2025/08/21 のログ
ご案内:「平民地区/冒険者ギルド」に影時さんが現れました。
ご案内:「平民地区/冒険者ギルド」にアビールさんが現れました。
■影時 > ――夜を迎える冒険者ギルド。
平民地区に点在するうちのそこは、出入りの数の傾向こそあれ、人が絶えたことがない。
人とは、交代制の受付、事務員たちのことばかりではない。
朝出かけて夜戻るもの。黄昏時に出かけて黎明時に戻るもの。請ける内容で様々だ。
陽を追いかけて月に追い立てられるもの、とでも、吟遊詩人ならばこう語るのだろうか。
そうかもしれないし、そこまで華々しくもない。詩になるような武勲なら、それこそもっと華のある者に任せたい。
己も弟子も、今は色々あって名を馳せるような類は気乗りしない。むつかしい。だが。
「……――ん?」
華になりそうな者は、居るところにいるものだ。
学院の講義を終え、ある貴族の屋敷、昨今登録した盗賊ギルドの出先と打ち合わせがてら歩き回り、気づけば夜を迎える。
夜の平民地区の雑踏を歩き抜け、通い慣れた冒険者ギルドの掲示板を眺めていれば、不意にかかる声がある。
誰か? 考えるまでもない。昨今出来た知己であり、顔見知りである。
一仕事終えた後らしい様相と空腹具合を思えば、どうするか。至極単純。――こうするのである。
「――アビールお嬢様の日頃の武勲を称え、かんぱァーい、と」
呑むのだ。冒険者ギルドに併設された酒場に幾つも並ぶ卓の一つを陣取る姿のうち、背のある男が酒杯を掲げる。
それに倣う姿は卓の上にふたつ。小皿に盛られた野菜スティック、並びにナッツをそれぞれ持つ二匹のシマリスとモモンガだ。
一人と二匹は似たような意匠の白い羽織とミニ法被を纏い、それぞれ違うものを持つ。
飼い主は麦酒を満たした木のジョッキ。シマリスの方は剥きクルミ、モモンガは新鮮な人参スティック。
掲げ、打ち合わせて、ぐびぐびぐび。ぶはぁ。昨今の麦酒の流行りは魔法で冷やした仕立てだが、これが美味い。
■アビール > ちょうど、ギルドの前で今回も冒険の付き添い依頼を終えて、パーティメンバーと別れた所。
白兵型であり、盾役もこなせるがゆえに、結構ギルドに便利使いされている双子姉。
本来は、攻撃役の方が向いていると自身では青持っているのだが、そもそも低レベルクエストであり、駆け出しのお守りであれば
向き不向きも関係なく出来てしまうのだから仕方がない。
ただ、そうなると妹との冒険の機会が減ってしまうのが悩みの種なのだが。
さて、それはさておき、家に帰るか、何かをするかとひと思案した所で偶然目についた御仁。
こんな所でみかけるのは、アビールにしてみれば珍しい相手故に、気にせず近づいて声をかける。
声をかけて、お互いの状況を確認し、その結果は……
「……影時先生の、楽しんでいる気苦労に、乾杯。」
口下手ではあるが、ジョークを口にできない程ユーモア欠乏症でもないし、コミュニケーションが致命的に下手な訳ではない。
ただ、ひと思案、ふた思案してから言葉を紡ぐために、口下手、内気、人付き合いが苦手、と思われがちなのだ。
なので、これくらいの軽口は普通に口を突いて出る。
エールの入ったジョッキを軽く打ちあわせて、酒杯を煽っていく。
瞬く間に半分程度を一息で干して、ふぅ、と一息。
小動物向けのつまみのほかにも人向けのつまみもちらほらと。
冒険者であればどうにも肉主体に並びがちだが、アビールに注文を任せてみると、
普通に肉、魚、穀類、野菜、果物とバランスよく揃っていた。
……流石に1人、人竜がいる故に、2人で食べるにしては多い量が並んでいるが。
■影時 > 付き添いの依頼の大変さ、或いは面倒さ加減は男もよく知る。
それらは冒険者ギルド経由で受けた依頼よりも、王立コクマー・ラジエル学園の校外演習で思い知ることができる。
先触れとしての偵察、露払い、仕損じた際のフォロー、緊急時の殿等々。
非常に危機的ともいえるケースは多くはなくとも、いけるいける、まだ行けると突き進む生徒の手綱を引くことの何と大変なことか。
校外演習に出かける者の性質、事情によっては、倦厭したがる教師や講師も少なくないだろう。
そうした面倒を引き受けることは、ある意味恩を売れる、実績を積めることにも繋がる反面――、やっぱり面倒だ。
「……愉しめてるうちが花、とも言うがねェ。
最近、どうだね。その顔を見ると――色々言いたい事とか、溜まってそうだが」
