための冗談である

軍鬼 > 岩肌に突きさしてしまった角。
刀が同一化しているために想像以上に深く突き刺さってしまっている。
自然の岩でこれなのだから、やはりまだまだ人との馴れ合いや交流というのは二の足を踏むのが現状だった。
立て直そうとするように体と気脈の流れを調整しようとすると、まるで自転車の補助輪の様に自らの気脈。
陰陽整え、揺らぐ天秤の中央をしっかりと支える支柱の様な気の流れの優しい手。

ウィンクには恨めしそうな視線を向けるも、そこに暗い輝きはなく軽口を叩き合える相手という信に崩れる様子は無かった。
まったく、と。自分の魅力を正しく理解していることには安堵した。
美貌は言うまでもないがその心こそが人を、鬼を、悪を引き寄せかねない諸刃の剣でもある。

「姉君の拳は痛みよりも重みが違うからな。
いかな大鬼の血でも脳を物理的に揺さぶられれば流石になりも潜めるだろうさ。
どこまで大鬼を受け止めきれるか。クソったれの一部が己だと自覚すると、その鬼の血(クソ)がまだまだ俺の器では収まらない。
溢れ出る事が自覚できるのが面倒臭い。」

自覚したなら自覚したで、安定感は得られたが反面その重みを知ってしまう。
器を広げ、器を鍛え。
鬼の血(クソ親父)を受け入れきれる器の広さと深さを手に入れられるのはいつになるか。
その重みに底が抜けない様に己を鍛え終えるのは何時になるのか。
先は長い、が。

「しかし、器用な物だな。」

長い道だとしてもその道筋から外れようとすれば今、この岩肌から自分を手助けする姉の気脈。
最低限であろうと、そこには確かに温もりはある。
独りではない事の強みは、この温もりなのだろう。
ぴーす、というものは知らなかった。中指を立てての挑発ならば覚えていたが、そうではなく2本の指を開いている。
その姉の仕草と表情。声音から、それは中指を立てるのとは全くの別種、敵意ではなく違う物を示す事だとは伝わってくる。

「む、こう、か?」

中指と人差し指。それを開くようにしようとすると、たまに薬指がピクピクと動くのはピースサインに慣れていない証拠。
不格好だが、そのぴーすさいん、とやらを何とか返す。その最中に悪戯を覚えた童の様に目線を移す。
いやらしい意味ではなく、少し離れた山中。真人の目であれば木々の隙間から湯気が立ち上るのは見える筈だ。

「姉君も風呂に入っていくか?背中くらいは流すさ。
陰陽を昂らせず、崩さない修行に付き合うつもりは?」

要は姉を持て成す手段を準備していなかったのだ。
せめて、語らい。その心に安寧を齎す相手にせめてもの報いを。
鬼しか知らぬ秘湯があり、そこに彼女を案内しようという物。背中を流す、というのは方便のつもりだ。
風呂は――天然の極上露天風呂。
木々は彼女の仙境のものよりより霊木として成長しており、その霊木からの恵みが湯船に溶け出す代物。
薬湯としてもとびきりの効能があり、世間一般で言われる美肌効果、とかもけた違いなのだろう、おそらく。

「行水をして岩の上で寝る。
この業をもう数日、続けるつもりだが。姉君も真人としての立場があるだろう?」

長くこの場に留まらせていい物かどうか。それを考えた上での提案だった。
行水をしても不埒な行いや気の揺れ方を見せなければ姉にも一つ。あの時のお互いの出会いが無駄や無意味になっていない事を伝える事になるだろう。
それはきっと――辛い物とかではない、と信じたい。

桃花 > 器用なことをしながらも、その視線は揺るがない
意思を強く持ちながら相手を慈しみ、手助けをしようとする視線だ

「ふふん。その時はとびきりの拳骨じゃな
――自覚できておるのなら、最初の一歩は既に踏んでいる
ならば、進むことに何のためらいもあるまい?

心配するな。前も言ったが、百年でも二百年でも付き合うとも
二の足を踏むなら、背中を蹴っ飛ばしてやろう」

自覚が無ければ、まずそれがどういったものかも正確にはわかるまい
ならば、クソだと分かっており、どの程度なら溢れるのかわかるのであれば…逆に進む方向はわかりやすい
一人ではないのであれば、幾分か気が楽だろうと付け加えて

「そうそう、合っておるよ。このポーズ、村の娘がたまにやっておるのだ
可愛らしいぞ、蓬達。…む?ああ、そうじゃな。せっかくじゃし、ゆっくりしていくとしよう」

関りは深くしないが、守護する関係上見守っていることがある。その時に学習したのだろう
そして自身の守護する領域で何かあればすっ飛んでいくだろうが、今のところは何もない
神泉ともいうべき湯船は確かに身を浸したいものだ

