2025/06/07 のログ
ご案内:「王都富裕地区/ティーホール」にベアトリスさんが現れました。
ベアトリス > 富裕地区にある、落ち着いた佇まいの喫茶室。
お茶だけではなく、珈琲、水煙草等、客の要求に応える自由度が高い店舗の、そのテラス席の一つで静かに午後のお茶を嗜む一人の女。

小振りのポットとカップがティーテーブルに用意され。
今日は軽やかな味わいと華やかな香りの春摘を楽しんでいるのか、淡い色身がカップの中でその水色を揺らしている。

「────……」

ほ、と一息満足そうについて、手持ちの書籍のページを静かに手繰る。
内容はすでに幾度か読み込んだものだが、寛ぐのが主眼であれば内容もある程度は分かっているほうが気楽に文字を追うことができた。

ご案内:「王都富裕地区/ティーホール」にファルスィークさんが現れました。
ファルスィーク > 王城より富裕区にある己の屋敷へ向かう為に徒歩での移動は、王侯貴族には珍しい事なのだろうが己にとってはいつもの事ではある。
この時間帯になれば、行きかう馬車や馬の数も少なくなるようだ。
他の地区と比べて閑静な佇まいに変わりはなく、日差しもさほどきつくはないので散策には丁度いい。

そんな中、趣のある喫茶店を愛用している者も多いとか……時折、耳にする店名は、目を向けた先の物と一致するので、そのまま足を進めていけば目に入るのは見知った女性の姿でもあり―――。

「久方振りにお目にかかるが、変わりないようで何よりだ。
くつろいでいる午後の一時、少々、お邪魔してもいいだろうか」

女性に声をかけながら被っていたフードを上げつつ……了承が得られるのであれば、向かいの椅子を引いて座るつもりではあるのだが。

ベアトリス > 頁に視線を落としているとはいえ、そこまで集中しているわけではない。
集中するのなら、それ専用の場所へ赴くか、突き詰めてしまえば自室でいいのだから。

程よい喧騒が過る中、埋没する己自身。そういったものに安堵を得る時間───だったのだが。
駆けられた声音に頁を繰る指が止まる。

王城の外で顔を合わせる、というには少々特殊な立ち位置の人物に視線を上げ、わずかに双眸を瞠った。

一度気持ちを落ち着かせるように静かに書を閉じ。

「ええ、もちろん構いません、殿下」

若干の間を含んだものの、フードから顔を覗かせる相手へと目礼を返した。
断る理由もとくにはなく、だからこそすんなりとした応答を返し。
対面に腰かける相手が落ち着くのを待ってから呼び鈴を手に、何か頼むかを問うだろう。

ファルスィーク > 普段から業務に熱心である生真面目な女性であり、執務服をきっちりと着こなした姿を目にすることが多いので、今の服装は新鮮ではある。
雰囲気は普段よりも柔らかめに感じたのも其の為かも知れない。
そんな風に観察していた所、不意であったらしく驚きの感情を湛えた女性の瞳を見て己の方は少し目を細めて笑った。

「良い休日を過ごしている所、驚かせたようですまない。
普段の執務服もに合っているが、今日の服装は……普段の卿が垣間見えたで新鮮だな」

了承の返答に己も目礼を返し、腰を下ろす間に給仕を呼ぶ軽やかな鈴の音が聞こえれば、改めて礼の言葉を述べる。
いつもより、肩の力が抜けているように感じるのは、勤務外の私的な時間であるからなのだろうと眺めつつ、給仕が来ればオーダーするのはエスプレッソを。

ベアトリス > 相手の推察通り、余暇の時間なのは間違いがない。
休日の、それも散策の時間に官服へと袖を通すのもおかしな話だ。
或いはどこかにそんな奇矯な人間がいるかもしれないが、それはともかくとして。

