2026/02/12 のログ
ナイト > 「あらそう。ま、守る(弱い)相手を連れ歩くってのは、私も面倒だと思うけど」

この二匹で手一杯。小さき命を連れ歩く責任として、守ることを前提とする相手は立派だ。
弱者を傍に置かぬことで自由に戦場を駆けてきた少女にとっては、この上なく面倒そうだと感じたが、自分の守れるものだけと限定している相手のスタンスには理解を示す。
仲間、教え子、そう言った括りが彼の中にあることは知らないが、嘘はついていなさそうなのでそれ以上は探らぬこととした。

此方を見て首を傾げ合う小動物の様子を、はて?と不思議そうに眺めつつ。

「この国にもいろんな奴がいるけど、冒険者ならそうでしょうね。
 ふーん、流石ベテラン。言うことが還暦間際のお爺さんと同じだわ。
 ふふっ、大丈夫よ。仕置きする時はちゃんと表に引っ張り出してからするから。
 店やギルドに迷惑かけるわけにはいかないものねっ」

相手が何を考えているか、敵意、殺意に変わるまでは気にせず明るく笑って話を続けた。
その辺の分別はある。ブチ切れてしまった時は見境が無くなるので、数件酒場を出禁になった過去はあるが、今はそんな失態は犯さない。……はずだ。

ニコニコと笑みを浮かべていた少女だったが、男の返答を聞くや否や、すんと笑みが消え、代わりに眉間に深い皺を刻み睥睨する。
ハッ、と嗤った口元には鋭い刃が光り、呆れたような物言いで吐き捨てた。

「――アンタねぇ、上手く臭いを消して隠してるみたいだけど、私の鼻は誤魔化せないわよ?
 獣の臭いに交じって、篝の臭い……、それに微かだけど竜っぽい臭いもしてる。
 普段から一緒にいない限り此処まで臭いが染み付くことは滅多にないわ。
 別に取って食ったりしないから、見え透いた嘘は止めて白状なさい」

少女は男がこの部屋に入ってきた時から、嗅ぎ覚えのある臭いに目を瞬かせた。
それが友人の臭いであることはすぐに理解できた。
相手が唯の知り合いか、それとも件の手紙に書かれていた逃避行の相手なのか、そこまではわからなかったが関係者であることだけは明白で。
形式上の質問ではあったが、相手がミレー族を蔑むような者で無かったことは素直に喜んだし、良かったと安堵した。
――しかし、だ。白を切るその態度が気に食わない。警戒しているとして、友人への届け物だと依頼書に書いておいたのに、何故に警戒されるのか。解せぬのだ。

ヴァリエール伯爵の命を受け、(友人)がどのような仕事をしていたのか。
そして、何故屋敷から姿を消したのか。その真相を一切知らされていない少女は不満を隠すことなく男を睨みつける。

影時 > 「はは、いや全く。
 とは言え、こいつらも冒険者だ。子分であるが、仲間――でもある。仲間は守るものだろう?違うかね」
 
真実に手一杯である――わけでもないと云われると、頬を掻かざるを得ない。
でなければ、何故実力の劣る弟子や教え子を伴って危地に赴くのか、という指摘やら誹り(ツッコミ)を免れない。
小さな手乗り齧歯類の彼らはただ、付き纏わせているだけではない。出来ることがあるから、帯同させている。
最初は兎も角、噛みつき以外の戦闘力は欠けるにしても、彼らは世にも珍しい魔術が使える齧歯類となった。
守るのは当然にしても、連れ歩く意味がある。加えてさらに、故郷の森から出て自分に付きそう未知を選んだのだから。
故に最期まで面倒をを見る。最期まで世話をする。……その最期が気づけば、あやふやなのは云わぬが華だが。

そんな二匹の観察眼が気になったのは、恐らく。耳と尾をないないする、隠す手並みに覚えがあったからだろう。

「ジジィと同じ言い草をしちまったか。歳は食うもんじゃあない、か。
 ……こらこら、血気盛んなのは結構だが、あンまし喧嘩は売るもんじゃあないぞ。――つい、喰っちまうじゃねェか」
 
