2025/11/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に篝さんが現れました。
■篝 > 時刻は正午を大きく周り、じきに茶会が開かれるかと言う時間。
冒険者ギルドに隣接した酒場兼食事処にて、今日の稼ぎで頼んだ焼き魚とマッシュポテトの盛り合わせをフォークで崩してパサついたパンに塗る。
少し遅めの昼食は、トラブルも邪魔ものも無く、落ち着いた店内の静けさの中で響くのは時計の音くらいのもの。
塩気の強いオイルソースをパンに吸わせて持ち上げると、ごそごそと口元を覆うストールをずらし一口齧る。
「……ん、美味しい」
もぐもぐ、もぐ。静寂を邪魔しない程度の小さな声で独り言を呟き、もう一口。
小さな口で何度も齧って、ようやく一枚の半分。
食べ終えるにはもう暫くかかりそうだ。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にシードルさんが現れました。
■シードル > からんと音を立てて、冒険者ギルドへと足を運ぶ女性が一人。
この時期だというのに、肌も露わな姿の金髪の女性は、ギルドの受付嬢の声を聴きながら空色の視線を動かす。
片隅で座って食事を取っている一人の冒険者へと吸い付く様に向けてから。
迷わぬ足取りで、一直線に篝の方へと近づいていく。
「おとなり、開いているかしら?」
ちゃお、と気軽な挨拶をしながら、ウインクを一つ。
彼女がどんなふうに反応するのか、ちょっと試してみたい、そんな雰囲気で。
ウエイトレスが近づいてきたなら、蜂蜜種とサンドイッチを注文してみせる。
■篝 > 早朝から軽い討伐依頼をこなして街に戻ればこの時間。
比較的簡単な仕事で近場だったことを抜きにしても、手際の良さ、移動の速さは単身の暗殺者ならではだ。普通の冒険者なら、街に戻るまでにもう数刻は掛かっているだろう。
さて、日も高い内に帰って来たならやることは多い。
例えば、盗賊ギルドから依頼されていた調べ事の報告。
例えば、師に課された三つの修行の手掛かり探し。
前者については、街に戻って即行で片付けたので良しとして。
後者については……――。
未だ手掛かりと呼べるものは無いが、ひとつ思いついたことがある。
それも含めて調べ事でもしてみようかと、もくもくと食事をしているとドアベルの音が響いた。
視線だけを動かして見ると、見覚えのある金糸が光っていた。
パチリ。一つ瞬き、食べる手を止め、此方へ近づく彼女へ顔を向ける。
「……どうぞ、おかけください」
社交的な彼女とは対極的に言葉少なく首肯し、目で向かいの席を示す。
小柄の声は男とも女とも、大人とも子供ともつかない、そんな奇妙な声だった。
■シードル > 「ありがとう❤」
許可を得られれば、ストン、と彼女の隣に腰を下ろす。
それと同時に、置かれるミードと、サンドイッチ。
ウエイトレスは、男か女かわからないような人と、その隣に腰を下ろす、長身の女性。
色々と正反対な存在を物珍しそうに見やって去っていくのを、軽く手を振って見送っていて。
「さて、いただきます。」
隣に腰を下ろして、何かを話しかけるかと思えばさにあらず。
彼女が食事をしているので、自分もまた、食事を優先する。
パサついたパンを齧る脇で、お酒を片手にサンドイッチ。
色々なものが売ってるのは、冒険者の店特有なのだろう、とメニューを眺めて。
まずは、静かに隣同士で食事をする、そんな風景があるのだった。
■篝 > 「……いえ」
素っ気ない言葉を返し、程なくして彼女の前に置かれた酒と軽食を一瞥し、また己の前の皿に視線を戻す。
もう一枚、スライスしたパンを手に取りマッシュポテトをフォークで塗りつけ、サク。
互いに無言のまま目の前の食事に舌鼓を打つ時間が暫し続く。
更に、もう一枚。オイルを絡めた焼き魚の身をパンに乗せ、サク、サク、サク……。
もう一枚――
「……何か、ご用でしょうか? ギルドのこと……でしょうか?」
と、手を伸ばしかけたところでようやく口を開く。
視線は未だ皿を覗き込んだままで、一瞬止まった手もまた動き出しポテトと魚を乗せつつ口だけを動かす。
■シードル > 「んー?どっちかというと、知り合いが居たから、的なやつね。
ほら、私、お店やってるじゃない、だから、たまーにこういう風に他のお店の味を見てみないとね?
