2026/02/11 のログ
ご案内:「平民地区/冒険者ギルド」に影時さんが現れました。
ご案内:「平民地区/冒険者ギルド」にナイトさんが現れました。
■影時 > 思ったより、話が早く進んだ。或いは依頼者含めて諸々都合が噛み合ったのか。
ある日、冒険者ギルドから己が私邸に手紙が届いていた。
それ自体は何ら可笑しいことではない。居を移した際、手紙の届け先もきっちりと変えている。
呼び鈴を鳴らしたら、玄関脇の小さな出入口から毛玉っぽい何かが出てきて。
ついで、奥から家主らしい男が出てきた有様には、配達者は困惑だの驚きだのしていた様子だが。
――冒険者ギルドから届けられた手紙の内容はこうだ。
依頼主との面談をされたし。指定する以下の日時に、平民地区某所の冒険者ギルドに来られたし、と。
その内容については是非も無い。急用が無ければ、あとは都合を整えるだけだ。
私邸の居間に設置した掲示板に今日の予定として記し、ぶらりと出かけた頃には寒空の下に昼の太陽が顔を出していた。
ギルドまでの道のりは滞りなく。受付嬢に手紙を示せば、案内は直ぐに。
面談の場は、幾度も使ったこともある応接室。そこに至るまでの間、腰の刀を鞘ごと外し、右手に提げて。
「……失礼。いらっしゃるかね?」
足音も微かに着いた部屋の表札を一瞥し、ノックする。
放つ気配は平時の癖で僅かで。中にすでに依頼者が居るのであれば、不意に。声と扉を叩く打音が生じたように感じたか。
■ナイト > 食堂で頼んだ紅茶を応接室に持ち込んでのティータイム。
普段ならケーキも追加で頼むところだけど、今日は真面目な場なので我慢である。
先日ギルドに依頼した人探しと配達の仕事は、人間性を重視した選別の為に候補者が見つかるまで数日を有した。
そして、ギルドから三人の冒険者を紹介され、朝から彼らとの面談を順番にこなしている。
一人目は若い人当たりの良さそうな冒険者だった。偏見や確執などは無い柔軟な思考の持ち主だったが、少し厳しく詰めたら涙目になってしまったので頼りないと却下。
二人目は還暦間際の老魔術師。酸いも甘いも知り尽くしたと言った男だったが、何せ歳が歳である。フットワークの軽さ、行動範囲の広さが無ければ期限内に探し人を見つけるのは難しいと判断してお断りした。
さて、最後の一人はどんな奴だろう。ここまで極端な例が続いているのだ、今度は丁度良い冒険者であることを祈るばかり。
ふと気づく小さな足音が一つ。扉の前で止まる。気配は薄く、だがそこに居る。
人間の耳より何倍も優れた耳を持つ少女は、その音を聞き取り、続くノックと低い男の声に笑みを浮かべる。
今度の相手は中々腕が立ちそうな奴だ。
「ええ、いるわ。どうぞ入ってちょうだい」
はっきりとした通る声で告げ、少女はカップをテーブルに置いて足を組みなおす。
少女が座る四角いテーブルの向かいには椅子が一つ置かれていた。そこが面談者の座る場所なのだろう。
■影時 > (ふむ……?)
