2025/08/22 のログ
アビール > 「先生こそ縛っても意味がない、とは思うのですが。」

目の前の彼も時折縛られるという告げる様子。
その部分についてははて、とひと思案。
目の前の彼は、行けると思った時しか行かないし、イケナイと思ったときは帰ってくるだろう。
だからこそ、縛るの意味が良く分からない。

強いてあげれば、別パーティの餌として得物を残しておきたいというのもあるけれど。

「まぁ、飼われるつもりはないので、面倒を見るのが嫌になるまでは続けます。
嫌になったら断ればよいだけの話ですから。」

嫌なら断る。当然の事なのだが、これを出来ないものも多い。
結果、ずるずると続けてしまって病むものも多いのだろう。

そういう意味では、確かにアビールに世話役は向いている。
元々世話を焼くこと自体は嫌いではないし、嫌なら嫌と突っぱねなれるから。
とはいえ、彼の言葉の意味も分からないはずもない。

「そうですね……アリージュと違って、私は職種的につぶしがききませんから。
同じくらいの腕前のものを探すとしたら、長期間の討伐になるでしょう。
それであれば、アリージュと組みますので、そういう意味ではあまり意味がないかもしれません。

……まぁ、私は幸い、師には恵まれていますので。
いざとなれば、試合を願うまでです。
影時先生も良いですし、別の先生でも構いません。
多少、すっきりする程度の本気を出せる相手に恵まれるというのはありがたいことです。」

そう、アビールが求めるものは、別に冒険出なくても手に入るのだ。
誰かとの試合でも。勿論、目の前の彼も場合によっては相手役としては的確だったりもするのだった。

「もし、たまった時は、アリージュと強力な敵、もしくは数の多い群れの討伐依頼を探します。
それが叶わぬ時は、八つ当たりの相手にでもなってください。」

結構なペースで続けた食事。
痕は酒を飲む時のつまみテオ度だけが残る状況。
そこでようやくエールをやめて、スパークリングワインへと切り替えた。

影時 > 「縛られたら他所のツテを探す――というのは簡単、だがな?
 だからと言って、このギルドでの貢献度を疎かにするのも、後々面倒臭いことになりかねん気もしてな」
 
荒稼ぎを防ぐ以外に、縛る理由は対面の席の姿とほぼ同じ。
後進、後継を育てておきたいという意向。
元々ギルドからの出向、応援的に学院に臨時講師を出していたが、その欠けが出た際に宛がった男は教師としての籍も後に取得した。
であるが故に、現場判断も出来、尚且つ生還率が高い教導役としての役柄もさせたいのだろう。

「ン、だな。それが良い。
 嫌になる……手前位で判断するように気をつけとくと多分大丈夫だろうよ」
 
嫌と思ったらイヤという。当たり前にしたい事だが、これがまた意外と難しい。
冒険者業は縛りこそ幾つか設けていても、基本は自由業だ。
自己責任云々を言い出すなら、自己管理的に頼みを断る自由だって、担保していて然るべきである。
だよな?と水を飲み、何か食べるものがないかと顔を巡らせる二匹に問えば、目を瞬かせる姿が卓上に生じる。
“いやなものは”“イヤー”――とでも言うような意識統一が、きっとあったのだろう。
ぴこんと形違いの尻尾を二匹は振り立て、アビールの方を見上げてゆく。

堅固(カタ)い盾持ちというのは、確かになぁ。結構長いつもりだが、中々お目にかかれん。
 ――まーそうなるわなぁ。変に誰かを組むなら、アリージュお嬢様と組んだ方が絶対的に間違いない。
 後は欲を出すとすれば、その場その時で足りなそうなものを補う位か。
 
 ……嗚呼、好いねぇ。
 そういうお誘いってのは大好きだ。いいとも。身が空いていたら、幾らでもノってやるともさ」
 
潰しが利かない、というのは希少と言い換えても良い。
金剛不壊の盾――なる言い方は過剰でも、盾で防ぎ、更に打ち払い、打ち砕くような戦い方は、頼り甲斐がある。
下手に防ぐなら、注意を向けて囮となれば良いと思う己とは、また違う在り方は大変好ましい。

後はどれだけ気に揉むことと相対して、気を休めたり、気分転換などができるかどうか。
手合わせでそれが出来るなら、己の鍛えの意味でも手合わせは大歓迎の一言に尽きる。
師匠を名乗る者が、己の武技にいつまでも胡坐をかいていられるものではない。鍛えは弛まなく続くのだ。
強い酒を氷を浮かべて割り、吞み、食いつつ、闘いの予感にニィ、と口の端を捩じり釣り上げる。

「――食い物の注文は、まぁ、良いか。酒はまだ少しいけるかね」

気付けば後に残る食べ物はつまみ位か。
くいと酒杯を干し、手酌で火酒を注ぎ直しながら問おう。

アビール > 「そういう意味で面倒くさいのもありますが、ここまで積み上げたものを自ら放棄するのももったいないというのもありませんか?」

告げた言葉と小さな笑い。ある意味、面倒を見るのが好き以外であえて続ける理由はそれでもある。
ここまで便宜を図ったやった分、無理を言わせてもらいやすい場所になったとも言えるのだ。