普段より幾分は軽装の己への言葉に視線を自らへと向け、少し困った風情を覗かせる。
だれと会う予定もなかったから、確かにシンプルな格好ではある。

「問題はございません……が、少々驚いたのは事実です。
───普段着ですので、多少お目見えするには不釣り合いかとは思いますが、ご容赦願えれば幸いです」

そ、と瞼を伏せ言葉を返す。
堅苦しさを相手が好まないとはわかっていても、その線引きが必要なのは己の方。
とはいえ、今この状況で畏まりすぎてもあまり意味がないのは分かっている。
身を落ち着けた相手が、給仕に注文したのに軽く頷いて給仕をうながし。

「殿下は──、気まぐれな散策といったところでしょうか」

普段とそう変わらない相手。
華美な装飾を見に帯びるわけでもない相手ではあるがその立ち居振る舞いなどはどこでも臆したようには見えず、泰然とした姿。
そしていつものローブ姿であるのを観察しながら。

ファルスィーク > 散策する為に歩いているのと、腰を下ろして座っているのとでは、多少なりとも見える景色も感じる空気も違う。
茶を嗜む場所であれば雰囲気も変わるのは当然ではあるが、加えて目の前に美女が居れば尚更でもある。
気温は夏に向けて上がり始めている季節であれば、外套を纏っているは見ている方も暑苦しさを感じさせてしまうかもしれないのは申し訳ない所ではあるが。

「容赦も何も…私からしてみれば眼福だ。
よく似合っているし……私の方が不釣り合いに見えているだろう」

普段着からきっちりとして貴族の令嬢とした雰囲気を感じさせる女性と相対している己の方が、席を共にするには似合わないだろうと首を軽く横に振り。
元より、礼儀に対してはそれほど煩くはなく、まして王城を離れ公式の場でもない私的な時間であれば、私人でもある時に殿下という尊称で呼ぶ女性には相変わらず真面目であると浮かべる笑み。

「ご名答――いつものように、気の向くままに。
季節の移り変わりに加え、人や物の流れに伴って各地の噂話まで聞こえてくるのは、王都の外を知る事も出来て程よい刺激にもなる。
城に居るでもないので……そうだな……名で呼んでくれると嬉しい」

女性にしてみれば多少、意地悪めいた注文となりそうではあるが、その唇から名を呼ばれることは心地いいだろうと。
程無く運ばれてくるカップから、濃い香りが漂って来ればそれを楽しみつつ、ゆっくりと一口味わってみる。

ベアトリス > 「相変わらず、殿下はお上手ですね」

多少変わったところはあるものの──貴賤問わずの態度はおおむね快く受け入れられているのは城の者なら知っているところ。
フードの下の容貌も含めて貴婦人からは支持されている…のはもっぱらな社交の場での評判といえるだろう。

そんな相手からの言葉であれば社交辞令といえども固辞するのも無粋だ。
謝辞を交えて相槌を返し。
ただ───淡い笑みを浮かべた相手の言葉には少々表情を曇らせる。

貴族名鑑を叩き込んでいる身としては、あまり上下を濁らせる行為はしたくない、というのが本音だが───。
見たところ、目立った護衛もいない状態で相手の身分を明らかにする呼称はよろしくないのではないか、という思いも当然ある、のだが。

「…………善処いたします」

苦し紛れの返事は、なかなか身に沁みついた習性を覆すのが難しいことを自覚するから。

そんな己の葛藤なども含めて、楽しんでいるだろう言葉であることもまた、なんとなくは認識している。

ほどなく運ばれたカップから漂う薫りが芳ばしく言葉の合間を埋めるのを眺め。

「何かお心にかなうお話はございましたか?」

ファルスィーク > 「世辞は好まず、本心なのだが……どうにも、本気として受け取ってもらえないのは悲しい」

美女の部類に入る女性の容姿は、この場でも十分目を惹いている事は確かである。
にもかかわらず、周囲が声をかけるのが躊躇われるのは、女性の凛とした雰囲気からなるものだろう。
そんな女性と己が居る事で余計に好奇の目を集めていそうではあるが。
社交場においても多少の差異はあるものの、今現在と態度が変わるものではなく……故に女性からしてみれば、困った要望となるのは察してはいた。