すん、と。僅かに鼻の奥が震えたような感じがした。匂いを感じたからだ。
何せ冒険者ギルドである。人が集まる場だ。人が集まる以上、良きも悪しきも匂いが生じる。或いは纏う。
バックヤードにも近い場であると考えれば、こういう匂いもするだろう。つまりは茶の匂いである。
持ち込んだか、或いは茶を振る舞う程のもてなしが必要か。
ギルドの事務員が休憩、サボりのために呑んだ、という線もあるが、その可能性は低いと考えておこう。
そんな男の思考を汲んでか。首に緩く巻いた襟巻が盛り上がり、どこか首を傾げるように震える中、
「では、入らせてもらう」
声が返る。知らない声だ。明朗たる声音は恐らく依頼主か、その代理人で相違あるまい。
左手でドアノブを捻り、静かに開く。そうすれば感じた茶の、紅茶の匂いはより明瞭となる。
肩の線を揺らさない静かな足取りで中に入り、後ろ手で扉を閉めつつ其処に在る姿を見遣ろう。
「どうも、初めまして。――笠木影時と云う。其方が依頼人で相違ないだろうか」
若い女、少女であろうとも、関係ない。まずは挨拶だ。
短く己が名を名乗り、宜しくお願いする、と白い長羽織を揺らしながら頭を下げる。会釈をする。
椅子にはすぐ座さない。着席してもよい、あるいは目配せ等があれば、その意に従おう。
■ナイト > 部屋に入ってきた男は異国風の顔立ちに相応しい珍しい装い。友人が偶に来ていた黒装束に少し似ている。
まれびとから住民へと変わった者だろうか。
緊張していると言うよりは、警戒していると言った方が良さそうな空気が彼からは漂っていた。
少女は上から下までじっくりと相手を眺めた後、スンと一つ鼻を鳴らし、パチリと瞬いた。
一瞬の沈黙の後、まじまじと男の顔を見据えて、カップを手に取り紅茶を一口飲む。
香り高いダージリンで逸る心を落ち着けて、まずは相手の自己紹介を聞こうでは無いか。
「初めまして、笠木影時さん。異国の出身ね。一応、ギルドからランクとか実績とかは資料で貰ってるわ。
ええ、私が依頼人よ。名前はナイト。今日は面談に来てくれてありがとう。よろしくね」
さぁ、席に掛けて。と、向かいの椅子を掌で示し、腰掛けるよう促す。
彼が座ったなら、伏せて置いたカップを手に取りティーポットを持ち上げて。
「紅茶はお好きかしら? ここのはなかなか良い味よ。いかが?」
年上の男にも臆した様子はなく、気さくに笑みを浮かべて尋ねる。
断られなければ手慣れた様子で紅茶を注ぎ彼の前にカップを置くだろう。
■影時 > こういう恰好を平時から通すものは、まあまあ珍しいだろう。決して居ないわけではない。
趣味か実用か。己の場合は後者。他所の国でもこの格好は、今この手に携えている物が理由を占める。
腰に刀を“差す”なら、革のベルトよりも都合が、座りが良かった。
そして何より顔立ちを一々変えても、捏ね繰り回してもいられない。
余所者臭さが拭えないなら、割り切って己なりの利便性、実用性等を追求した結果が、こうだ。
運良く今の雇い主から、こうした着物を扱う店を紹介され、別途仕立て先も得たことも拍車がかかっている。
こんな場で襤褸を着て遣ってくるものは、狂人を疑われる。
人は先ずは見た目を気にする。腕利きを標榜するつもりなら、身綺麗さ含めて身なりは整えて然るべき。
「ああ。……俺の名はどうもこの国の人間には呼びにくいようでね。
もし呼びにくいなら、姓か名で呼び捨てにしてくれて構わん。ナイト殿、と。此方こそ宜しく頼む」
さて、此方の資料は先方に渡っているか。
ギルドに登録されている、記録されているものはそうなっていても何ら怪しむこともない。
お眼鏡に叶うかどうかはさておき、では、と。羽織の裾を捌いて着座する。
手にする刀は卓に立てかけるか、立てかけられる場がなければ椅子の下に横たえるとして。
「嫌いじゃあない。嫌いじゃないが、その所作は……どこかの貴人にお仕えでもされてる身かね?」
茶を進めるさまに、では、と頷きつつ、相手にとっては慣れたと思しい様子でサーブする流れを見届ける。
大変慣れたものだ。一人で茶に饗するとは、恐らく思えない。
誰かに振る舞うに慣れていると考えれば、きっとしっくりしそうだ。そう思いながら、ほわりと良い匂いをさせるカップを取り上げよう。
■ナイト > 彼の服は上質な生地で編まれている。特別に誂えた衣服であることは疑いようがなく、羽振りも中々に良さそうだ。
ギルドから事前に貰った資料だけでは、どのような人物かまでは見えてこない。それ故の面談。さて――。
「そう。じゃあ、笠木と呼ばせてもらうわ」
相手の申し出にはありがたく乗らせてもらい、続けて紅茶を注ぎ彼の前へとカップを置いた。
傍らに立てかけられた刀は良く使い込まれており、普段から武器を大切にしていることが伺える。武人としては良いと評価できる。
「あら、そう見える?