ギルドって、色々な客がいるから、食事の幅も広いし。」
食事を静かに続けていた所、隣に居る彼女からの質問が一つ。
ん?とサンドイッチを一つ口に運んで、先端を齧り、もむもむ、と噛んで飲み込んで。
ふふ、と楽しげに笑って見せる。
「あと、かわいー、店員さんがいついてくれると嬉しいなー❤とか?」
何処にでもあるような話題。
篝はシードルが経営している喫茶店も知っているはずだ。
味は、可もなく不可もなくで家庭料理よりは美味しいが、ごちそうとか、職人技というレベルでは無いものだ。
気軽に食べて、食べてすぐに忘れられる程度の、美味しさという所の食事で。
シードルのお店のばあいは、食事よりも、それ以外のサービスなので、其れでも良いのだけど。
本当に、混じりけ無しに雑談という雰囲気でしかなかった。
■篝 > 「……なるほど、市場調査の一環。理解しました。
シードルは仕事熱心であられますね。感服です」
機嫌が良いらしい彼女の様子を横目で見て、店に来た理由には理解が出来た。
声を掛けた理由も……一応は、納得した。知り合い、であることは間違いないので。
顔を知っている相手でも用が無ければ近付かない小柄と、社交的な彼女では考え方や行動に差があることも客観的に見て頷ける。
それはそれとして。
可愛い店員をと願う辺り、彼女は師とよく話が合いそうだと思った。
彼女の経営する店を思えば、そう言う意味合いが含まれているように感じてしまい、はっきりとは言葉にしないままにしておいた方が良いこともある、とパンを齧りつつ。
サク、サク、……むぐ、ぐ。
「……私には、わかりかねますが。店員の容姿が整っていることは、喜ばしいのでしょうか?
シードルにとって、『かわいい』は、どんな人物を指すのでしょうか?」
在り来たりな雑談の一コマにしては至って真面目そうな視線と、抑揚のない声で淡々と問う。
■シードル > 「だって、こんな群雄割拠な街の中、周りがどんなことをしているか知ってないと……ね?
料理出すにしたって、流行り廃り、だってあるんだし。」
喫茶店だって、大変なんだからね?なんて、言い含めるように言って見せる。
偶には遊びに来て欲しいし、とも付け加えておこうか。
そういう性格では無い事は、重々承知のうえでもある。
ただ、そういう選択肢があるという認識があるかないかは、大事な所だ。
「大事よ?
可愛いとか、清潔感があるというのは、それだけでプラスになるもの。
大げさに言うなら、同じ味のサンドイッチを食べるにして。
作る人が、可愛い女の子と、汗臭いオッサンなら、どっちの方が食べたくなるのか、という話。」
可愛いと言う物が大事かどうかわからないようなので、お店としては、と伝える事にする。
その次の質問に対して。
「可愛いというのは概念だからね……いくつもあるわ。
例えば、守ってあげたい可愛らしさ、とか。
見目が麗しいという意味での可愛らしいとか。
篝ちゃんだってとてもかわいいわ。容姿が整っている方もあるけど。
放っておけない儚さもあるというか。」
可愛いなんて、一言で言えるものじゃないよねーと。
首を傾ぎながら。
まあ、ちっちゃくて幼い女の子は、総じてかわいいとかになると思うよ。とも伝えて、にっこり笑う。
■篝 > 「食事にも、流行りが。季節の食ではなく、ですか?
……ん、承知しました。また……先生と伺います」
経営者には経営者の苦労がある、と言うことだろう。軽い態度の彼女でも厳しい口調になるのだから、相当なものだ。
付け加えられた言葉は断る理由も無いので、頷いておいた。
一人で店に入る = 情報収集
と言う思考回路があるせいか、遊びに行くと言う感覚も無く。師の供として同行すると解釈しているらしい。
「う? うぅー……。同じ味なら、誰が作っても変わらない……。
金額、味、速さ、態度、同じならどちらでも良い……と、思います」
お店としての営業戦略も、小柄にとっては頭上に幾つも疑問符を浮かべてしまうようなもので。
さっぱり意味が分からないと言うように目を丸めていた。
「が、概念……? ぅー……うー? 難しい……。
守りたい、は庇護欲。小さいもの、スクナとヒテン……と、もそう。
でも、ラファルは小さくて……でも強いから、守りたい……とは違う。
姉弟子だから……かわいい、より……キレイの方が良い?
見目が良い……も、可愛い、こと。
……むぅ。シードルの言っていることの七割が理解に苦しみます」
哲学が始まり、唸りながら何度も首を捻って、最終的に頭をくらくら揺らして両手で抱えるのだった。
■シードル > 「あるのよ、本当に。
篝ちゃん良いこと言ったわ!
