2025/08/04 のログ
ご案内:「王都狭間地区」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ >  
 やや蒸し暑い夜だった
 湿り気を帯びる空気 乾いた足元
 数日前の雨を吸いきってから、見えない内より淡く噴き出し続けるかのようなそれ。

 王都内 メイラは狭間地区にて夜の通りを散策している。
 護衛も供回りもいない。
 ただ一人、手袋丈で帯びている鋭い黒鉄の五指と履物の表面を覆う蛇腹
 靴のざらつく足音と混ざり、薄く重なり合う装が触れる音を出す。

 おおよそ忍ぶ装いではないままの一人歩き
 まるで一人でいること 此処にいることを隠しもしていないかのように、狭間地区の半端な賑わいを眺める形。
 メイラの腰は大刀が二種差し込まれており、左の五指は、灰色の菱巻にされた柄頭を包むようにして握り
 その手首から肘の腕を預けるようにして重心はやや左に傾くか。
 右手は遊ばせるように、だらりと下がったままだ。
 どこかの店にでも入るつもりでいるのか それとも、ふらふらと今だ歩いて目的も定まっていないのか。

メイラ・ダンタリオ >  
 ―――少し間をおいて

 狭間地区の半端な色合い 半端な境界線
 半端な騒動 半端な暗がり
 色づく場所と色落ちる場所は富裕地区と平民地区ならわかりやすい。
 どこが長く明るくて、どこが早く暗くなるのか。

 今は、その半端な暗がり
 目を凝らせば色は暗くとも形ははっきりと見える。
 不意を打つには明るくて、正面から対峙するには色がない。
 そのような雰囲気の中でも、剣花(剣撃の火花)は良く映える。

 銀、と互いの鋼打ちの剣が重なり合う。
 数人の直剣持ちと打ち合うメイラの姿は。剣を重ねるごとに出す剣花の明るさでその端々
 黒基調の衣の線が 赤い瞳が 白い杭歯が見える。

 互いにどちらが押している、という状況ではない。
 ただ片やメイラを殺そうとそれは仕事をこなす冷淡な貌か
 それとも焦れて手を出してしまった獣のような貌にも見える。

 メイラはぎらついた赤い瞳 ギザ歯の噛んだ境目から、ふしぃ、と息をこぼし
 右手に反りがややキツイ、圧を感じる刀
 左手に白い摘み巻の貴族が所持するような刀を握る大刀二刀持ちで抜き身を下げる。


   「―――どうせなら決闘でも持ち込みなさいな どこの肥え豚(貴族)にされたのか。
    心当たりがありすぎてわかりませんわね。」


 言うや、互いにまた足をバネのようにして間合いを詰め
 怪力二刀持ちと弾きあう最中に入る。

メイラ・ダンタリオ >  
 月明りも半端な雲がかかり 街明かりも半端に消え
 この空間も半端な暗がりとなっている中で、半端な殺し合い
 剣戟を続けているということは互いの一手が決まらず、またメイラも決めにかからないということ。

 言葉を重ねてみても、何も謳わない様子ならもういいとばかりに、抑え込んだ一人の鳩尾
 靴裏で蹴り飛ばすようにして壁に叩き突けた一打。
 一人がまず間合いの外へ消えた。
 もう一人に対し、左で握る刀が受け止め刃軋りをする。
 握りこむ握力 (かいな)の力
 ひたすらに抑え込むようにして上から力をかけるようにするのなら、もう一つの右
 握る灰色染めの菱編みの刀が上段から抑え込まれたまま振り落とされる。

 わずかな固い感触。
 口の中で肉を食み、柔らかい軟骨をかみ砕いたかのよう。
 剣を断ち、肩に食い込んだそれがまっすぐに線を縦に埋まるのなら、肺の下まで通り抜け
 刀が過ぎ去った後で血が噴き出す。

 刀の極みなんて至れるはずがない
 怪力棒振りが似合う剣術に、刀はむしろ合うわけがない。
 自分勝手な刀が二つ揃っているせいで叶う結果のように、膝から落ち背が地に倒れる姿。

 最後の一人 断った剣の先が落ちてくるのに合わせ、蹴り飛ばすようにして礫の嫌がらせ。
 弾いた瞬間を狙うようなぬるりとした間合い詰め。
 黒い衣をまとうメイラなら、赤い瞳だけが際立ってまるで煙か影のように。

 刀が右で合わされば、食い込み始める刀の刃。
 間合いを一度取ろうとするのなら、刃を振るわずまるで付き纏うように 
 足だけを軽やかについていかせて間合いを開けさせない。
 足を止めたところで、再び深く腕を落とす。
 まだ剣が保つ様子に、メイラは左の刀を右の刀の峰
 其処へ叩きつける形で強引に斬り落とす。

 剣は半ば 腕は落ちた姿で間合いを取ったそれが逃走していくのを見届けながら、カキッと歯を鳴らした。


   「―――全く、闇討ちされるのも久しぶりですわね。」


 二刀の血糊を振り掃い、くるりと手の内で回すそれが鞘へと収まりながら躯と落とした腕を眺め。
 放置したところでこっそりと処分されるか、これらの懐と装備を漁る阿呆が出てくるかだけか、と
 そのまま任せるように明るい方へと戻ろうか。


 

ご案内:「王都狭間地区」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。