2026/02/14 のログ
ご案内:「平民地区/冒険者ギルド」に影時さんが現れました。
ご案内:「平民地区/冒険者ギルド」にナイトさんが現れました。
影時 > 「だ、そうだ。云われてるなァおい。
 クク、……そうショボンとするない。お前らにはお前らにしか出来ねぇ能、芸があろうに」
 
この気質は鑑みるに、早駆け、斬り込み役、というよりは単独先行を行う手合いか。
座位ばかりではない。もう少し立ち振る舞いを見て判断したい。せめて手相の類も見られれば最低限の見当がつく。
どういうエモノを振り回す類であるか、というあたりをつけられる。
しかし、何分初対面である以上、肩上の二匹がどんな馴れ初めで此処に居るかなぞ、知る由も無い。
ソンナー……とばかりに、小さな肩とふわふわ尻尾を萎えさせる有様に、元気づけるように肩を揺らそう。

彼らにしかできないことは、当然ながらある。
飼い主にない可愛げ以外の大きな武器。勇気と冒険心を裏付ける、小さな魔導書はその一つ。
白い法被に隠れる毛並みの中からぽこっと取り出す豆本めいたミニサイズの本。それを示し、また仕舞う。

「他の腕利きの奴らの意識までは、深くは知らん。
 まぁ、歳の話はしちまうと面倒だ。それなりに場数を踏んだ、重ねている、と思ってくれ。
 ――ああ、それが良い。喧嘩を売られるとつい買いたくなっちまう。俺の悪い癖だ」

達人、経験者が行き着く先はかならず同じ――とも限らないが、収斂した結果が重なることもあるのだろう。
歳云々は、いかん。冗句交じりにしたって少々響いているらしい。腹の底から息を吐きつつ、放ちかけた戦の氣をそっと収める。
愉しそうな戦いに昨今飢えている、という点は否めない。しかし。そう、しかし。
世の中その真逆にならざるを得ないことばかりなのは、致し方ない。己が拾った縁、命の重さゆえに。

「一口には言い難い程、色々とややこしくてな。……改めて思い出したぞ、お前さんの名。
 彼奴が口にしていた名、だったな。そうとなると、全く。――ヒテン、スクナ。不穏の匂いはあるか?」

まぁ、おちつけ、と。言葉にしない代わりに机を叩くさまに宥めるように片手を挙げ、思考を回す。
良くも悪くも慣れたものだ。そういう依頼主、雇用主も偶に居るもの。売り言葉に買い言葉をしていても埒が明かない。
詰め寄られても、強風を撓って受け流す柳の如く、落ち着きを保ちながら子分の二匹に問う。
冒険者ギルドの応接室は機密度の高い会話をするため、防音対策と共に防諜のための結界が仕込まれていると云う。
出資者、支援者といったものからの横槍があっても、秘密を漏らすわけにはいかないこともあるからだ。
己も結界を敷くか? とは思いつつ、大きな音にぴょんと飛び上っていた二匹が、卓上に飛び降りる。

きょときょと、すんすん、と鼻を鳴らす素振りを見せて、何も感じないとばかりに首を横に振る。

――であれば、大丈夫だろう。もし仮に己のみならずこの娘に監視がついていたとして、ここならばその心配はない。
通風口に何か忍び入っている可能性もあるが、知性体、ないし操作されるものならば気配も匂いも己と毛玉達は察する。
椅子の上で足を組み、こつこつとこめかみを突きつつ、発する彼奴という言葉に心底嫌そうな顔を見せて。

「そうせざるを得なくてなァ。俺が下手に口にしたのを悟られたら――恐らく其方も含め大変面倒なことになる。
 其れは其れで受けて立ってやっても良いが、方々に迷惑が生じかねん。その点についてはご理解頂きたい
 