口下手でも気にはしない。面倒を見る、気をかける子女の性格はよくよく把握している。
気質的な面もある。最近の新顔的な相手は双子であり、片割れが居ないと……みたいな点も大いに在ろう。
とはいえ、とことん致命的なまでにコミュニケーション下手な類ではない。よくよく考えるから、という処か。
出てきた言の葉に、クハ、と嗤い、前座的な麦酒をあっという間の勢いで飲み干してゆく。
そうして合間に摘まむのは、冒険者のありがち的に偏った食事ではなく、取り合わせに配慮したと云わんばかりのメニュー。
量こそあれ、こういう時だからこそ、という点も大いにある。
魔法の鞄や魔導機械式の炊事具などあっても、配分を考慮した食事は旅先では実に大変。
野菜とナッツを喰らう二匹が、合間に水を舐める姿を横目に、次の酒を頼みつつ尋ねてみよう。
■アビール > 「……そうですか?私の目には、その面倒事すらをも楽しんでいるように思えるのですが。
私、ですか。……まぁ、まぁ。多少は。とはいえ、これもまた大切な仕事ですし。」
ギルドの意図も、意向もまぁ分かる。
ギルドにしてみれば、動ける冒険者を増やすことで収入が、売り上げが上がっていくのだ。
ならば、新人を大切に育成したい。
だが、大切にしすぎて育成が遅くなっても持ち出しが増える。
ならば、それが出来るものに絞って育成をさせればよいということ。
それは、分かっているのだ。
「……それでも、まぁ、何か言いたいこと、と言われるとすれば、
武器を武器として振るわず、打ち払い、打ちとめる使い方ばかりには、多少の不満とも。
それと、致し方ないことではあるのですが、アリージュと共に冒険に出られないのも。」
不満は二つ。ひとつは好きに武器を振るえないこと。
正直、今の依頼を完遂するだけなら一人でも十分にこなせるのだ。
でも、新人に経験を稼がせるために、自分は前に出て、致命的な攻撃を受け止めて打ち払うことに特化している。
出来るし、容易いのだが、もどかしくも思う。
それでも、完遂してしまうのは気質なのだろう。
そして、妹と共にこの冒険に出たとすると、ほぼ確実に新人はついてくるだけになる。
この双子は、2人共に行動した時に、100人分とも、1000人分とも仕事をしてしまうのだから。
そのように言葉を紡ぎながらも食事には普通に手を付けていく。
所作は美しく、口に物を入れながらしゃべったりはしないものの、
良く上手に話しながら食べられるものだ、というのは感心する部分かもしれない。
■影時 > 「嗚呼、その面倒もな――大雑把に二つに分けられてな?
愉しんで嗜める奴と、そうでねェか、だが。
どれだけ面倒でも積み上げ、集めていけばいい結果が見られるなら、勿論前者だな。後者については……色々考えなきゃならん。
大切とは言っても、あンまり溜まるのは心地良くは無いわなぁ」
大雑把オブ大雑把な分け方だが、諸々置き換えて、喩えて考えるなら理解が届きやすいかもしれない。
例えば小銭を少しずつ溜めて、高価な武具を買いたい――といった、初心者にありがちの欲求だ。
頑張れば報われる、と云っても良い。だが、そうではない場合については、向き合い方、視方をよく考える必要がある。
今酒を呑み交わす相手の場合は、どうだろうか。
ギルドの意向は理解も出来る。初心者の生存率を上げ、将来的に定着出来るようにしたいのは尤も。
ここで問題がある。偶に己も云われることがある。過保護すぎでいないか?とも。
「あぁ、あるある。盾持ち、盾役にありがちの奴だ。
そういう者と組む時、矢面に立ってくれンのは有難いの一言に尽きるが、偶には……だよなあ。
っクク。どっちかと云や、アリージュお嬢様と一緒に動けねェ方が先立ちそうじゃないかな?ン?」
己は役割分担として盾役よりも囮役、として勤めることはあるが、難攻不落であればあるほど思うこともあるだろう。
経験を積ませるために、敢えて前に出ないといけないという意識は、変な動きを強いるタネにもなりかねない。
現状、それでもしっかり仕事を完遂してしまえる分だけ、ギルドがまた仕事を頼むという循環が起きていないだろうか。
その点は心配になる。しかも、それが本来あるべき、一番安心できるペアを組めないという心的な負担もあれば余計に。
そうと思えば少しからかい交じりながら、弄ってみるのも、どうだろうか。ガス抜きになるだろうか?
