2025/10/26 のログ
ご案内:「北方帝国 某所」に睡蓮さんが現れました。
睡蓮 > ひらひらと、花が落ちてくる。

北よりの空気を孕み、重く冷たく変わりつつある。その風に翻弄されるように、明るい色の小さな花が舞っていた。

桂花。

月に咲く花のたもとで、その香りと風のそよぎに髪を遊ばせる。
差し伸べた掌に、落ちそうで、舞い逃れた小花に口許に甘く笑みを佩き。

周囲に脅威があるような場所でもないし、魔も人の気配も遠い。
ならば燻煙はむしろこの香りの中であれば無粋と、今はただの飾りとして香炉が揺れる。

「────また季節が一巡り」

瞬きのように、時間というのは移ろってゆくものだな、と簡素な呟き。

シェンヤン様式の古装を纏った女は、それらを体現する姿の古木を眺め、愛でている。

仙境とも人間とも言い難い。
たどり着けないような場所ではないが、何者の気配も遠いその場所、その風情は女にとっては心地よいものだった。

睡蓮 > 花が散り、香りが潰え、秋が通り過ぎれば時期に冬に至る。

時節ごとに、己の目を楽しませるものは移ろいゆくが、桂花の古木が、姿を消すわけでもない。
艶を帯びた深い緑の葉を撫で、その合間を膿めるようにさく星屑のような小さな花をそっと指の腹で擽る。
そんな微かな触れ合いにすら毀れてしまう花を惜しむ様に。

香りを閉じ込めて、香に。

酒に醸して舌で香りを味わうのもまた一興。

花を散らしてしまう風には、あまり急くなと伝えたい所ではある。
或いはその香りとをどけたい誰かでもいるのか、など戯れに。

睡蓮 > 日が暮れるまでのしばしの間を、そうして花の降る場所で過ごす気まぐれな仙姑の姿があった。
ご案内:「北方帝国 某所」から睡蓮さんが去りました。