2026/02/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/宿屋兼酒場『ザ・タバーン』」にヴァンさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/宿屋兼酒場『ザ・タバーン』」にナイトさんが現れました。
ヴァン > 酒場兼宿屋『ザ・タバーン』の一階はやや特徴的な造りをしている。
入り口を入るとすぐ左側に宿屋の受付、カウンター席、そして料理の提供口が連なり、正面の上り階段へと続いている。
階段は客室フロアへと繋がり、右側にはテーブル席が並ぶ。丸テーブルはなく、二人掛けをくっつけて四人掛けにしている所が多い。
宿泊客はカウンター席とテーブル席の間を通って客室へと向かうことになる。

一番奥のカウンター席は銀髪の男が座ることが多い。指定席とまではいかないが、空いていればまずここに座る。
今夜も男はスタウトを片手に食事を摂っていた。つまみというにはやや量が多いタコとサーモンのマリネが皿に盛られている。
左手には紙の束。仕入れられた情報に目を通しているようだ。時折視線が玄関へと向く。
得ている情報をどう伝えるか、思い悩む。場合によっては煽ることになりかねない。

ナイト > この店を訪れるのは二度目になるか。
以前と変わり無い賑わいを見せる店内を見渡して、カウンターの一番奥に見知った顔を見つければ、軽い足取りで迷いなく其方へと。
黒い髪を靡かせ、コツ、コツ、コツ、と踵を鳴らして歩み寄り、慣れた調子で声を掛ける。

「何だか浮かない顔ね、せっかくの料理が不味くなるわよ?」

仕事中らしい左手の紙束と美味しそうなマリネを一瞥し、肩を竦めて苦笑する。
そして、カウンターの隣の席を人差し指で軽く叩いて。

「お隣良いかしら?」

口で尋ねながら、既に椅子を引いて座る体勢に入っている。断りを入れるのは建前だけだ。

ヴァン > 来店客を見て、おや、と呟く。
近日中に赴かねばと思っていたところだ。都合が良いが、準備不足とも言える。
少女の軽口には、つられるように肩を竦めてみせる。
カウンターの向こうから店長がメニューを差し出した。と思いきや、もうエールを注ごうかとジョッキの準備をしている。

「構わんよ。前、剣会の件でドレスについて話をしただろう? ちょっと何人かに聞いてみた。良い話と悪い話がある。
良い話は、最近は剣会にドレスで参加する女性はそう珍しくないそうだ。ただ……」

言い淀む。おそらくこの言い方ではドレスを選びそうな気がする。

「悪い話。ドレスを着用するのは、同じく騎士の配偶者や恋人がいるか、あるいはそんな間柄候補を探す人がほとんどらしい。
騎士として立身出世を、と考える者は昔ながらの騎士服参加が多いと聞いた。
それと、『パートナーを探す』姿は、ごく一部の目には『男漁りにきた』と映る、らしい」

伝聞系は人の主観が否が応でも混じる。一概に悪いとは言えないが、実態を掴むのは難しい。
十年以上ぶりに参加する会について、憂鬱は深まるばかりだ。

「ナイト嬢は何か得られた情報はあるかい?」

ナイト > 手渡されたメニューを愛想良く受け取って、隣の声に耳を傾けながら何か肴を頼もうと一覧に目を通す。
脂ののった魚も良いが、定番のベーコンやポテトも捨てがたい。うーむ、と小さく唸りつつ。

「そう、珍しくないんだったら―― ……あー……、うん。なるほど。そういう、こと。
 それはそれで面倒くさいことになりそうね。はぁ……っ、どうりで……」

話を聞いての第一声は喜び弾んだが、後に続く悪い話を聞くとその喜びはあっと言う間にしぼんで、眉間に皺を刻み渋い表情になる。
配偶者は勿論、恋人何て間柄の相手は少女には――ちらりと男を横目で見る。
一拍の沈黙と嘆息を一つ零し、店長へ「エールと、何か軽く摘まめるものお願い」と注文する。