 ……メイドと護衛だけじゃない任務があった。それが万事の発端よ。
 
 駆け落ち、って、……いや、ンな下りも、あったか……。そう云う方が早ぇなら、そうとも。俺が其れだ」

政治的に、それも闇が濃い方角で面倒なことになっている。
色々と付き合いのある侯爵からの依頼を受け、屋敷を警備した筈だったのが、何故にこうなったのか。
ここまで来れば嫌でも分かる。ヴァリエール伯爵家の関係者が、どこまで何を知り得ているか、開示されているか。
それを確かめつつ、吠えるような言い草の怒涛と、其れに混じる思わぬワードに天井を仰ぐ。
いや、確か、あった。……あったな。今は此処に居ない、家令シマリスに転身した式紙の耳目を通して聴いた在る会話の内容を思い返す。
何は兎も角として、己がそうである、と認める方がきっと話が進むだろうと判断して。

ナイト > 「あら、この子たち芸を仕込んでるのっ? そう言えば、おそろいの服も着せてるものね!」

特に悪びれることも無く、さも当然と落ち込む毛玉たちを慰める飼い主の様子を見ていた少女だが、面白そうなことを聞けば食いつく。
動物に芸を仕込んでいるなんて祭りで見る大道芸や飼い犬くらいのもので、こんな小さな小動物に仕込んだものはさぞや珍しいものに見えたようだ。
傷心気味な二匹。こそこそと何かを取り出そうとした仕草を見て、少女は興味津々で声を弾ませ尋ねる。
まさか、人間の言葉を理解している風な上、魔術の類まで使いこなす世にも奇妙な毛玉と知れば、少女も彼らを弱者と侮ったことを撤回するだろう。

「ふーん、まぁいいわ。企業秘密ってことで聞かないでおくことにする。
 ふふっ、わかるわぁ。私も売られた喧嘩は全部買う主義だったもの」

何やらまだまだ秘密があるらしい男の言に首を傾げたが、お互い初対面である。
仕事を頼む上で必要のない詮索まではする気は無いと頷いて、続く言葉には更に深く同意して頷いてしまった。
少し前までは何処で誰に喧嘩を売られようと迷わず買っていた喧嘩っ早い少女は、悪癖だとは一切思っていないが、「つい」と言う言葉にうんうんと頷いて、ある意味理解者を得たような気分になっていたわけだが……。

男の返事一つでがらりと空気が変わり、今や、男を睨みつけ声を荒げて抗議している。

「思い出したって……、あ。篝から聞いてたって事? って、彼奴?」

怒り心頭な様子の少女だが、宥めすかす言葉には口をへの字に曲げて不満顔を見せる。
が、名を聞いていると言われれば友人が自分のことを話していたと早とちりして、少し声音が明るくなるのだが、それがまた違う相手から聞いたと知ればすぐに眉間の皺が戻る。
実に感情の落差が激しく、顔に出やすい。篝とは別の意味で腹芸が苦手そうである。

毛玉二匹に何か確認させる様子を不審なものを見る目で眺めていたが、怒鳴りつけても全く動じていない様子に一つ荒く息を突き、仕方なく深く咳に腰掛け、態度悪く足と腕を組み背もたれに凭れてふんぞり返り話し出すのを待つ。
相当男も悩んでいるようで、米神をつつきながら、嫌そうな顔をしている。
そんなに嫌な相手から自分の名が出ているという奇妙なじたいに、一体誰なのだろう?と、疑問にも思ったが、尋ねる前に男は重い口を開いた。

「なによそれ、まるで陰謀にでも関わってるみたいな言い方して。
 はぁ……こっちは全然事態が呑み込めないけど、理解しなきゃ話せないって言うなら……仕方ないわね。
 少しの間、黙ってアンタの話を聞いてあげるわよ。

 ――? メイドと護衛以外……お使いとか? って、此れも聞かない方が良いの?

