2025/11/04 のログ
シードル > 「ふふ、じゃあ、そっちでも十分だから、お手伝い、お願いね❤」

結局は、其処に集約されているのだ。
お手伝いしてくれるのは嬉しい事なので、お手伝い、お願いしますね、と。

「基本的に、人の欲望は無限で永遠だもの。
 欲張りすぎ、とあっても欲張るものなのよ。」

其処迄の言葉に、次の言葉、その表情。
シードルは成程ね、と軽く肩を竦めて見せて。

「そっか。
 それがあなたの常識なのね
 今度、影時先生とお話ししないとね。
 さて、そろそろ、私は行くわね?」

食事も終わって。
酒も飲みほした、味の確認も終わった。
そろそろ、良い時間でもあるのだし、と。

またね?と軽く手を振って見せる。

> 「心得ました」

コクン、と頷き了承を返し。また今日も師に報告することが一つ増えたと、少し浮かれて。
尻尾を隠していなかったらゆらゆらと揺らしてしまっていたことだろう。

「……人間は強欲。愚かなのですね。……ですが、それ故に商人は成り立つ」

欲などかかずに、質素に生きれば良いものを。とは、仙人か高名な僧の如き悟りを開いた者だけが言えることだ。
残念ながら、小柄もまた細やかにでも欲を持つ人の身。
己に対する戒めのようにも聞こえる言葉を呟いて、肩を竦めた。

「――ん? うん。先生と? わかった。
 また、ギルドか……お店で」

席を立つ彼女に、まだ半分近く残るリンゴジュースを置いて手を振り返す。
小柄は何処までも今一ピンときてなさそうな様子だった。

シードル > 「ふふふ、ウエイトレスげーっと❤」

彼女の言葉、彼女と一対一で話をして、色々理解ができた。
しかし、話をして色々と危ういという事が認識できた。
だからこそ、今後の事を考えて、彼女の師匠とも話し合う必要があるだろう。
それを理解して、女は去っていく事にした。

それはそれとして、先ほど言ったとおりにウエイトレスゲット、と言い切るのだった。
そして、半裸の女は、去っていった―――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシードルさんが去りました。
> メイドとしての給仕の経験はあるが、ウェイトレスの仕事は未経験。
また、他の店の店員を見て、粗相の無いように準備をしなければ。
そう思いながら、上機嫌に店を去る彼女の後姿をしばらく眺め見送った後、また店に静寂が返って来る。

――食事。
一人で食べる食事と、誰かと食べる食事。
寄り味を強く感じるのは、やはり後者だと今一度リンゴジュースを口に含み確かめる。
味、味覚に変化はないはずなのに、不思議な現象だ。

「……理解に、苦しみます」

ポツリ、独り言を零し瞼を伏せる。
一つの駒が、一人の人間に変わり行く道半ば。
心に深く刻まれていた首輪を外してもらってもなお、捨てることは出来ず。
鎖を繋ぐ先、預ける先が無ければ何も決めることが出来ず、生きることも叶わない。
どれだけ贅沢や我儘を覚えても、未だその根本は同じまま。

自ら何かを選ぶこと。
その権利はまだこの手にはないと小柄――少女は知った。少年に教えてもらった。
保護者の庇護の元生きる間は、従うべきだと。
それが嫌なら、我儘を押し通し選ぶなら、誰よりも強くならなくてはいけないと。

このまま従っていれば、穏やかに、愉しみを覚えながら生きられる。
それを捨てて強く、師よりも、この身を殺さんする何よりも強くなれれば、暗殺者に戻れる。父の後を継げる。
生き方は様々ある。未来もまた然り。

少女は賽を転がさず、握りしめたまま現状を過ごす。
与えられた食事、寝床、課題。温もり。日々手放しがたくなる日常の中で――

「ご馳走さまでした」

綺麗に食べ終えた食器と代金をテーブルに残し、少女は店を後にする。
日が傾き出した街の雑踏に紛れ、日常へと消えて行く。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からさんが去りました。