「私の方は、ドレスと騎士服は参加者の半分程度だってことと……。
 ちょっと面倒くさい奴も今回の剣会に出るって聞いたくらいかしら」

憂鬱に浸る男と同様、少女を不貞腐れた顔で頬杖をつきながら同じく憂鬱に沈み出す。
カウンター奥の席と言うのも相まって、ここだけどんよりとした暗い空気が漂っているようだった。

「……やっぱり、ドレスは諦めた方が良いのかしら」

いつになく弱気な声で少女が呟く。

ヴァン > 「どうりで……?」

少女も何か掴んではきたらしい。眉を顰める姿を眺めつつ、スタウトを呷る。
一瞥されたことには軽く首を傾げてみせる。少女が騎士服ならば、男と少女は『騎士と従士』とみられるだろう。
ドレスならば――歳の離れた二人を恋人とみなす者はそう多くあるまい。少女が聞けば怒りそうな存在と受け取るかもしれない。
注文を聞いた店長はエールを注いで、背後の厨房へとオーダーを通す。フィッシュ&チップスと言った気がした。

「半分……!? 昔もそれなりに酷かったが、貴賓室がフル回転してるのか……?
ちょっと――ちょっと、ね。ナイト嬢が言うちょっと、ってのは『それなりに』と解すればいいのかな?」

貴賓室。王城の夜会で男女がふらりと消えてしけこむ先。一対一とは限らないが、ざらにある話ではある。
ドレス姿――場合によっては騎士服でも、そういった目で見られることはあるだろう。
面倒くさい奴ランキングでいえばトップは無理にしてもそれなりに上位に食い込みそうな男が茶化す口調で問いかける。

「……それだけ多いのなら、皆意外と騎士服だドレスだと気にしないかもしれないな。
まぁ、その……俺と君がどういう関係か、疑いを持つ者はいるだろうが……」

曖昧な物言いをする。そう見られたくないなら騎士服を選ぶだろうし、それがトラブルを避ける、賢明な手段だとも思う。
とはいえ、ドレス姿に胸を膨らませていた少女に正面から冷や水をぶちまけるのは躊躇われた。

ナイト > 「去年参加したって騎士がうちにもいたから、どんな感じか色々聞いたの。
 そしたら、ドレスで参加した方が良いって勧められたのよ。にやにやしてるから、何かあるだろうとは思ったけど……まったく、うちの騎士共ときたら」

そんなにこの前の訓練で厳しくしたのを根に持っているのだろうか。
ぶつくさと文句を言いながら、注文してすぐに届いたエールを受け取り、豪快にぐーっと一気に煽り半分ほど飲み干した。

「――ぷはっ! はぁー……。
 私が聞いた相手が悪かったのかも。ヴァンの持ってきた話が本当なら、冗談か騙し討ちにでもしようとしたのか……。
 半分って言うのも、何処まで本当かわかったもんじゃないわね。
 ちょっとはちょっとよ? 顔を合わせれば決闘を申し込んでくる相手ってよくいるじゃない? それくらいの“ちょっと”よ」

喉の奥に流し込めば胃がほんのりと熱くなり、憂鬱を多少は払ってくれた気がした。
持ってきた情報の正確さが一気に減った気がするが、由緒正しき騎士の剣会がそんな爛れた場になっていないことを願うばかりだ。
面倒くさい相手の顔を思い出しているのか、うんざりした様子の少女は色々と思う所があるようで、騙そうとして来た身内の騎士も、その息が掛かっていたらと思うとますます嫌な予感が確信めいてくる。
いつもの少女なら、売られた喧嘩はと意地になって挑発に乗るところだが……。

茶化す声にはいたって真面目に、キョトンとした顔で小首を傾げさらりと返す。此方は冗談ではないらしい。

「私は気にしないけど。……ヴァンは、そう言う疑いを持たれるのは困るのよね?
 なら、ドレスは我慢するわ。今の私は、従士としてヴァンに指導してもらっている身だもの。
 ……旦那様も監視を付けてるって話だしね」