還暦寸前、という言い草は――昨今で気にしているわけではないが、ついつい遠い目をしてしまう。
永らえるのが稀、或いは怪物的とも云えるのが忍者という特殊な業種、業界であった。
思った以上に慎重になったのか。守りに徹するようになってしまったか。深く考え始めると、思う処が尽きなくなる。
だが、続く言葉は宜しくない。一度火が付いたら、収まるまでは止まらなくなる点は否めない。
俗に剣鬼、修羅めいた気質は相変わらず己が根底にある。ただ、それだけでは押し通れないコトも世の中にはある。

「……何のことか分からねぇなア、て、おい。これ見よがしに歯ァ見せるんじゃあない。
 匂い消しは欠かしてないつもりなんだが、な。……さて、うーむ、どう話したものかね」
 
感づかれてしまったか――と云う問題だ。消臭対策は忍者の倣い、習慣として徹底している事項であった。
だが、それでも。長く共に生活しているとなれば、マスキング出来ない、打ち消しきれない匂いの類も出てこよう。
狼の耳と尾っぽは伊達ではない、といった具合か。女の子に優しい毛玉達の所作も相俟って仕舞えば、尚の事か。
肩上の二匹が、齧っていいよね――とばかりに前歯を見せてくるのである。
睨みつける眼差しに臆することも慌てることもない。だが、さて、どう話したものか。
気付けば空にしていたカップの底を一瞬見詰め、天井を仰ぎつつ息を吐く。天井のシミを数える生活が恋しくなる。

「……――まず、大前提の話をしよう。篝の生業、任務は知っていたか?」

顔を戻す。視線を相手に据える。胸の前で腕を組みつつ、依頼主の認識を確かめるべく問う。

ナイト > 「冒険者はどうかは知らないけど、私は弱い奴、足手まといは仲間じゃないわ。ただの庇護対象よ。
 護衛でもない限り連れ歩かないわよ」

これもまたスタンスの違い。独断先行を許された一番槍の騎士だからこそ出る言葉である。
単に、誰の手にも負えない荒れ狂う狂犬の手綱を握れる者がその戦場にはいなかったと言う話。
今は多少考えを改め、群れを成す兵士達にも役割はあると認めたとは言え、共に戦場を駆ける相手には同等の力を求め、弱者と慣れ合うつもりは一切無い。その考えが滲み出る返答であった。

冒険者の中にも、仲間を大切にする者とそうでない者が居る。
この男は前者であり、仲間を、子分を大切にしているのだろうことは伺えた。

「ベテランはみんなそう言う意識があるってことじゃないの? ……意外と、見かけによらず年齢重ねてるわけ?
 ふんっ、喰えるものなら喰ってみなさい。ま、今はそう言う話じゃないから御免だけど」

ある程度、経験を積んだ玄人となれば、皆考えの行き着く先、所謂悟りと言うやつを開くのだと思ったが違うのだろうか。
何やら遠い目をしている男を不思議そうに眺めつつ、返された威勢の良い返事には愉し気な笑みを浮かべ、ますます気持ちが乗りそうになったが、待て待てと自分を宥めてブレーキを踏む。
今日は喧嘩をしに来たわけでは無いのだ。
まぁ、それも相手がいつまでも白を切るようなら、剣を取る事にもなるだろうが。

「なぁによ! もったいぶった言い方して!
 素直に『はい、知ってます。嘘ついてごめんなさい』って言やぁいいでしょうが!」

今までの余所行きの淑やかさは何処へやら、バンッと机を両手で叩いての猛抗議。
噛みつく勢いで吠えて男の顔を指さし、ふんすっ、と胸を張り、さぁ言え!と言わんばかりに詰め寄る。
二匹はその大きな音に怯えてしまうかもしれないが、一度カッとなれば止まらない、嵐のような少女は言葉を濁すことも許さない。

「はぁ? 任務って、変な言い方するわね? メイド業と護衛役でしょ?
 って言うか、アンタが篝の駆け落ち相手なの?! それとも、他にいるの? いるならどんな奴か教えなさい!」

また急に何を聞くかと思えば、良くわからない質問をされて首を傾げる。
そして、矢継ぎ早に此方からも聞きたい事を次から次に投げつけて、ギャンギャンと吠える。

影時 > 【次回継続】
ナイト > 【次回継続】
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