私、アフタヌーンティーが大好きなの。一人で飲むのも好きだし、誰かと飲むのも好きよ。
今日はこういう場だからお菓子がないのは残念だけれど、まぁ仕方ないわね」
軽く肩を竦めて笑いながら言葉を返し、意外と鋭い指摘だと内心で感心する。
再び自分のカップを手に取り、また一口紅茶を口にしてから、本題へと入る。
「さて、じゃあ早速面談だけど……。
人探しの実績は十分あるみたいだから、そこは省くわね。
んー……。
笠木、貴方は人間よね? 魔族やエルフ、ドワーフ、獣人、ミレー族……そう言うやつらの事どう思う?
やっぱり危険な生き物、劣った生物、迫害すべき対象かしら?」
他の面談者にもした質問を彼にも投げかけてみる。
前者二人はそれぞれの考えを持ったうえで、危険な相手かどうか見極めると言う返答だった。
さて、この男はどうだろうか。
■影時 > 羽織もその下に着込む着物も袴も、袖から除く手甲も草履も安いものではない。
草履は消耗品としての性質こそあるが、魔獣の革を重ねた造りは実用を追求した結果のこと。
そうした身なりを維持し続けるのは、見立ての通り。相応の収入を保ち続けるが故に他ならない。
迷宮探索で持ち帰るものの価値、多寡以外はパトロンか、掛け持ちする仕事等か。
だが、いずれにしても易いものではない。ギルドに認定されるに足る実力があるからこそ。
「ああ、そうしてくれると俺としても有り難い。変に気遣うのも……だろう?
成る程。誰かと茶を呑むのが好きというなら、その所作も合点がいく。堂に入ったもんだ。
はは、菓子の土産でも持ってくりゃ良かったかねえ。摘まむもの程度ならなくもないが、と、こら」
呼び方、呼ばれ方は予め定めてしまっておけば、気が楽になる。
腰に差す得物は仕舞っておくことも考えたが、“どういう者”であるかを示す材料、表道具でもある。
如何なる生業、戦い方をするものかは、初対面の段階で示しておくと後が楽になる――ということもある。
さて、己が見立ては、当たらずとも遠からずと云うには少しばかり遠かったか?
深くは、探らない。考えない。依頼主に関して根堀、穴掘りする場ではない。
摘まめるものと思って、ふと空いた手で袖を漁ろうとすると、肩上が俄に騒がしくなる。
――おやつはあげないとも言いたげな抗議めいて、ぽこぽこと。形違いのふかふかふさふさ尻尾が飛び出す。
「ああ、承知した。報告している通りが全て、だからな。
――ふむ。一言で云うなら、どうとも思わんなぁ。
あからさまな悪さ、害を成している際は兎も角として、一々目くじらを立てるべき由縁は、俺にはない。
刃を向けられぬ限り、俺からそうしなきゃならん理由をわざわざ作るのも、馬鹿らしいにも程がある」
人探し含め、細々とした能力、実績は資料を見れば良い。
その程度のことは既に終わっていることだろう。でなければ、面談の機会を設けるまでもあるまい。
問題は、続く問い。質問。紅茶を一口、二口含み、味わって飲み干し、一息。
一つの点を除き、伏せつつ、迫害趣味、差別主義、趣向は持たない、中立であると述べてみようか。
仕合ってみたいほどの実力者なら、話は別にはなる。
強者との戦いの機会は何よりも願っていもない程のこと。
それにしても、異種族だから血が滾る、と云う仕様もない前置きを設ける意味を己の中に見出せない。
■ナイト > 「そうね、気遣いはするのもされるのも面倒だわ。
差し入れは有り難いけど、賄賂になるから残念だけど受け取れないわ。
――あら。何かいるとは思ってたけど、随分と大勢飼ってるのね」
現状、探られる謂れはまだない。ただの依頼人と、冒険者である。当然だ。
ちょっとしか鎌かけに迂闊に乗らなくなったのは、あの減らず口の上官を相手にするようになってからだが、こういう場面では役に立つ経験だったらしい。
内心複雑な気持であったが、冗談めいた男の言葉を軽くかわす。
すると、不意に男が慌てた声を上げ、その襟巻がガサゴソと蠢いたかと思えば二本の尾が飛び出す。
獣の臭いが染みついているとは思っていたが、まさか二匹もそこに収まっているとは。
少々驚き目を丸めたが、ふふっと小さく笑って目を細める。
――はてさて、飼っている獣は二匹だけだろうか?