「生真面目な貴女からすれば難しい事だろうが、そうしてくれると有難い。
では私の方は、普段呼ばれている愛称で呼ばせてもらってもいいだろうか?」

女性の浮かべる表情は、困惑やら葛藤が含まれていて、そう言ったことが苦手なのは曇り方から分かりはするが、そんな表情も好むところであるという悪癖。
己の方はと言えば、女性の名を呼ぶには……と考えて尋ねる事にした愛称。

「戦況も、きな臭さも相変わらず。
神聖都市、奴隷都市、港湾都市も大きく変わったところはなさそうだ。
今のところは……と言うのが付け加えられるが。
尤も、王都……王城の方が危うい気はするな」

以前より魔力の変動が著しくあった王城の雰囲気を言葉に出せば、目線は一度王城の方へと向けられた後、肩を竦ませて小さな溜息を洩らした。

ベアトリス > 「そうはおっしゃられましても──……」

誰かの目を惹く、というには性格も、振る舞いも地味に過ぎるのは自覚があるところ。
社交界に出入りする身であれば、自負と、それに見合う美貌の持ち主が存在していることは当然認知している事実だ。
その中で己に沿う言葉をかける相手のそれを美辞と捉えるのは自然な流れ…だと思うのだが。

───自己認識が低いというのは貴族にあるまじきとは思うが、あまり己を持ち上げられすぎるのも座りが悪いのでこれでいい。殊に相手の身分のほうがはるかに高い場合は。

名前と共に、なかなかに頭の痛い言葉であることは確かで、少々肩をすぼませたが──。

「……特に問題はございませんが。………外堀を埋めにかかってらっしゃいませんか、………ファル、スィーク、様」

ぎこちなく名を舌の上に乗せる。
尊称を外すのは無理そうだ。できればそれで許していただきたい所ではあるのだが、と薄い紫の眼差しを向ける。

「それは、王城に勤める身としてはあまり伺いたくない話ではありますね……」

予測はできていたし、当然とも思うけれど。
足許の不安定さについての言及は、何とも言い難い。
思わず肩に力が入ってしまいそうなそれに、思い出したようにカップを取り上げて、少し温くなった味わいを喉に通すことにした。

ファルスィーク > 「まあ……そう言うところが卿の魅力の一つでもある」

己から見れば態度も雰囲気も好ましい所でもある。
容姿を誇示した華やかさも嫌いではないが、質の違いという言葉が適当なのか。
女性の場合は燦燦と輝く陽光よりは、静寂さを帯びた月光の方が似合う。
着飾れば社交場でも引く手数多ではあろうとも思えるが、あまりに言いすぎると逆に引きすぎてしまいかねないので、そこの天秤の揺らし方が難しい。

何やら非常に難しそうに覚悟を決めたようにも見える表情で言われた言葉。
最後の名の部分で、数度瞬きをした後に唇の端を上げての笑みは、女性の努力を称賛する意も含めての。

「では、トリクシーと呼ばせてもらう事にしよう。
そのつもりは……これくらいはある。
……様は抜きにして欲しいが、さすがにすぐには無理だろうからな。
いや――実に新鮮でいい」

女性の愛称…確かそう呼ばれていたはずと思い返して、呼ぶ己の方は女性ほどの葛藤はなくさらりと。
今は、これで精一杯であると己の名を呼んだ紫色の瞳に頷いてみせた。

「……こればかりは、些細な事でも口や首を突っ込むことは避けておいた方が無難ではある。
が……いざとなれば、王都を離れる事は躊躇わない方が良いだろうな」

執務官である女性であれば、ある程度の気配や内情は耳に入ってきているだろうからの忠告めいた助言。
また一口、口に含んでその強い苦みを楽しむように味わい嚥下したあと、ソーサーの上へカップを置き、少し傾いてきた陽を確認するように空を見上げ。