 むっ! そう、アンタが……。ふーん……へぇー……。
 そっかぁ……。こういう感じの趣味だったか。なるほどねぇ……。いいわ、続けなさい」

良くわからないままだが、話す気になったなら聞こう。
男が言葉を濁しながら語る内容は不明瞭で、少女も「確かに、篝はよく使いで屋敷の外に出ていたな」と頭の中で思い出していた。
その使い、お出かけの大半が情報収集と暗殺業に繋がっているのだが、当然少女はその事実を知らない。
そして、男が篝の手紙にあった逃避行の相手だと知れば、ぱぁっと目を輝かせ、部屋に入って来た時と同様かそれ以上にじっくりと男の顔や服装を眺めてから、今度はこちらが天井を仰ぎ呟くことになる。
少女の中では、愛の逃避行を行う相手は貴族か、大商人の若者と、少女趣味な小説よろしくな妄想が進んでいたため、そこからの軌道修正を行うのに少々時間を有していた。
あの情緒が死んでいると思っていた友人が選んだ相手が、この男か。と噛みしめながら、所謂コイバナの娯楽を求めて先を促す。

影時 > 「いんや、何も? 正真正銘だが。
 ――服は、あれだ。一応野良やら他に飼われてる奴らと間違われねェようにな。
 専用の誂えとは言え、こいつらみてえに小器用に魔法の道具を使えるのが何匹も居てたまるか、だが」
 
驚くべきことに、此れが素である。天然である。ド天然の逸材であった。
尋ねられれば「芸?」とばかりに尻尾を?の形にくねらせ、二匹同士で顔を傾げ合う。
学院や今は辞した宿では、二匹がかりでえっさかほいさと手紙を運ぶことすらやってのける、力持ちでもある。
人間の言葉をしっかり解してる節があり、魔導書を使うとはいえ、状況に応じた術で護身と手助けも出来る知恵と。
色々と芸ならぬ技を仕込ませた忍獣ですら、ここまで器用には成り得まい、とすら思う程に。

「もとより、初対面だ。会って間もない相手に長々と自分語りをされるのは、気色悪かろう?
 ……ははは、なっかなか気が合うようで良いね。時と場合が挟まらなければ尚良かったンだが」
 
秘密もある。良くも悪くもある。依頼主が求める何かを果たすにあたり、要件を満たしていればいい。
本来はそれだけ、のつもりだった。そこに己の深い過去を語る必要も何もあるまい。
技量を見たいと仰せであるなら、必要なら訓練場でも借りれば事が足りよう。だが、事はもう単純ではない。
天は何を望んでいるのか。この巡り会わせは何を、己にさせたいのか。思わず内心で慨嘆する程に。

「――……今はまず、そう解してくれたらいい。
 彼奴は、彼奴、と云いたい処だが追って話す。……下手に俺が何かやると悟られかねん気もするが、まぁ、良し、とする」

現時点でひとつ、察することがある。良くも悪くも感情が顔に出易い。全く良くも悪くも、だ。
己の反応が大仰過ぎる点ばかりは否めない。とはいえ、直近の動き、推移を踏まえれば、そうせざるを得ない。
この国での言い方をすれば、アクティブな備えを張るよりは、パッシブな備えが今の時点では最適と判断する。
冒険者ギルドの沽券、機密保持にも関わる防諜的な備えと、己とこの娘に対する監視の有無の確認。
扉の隙間、通風口まで毛玉達を遣わすか、糸を紡ぐか蟲を喚んで探らせるかまでは――、今の時点では過剰。
あれやこれやとこの依頼人に見せてしまう処までは、止めておけることも含め、ほっ、と息を吐く。
心配性でやんすねー……、とどこか呆れ気味な二匹に両手を伸ばし、うりうりと頭を親指で撫でてやっては、

「――実際関わったか、関わる羽目になったか、といった塩梅でね。

 お使いは確かに違いない。
 
 命の奪い合いを伴うお使い、だ。
 ……俺が世話になった御仁の所に向かって騒ぎになったのを俺が已む無く阻んで、救ってやって――なんやかんやあって、といった具合だ。
 そのなんやかんや、で色々と面倒かつ複雑なものが絡んで、ここ最近まで四苦八苦していた。
 
