2025/08/19 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 倉庫街」に睡蓮さんが現れました。
睡蓮 > 潮風香る港湾都市。その玄関口たる港傍。
軒を連ねる倉庫街の一角に、古ぼけた扁額が下がっていた。

『浮花香廠』

つまりは、どこぞの霊山の庵とここがつながっている証。
とはいえ、霊山側へと赴くことは出来ないが。
気まぐれな仙姑の、遊歩のための扉の一つだった。

軒先に下がる振り香炉。貝殻細工の丸いそれから零れるのは暑気払いの清涼味のある香り。虫よけを兼ねたそれは実用的な香りでもあった。

その薫香の守る結界の中、軒先に出した露台を寝椅子に。
重ねた枕に身をうずめ、雪崩れる白髪を惜しげもなく下敷きにしているのは店の主当人だった。

「────……」

閉じた瞼。長いまつ毛が濃く影を落とし。とがった耳の装飾が身じろぎにゆらりと揺れる。
横臥する、その寝椅子の傍らに、小さな卓。
柔らかな曲線を描く陶器の器は茶器に似ているが、ふわふわ薫る花の香りが示すとおりに、酒精であった。

寝酒を喫して、心地よい午睡に身を委ねている自堕落さ。
うつらうつらと暑気などどこぞに行きましたと言わんばかりに気持ちよく。

睡蓮 > 「う───んン……」

自分の周囲を居心地よくする術には長けているつもりだ。
なので今も、そう。
興が乗れば足湯を用意してもよかったが、今はこれで十分。
ふわふわと、酩酊に似た酔夢の際をゆるりと歩む。

振り香炉の、貝殻細工が風邪を受けて、ちりちりと細やかな音を立てるのも、耳に心地よく響いていた。

睡蓮 > ───微睡の終りに目が開く。金色が、緩く周囲を窺って、それから欠伸を一つ零し。
緩慢な仕草で体を伸ばすと一息ついた。

「ああ───よく寝たな。午睡も悪くはないが……少々喉が渇いたか」

卓の上にあるのは酒精、であれば寝覚めの水というわけにもいくまい。
衣擦れの音を伴い立ち上がると、酒器を手にいったんは屋内へ。

口許を一つ潤せば、ふらりと酒場でもめぐる異国の女の姿があったことだろう。

ご案内:「港湾都市ダイラス 倉庫街」から睡蓮さんが去りました。