2025/10/31 のログ
レディ・レッド >  
 ―――良い夜だ
 ―――素直に今夜はそう思う。

 肌の上を撫でる湿り気の無い優しい夜の風
 空に浮かぶその両端が鋭く伸びた、弧を描く三日月。
 夫と腕を組んで参加した夜会は酒精を片手に、夫に挨拶をしにくる武人肌
 またはアルビノカラーと人ではない、そう見てわかる瞳と笑みのレッドに対し
 生地や布 流行りの宝玉や香水など、いろいろなものを希望してくれればと持ちかける商人。


   「私は既に一つだけの、灰色にくすんでしまった
    しかし最上の宝玉を持っている。」


 今はそれ以外、興味はない。
 そういって夫の肩に身を寄せる、白に近い銀髪
 赤い瞳の霞仕上げとなるハイライトの艶が映らない、その瞳は眼尻を柔らかくして
 夫へと甘い笑みを浮かべる。

 小太り気味のちょび髭
 良い中年となっている夫が、照れやいろいろと感情で浮かんだ汗をハンケチで拭いているのを眺め
 宝玉とはどれを差すのかは聞いた周囲が既に察しているのだろう。

 クスクスと、からかい終えたのかレッドはレース越しに包まれた五指
 それを夫の五指絡めあうように握る。
 体温がない指先 代わりに感じる夫の指先のぬくもりは、今だ尊い。


   「―――少し、月を浴びてくる。」


 そういって肩に一度 すり、 と甘い香水を纏う髪を触れさせて手指を外した。
 ストールを両腕の内側に絡め、蒼白い三日月から延び降りてくる月明りを肌に受けながら
 ふぅ、と一息漏らすだろうか。 

レディ・レッド >  
 月明りの中、取り出した葉巻とシガーカッター。
 バチンと落とされたピラミデ型の先端。
 燐寸で火を灯しながら甘い葉巻の香りが漂い、紫煙はまるで意志を持つかのように燻る。

 上下の鬼歯の角で挟むような葉巻と月の時間。
 愛煙家が自然と集まり、談笑を交えながら夜は過ぎていく。
 そのうち、月の下で数人と談笑するレッドを目にとめれば、何気なく傍へ行き月明りに映るレッドと笑みを交え、周囲と夜会を楽しむか。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 三日月の夜会」からレディ・レッドさんが去りました。