その通りなの、季節の食事も又、流行り廃りには影響を及ぼすし。
一人で来るのも、イイかもね、訓練として。」
わかってるじゃない、なんて、篝の言葉ににっこりと笑ってみせて。
ただ、彼女の表情を見るに。
「?」マークがたくさん飛んでいるのが見える。
きっと、知識無い事ばかりなのだろうなぁ、と見て思うのだ。
篝の師匠、影時だったか、あの御仁はとても素晴らしい師だが、一緒に居ると甘えてしまうことも有るだろう。
偶には一人で、食事とかに来てナンパされたりして人生経験摘むのが良いんじゃないかと思うのだ。
「ううん……。成程。
じゃあ、篝ちゃん、貴女のその感覚は、一般的では無いのよ。
世間一般様、普通でいうなら、男のおっさんよりもかわいい女の子のほうが良い。
リピート、アフターミー。」
意味が解らないのだろう、彼女の知識にはないのだろう。
知らないのは仕方ないが、そのままにはせずに、覚えてもらう事にしよう。
一般的には、むさいオッサンよりも、可愛い女の子のほうが良い。
汚いよりも清潔なほうが良い、これは、間違いのない事だから。
「綺麗は、基本的に年上の人よね。
強くてかわいい子だっているんだし、というか、篝ちゃんもカテゴリ的には、強くてかわいい。よ。
そうね、年齢的に成人前は可愛いが多くて、成人後は、綺麗が多いかしらね。
篝ちゃんは、その辺りの常識、勉強したほうが良いわ。
冒険者をするにしろ、他の事をするにしろ、ね。」
とりあえず、リンゴジュースを一つ注文して。
篝の方へと。
頭使ったら、糖分補充しなさいな、と。
■篝 > 「難しい……。考えることが多い、のですね。
……一人で? 用件が無いのに伺うのですか……? 訓練……店の、手伝い?」
明るい笑みで返され、キョトン顔のまま瞬きを二回。
仕事でも、情報収集の為でもなく、遊びを名目にしながら。
だがそれも訓練であると言う。店の手伝いと言う名の訓練だろうか、と首を傾げて。
さっぱり的外れなことに悩んでいた。
ちなみに、情報収集の名目で酒場に足を向けることもあるが、大体がこの風貌のため、絡まれるとすれば酷く酔っ払った者にいちゃもんを付けられる時くらいだ。
ナンパなんてものをされれば、それはまぁ、トラブルを起こし店や周りに何かしらの迷惑をかけることだろう。
「え……。一般的では、無い……?
う、うぅ~……。『お、男のオッサンよりも、かわいい女の子の方が良い』」
強引にも感じられる言いくるめを受けながら、言われるままに言葉を繰り返す。
この様子は、はたから見れば洗脳以外の何物でもなく。
ウェイトレスの女の子は訝し気に眉間に皺を寄せながら、遠巻きに奇妙な二人組の様子を眺めていた。
「カテゴリ。強くて、可愛い子。
そっか……じゃあ、ラファルは、小さくて、強くて、可愛い。
私のことは……置いといて。次に姉弟子に会う時は、そのように褒めてみます。ご助言、感謝します。
成人後、年上……では、シードルはキレイ。……で、合ってる?」
クルクル、くらくら。頭を悩ませながら、何とか“可愛い”の概念を詰めて覚え。
己のことは置いといて、姉弟子と、目の前の彼女を認識の確認として例に挙げ尋ねた。
注文して早々に届いたリンゴジュースを受け取り、軽く匂いと味を確かめてから、
「……頂きます」
小さく礼をして有難く頂戴する。
■シードル > 「食事処に行くのは、食事の用件があるでしょ?
