2025/08/23 のログ
■枢樹雨 > 氷室から持ち出した氷をタライに置き、旅籠内の一室で目を閉じたのは夕刻頃だったか。
気が付けば陽は完全に落ち、灯りのない室内は真っ暗な状態。
寝起きで諸々が億劫な妖怪は、霊体へと戻ることで意識を覚醒させ、そのまま旅籠内の探索を始めた。
気が付けば間取りが、造りが、変わっているように感じる不思議な建造物。
己と近しいナニカが居そうなものだが、いまだ出会ったことはない。
では今宵は出会えるだろうかと、そんな好奇心を胸に漂うことしばらく。
見つけたのはマッサージと書かれた立て看板。その奥にあるいくつかの扉。
度々世話になっている旅籠ではあるが、この一角を見つけたのは初めてのこと。
興味津々とカウンターの前を通り抜けた妖怪は、一番手前の扉をすり抜け中へと侵入する。
そして順に壁をすり抜け隣りの個室へ、また隣りへと移っていく。
そうして見つけたのは、貴方。久方ぶりに見かけた、整えられていない明るい金色。
特異な力持つ者であれば霊体の己にも気が付くか。
妖怪はスツールに腰掛ける貴方の脚元にしゃがみ込み、じわりと黒い染みが広がるように実体をあらわにしていく。
纏うのは、この旅籠の浴衣。履物はなく、素足でマッサージ室の床を踏めば、しゃがむままに貴方の碧眼を見上げ。
「やっぱり、エレイだ。」
随分と久しい相手。果たして覚えているだろうか。少し首を傾げて。
■エレイ > 「──……?」
呑気な顔で客待ちをしていた男は、不意に感じた気配に目をぱちくりと瞬かせた。
マッサージルームの敷地内に、"なにか"が入ってきた──そう感じたのだ。出入りする客の気配ではない何かが。
その気配の動きに少し集中してみれば、案の定その気配は一般的な通路ではなく、
個室や壁を平然と抜けて動いているのが伝わって。
やがてその気配──霊体が男のいる個室に現れれば、丸めた碧眼を向け、その動きを目で追って。
「……おう、エレイ様だ。久しぶりに見たと思えば随分面白い現れ方をしてくれるじゃねぇーか、枢よぅ」
やがて、己の足元で実体化し姿を表した女の姿を認めれば、眉下げて笑いながらその名を呼び返した。
邂逅は一度ながら何者かは識っている相手ゆえ、霊体で現れたことも実体化したことにも、いくらか驚きはしたものの動揺する様子はなく。
「ってゆーか、何ゆえに霊体で……いやお客が来るまでヒマだったから俺様としては構わんのだが。
どーする? このまま枢が客になってくれても俺はOKなのだが……」
そしてもっともな疑問を投げかけながらも、別にそれを咎めるつもりはないという旨の一言を付け足し。
ついでに、このまま彼女に営業をかけてみる。
個室の壁を抜けてきた相手、そこで見たであろう光景からこの施設がマッサージをする場所である、ということは
なんとなくわかっただろうと思って説明は省いたが、必要なら改めて説明すべきかなと考えつつ。
■枢樹雨 > 思えば貴方に霊体と実体の変化を見せるのは初めてだったか。
とはいえ己の頭にある角のことも、己が何であるのかも、知っている貴方に隠す必要性は皆無。
だからこそ当たり前に近づき、当たり前に姿を現し、そして名を呼んだ。
うっかり人間違いではなかったことに多少なりとも安堵しつつ、以前とは随分と違った服装をじぃ…と見上げ。
「もとは他者に見られることもなかったし、触れることも出来なかった。
貰い物の身体は大事だけれど、移動するときは霊体の方が楽。」
だからこういった登場と相成った。
たいぶ端折った説明ではあるが、貴方が不思議そうな様子を見せるならばと伝えるも、声音は相も変わらず淡々と抑揚がない。
そうして今度は、此方が不思議そうに首を傾ぐ番。
長い前髪の隙間から覗く双眸をぱちぱちと瞬かせ、改めて貴方の碧眼を見遣り。
「客?君は旅籠の従業員だったの?…あ、マッサージとやらを君がしてくれるの?」
マッサージの文字を見てはいるが、マッサージが何であるのかは理解していない妖怪。
強いて言えばマッサージとは何であるかという好奇心でもって個室の壁をすり抜けていたが故に、問いを重ねる度に蒼の双眸に滲む好奇は色濃くなっていき。
■エレイ > 「さよか。色々と気になる単語が唐突に飛び出したが……まああそれはまた追々聞かせてもらうことにしまひょ」
貰い物の身体、というワードに男はまたも目を瞬かせる。
『枢』という名前を「勝手に貰った」ものと語っていたのは憶えているが、身体もそうなのだろうか。
とはいえ、その時の彼女の様子も思い出せば、今追求しても詮無いことだと判断して大げさに肩をすくめてみせ。
「ウム、臨時のだがな。……フフ、興味があるなら受けてみるかね?
その格好を見るに今日は此処で部屋を取っているようだから、特に支払いとかは発生しないので安心だぞ」
彼女の問いに大きく頷いてみせ、マッサージに食いついた様子がその眼差しから伺えれば笑みを深めながらさらにお勧めしてみて。
宿泊客であればサービス料に含まれているため別途の料金を出す必要はないという旨も添え。
彼女の同意が得られたなら、此処で待つように告げてから受付の処理を済ませようと立ち上がり──
■枢樹雨 > [ 部屋移動 ]
ご案内:「九頭竜の水浴び場 マッサージ室」から枢樹雨さんが去りました。
ご案内:「九頭竜の水浴び場 マッサージ室」からエレイさんが去りました。