2025/07/26 のログ
ご案内:「廃神社」にキタさんが現れました。
■キタ > 平民地区の奥にある森の更に奥。森の中入り口にぽっかりと穴をあけた参道の入り口と崩れかけた鳥居。
その先に広がるのは水の流れる手水舎と朽ちた拝殿。
玉砂利を踏み鳴らしながら手桶を持ち柄杓で打ち水を撒く巫女が一人そこにあった。
「こうも暑い毎日では、気分も体力も消耗するでしょうね──。」
どんな天気でも、気温でも人々は活動する。しかしこの熱気は異常さを孕んでいるように思えた。
だから気休めに打ち水を行う。少しでも参道に流れる空気が涼むように。
勿論それこそ、焼け石に水な行為ではあるのだけれど。撒いている巫女本人もまた首筋に、うっすらと汗をかくほどには蒸し暑い。
暫くして水も空になったころ、日陰を求めて手水舎へ、桶へ水を張り直し、その桶に手を浸して涼を取った。
ご案内:「廃神社」にプシュケさんが現れました。
■プシュケ > 相変わらず、学校がある日は約束通り、この場所にはやって来れなかった。
学校が休みでも、役目役割がある日は流石に難しい。
故に、相当の時を置いてしまっていたが、今日は一日フリーの日。
流石にこの暑さ。どうしようかと考えていたのだが、そこで思い至ったのが氷菓。
そうだ、氷菓を持って行ってあげよう!
その結論に至れば、そこからの行動は素早かった。
元々、今日はいかないという選択肢はなかった。
何をするかだけを迷っていたという訳だった。
廃神社にほど近い場所の店で買った氷菓は二つ。
溶けないようにと足早に、廃神社の前までいたれば、
在りし日の約束通りに声をかける。
「こんにちは!キタ、遊びに来たよ!
今日は入っても大丈夫?」
必ず声をかけるという約束。
悪い子ながら、約束は全て守っているのだった。
■キタ > 手水舎の日陰で、手を冷やし涼を取っていた所、森を抜けて聞こえる声、己にだけ届くそれに双眸が細くなった。
久しく聞かなかったそれに急いで桶から手を抜いて軽く払う。そのまま森の入り口まで歩みを進めればそこに見えた姿。
「いらっしゃい、プシュケ。暑かったでしょう?」
森の木陰の中から声を掛ける。手招きをし誘導する様子は森の外から見ればやはり、幼子を惑いかどわかす物の怪に見えるのだろう。
森の前で声を掛ける様子はまた儀式めいて。
けれどそんな噂もどこ吹く風、招き入れた金色の娘と共に拝殿のある場所まで、賽銭箱の裏、庇の下の階段は森の風が抜けて幾分涼しく感じられるだろうか。
■プシュケ > 声をかけて暫し待っていれば、かかる声と手招きする姿。
それを諾意と理解すれば、嬉しそうに参道に足を踏み入れる。
森の中に入り、日陰となれば、風も通る境内は心地よい感覚へと変化するか。
そのまま暫し、歩み寄れば、拝殿の傍まで至り、いつもの笑顔で見上げてから
「ごきげんよう、キタ!確かに今日はとても暑いわね。
私も暑いけど、キタも暑いだろうなっておもったから、今日は氷菓を持ってきたのよ!」
言いつつ見せる両の手の。カップに山のように盛られた氷菓、かき氷。
赤いシロップと黄色のシロップがかかったそれを、一度賽銭箱の裏の会談に載せてから
じゃぁ、手を洗ってくるね、と手水舎の方へと歩いていく。
先日覚えた通りに手を清めてからまたすぐに、戻ってくることだろう。
■キタ > 「嗚呼──本当に良い子。」
余りの暑さに、自分でさえ涼を取る事を優先させてしまったというのに、
金色の娘はしっかりと、それを覚えていてくれたのだ。
勿論、持ってきてくれた氷菓も嬉しい、けれどなによりその行為が嬉しくて表情が緩む。
「すっかり、板についたわね、プシュケ。とても素敵よ。」
淀みなく作法を熟す様子に、そんな感想を伝えては階段に腰を下ろして隣へと誘うように手で、とんとん、と叩く。
そのまま腰を下ろしたのなら、その金色に指先を絡めて軽く撫でよう。いいこ、いいこと。
「でも、気を使わせてしまったわね……。貴女が来てくれるだけでも十分嬉しいのに。」
そう、少しだけ申し訳なさを滲ませながらも、やはりうれしいものは嬉しくて。
■プシュケ > 決まりは決まり、ルールはルール。