 篝から、手紙を受け取ったのがナイト、お前さんで相違ないなら、持ってきた奴は男かね?」
 
さて、どう云うべきか。一から十まで事細かに云うのは、出来なくもないが。
ぱぁと目を輝かせたのも束の間、どうしたって王子様やら若旦那やら等とは程遠い己に、天井を仰ぐ様子に苦笑を刻む。
こら、さもありなん、という目で俺の顔を見るな。卓上の二匹の目線に突っ込んでみれば、ふいー、と二匹の視線が逸れる。
一先ずは、要約する。要約したうえでおおよその流れを声に出してみよう。
その上で先程口にした、彼奴が何者かを示唆する、確認する。今回の用件のきっと発端になったものを。

ナイト > 「なぁんだ、芸が見れると思ったのに。
 ――は? 魔法? ……魔獣の類、じゃないわよね? …………笠木、アンタ正気?」

何も手を加えていないと聞けば、あからさまに残念がるのだが……。
最後に出てきた言葉にふんぞり返っていた身体を、がばり、と起こし毛玉二匹を見やる。
どう見ても愛らしい毛玉たちだ。魔獣の魔の字も感じられない。何かの冗談か、気でも狂ってるのかと目を眇めて少女は訝し気に男を見た。

「それはそう。いきなり身の上話されても……ああーいや、今は少しは興味が出て来たわね。話したくないなら聞かないけど。
 ええ、それは本当に……。また何処ぞやで会ったら、喧嘩を売ってくれても良いわよ? 全力で叩き潰してあげるから」

同意して頷くも、いやしかしと改める。友人がらみの相手、それも気になっていた件の相手となれば根掘り葉掘り聞き出したくなるところである。
が、初対面は初対面だ。その最低限の距離感は何とか踏み止まっておく。
喧嘩云々に関しては、自分が負けるなどとこれっぽっちも思っていない傲慢とも思える自信過剰な笑顔を向け、最後にニヤリと勝気に八重歯を見せて笑うのだった。

さて、男が悩み神にまで語り掛けんとしているところ。
少女はどんな話が聞けるかと、わくわくと浮かれる気持ちを押し隠し……きれていないが、大人しく席について話しを待った。
例の彼奴が誰なのかは気になるが、今はそれよりもコイバナである。
どんな流れで二人が出会い逃避行に至ったのか、紙芝居が始まるのを待つ子供の心情で、相手の心配など全く気付かずにいた。

ちなみに、誰かが部屋の傍で聞き耳を立てていたなら、少女はすぐにその息遣いに気付く。
そして、自身に怪しげな術――諜報用の盗聴魔術などが掛かっていれば、すぐに察知する。そう言う魔力がらみの術には感がよく働く。
また、プライベートと言うこともあり、今日は私服で普段身に着けているチョーカーも屋敷へ置いてきていた。
ギルド自体に何か仕掛けられているか、男自身に監視でもついて居ない限りは情報が漏れることは無いだろう。

やがて、話すことを決めたのか。息を吐いて毛玉を撫で回した後に会話が再開した。
その内容を聞いた少女は、徐々に眉根を寄せ、また訝しげな表情になって行く。

「ちょ、ちょっと、待ちなさい。命の奪い合いって、どういう意味よ?
 タナールの砦ででも出会ったって言うの? 御仁の所向かって、騒ぎって……それじゃまるで……。

 ――え、ええ……。手紙は屋敷の者が配達員から受け取ったと聞いたわ。そこから、私宛の分だけ配られて……」

楽し気だった少女の雰囲気は焦燥が滲み、不安と困惑へ塗り替えられていく。
良く状況が呑み込めない。理解できそうではあるが、頭が受け入れないと言うのが正しいか。
嫌な予感がして、言葉は徐々に途切れ、男からの問いかけに答える声は上の空のような状態であった。

メイドで、時々主の護衛を承る、少々腕の立つメイド。人目から隠れたり、身軽で、木登りが上手で……。
いつも黙って話を聞いてくれる物静かで無口な友人。
紅茶を淹れてご馳走すると、冷たい表情が少しだけ和らぎ、ほっと息を吐く。そんな横顔を思い出す。