「もちろん、そうじゃな。いくら聞こえるとはいえ、長く仙境を空ければ山のバランスが崩れる
ただ、こうして様子を見に来る程度なら、問題ない故…一度帰っても、度々来るからの」

風呂の誘いについては快諾した後、相手の気づかいに笑いかける
心配というわけでもなく、純粋に楽しみなのであった
強大な鬼を受け入れるためのひたむきな修行。それは好ましいものだ
事実、前回と比べれば…芯が太くなった印象を受ける
それはまだまだ鬼を受け止めるには細いものだろうが、着実に進んでいる

「よし、善は急げじゃ。行くか、蓬達」

軽く指に力を入れれば、岩山を崩すことなく宙に跳びあがり、くるりと一回転
先ほどと同じように宙を蹴って、段差を降りるように霊木の狭間、天然の露天風呂へ向かっていこう
着けば早速とばかり…下着も付けていないチャイナドレスを頭からぽい、と脱ぎ捨てて
あまりにも色気のない脱ぎ方で裸体を外気に晒そう

軍鬼 > 「言っておくが覗けば潰すぞ。」

それは鬼の頭領としての号令である。
鬼のすべてがそうではなくとも、色目を使って姉を覗き見る鬼は居る。必ず。
その為に釘を刺す様にぼそっと小さく呟くだけで十分。
少なくとも自分の息がかかった鬼は覗き見たりしないだろう。多分。
姉に倣うように自らもピースサインをした指で岩の折れた切っ先部分を指立伏せの様にしてゆっくり岩肌から角を引き抜いていく。
その後で姉と比較すれば幾分かは力に任せた形で岩肌から指だけでとび上がり、地面に飛び降りた。
勢いを殺す事はまだまだ未熟。ずしん、とその巨躯を支える大きな足の裏が地面に根を張る様に沈み込み、僅かだが岩山の表面が揺れ、ぱらぱらと小石が落ちてくるあたりは、本当の意味で合一までは至っていない事を示していた。

「そうか。――今日は湯の紹介しかできんが。
今度は山の幸でも集めておくとしよう。姉君が来るなら……って早い!
落ち着け姉君、湯船はまだもう少し先で――あぁもう脱ぎ散らかすな!」

衣服を慌てたように地べたに付ける前に空中で掴む。
何より瘴気や毒素でけがれた土地で全裸になるとも思わなかった。
鬼への号令が遅れていればその女性として見た目の年齢からは考えられない程豊潤に実った肉体は鬼の視線にさらされていた事だろう。
その衣服を掴むが、畳むと言う事を知らないので皴にならない程度に丸めるのが精いっぱいだ。

そうして姉と風呂にて背中を流し。湯の中では久方ぶりなのだ。
話題には事欠かないだろう。
瘴気と毒素を洗浄できる薬湯が穢れを落とし。
そして真人はまた仙境へ。鬼は岩山へと戻るのだろう。

「――姉がいるのは。こうも楽しい事になるとは思わなんだ。」

独りに戻り、修行に戻った時に口に出した言葉。さてそれは真人の耳に届いていたかは鬼すら知らない話になるだろう。

桃花 > 当の姉は覗かれたとて気にしないし、一緒に入るか?などと言いそうなものだが、それはそれ

弟の号令を受けて周囲の鬼が大人しくなればくすくすと笑う。本当に、敵対を続けなくてよかったと思う
未だ"大道"との合一には至らぬ身。
けれど、頑張り屋の弟を手助けするくらいはできよう

「楽しみにしておるよ。
――おっとと、なんじゃ?何か悪い事でもしたかー?」

けらけら笑いながら、全裸で温泉へ向かう
もちろん、その身には先ほど見せた術式が巡っているため、瘴気の影響はほぼない
とはいえ、野外で躊躇いなく服を脱ぎ散らかす様はだらしのない姉の様だろう…
悪びれるそぶりも無いのがまた性質が悪い

そうして体を湯で解し、元々滑らかであった肌が更に艶やかさを増す
十分に英気も養い、弟の今も確認できれば、そのまま仙境へ戻っていく
その頃には距離も離れているため、呟きまでは流石に拾えないが、姉もまた同じ気持ちであっただろう

「あやつの成長は楽しみじゃ、本当に。
さて、儂も気張るか…!」

人の守護という役目を持つ真人は、己もまた合一を図るため
陰陽道、仙道、そして気道の修練に励むのであった

ご案内:「九頭龍山脈 山中」から桃花さんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山中」から軍鬼さんが去りました。