2025/07/05 のログ
ご案内:「調理場」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 真夏の暑さに辟易して、今日も今日とて謎空間におこもり中。
虚無の中に浮かぶ水泡のような、現世の虚。
外側からの観測者不在ながら、仮に居たとすれば球体を成していようか。
斯様に特異な場とて、内側は現世を模倣しているようで。
社殿、または北方帝国辺境の古の貴族の館を模した建築物が佇んでいる。
もっとも、真っ当な場所でもないのは確かで、御簾一枚挙げて進むだけで、
床張りの廊下から、脈絡なく調理場へと移動が叶ってしまう。
つまり、ここだ。

「魚を釣り上げたのなら、美味く肴にしてヤるのが慈悲というものじゃろう。

その為の支度で手を抜いてしもうては、儂とて憐憫の情を抱かねばならぬ。」

細部はインチキながらに北方帝国辺境風の建物の中、そこだけは王国風だったりするちぐはぐ。
どの道、職人か使用人が出入りするのが相応しい場所に、
上等な浴衣に袖を通したちんまいのが居るのは不釣り合いな光景だっただろうか。
その癖、無駄に手際が良い。
ふんふんと鼻歌を漏らしながら、戸棚をぱたんぱたんと開け閉め。

「道具の類は清め終わって曇り一つなし。

多少癖が強い”魚”用のスパイスも…嗚呼、アレが少なめじゃから後で足しておかねばな。」

と、傍から聞いていれば、腕を振るう為の事前確認のように聞こえるのだろうが。
淫具(どうぐ)だし、オクスリ(スパイス)だしで碌でもない。
王国内に針が蒔かれた釣竿に何かが引っかかるのを待っているのか、
既に釣り上げた”魚”が居るのか。
どちらにしても、調理される側は不幸でしかあるまい。

ホウセン > チリン…と、どこかで鈴が鳴った。

釣竿の先に取り付けたものか、はたまた”生け簀”から魚が逃げようとしたのを知らせるものか。

「さぁて、どうしたものやら。」

思案するような口振りと、唇を緩めた薄い笑みを伴ってこの場を後にし――

ご案内:「調理場」からホウセンさんが去りました。