この辺りは体の隅々まで刻み込まれているようなもの故に、当然のようにこなしていく。
けれど、それをもって良い子と言われるのは嬉しいことゆえに、満面の笑みを向け返した。
「キタにそう言ってもらえると嬉しいわ。
場所にありてはその場所に従うべきですもの。
これでもっと安心してこの場所に来れそうね。」
ちょっとだけ胸を張ったのは、年相応の背伸びか。
そんな背伸びも、キタの手が金色に伸びて、撫でられればうれしそうに、心地よさげに受け入れるのだ。
「そんなことはないわ。暑いときは誰でも暑い。
そして、そういう日は冷たいものを口にしたくなるものだもの。
さあ、一緒に食べましょう。」
そう告げて、キタの隣に腰掛けようか。
そして、赤……イチゴと黄色……レモン、どちらがいいかを問うだろう。
自分はどちらも好きだからどっちでもいいように買ってきた、と口にしながら。
■キタ > 「ふふ……そうね、ならどうかしら──、今度プシュケも着てみる?」
胸を張る様子に、笑いながら腕を広げて自らの白衣を広げて見せた。
確か箪笥の奥には昔祭事等で使ったのだろう子供用のそれもあったはず。
金色の髪に白と緋色はとてもよく映えそうだ。なんて少し想像をしてみた。
「ええ、ありがとう。じゃあ遠慮なく……。両方、分け合うのはどうかしら?」
そう、紡いでから手にしたのはイチゴの容器、それに刺さる匙で氷を掬うと、あーん、とプシュケへと差し出してみよう。
美味しい物、楽しい事、せっかくなら二人で共有するのが良いだろうと。
「本当に、持っているだけでも涼しくなりそうね、とてもいいわ。これ……。」
■プシュケ > 自分の言葉を受けて、返ってくる言葉に目を瞬かせる。
暫し彼女の白衣と緋袴を見つめてから、ぱぁっと笑顔が広がって
「いいの?……うん、着てみたい!」
同じ格好の二人が並んだらどうなるだろう?
そんな想像だけでも気持ちが楽しくなってくる。
こうなると、やってみたい!という欲が強くなるのだ。
そして、どちらがと聞いて、分け合うと言われればこちらも笑みが深まって。
「それ、いいね!じゃぁ、分け合って食べよ。」
そして、あーん、と差しだされた匙にぱくっ、と食いついて、冷たい感覚を楽しむような笑みを。
そして、こんどはこっち、と同じように自分の手元の匙にとり、キタの口元に、あーん、と差し出していく。
かき氷を気に入った様子のキタをしばし見やってから
「キタは、ここの外に行くことはあるの?」
そういえばどうなんだろう?と思う疑問を問いかけにして問うた。
■キタ > 「じゃあ、今度来る時までには着られるように洗っておくわね。」
本当は今からでも、と言いたい所だったが流石に虫干しや洗濯をしてからのほうが良いだろうと。
草履や足袋のの類もあったろうから、きっとその時にはお子様用とはいえ完璧な巫女の姿になる事はできるだろう。
嬉しそうなその様子にこちらも表情が緩み胸が熱くなる。
本当はお祭りか何かがあればいいのだけれど、と思案するもそれを知る術がない位には外との接点を欠いていた。
「ん──、 あーん……。 甘くて、おいしい。」
香りと甘味の異なる二つの氷を、交互に食べさせたり自分で食べたりしながら、暫くはその様子に夢中になっていたけれど、問われた言葉に、嗚呼と思案してから……。
「偶に、手水舎のために水を汲みに行ったり。お野菜と交換で少しのお金と必要な物を交換しに出るだけだから……、殆ど無いわ。」
賽銭を寄越す人もほぼ居らず。さりとて此処を放っておいて働きに出るには無知過ぎる。
家を、後宮を守る事しかしらない者の集合は、新たな一歩にとても臆病であったから。
■プシュケ > 「うん!とっても楽しみ!」
次までに準備してくれると聞けば、次に会う時の楽しみが増えたと楽しそうに笑って見せる。
次は同じ格好で二人一緒。
それを想像するだけで心が浮き立っていた。
暫し氷菓を二人で行ったり来たりや自分で食べるなど繰り返しつつ、他愛もない話をしていたが、
ふと思い立った問いに少し思案の様子を見せるキタ。
その顔を見つめながら、続いた言葉を聞いていれば
「……ねえ、キタは、外に出てみたい?