お手伝いに来てくれるなら、大歓迎だけど。」
彼女には人生経験が必要だと感じた。
様々な意味での人生経験を積ませないといけない気がする。
危なっかしい事この上ないのだ、彼女は。
「宜しい。というか……一般常識を学びに来るという理由も良いわね?」
世間はすべてが優しいわけでは無い。
何も知らないままで食われてしまうことだって多く在るだろう。
流石に、知り合いがそういう目に合うのは宜しいとは思えないので。
もう一つの理由もあるがそれは今は語らないでおこう。
「置いておいちゃだめよ。
篝も可愛い、ちゃんと認識しなさいな。
そうね、綺麗と言ってくれると、嬉しいな❤」
にっこーと、微笑みを浮かべながら、なんとか学んでいる様子の彼女に頷いて見せる。
其処に、疑問符が出なくなったりとか、すらすらいえるようになれば一人前だろう。
リンゴジュースを飲む様子を眺めて。
シードルはエールを一口口に含む。
「篝ちゃん。
何度も言うけど、本当に一般常識は学びなさいな。」
それは、生きる上で一番大事な情報だ。
こればかりは、もっとちゃんと教えてよ師匠さん、と。
今この場に居ない影時に当たろうと思う。
■篝 > 「用件が、食事……なるほど、食事自体を目的にする。……でも、――いえ。
では、手伝いに。また店に伺います、その時はよろしくお願い致します。
食事は必要な時に何か口にして満たせば良い。最悪、木の実や道端の草でも良い。
そう言う片寄った思考から師が導いてようやっと食に興味と楽しみを覚えるようになったものの、一人になれば物を選ばず適当になる。
一人で外食をしても物足りないと感じるのは、師に甘やかされ過ぎた結果だろうか? と、浮かんだ疑問を飲み込んで返事をし。
「一般常識はあります。お金の数え方、馬車の乗り方、者の飼い方、善悪の判断もできます」
失敬な、とでも言いたげに目を半目にして言い返す。
何も知らないわけでは無い、と言いたいようだが……。はたして、食い物にされるかどうかは、相手の口の上手さ次第か。
意志と理性は強いが、如何せん素直すぎて騙されることもたまにある。難儀なものだ。
彼女が思うもう一つの理由とやらに気付く素振りも無く、小柄はフードの下の耳をペタリと伏せて。
笑顔ながらもお説教染みた彼女の言葉を聞き流し。
「ん、理解しました。シードルはキレイ、です」
優しい甘さのリンゴジュースに癒されながら、コクコクと二度頷き。
「……常識はある。社会のルール、国のルール、貴族のルール。ちゃんと知ってる」
繰り返される忠告も聞いてはいるが、深刻には受け止めていないようで、美味しそうにリンゴジュースをチビチビと飲み進めている。
マイペースと言うのか、楽天家というのか。それとも阿呆なのか。
小柄は彼女の親切な忠告に「わかってるー」と頷くばかりだった。
■シードル > 「私のお店は、喫茶店だからね、食事の為のお店なんだから、用事となると、そうなるでしょう。
手伝いは待っているからね。
あと、私のお店は別のモノも、有るから…ね。」
何かを言い淀んでいる様子だったのだけども、さすがにそこはつっこまないようにした。
しかし、彼女が何かを思い直したりする様子も有ったので、良い傾向だと思ったのだ。
「んー……。
じゃあ、可愛らしい事に対しての認識は?
人の容姿に対しての判断基準、美醜とかは?
先程、私が問いかけた常識を理解してなかったわ、ね?
ああ、もっと大雑把に言って。
人間関係に関しての、常識、とかは?」
じー。と見つめて問いかける。
常識があるという彼女の言葉に対しての常識は、とてもあるとは言い切れない。
人と会話をするのが、上手かどうかと言えば、そういう風には見えない。
それにいま彼女は、あからさまに聞き流しているように見えるのだ。
ああ、これは、よろしくないなぁ、と。
■篝 > 「……別のモノ。ああ、うん……。そっちは、手伝えない。
けど、注文を取ったり、運んだりは出来る。ので、そちらで使ってほしい……です」
食事処以外の別側面は聞き及んでいるので、直ぐに合点が行き首を横に振った。
それに、耳は良いし、テキパキと動き回る方が性に合っているので、考えるまでもないわけで。
「可愛らしい……。小さい動物とか……女子供は喜ぶと、認識しています。
最近は、私も少し……わかるようになりました。飛び掛かりたくなる、よりも……撫でたりする方が、良いと。
人の容姿……。怠けたるんだ身体よりも、鍛え上げられた肉体の方が美しいと認識します。
顔は……んー、人それぞれ……と、言われるので、判断は難しいです。
……あ、でも。人形のような容姿、容貌は美しい、愛らしい、と判断できます。
――む、むぅ。汗や汚れたまま飲食に関わることは良くない、と理解しましたが。
可愛いことはそこまで重要視すべき事……とは、考えにくく。多くを望み過ぎることは、欲張りではないですか……?」
ぼんやりとコップの中に映る緋色を見つめ、また少し考えながら言葉を紡ぎ。
不意に顔を上げ振り返る。ストールで覆い隠しフードで覆った顔の中で、唯一見える緋色が真っ直ぐに彼女を射抜く。
「主の命令は絶対。何を持っても死守する。
これが、常識」