「はい。それはその通りで。
出来ることを出来る限りに、出来るまで。
……NOを相手をの関係を悪化させずに伝えられるのは、私だからこそでもありますから。」

妹は、大分自由人だ。そういう意味では、彼女のNOは周囲を傷つけてしまうこともある。
嫌なものは嫌だという意味では同じだとしても。
もちろん、敢えて傷つける必要がある場合は、アリージュに出て行かせるときもあるのだけれど。

そうこうしていれば、見上げてくる二匹。
しばし小動物どもと視線を合わせていたが、ふわ、と柔らかい笑みを向ければ、そっと指を二匹の前に差し出してみた。

「はい。結局は、組む相手の最適はアリージュなのですから、そちらを探すよりも、別アプローチで回想する方が健全だと思っています。

はい、是非に。出し惜しみ無しが出来そうなお相手は大歓迎です。」

出し惜しみ無しの全力を向けられるのなら、今ちょっとした制限があったとしてもどうという事はない。
仕事に不満があるのではなく、武器を振るえないことに不満があるのだから。
いざとなったらそうすればよい。そういう意味では本当に、師には恵まれていると思う。

己が装備の見た目通り、正統派の戦士、とだけしか見えなかった者は、大抵代償を払うことになる。
パワーも人竜ゆえに相当にあるが、それ以上に不思議なテクニックの方が自分にとっては有意義だと思っていたから。
そして、そういう誘いで笑って見せる彼だからこそ、楽しめるというものでもあった。

「……はい。十分食べましたが、余るようなら浚う程度なら問題なく。
酒は、まだ入ります。」

食も酒も、大分底なしとも言えそうで。
でも、限界まで食べずとも問題はないし、そこまで続けても問題はないのだと。
酒は多少酒精が強いものに切り替えたけれど、どちらかというと、アビールはザルなので、何を飲んでも変わらない。
それでも、美味しく楽しく飲むのは好きだった。

影時 > 「――そう、全くそれに尽きちまう。勿体ないと思うからこその骨折り、だぁなぁ」

確かに、と。縛りこそあれども、文句を言いながらこなす理由はまさにそれに尽きる。
積み上げ、培ったものに意味がある、手放せぬ重さがあるうちは、無駄にしてしまうのは惜しさがある。
其れをギルドが認めているからこそ無碍にし難い。記録されている実績とは、馬鹿にならない。

「其れで良い……と、先達として頷いてやろう。云えてる内は過つまいよ。
 って、あー。さりげに相方を劇薬のように言ってないかね、ったく。」
 
この姉がいて、あの妹がある、かの如く。言葉は使いようだが、時と場合を誤ると面倒なことになりかねない。
その辺りのフォローを己が等と思うと、余計なお世話の大変悪い見本となる。
経験があるなら、二人でどうにかしうる――とは思うが。
苦笑交じりに肩を竦めつつ、アビールの顔を見上げる二匹の毛玉たちの様子を見る。
飲み食いの席でもあり、じゃれついたりはしないが、差し出される指にとててー、と走りより、頬や額を擦り付ける。
警戒げに尻尾が揺れたり、振られたりしないのは、知己として気を許している証左だろう。

「その辺りは俺も文句も付けようがない。付けたら、どうなるかも含めて、だ。
 刃を交えたくなったらお屋敷に手紙だか、雇い主殿経由で声をかけてくれ。
 ……俺は俺で、アリージュお嬢様側の稽古やら何やらとか、気がけておくとしよう」
 
二人がかり双子掛かりで全力をぶつけ合うとしたら、と思うと――ギルドの稽古場では不足になりそうだ。
魔法的な異空間やら荒野やら、然るべき場が必要かもしれない。
人は誰しも見た目から判断しがちだが、そればかりで立ち行かない生業が冒険者である。
ただの盾役だけで済むとは思うな、だ。振るうエモノが見せる驚異は、ある種の不条理めいたインパクトがあることをよく知る。
そんな二人が揃った場合の脅威度を増す稽古は、命取りではないか? とんでもない。それ位無ければ張り合いがない。

「心得た。んじゃまぁ、今後の良き冒険を願って――乾杯といこうかね」

まだまだ食えるし呑める。だが、気分的には食べるよりも呑みたいところだ。
注ぎ直した酒を湛えた杯を軽く持ち上げ、改めて乾杯を求めながら声を放つ。
もう少し呑めるなら、心行くまで呑んで、明日に備えよう。

アビール > 「そのように囚われると知っていながら、つい勿体ない、と尽くしてしまうのですよねぇ。」

それは相手の手の内か、とも思えるが、同時に相手からみてもこちらの便宜を図らねばならない理由になる。
そういう意味では持ちつもたれつなのだろう。持ちつもたれつな関係は、何だかんだで心地よい。