「ふむ、なるほどねぇ……。無関心、害が無ければ気にしないと。――――……むー、んっ!」
紅茶を飲み干す間が思考する時間となり、空になったカップが覗くと同時に答えが聞けた。
その言が嘘か真か。確かめるような魔術も魔道具もここにはない。なら、どうするか。
一つ唸り声を上げてふるりと頭を振れば、少女の艶やかな黒髪から、ぴこんっと二つの三角が飛び出てくる。
それは大きくて立派な狼の耳だ。席を立てば、黒い尾も姿を現し、サファイアの瞳は獰猛な獣の目をしていた。
それらの変化を見せつけるようにして、少女は相手の反応を観る。
彼の本質を見極める。少しでも畏怖や嫌悪と言った負の感情が伺えればその時点で面談はお終いだ。
■影時 > 「成る程成る程。
だがまぁ、其方は依頼人であり、俺は請負者として名乗りを挙げたものでもある。
もし、煩わしかったらすまないが、筋は通させていただけると有り難い。
――……だ、そうだ。よかったな。大勢でも無いんだがなぁ。これ以上増えると、身が持たん」
そう、依頼人と請負人。その関係となる手前の段階だ。
長い付き合いになるかどうかはさておき、相手の人となりは把握しておくに越したことはない。
老練、老獪という言の葉を宛がうにしては、性根は見た目通りに若い。まさに見た目通りと見る。
変な気づかい等は嫌うかもしれないが、依頼人を大事にしない請負人は仕事が出来ない以前の愚か者でもある。
故に気を回すかもしれない点について断りを入れつつ、響く応えに肩を竦める。
ぽこ、ぽこ、と擬音が付くような所作で緩く巻いた襟巻の中から、手のひらサイズの小さな齧歯類が身を乗り出す。
やぁ、と言わんばかりに小器用に前足を掲げる生き物を横目に、苦笑を滲ませる。
……何か感づいたか?
と、内心で、ほんの僅か。気に留めていれば、その引っ掛かりは直ぐに明かされる。
「異種を見たら石を投げていい、と思っている手合いは、その逆も然りである、という認識が抜けているように思う、――と。
……ははァ、成る程成る程。“そういうこと”かい。
そりゃ確かに、人となりをも気にするな。さては、あれかい。届け先も同じようなものかね?」
ぴこん、と。ぽこん、と。そんな音が付きそうな仕草でふさふさとしたモノが増える。付け足される。
人ならぬヒトの証のようなもの。そうしたものの定義は幾つか脳裏で浮かぶが、ただ、それだけだ。
寧ろ慣れたような、平然、平静、泰然自若ぶりで再び紅茶を口に含む。
敢えて気になるとすれば、“できるかどうか”という位か。
僅かに細めた暗赤の双眸は、値踏みするような光を一瞬湛えたのち、何故獣の相を示したかどうかを思案する。
■ナイト > 「ま、良いわ。今の私は依頼人、雇い主ってことになるものね。敬称を付けることは許してあげる。
それ以上その襟巻の中に入れるってのは厳しいと思うけど……。
連れて歩けるものならまだ飼えるんじゃなくって?」
傲慢な態度で少女は偉そうに許しを出す。礼儀と言うものに欠けていると思われても仕方がない振舞いだが、少女はみじんも悪びれた風もなく平然と話を続ける。
まだ飼えるんじゃない? 犬とか、猫とか、蜥蜴とか。
そう皆まで言葉にしなかったが、試す様な視線を男に向けて、その両サイドで小さな手を上げて挨拶をしてくる二匹にはクスリと小さく笑ってひらりと片手を振った。
「ふふんっ、そう言うこと。
合格よ。少しでも変な態度を取るようなら終わりにするつもりだったけど、杞憂だったみたいね。
