2025/09/28 のログ
ご案内:「蓬山郷 僻地」に睡蓮さんが現れました。
睡蓮 > 北方帝国、その領土の中でも仙人、真人が遊ぶ、とされている深山幽谷の、その片隅。
水源地のほとりに半跏に爪先を水に沈める仙姑の姿があった。

明かりはなく。ただ仄かな水の揺らめきの反射に白い面が浮かぶ。
木の枝に吊り下げられた振り香炉から燻ぶ香煙が細くたなびいて周囲を揺蕩う。

「─────……。」

白を基調とする、重ねた襦裙の裳裾が、水に濡れるのもさして気にしない様子。

流れ、零れ落ちる水の音。
冷涼な水の香りと、深い土の香り
浮花がつい、と流れに揺れる。

今ここに広がるのは、静謐を帯びた情景。

伏し目がちの双眸。降りたまつ毛が頬に影を落とし。

結いもしない癖のない白い髪が、肩から背へと零れ落ちる。


爪先を水面に沈めているというのに波紋一つ起こすことはなく。
ただあるように流れゆく水との調和を崩すことはなかった。

水辺特有の湿度を孕んだ重く冷たい空気の流れも。
仙姑自身が燻らせただろう煙すら。
唯々、あるがまま。無為自然の様相として。

それはまた、人間(ジンカン)で煙の如く揺蕩う仙姑の姿とはまた別の一面なのだろう。

睡蓮 > 伏せていた瞼を上げる。
色彩の淡いその中でひと際彩となる金色の眸。

融け込ませていた意識を手元に戻すように、その眼差しには意思が宿り。

水面に浸けていた足を引き上げれば当然波紋が広がってゆく。

止まっていた時間が動き出したかのような刹那。
胸を開くように背筋をそらして。

「─────嗚呼」

淡く色づく唇が開く。

────軽くかぶりを振って、身を引き起こす。
さらさらとした軽い衣擦れの音を伴いながら。

水辺の木の枝に掛けた振り香炉を手に取ると、元のように腰に下げ。
しゃりん、と硬質の金属装飾の音を揺らし。
煙を揺らしながらその姿をさらに深い場所へと沈めていったのだった。

ご案内:「蓬山郷 僻地」から睡蓮さんが去りました。