「もし時間があるようであれば、少し散策に付き合ってはもらえないだろうか」

ベアトリス > 「恐縮です──」

少なくとも機嫌は損ねてはいないようだが。
むけられる思惟を甘い約束や言葉で、戯れるのには己は向かない。
不器用といえばそれまでなのだが───ほどほどで手を退いてくれた相手には少しほっとしたような様子を見せた。

その代わり、というわけではないが。
公衆で己の立場を若干踏み越えた呼び名に難しい表情を浮かべたまま。
それでも相手の溜飲が少し下がったのなら此方としても──甲斐はあったと思うことにしたい。

「───すぐ、というか無理だと思われますが……」

愉快そうな言葉に、難しい表情のままの答え。
己の表情に反して、磊落にこちらの相性を呼ぶ相手には葛藤のかの字も見えないあたりが立場の違いが如実だ。

「畏まりました。───貴族としての務めは果たしてからそのようにいたします」

帰属意識が強い、というわけではないが。
領地での基盤が危ういのも事実だ。そんな内情を相手に零すほど愚かでも、矜持がないわけでもない。
貴族らしい、忠節を示すのだって仕事の内。
忠告には素直に首肯し、応じた。

「それは──構いませんが…私が殿──……ファルスィーク様の興趣を満たせるかは補償いたしかねますけれど、それでもよろしければ」

供ということであれば否はない。
予定もない午後の時間。散策に従うのもそう悪い話ではないのだから。

ファルスィーク > やはり立場の違いというのは酷く大きい。
どうであれ一線をしっかりと引き、そこを踏み越える事はしない徹底ぶりには、感心するところ。
尤も、権力を持つ側の気紛れという一番危険な災害から身を守るのは、それ位してもまだ足りないのかもしれない。

難しいままの表情でいる女性を見れば、さすがに要求が過ぎただろうか。
無理だとはっきり言われてしまえば、それ以上は強要出来る筈もなく。

「無理ならば仕方がないか。
いや、充分に無理を通しているのだし、ありがたいと思わなくてはいけないな。
……勤めか…本当の貴族の鑑ではある」

いざ、何か事が起こった場合、身の可愛さで我先にと避難する王侯貴族は数多いだろうが、女性の場合は有言実行するのだろう。
それ故に信用と信頼が出来るとも言える姿勢に感じ入る所はあり――。

「誘いに応じて頂いて感謝する。
一人での散策も悪くはないが、華があればよほどいい」

ぬるくなった珈琲を飲み終えて立ち上がると、給仕を呼ぶと女性の分の支払いも済ませ、連れ立って喫茶店より出ていく事になるか。

ベアトリス > そうすることで身を守っているというよりは、それを守ることで己の居場所というものを確立しているからこそ──逸脱することに不安を覚える性質だ。
そこまでを相手が見透かしているか否かはわからない。
其々の立ち位置からの目線が、その人の行動を決めるのは確かだ。

はっきりと告げたことに対して手控えしてくれたことにはむしろこちらが感謝するべきだろう。

「……そうすることで身を守っているのだと思っていただければ。
さほど高潔な人間ではございませんので」

己にも利があるからこそのこと。
真実忠誠心を抱いているのであれば、騎士にでもなっていただろう。
──残念ながら己にその素養は全くなかったのだけれど。

「……ファルスィーク様であれば、伴う華を増やすのは簡単でしょうに?」

立ち上がる相手に伴われ、大人しく支払いを任せると──その場を後にするのだろう。

ファルスィーク > ―――「移動」
ご案内:「王都富裕地区/ティーホール」からファルスィークさんが去りました。
ベアトリス > 【移動いたします】
ご案内:「王都富裕地区/ティーホール」からベアトリスさんが去りました。