――この男は、一体何を言っているのだろう……。頭が上手く回らない。

影時 > 「ははは、素直に芸を仕込める類じゃぁないぞこいつらはよう。
 ……魔獣でも何でもなく、何の変哲すらもない毛玉だとも。…………多分」
 
芸なんて、良くて餌を“待て”とか言われたらお座りする位だろうか。
死地含め極限状況に立ち会わせた際、下す命令にはちゃんと従ってくれるが、普段は大変気侭である。
がばっと身を起こし、しげしげと見遣る眼差しに、きゃるん、とつぶらなきらきら眼差しで髭をひくひく揺らして。
飼い主が零すほんの僅かに疑念混じりの呟きを華麗にスルーしつつ、再び毛並みを漁る。魔導書を取り出す。
誰が何を見せるかは、決まったらしい。仕方がないでやんすねー……と、いった具合で、モモンガの方が書を開き構える。
書の表紙をよーく見れば、持ち主の名が記されていることに気づける。
いつのまにか取り出された小さな宝玉を、器用に保持して開かれた頁にタッチさせる。すると、ぺかー、と。光あれ。

――天井に、光源がぷかりと生まれる。

(ライト)の魔法。極々基本的な生活魔法だが、全ては応用次第。持ち札を使い分ける知恵も彼らは持つ。

「一から十まで吐かせないと気が済まん手合いも居るが、何事にも加減も塩梅が有ろうに、なァ?
 ……長い付き合いになるなら、考えなくもない。必要があれば、語ってやるさ。
 取り敢えず、その言葉だけは覚えておいてやろうかね。……回復の手立てだけは、十二分にしておくように」
 
やがて消えるとは言え、ぷかぷかと浮かぶ光源はちょっとまぶしい。
床や壁に投げ掛けられる影の濃さを横目に、影法師と一緒に大袈裟に白い羽織に包まれた肩を揺らして見せよう。
恐らく、という予感がある。弟子の絡みを思えば、長い付き合いにもなりそうだ。
予期せぬとは言え――依頼という形で、相手は己を介して弟子と連絡を取れよう可能性、線を得ることに成ろう。
それを察知する、される可能性の予感の発生と共に。
それはそれでまた、“なんやかんや”が生じるかもしれない。だが、此度ばかりは仕方がない。何分偶発的な事象なのだから。

「分からんか。……伯爵殿は内部統制も厳密にしていると見える。
 タナール砦はちと遠すぎる。――貴族同士の小競り合いに関わるお使い、と言えば想像は付くかね?
 おっと。下手に声に、言葉は出してくれるな。必要なら筆談も交える。――お前さんが思ったことの是が非なら、答えやすい処もある。
 
 ……配達員、か。その配達員の面相は、分かるか?銀髪に変わった染め模様の布を巻いた男とか」
 
役割分担も機密管理も徹底していると思える有様は、如何にもしばらく前に対面した辣腕の貴族らしい。
ここまで喋るとより想像は働くことだろう。だが、下手に言葉に、声に出されると面倒になる可能性もある。
ペンと紙なら、こんなことを考えるまでもなく、持ち合わせがある。羽織の下、腰裏の雑嚢を漁ればすぐに出せる。
しかし、余程今の己の弟子は、この相手が思っている認識している処とは縁遠い実態に居たのだろう。
不意に居なくなった友人を心配している、とするなら、得心もし易い。――そんな相手に届いた手紙について、思う処は色々ある。
配達員、という語句に鋭く暗赤色の双眸を細めつつ、人相を想像する限りなら、恐らく違うであろうとも察しながら。

「――難しい、厄介な所は、棚上げにして、俺から言える今回の依頼に関する要点を述べようか。
 
 ひとつ。俺はナイト殿、其方が送りたい相手に手紙を確実に届け、返事を持参しに行くことが出来る。
 ふたつ。顔合わせの手配も出来なくも無いが、その際の場所は十二分に考慮せねばならんだろう。
 みっつ。篝の今の身の上については、篝自身から深く話しづらいと思う。その点は、汲んでくれると有り難い。
 