仕方ないわ。肩を落としつつ、そう言って明るく微笑み、また一口エールを飲み込む。

ヴァン > 「……どいつだ?」

ぽつりと呟く。その提案をした騎士の名を聞いていると気付くまで、時間がかかるかもしれない。
夜会で他の参加者から誘われ、少女が困惑する姿をその騎士は想像したのかもしれない。軽い気持ちなのは間違いないだろう。
しかし、男の行動を明確に妨害している。今度訪問した時、多少稽古をつけてやることにするか。

「なるほど。となると、一対一は言い過ぎにしても、それなりにはいそうだな。
決闘……帯剣可能とはいえ、夜会ではやらないだろう。屋外なら娯楽でできそうだが。一応聞いておこう。どんな奴だ?
俺が気になるのは二人かな……子爵と侯爵。侯爵は面倒極まりないが、向こうからは絡んでこないと考えている。
何より試験官と仲がよろしくないからね。注意するなら子爵だが――どうかな。俺に文句を言える男とは思えん」

剣会が爛れた場になっているかと問われれば、男が参加していた頃からその片鱗はあった。むしろ加担していた側ですらある。
少女が警戒する相手について話を促すと共に、男が懸念している存在も口にする。
試験官――ヴァリエール伯と敵対的な存在。予想通りに動かないものは伯爵といえど駒にできない。
子爵は男が少女と共にいる限り問題ないだろう。手洗いなど僅かな時間で何か仕掛けてくる可能性はなくはない、程度か。

「まぁ……そうだな。噂に尾ひれや何やらがついてアンリの耳に入ることが問題だと思っている。
とはいえ……うーん。決闘の奴次第だな」

剣会でドレスの強みは実質的に帯剣「しない」点にある。脳筋が多いのは会の特徴だが、非武装の相手に粋がることは良しとしない。
空手で参加することでトラブルを避けられる可能性を考え選択したのなら、伯爵も理解を示すだろうか。
ひとまずは情報を交換して、それから判断することにしよう。

ナイト > 「ん? ああ、エリックだったか、エディッツだったか……そんな感じの名前の。良い年した中年よ。
 本気で稽古なんてつけたら、引退を早めかねないから程ほどにね」

言葉短く呟く声に首を傾げ、言われるままにうろ覚えの名前を引っ張り出す。
男が何を考えているか薄々気づいた少女は、止はしないが形ばかりの忠告を告げ、軽くなったジョッキをを覗き込んだらカウンターへおかわりを注文した。

「夜会で剣を抜くのは流石にマナー違反よね。んー、えーっと、確かネイガーウズ子爵家の次男とか言ってたかしら?
 どっかの騎士団に所属してた気がするわ。弱いくせに、合同訓練の度に突っかかって来るのよ。
 ……ふーん、子爵と侯爵ね。絡んでこない方は置いといて、そっちの子爵の方も一緒にいれば問題ないなら、そこまで気にしなくても良いんじゃない?」

呑気とも取れる少女の態度は、持ち前の豪胆さと溢れる自信から来るところが大きい。
大概の事は何とかなるだろうと言う、根拠のない地震ではあるが、今までそれで実際何とかなっていたりするのがまた質が悪い。
少女自身が口にした面倒な相手と言うのも、警戒すると言うよりは、本当にただ単に鬱陶しい、面倒だとしか思っていないようで、相手にしていないのが口ぶりからもうかがえた。

「夜会でまで決闘を申し込んでくる馬鹿じゃない……と、思いたいけど、ありえなくもないから困るわね。
 旦那様には前もって『余計な争いを避ける口実』としてドレスで参加することを伝えれば、合理的だって納得はしてもらえると思うわ。
 ……他の人の目は、気にしなくて良いわけ?」

彼が気にするのはあくまで少女の雇い主である友人の目だけ。
他から見れば、自分たちは歳も一回り離れたただの騎士と従士にしか見えないのだろう。
そう分かっているが、何だか癪で、つい口が尖ってしまう。

ヴァン > 「あぁ、あのオッサンか。――よく彼に聞こうと思ったな」

どこにでもいる助平な中年で、意外と男受けは良い。反面女性からの評判は最悪だ。
確認した男も「アイツならまぁ、仕方ないか……」という顔になっている。

「ふむ。夜会でつっかかってくるにしても言葉の応酬で済みそうだな。人目のある所で負けたならいい笑い物だ。
ところで、絡まれる理由に心当たりは? 女だからとか、貴族じゃないからとか、そんな理由か?」