「ありがとうございます。先達に、よし、と言ってもらえると心強く。
ええ、劇薬ですよ?……シチュエーションによっては私の方が劇薬になることもありましょうけれど。」

コロコロと鈴が鳴るような笑い声。
ある意味でそれぞれの一面であることに相違はないが、同時にデフォルメされていることもあるのだというかのよう。
結局、竜の逆鱗に触れれば劇薬になるのだと。
結局は、陰陽一対の双子なのだ。
何だかんだ上手くやっていくのだろう。

毛玉が指にからんでくれば、心地よさげに軽くくすぐってやるように動かして、共に遊びあっているかのよう。
そう、毛玉と遊んでやっているのではなく、自分も毛玉に遊ばれるくらいがちょうど良い塩梅だというかのように。
そういう意味でも相性が良いのかもしれない。

「はい。お声がけは、そのようなルートで。是非、お願いいたします。
私がこちらの仕事が多くなってしまっていて、あの子も少し溜まっているものもあるでしょうから。」

妹に気をもんでくれることはとてもありがたい話。
もう少し減らした方がいい肝しているのだが、バランス取りは、今少しの課題だろう。

そして、双子は二人で一人の呑尾竜。2人そろったときはあらゆるものを自在に動かす。
物理も、魔法も、空間さえも。
お屋敷も良かろうが、もし、3人で2対1、もしくは彼がもう一人連れて来て2対2になるのだとしたら、
きっとアリージュが空間位相をずらすことだろう。
ずらし方によっては、そこから見えているのに、周囲に攻撃影響は及ぼさない、とか。
それはそれで、ギルド等では面白い見世物かもしれないが。
やっている方はともかくとして。

「ええ、今日はお会いできてよかった。多少は荷物が軽くなりました。
……結局は、つい苦労を背負ってしまう苦労人共に。」

最初の彼に向けていた言葉が変化する。
結局は己も似たようなものだと冗句めかして笑うかのように。
そんな二人に乾杯を。
まだまだ酒を楽しんで、もう良い頃合いか、と思った頃にそれぞれの塒へと帰っていく。
そう、きっと明日も良い日だ。

影時 > 「良いように使われてやるから、その分――なーんて、な。
 それが出来る余地がある者ってのは、そうは居ない。どうにか押さえておきたいンだろうさ」
 
依頼に条件を付ける方も、付けられる方も、である。
意図がある動きなら、妥協点、譲歩点を見出して、益を見出さないとやっていられない時がある。
それが持ちつ持たれつだ。あれやこれやと条件を付けると嫌がられるので、加減は必要だが。

「どういたしまして、だ。
 お前さんらのような子は、トゥルネソル家に世話になってから幾人も見てきた。
 故に、というと己惚れ過ぎだろうが、こうして見守ったり認めたりするのは、大事なことだろうよ。
 
 ……ったく。遊び札の表裏じゃねェんだから、時によっては穏便に、な?」
 
この家、この一族だから、というのもあるだろう。生まれてすぐオトナになるような子は経験面で時折心配になる。
それだけ才能に溢れているにしても、人生経験、生きている年数の面ではどうだろうか。
伝え聞く、見守る限りだと十分に苦労を味わい、嗜む場面が多いように思う。
なまじ頑強である故に、ということがあるならば、それが過ぎないように抑えることも必要だろう。
一先ず、余計な心配はこの具合なら大丈夫だろうと思う反面、対の双子らしい有様に肩を竦めて笑う。
毛玉達は夏毛でもふかふか振りは変わらず、擽って貰えれば気持ちよさそうに、尻尾や耳を震わせ身じろぐ。
指にしがみついたりしてゆけば、勢い余ってこてんと転がって、仰向けになったり。

「承知した。そういう時もある――で済ませて良い塩梅を超えるなら、放ってはおけねぇからなあ」

己も色々ある。色々抱えている。それでも本業たる家庭教師の仕事には可能な限り時間を割いている。
片割れが思い通りに動けないようなことがあれば、様子見だって必要だろう。

そう。彼女たちは二人で一人の呑尾竜(うろぼろす)である。
そんな者たちと渡り合おう、手合わせしようとするなら、達人たる忍者とて周囲の様相を気にかけていられない。
単なるお遊びのつもりが、その実大惨事となるのなら、下準備を整えなければどうなることか。
 
「俺もだ。……つくづく、笑っていられるうちが華ってことになるが、お互い気をつけていこうな」

楽める苦労とは相反するものでも、結局何だかんだと負ってしまう。
性分だろうなあ、としみじみ考えては笑いつつ、杯を掲げてもう一杯。さらにもう一杯。
遊びつかれた毛玉がこてんと寝こけ出す位を潮時に、勘定を済ませてそれぞれの帰途に着くだろう。

明日も、その次の日もまた、良き日であるように――。

ご案内:「平民地区/冒険者ギルド」からアビールさんが去りました。
ご案内:「平民地区/冒険者ギルド」から影時さんが去りました。