貴方に依頼することに決めたわ。
――ああ、ちなみに。私に石や暴言を投げるような気概のある馬鹿には、一発ぶち込むことしてるの。
それでも立てついてくる馬鹿は半殺しまでならしても良いと私は思ってるわ。
笠木がそう言う輩じゃなくて一安心ね」
少女の変化を見ても落ち着いた様子で茶を楽しむ余裕まで見せる男。此処までされれば、流石に文句のつけようもない。
この少女の秘密は屋敷内では皆が知る公然の秘密である。普段隠しているのは、面倒事を避けるためだけで、それ以上の意味はない。
言いたいことを言い切って席に着くと、少女は両手を頭に乗せ、乱れた髪を直すように狼の耳を撫でつける。
すると、あっと言う間に魔法で耳は消え、尾もいつの間にか消えている。何処からどう見ても、ただの人間の少女へと戻っていた。
今度は相手が此方を見極めようとしている気配がする。鋭い眼光を正面から受け止めても、少女は臆することなく笑みを浮かべて。
「で、お察しの通り、私が探している相手は同じように獣の相がある子よ。
白い髪に赤い瞳の小柄な女の子。猫の耳と尾を持つ―― 名前は篝。
……ご存じかしら?」
にこやかな笑みを絶やさず男へ尋ねた。
■影時 > 「ああ、お気遣い感謝するよナイト殿。
連れて歩くにしても、今此処に居る奴らで手一杯だ。……本当だぞ? これ以上は責任が持てん。
俺のしくじり一つで喪うってのは、想像するだけで嫌なもんだ」
まぁ、いい。そうした態度の類も決してない訳ではない。
依頼人が請負人を選ぶなら、これもまた逆も然り。請負人も依頼人を選ぶ。
今回の依頼の受諾については相互の了承あってのこと。このような面談を設けた以上、そういうことであろう。
連れて歩けるもの、と考えて、ゆるりと首を横に振る。
考えなくもないが今の現状で手一杯だ。連れて歩くにしても、それは仲間か、教え子以外には有り得ない。
気を回せるとして、それはもう肩上の者達だけで手一杯だ。彼らは戦うチカラを持たぬが故に、己が守るという責を負う。
そんな子分たちである二匹のシマリスとモモンガは、片手を振り返してくる相手をじぃと見る。
暫し見続けて、飼い主の首を挟んだ反対側の相方を見遣り、首を傾げるのは何か考えてのことであろうか。
「……――そういう奴らは、恐らくこの業界だと長生き出来ねェか伸び悩む類だろうなァ。
“こういうこともある”、だ。清濁併せ吞むって云うのかね。
一々驚いてもいられねえし、突っかかるなんてそもそも論外も過ぎる。
ははは、気持ちは分からんでもないがここでは止めとけ。出禁にされちまうから、お勧めはしねえぞ」
斯くも見せられれば、気にするべきは最終的にただ一点。敵か否か、という。その単純な是非のみである。
牙を剥いてくるならば敢えて右手側になるよう、柄を置いた刀を瞬時に抜き放つ程度のことはやってのけただろう。
改めて、尾と耳を隠し、仕舞う様を見届けつつ思う。こういう仕草を見遣るのは、初めてではない。
往来で吹聴する以前の事柄でもあるが、落ち着きがあるのは矢張り、初めてではないからと内心で思う。
全体を見つつ、値踏みするような眼差しに臆しない様に、苦笑交じりに窘めるように述べてみれば。
「……ふむ。知らない名だな」
続く言葉に、平然と。カップを卓に置きながら宣う。
ただ、人の名が分かる二匹は、どうしたものか。そう言わんばかりに尻尾をひらり、へなりとくねらせて。