子爵家の次男ならば相応の良識は――少なくとも、親や兄に迷惑をかけたくはなかろう。口ぶりからも特に注意しなくてよさそうだ。
男が懸念している二人のうち一人と絡むことはあるまい。おそらく試験どころではなくなる。
子爵については念の為、絡んでくる理由を伝えた方が良さそうだ。

「申し込んでくるにしても次の合同訓練とか、先の話だろう。ならドレスもありか……。
子爵は以前、妹君を従士に、という申し出があったが断ったんだ。俺というより、君に絡んでくるかもしれない。
んー……どうだろうな。俺は王都(ここ)で実家の名代をやっているが、それだけだ。
騎士としては例の悪名もあるから、今更一つ二つ増えた所で人の目は変わらんだろ。俺のことは心配するな」

気にするな、とばかり笑ってみせる。
肝心な所で人の心情に疎いのはいっそ才能かもしれない。

「服装に関してはナイト嬢に任せるよ。あぁ、それと。君に言われて思い出したんだが……。
普段俺が来ている黒の騎士服は実家のなんだ。神殿騎士団の礼服も一応、ある。ただ、白いんだよ。上にあるが、後で見るかい?」

言いながら、少し渋い顔になる。普段が黒の詰襟だからか、なかなか想像し辛いかもしれない。
百聞は一見にしかずと上を指さすが、少女は部屋に入ることを以前はだいぶ警戒していた。言ってみるだけ、という様子がみてとれる。

ナイト > 「しょ、しょうがないでしょ! ここ最近でその剣会に参加したの、ソイツしかいなかったんだから!」

一匹狼の少女では、その男が他の騎士やメイドからどんな評判なのかもわからない。
若い兵士達には慕われているようだったので、つい気を許してしまった結果がこれだ。
中年騎士の悪戯に引っ掛かる前に気付けたことこそ幸運だったと喜ぶべきだろう。
むくれながら空になったジョッキを交換して二杯目に口を付ける。

「理由? えー……。初対面の時の対応がちょっと悪かった、かな?
 わ、悪かったって言っても、ヴァンの時みたいに喧嘩吹っかけたりしたわけじゃないわよ?
 指導役から手合わせするように言われて、軽く叩いたつもりが……ちょっとやりすぎちゃっただけよ。
 こっちに来たばっかりで力加減とか、まだよくわかってなかったから。別に、鬱陶しいムカツク奴だとは思ったけど、わざとやったわけじゃないし」

視線はぼんやりと天井へと向いて、思い出していく内に声は小さく、言い訳がましくなっていく。
例の面倒な次男坊とは長い付き合いなのか、少なくとも何度もと言えるくらいにちょっかいを掛けられ、躱して、叩き潰してを繰り返している様子。
二杯目にしてようやく届いたツマミのフィッシュ&チップスを一欠けら口に放り込み、サクッ、サクッと。

「ああ、またそう言う。モテる男はつらいわね。
 それで私に絡んで来るって言うのも、何と言うか、もしも絡まれたらどうするのが正解なのかしら?」

少女がいつもの調子ではっきりと思ったことを口にすれば、相手の怒りを買うのは避けられないだろう。
困ったわね。なんて他人事のように口にしながら、コクコクとエールを煽り。

「……あっそ、じゃあ気にしないわよ。バカ」

心配するなと気遣ってくれることは喜ぶべきことだろう。ありがとう、と返すべきだが、少女は不貞腐れた面のままぶっきら棒に呟いた。

「はいはい、旦那様に相談した上で決めるわ。
 ――? 白いの? ふーん……聖騎士様って確かに白い方がそれっぽいわよね。
 良いの? じゃあ、お言葉に甘えて見せてもらおうかしら」

男が屋敷に訪れる際によく見せる恰好の色違いを想像して、なるほどと頷き、指さされた階段の上を見上げる。
そして、特に警戒することも無く、緩く頷いて、ツマミを齧り、酒をもう一口。