2026/01/13 のログ
■ナイト > 地へ頭部を縫い付けるようにして抑え込むにも力がいるが、それに加えて噛み砕かんとする顎の力も尋常ではない。
それを力でねじ伏せる少女も、相応に人の形をしているが魔の相貌が浮き彫りになる。
腕の次は耳、その次は尾と順番に魔法が解けて現れて。ワイバーンの大きくな黄昏の瞳と、睨み合い牙を剥いて唸り合う。
その攻防に終止符を打ったのは、振り落とされた一太刀の刃だった。
炎を纏ったその刃は、大木の如き竜の首を逆鱗に合わせバッサリと斬り落とし両断する。惚れ惚れとする見事な太刀筋に、観客がいたなら歓声が上がったことだろう。
「……? ……? …………???」
この場で観客になれそうな唯一の一人は、声を掛けようとしたところでポカンと口を半開きにし、目を白黒させ首を捻る。
一瞬、男の背後に少女の姿が見えた気がしたが、瞬きをする間に消えてしまって。見間違えかとも思ったがあんな少女は見た覚えもなく、なら幽霊か、精霊かと頭上に疑問符が飛び交っていた。
そんな混乱の中でも獲物から手を放さずに抑え込んで、動かなくなるまではバタバタと暴れ回る巨体が立てる騒音が響く。
そうして、ようやくすべてが終わり、終了の声を聞いて少女も手を離した。
変化した手が戻るまでは背の後ろに回して隠し、昂った鼓動と本能を沈める。
「狼煙みたいなもんね。ふぅ……。そう、暫く待機ね。了解したわ。
――ん? ああ、まぁ……うん。毒とかもってなさそうだったし、素手で触っても平気そうだと思って。
そ、そう? それは光栄だわっ。でも、どっちも止めを刺したのはヴァンよ、私が主役ならそっちも同じく祭り上げられなきゃね。」
相槌を返しながら、褒められると知れば素直に喜んで薄い胸を張り、従士に手柄を譲って日陰に隠れてしまいそうな聖騎士を、そうはいくかと引っ張り出す心算で、二ッと楽しそうに笑う。
頭の上に出た黒い耳も、両手で伏せて撫でれば消えて、未だ興奮冷めやらぬ尾にも魔法をかけて隠し。
「帰りは魔法使うんだ。はいはい、せっかくだしのんびりしましょう。
一応、私はヴァンの従士として勉強って名目で来てるわけだし、初日の挨拶の復習って意味で他の参加者と話をするって言うのも悪くないわ。
……まぁ、どっちでも良いわ。ヴァンがいるなら、私にとっては楽しい時間になりそうだしね」
そう言って彼へ振り返り微笑む。と同時に、ぐー……。と大きく腹の虫が鳴いた。
少女はピタリと固まり、視線を彷徨わせ、徐々に色付く頬の色を隠すようにクルリと背を向けてお宝が眠るかもしれない巣へと歩き出す。
さて、どんな宝が眠るやら。卵を見つければ、少女は少し複雑そうな表情をするだろうが、最終的にはきっと喜ぶ。
そして「うちの屋敷で飼いましょう!」と、彼と、彼の友人である伯爵を心底困らせるかもしれない――。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からナイトさんが去りました。