2025/09/28 のログ
ご案内:「メグメール街道沿い 川辺」に枢樹雨さんが現れました。
枢樹雨 > 三日月の仄かな灯りが照らす、街道からほど近い川の畔。
夜風にゆらゆらと揺れる彼岸花が、夜闇に妖しい赤を添えている。
その傍らにしゃがみ込み、細い指で赤を擽る妖怪。
真っ直ぐに伸びる茎から花へと繋がるカーブを、まるで猫の顎を撫でてやるように優しく引っ掻いては、長い前髪に隠れる双眸を細める。

時折吹く風は、秋の気配色濃い涼やかなもの。
頭上の白絹揺らすそれに目線持ち上げると、鋭く弧を描く月が夜空に浮かんでいるのが見える。
主張しない其れの周りには数多の星が煌めいて、澄んだ空気を伺わせており。

「……そろそろ、単衣の着物では心許ない。」

川のせせらぎに重なる、小さな声。
夜空見上げていた視線は己の腕へと落ち、青磁色の着物の生地を見つめている。
襦袢も絹のものに戻そうかと、とりとめのないことに思考を巡らせて。

枢樹雨 > 「雪降る頃には、羽織も欲しい…」

右の手が、左の二の腕を撫でる。
いつになったら終わるのかと、辟易していた夏の終わりがやって来た。
色づく山々を、秋の味覚を、堪能した後に待つであろう雪の気配。
昨年の雪景色を思い起こすよう瞼閉じれば、再び吹いた風が頬を撫でていく。

この国へ来て、肉体を得て、経験する二度目の冬。
四季を一巡りし、最も好むは冬と知った。
故に待ち遠しさを感じながら、指先で触れるままの彼岸花を揺らす。
じき、花を落として葉を見せるであろう彼岸花。
もう少し早くに此処を訪れれば、一面の赤を見ることが出来ただろうか。
閉じていた瞼持ち上げ思うも、詮ないこと。

ゆっくりと立ち上がった妖怪は、ぽつりぽつりと咲く彼岸花を辿るように歩き出す。
そうして気が付けば、その姿は川辺から消えていて―――…。

ご案内:「メグメール街道沿い 川辺」から枢樹雨さんが去りました。