2025/11/20 のログ
■篝 > 沈黙が続き……。
「――ん、良し」
かれこれ二十分ほどは悩んでいたか。……逆に言えば、二十分瞼を閉じ思考を巡らせ内に成したとも言える。
考えをまとめたらしい小柄は、一つ頷き腕を解くと己の掌を見下ろし徐に印を組む。
氣を練り上げ想像するのは空に咲く花、瞬きの間に爆ぜて散る儚い運命の花である。
一、二、三。手印を組みかえる回数は短く、単純かつ簡潔に。
最後に、袖口に隠した苦無を一本引き抜くと、宙に向けてそれを放つ。
軽く投げられたそれは地面へと突き刺さる――はずであったが、
「此処で、開く」
手印の形を変えたと同時に宙を飛ぶ苦無がピタリと動きを止め、瞬時に花に似た模様が咲くように現れ六角形の光の面が広がる。
見た目はまさに、魔法使いが使う簡易防壁である。
だが、壁と呼ぶには小さく、丁度片手剣を振るう剣士の盾と同等程度の薄い光の面が宙に浮いたまま、苦無に縫い留められたような形で停止していた。
それがどう言う術なのかは作った本人しかわからぬところだが、製作者曰く。
「……上出来? んー……と―――― ……っ! ……ぅ?」
想像通りには出来たらしい。
実験も兼ねていろいろと試そうかと手を伸ばしかけたところで、不意に入口の方から声が掛かった。
大きく肩を跳ねさせ振り返ると、受付嬢が此方に大きく手を振っている姿が見えた。どうやら処理が終わったようで。
一先ず其方へ行って話に耳を傾けながらギルドの方へと足を向ける最中、二人の後方で小さな爆発音が響いた。
『え? え!?』
と戸惑う声を上げ、何事かと目を丸めながら振り返ろうとする受付嬢の背を押し、背を押し。
「大丈夫。問題ありません」
そう言い切る小柄の声は何処か満足そうだったとか。
ご案内:「冒険者ギルド 訓練場」から篝さんが去りました。