2025/09/08 のログ
ご案内:「狭間地区 通り」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ >  
 狭間地区 通り
 道として機能しているだけ
 目貫通りや、奪い合って店を並べるほど有利な場所でもない。
 ただ裏路地のような、屋根が重なり合う場所
 建築物の間 怪しげに並ぶ看板 よりは安全ではある。


   「良い月が出ていますわね。」


 9月の始めの、昼の暑さが噓のよう
 夜は涼し気な空気が流れて肌に心地よく、メイラのような長い黒髪にはありがたい。
 乾いた空気と湿度の無さ 眼に見えて映る満月と周囲で白く映る雲の掛かり具合。
 どちらの地区も、こんな夜は通りが賑やかかもしれない。
 出やすくなった外は、それだけ金の巡りも良く犯罪も増える。


   「そんな満月の夜ですもの
    きっと殺しが一層、捗ってしまうのでしょう?」


 どちらに対してなのか、長い髪の一部を空いた手が耳にかけるように流す。
 禍々しい多重の輪を描くような赤い瞳 中心にある黒点がキロリと数人と対峙する。
 腰に差した刀は、そんな月に充てられたのか ただそんな気がしていたのか
 愛刀(自分勝手なやつ)と相方の大脇差だ。

 手には大刀を抜いた状態で、赤い一筋が刃先を通り切っ先に雫を垂らす。
 傍に倒れている一体を除き、周囲の 剣 剣 剣 の群れ。
 通り魔か 煩わしさから頼まれた分類か。
 メイラを疎ましくするものは外も内も、身に覚えがありすぎる。

メイラ・ダンタリオ >  
 メイラは、殺しにも戦いにも飢えているわけじゃない。
 解決できない物事こそが飢え。
 今あの山の出来事を超える飢えと渇きはない。

 自分からやってきて、こうして一人ずつ殺すだけで解決できるなど
 なんて甘くて、そして喉の通りのいいことか。
 面倒どころか優しいくらいだと、殺し好きと似て非なる事を浮かべながら
 刀使いとしては何も極まってはいない 棒振り殺しとしては極まっているやり方で
 ひ ゅ ら り と刀を振るって血糊を掃い落とすのなら、その躯を超えて赤い足跡を付けて進もうか。


   「剣戟と剣花 いくつも咲かせても、此処では見回り兵も期待できませんわね。」


 助けも希望もないような空間を口ずさみながら、剣二種の煌めき
 互いの銀閃が月明りで映りながらまるでワン・ツーを決めるような剣と剣の応酬
 二対一 戦場の多戦闘慣れしているメイラはその赤い瞳が広がる。
 うっすらと発光するかのように二人を見つめ、時には片方に対して黒鉄で覆われた拳
 剣筋へ向かって殴りつけて見せることも見せて鳴り響く、鉄の悲鳴。
 その仕留めるはずの獲物が刃をボロボロにさせていくのを見つめる最中。


   「ほんと“お前”はよく斬れる。」


 愛刀に話しかける余地すら見せながら、相手方の少しずつ受けと弾きで食い込まれてしまったその刃が
 もう使い物にならなくなっていくのを、ジッと瞳は見つめていて、細まって
 ギザ歯は三日月型に口角を持ち上げて、その精巧なジグザグを見せつけて。


   「剣が欠けて落ちる前に、去りなさいな。 どうせもう決め手がないでしょう。」


 終わりまで楽しまないのは、斬りたがりというわけでもないせいか。
 躯ごと片付けていけというのも、誰そ彼と知りたがらないせい。
 いちいち断罪するほどでもないらしい。
 次か次の次で強引にだって決めれるように笑みを浮かべたまま、切っ先を揺らし持ち下げて囁いた。
 

メイラ・ダンタリオ >  
 視線が交差する。
 それは探り。

 メイラが面倒がっているのか 焦りなのか
 ただ帰りたいだけなのか もう終わりの空気なのか
 経験上と心理 どこからなら斬れる。
 そう思わせるたび、メイラは殺気というよりも その気になっている欠片を拾うように
 下げたままの刀 切っ先がピクンピクンと反応して小さく持ちあがる。

 右手が反応しているのとは別に、メイラはその多重環の瞳を向けてどうするのかと問うまま
 躯を隠滅するために独りが抱えて小さく走っていくのを後目に、対峙したままの二人。
 獲物は半端な息遣いをしているのがわかる。
 それ事斬れる 間違いなく叩き割れるという自負があるメイラの側は恐れをしらない。
 切れ味がいい剣というだけでは愛刀には役不足だった
 怪力令嬢の身に着ける頑丈な手には少しばかり頼れなかった剣だっただけ。

 死闘を演じる注ぐには、相手は脅されもしていないし追いつめられてもいないから。
 その場から消えていくのを後目に、ガチガチなやり方ではなかった行為。
 刀を今一度振り抜いてから、くるりと反転させる握る柄。
 刃は上向きに、鞘の中でと収まる瞬間の、カチッと最後がぼやける納刀音。
 まるで愛刀が文句を垂れているかのような。


   「そう不満げに零さないで。 人斬り外道に堕ちたわたくしが、あの御方に蔑まれるなんてしてしまえば
    きっとただの鬼になってしまうじゃあありませんの。」


 言い聞かせるように菱編み柄を手の内側で撫で、ぽんぽんとあやすようにする。
 苦笑してその場を離れようか。
 月がまだ青白くメイラにあたっている。
 
 メイラの髪が、背中が、それを浴びてしまうと
 足りず満ちないと感じてしまう節があるのは、またすぐに戦場を恋しがっているだけなのだろうと思いたい。

ご案内:「狭間地区 通り」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。