 ……こんな処か」
 
今回の依頼を達する点、並びにその後に起ころう可能性を踏まえ、要点をまとめる。

ナイト > 「多分……」

付け加えられる一言が、こんなにも信用ならないことは早々ないだろう。
おうむ返しに呟きながら、少女は毛玉たちを見つめる。黒い大きな瞳が黒真珠のように煌いて、長い髭がひくひくと。なんとも愛らしいばかりである。
だが、てってれー!と毛玉から出てくるのは小さいながら立派な本で、続いて取り出されるは宝玉。ページを開き触れたなら、天井には丸い光源が浮かび部屋を煌々と照らすのだった。

「………………。……OK、わかった。アンタのとこのペットがただものじゃないってことは、良く分かった」

浮遊する光の球を見上げ長い長い沈黙を挟み、スーッと大きく深呼吸をしてから、額に手を当てて、うんと頷いた。
そして、考えるのを止めた。考えるな、感じろ。では無いが、見たままを受け入れるしかない。
魔法を使う世にも奇妙な小動物。OK、理解した。なんで魔法使えるのとかはこの際置いといて、そこだけわかれば良い。

「アンタ達、なかなかやるじゃない。うちの新兵より役に立つかもね」

毛玉二匹に向けて冗談めかした言葉を掛けて、少女は軽く肩を竦め、また深く椅子に座り直す。
新兵たちからは非難轟々と抗議の声が上がりそうではあるが、聞かれていないので良しとする。

「私は切羽詰まってないなら、相手が話したがるまで待つくらいの余裕は心に持ち合わせてるわ。
 付き合いは……どうかしら? 冒険者と関わることは滅多にないけど、まぁ……篝のこともあるしね。
 あっちはあまり私と関わらない方が良いと思ってそうだけど……。
 はぁ……っ。――その時は遠慮も心配も無用よ。自分の心配だけしてなさいな」

新たに増えた光源が作り出す影は濃く、目の前の男の存在を大きく見せる。
それにも気を呑まれることなく、少女は自信に満ちた態度を崩さずにパチリを片目を閉じて傷の心配など不要と告げた。
しかし、友人について話す時だけはやはりどこか不安げな、複雑な面持ちでもあった。

それはそれとして。
少女は小動物への困惑とはまた別に、男の言葉に疑心と焦燥を抱いていた。

「わかんないわよ、そんなの……。わかるはずないでしょ……っ!
 小競り合い……使い……。そんなの、旦那様が許すはず―― っ、……」

尋ね返してみるも、男はどうにもはっきりとした言葉は使わずに、ぼかした曖昧な言い方をする。
それに痺れを切らし声を荒げそうになったが、声に出すなと言われては慌てて口を噤む。
キュッときつく口を閉じ、筆談をと言う言葉に少し迷ったが頷いて返した。
この男の言葉が何処まで本当かはわからない。場合によっては、この男が嘘を吐き、友人を騙して連れ出したと言う可能性まで頭に浮かんで、警戒心が無意識に瞳に現れる。

配達員の容姿を見たかと聞かれれば首を横に振る。受け取ったのは自分では無いのだ。
が、その例に挙げた容姿は何処となく知った顔を思い出させるもので、また眉間に皺が寄った。

「……そう。そうね。えー……アンタが篝に荷物を届けられることはわかったわ。

 顔は……見たい気持ちもあるけど、屋敷を離れた理由が駆け落ちでしょ?
 私と会ってたら、誰かに見られる可能性もあし、あまり良いとは思えないわね。
 友達ってのは、会えなくてもずっと思い続けていれば友達でいられるものよ。

 最後の三つ目、アンタの言う通り、篝から聞き出すのは止めておくわ。困らせたいわけじゃないもの……」

また一つ深く嘆息し、一度俯いて考え込んだ後、顔を上げて返事をする。
概ね男の言葉に同意と了承を返すが、二つ目の質問だけはやはり複雑そうな様子で言葉を選び、軽く笑みを交えて強がりを言う。