そう考えつつ、声に出せば、テーブルの上の二匹の毛玉が手と口を止め、呆れがちに己を見遣る。
そんなさまに「だってなぁ?」と声をやりつつ、運ばれてくる氷を入れたグラスと陶製の酒瓶を受け取り、中身を注ぐ。
対面の席にもつん、と薫る位に強いそれは、ドワーフ仕込みの火酒。生で呑むのも良いが、氷で少しずつ割って呑むのも良い。
■アビール > 「……それでも、ギルドはアリージュに頼まなかったもう一つ理由があるのでしょう。
そして、その理由が故に、私が選ばれていて、私だからこそ続くのです。
……それに、最近はアリージュも、別の方との冒険も楽しんでいるようですし。」
苦笑めいた笑顔ではあるが、それでもまだ笑顔は浮かべることが出来るようだ。
そして、エールのお代わりがやってくれば、またエールを水のように飲みながら食事を続け
「……私だから、ギルドに適度な無理を言えるのです。
溜まりすぎたら、別の仕事を要求しますし、そこまででなければ、武器の稽古役としての仕事を求めます。
前者であれば、アリージュと共に迎えますし、後者ならば、本気は出せぬまでも武器を武器として振るえますから。」
さらり、と言ってのけるのは、爆発する前に自分でコントロールしている、ということ。
そして、そういうコントロールは確かに妹よりは姉の方が向いているだろうというのは彼も共通認識が持てるやもしれず。
「それに、アリージュは私といっしょではなに時にもっと動けるように、先生に鍛えてもらう時間も必要ですしね。」
双子は二人でいるときは、お互いの能力の一部を使えてしまう。
だから、妹は自分の運動能力を使えてしまうのだ。
それが普通と誤認してしまうと色々問題もあるし、個人的に動けるに越したことがないから、こういう言葉にもなる。
逆に、アビールは魔法が使えても元々奥の手以上に使うつもりがないことから、ソロでもあまり影響が出ないという部分もあるだろう。
そういう意味では、大分真逆の双子ではある。
■影時 > 「俺も最近、独りで難度のある所に行かせねえように縛られてる節があってなぁ。
……とは言え、俺は兎も角、若いのが面倒を強いられてるのは良い傾向とも言い難いか。
ほほう?分かるのか――いや、俺が尋ねるまでもねぇか。」
理由、理由か。考えれば幾つかは思い浮かぶ。魔法使いという役割に求めるもの、望めるものがヒントか。
己の場合、一応は秘している戦種、スタイルがその理由だろう。
単独で遺跡の深い処まで潜り、生還する遣り口を為し得る理由は、隠形の技による接敵回数の低減にある。
同時に発見する宝箱を、魔法によるプロテクトが無ければ誰の手も借りずに開錠し、総取りする。
そんなものを高頻度で遺跡や迷宮に潜るなら、野放しにし過ぎるのは――まずいと。
だが、己よりもせめて配慮はしてほしいものだ。或いは、例えば己と組むなら、多少は気晴らしにもなるだろうか。
苦笑めいていても、一応は笑みを浮かべる相手の句に、ほう、と目を見開く。
その問い自体が野暮の極みかもしれない。二人でひとつのような特色があればこそ。
「成る程? ……だが、面倒ばっかりってェのも、合間を置くにしても滅入りそうだな。
例えば、そうだなァ。一番の理想は置いといて、アリージュとは別に組める、組みやすい誰かとか居ないのかね?」
自己制御ができる、というのも此れは此れで良くもあり悪くもある。
どちらかと云えば――という共通認識は確かによく理解できるところであるが、もう一つの考え方も必要だろう。
初心者の手伝いとは別に、臨時も兼ねてそこそこの歯応え、或いは高難易度等も対応出来る知己。
「――……それも確かに必要、ちゃぁ必要だが、アビール自身の鍛えが相互作用的に有意義にも働くだろう?
二人で組む際の凄まじさは俺の想像の埒外を超えるが、出来ねえこともあるわな。鍵開けとか」
そう。その意味であれば一番理想というのは、双子を揃えることで。
その際の動き、異能ぶりはこの己すら色々と驚愕の坩堝に呑み込まれる。双子特有の共振、共鳴めいた様相も。
しかし、二人にはまだできない、足りないかもしれないものもある。
火力でのごり押しとは別の繊細、器用さを問われる作業。鍵開け、罠の解除といった方面の技能。
二人に教えれば、持ち前の器用さ故に出来るかもしれないが、此ればかりは性格にもよる。