ちょっと遊びに行ってみたい?
王都は楽しい所だけれど、同時に怖い所でもあるわ。
ここがキタの安らぎならばそれはそれでいいとも思うけど、
行ってみたいと思っているのなら、私も一緒に行ってあげたいとも思うの。
だって、私はキタの場所へと来れるけれど、キタは私の場所をよく知らないでしょう?
知ってほしいと思うこともあるの。
……もちろん、キタがどうしたいかが一番だから、無理にとは言わないのだけれど。」
■キタ > 「そうね──。外で過ごせるようになればもっと、世界が広がるとは思うわ。」
危険なのは、何も王都に限った話ではなくこの場に居たって冒険者ギルドから目をつけられていたり、
刺客が送られてきたりと安寧の地とも言い切れないのが現状。
そして何より、兄弟と呼ぶには聊か年齢が離れすぎているキライがある。
もしそれを市井の人が見たらどう思うか。迷惑を掛けないか、そんな解決のしない思案が頭をめぐる。
「プシュケと一緒に居て、貴女が変な子だと思われてしまわないか、それが心配ではあるけれど……。」
結局答えを出す事は出来なかった。出せて居なたな今の女の存在はここになかったろうから。
自分で決める事も出来ず。引かれた手にすら躊躇する。結局はそういう存在。
「でも、遊びにって何があるのかしら……?」
好奇心だけはある。遊び、娯楽というものに疎い身には今一つ想像が出来なくて。例えば何があるのだろうと首を傾げで問うてみた。
■プシュケ > その言葉から、外には出てみたいと思っているらしい、とは理解した。
ただ、同時に二人の年齢が……特に見た目の年齢が、離れすぎているための危惧をしている様子も理解して。
それを理解した時に、少しの逡巡の様子を見せるが、意を決したように言葉を紡ぐ。
「キタのその懸念は、私だからこそ大丈夫な手段は、あるの。
ただ、その場合、ほんの少しだけキタとの約束を破らなくてはならなくなるわ。」
手段はある、と告げる。
だが、それは最初の約束を少し破ることにもなると。
紡いだ後に、視線を重ねて、真面目な表情で改めて。
「大丈夫な方法をするには、キタの目に入る人間がもう少し増えてしまうの。
でも、それらの人間は、空気みたいなものだと思ってくれて構わないわ。
そして、そういう人たちを動かすとしたら、私は家族に相談しなくてはならないの。
……『私の大切なお友達と安全に街を見て回りたい』と。」
誰にも言わないの約束が、少しだけ崩れてしまうのだと。
ただ、家族に相談する事で、キタとの関係が崩れるとは全く思っていない様子ではある。
それは、少女が家族を信頼しているし、家族もまた少女を信頼してくれるだろうと確信している証で。
「そうね……例えば、この氷菓がどのように作られるのかは見てみたくはない?
例えば、キタも私のような、この国の衣装には興味はある?
例えば、色々な美味しい食べ物もあったりするし、
キタが見慣れないような建物や、史跡、大きな本屋とか図書館など、キタが見たいと思っているものは、多分王都にはあるとおもうわ。」
そして、色々な角度から王都を紹介していく少女の言葉も紡がれて。
■キタ > 「約束を……?」
今まで、何一つ破る事なく過ごしてきた日々。
そんな彼女がそれを破ろうとしている。それも自分のために。
その一点だけでも、どうしたって自分には彼女を咎める事は出来なかった。
真面目な真摯な様子で紡がれる言葉、暫く黙ったまま目を閉じて聞いていたけれど。
少しだけ長く、息を吐いた。二人の手にあった氷菓も殆ど溶けてしまったから、それを手にすると背後へと置いて。
こんな私を、小さな子が意を決して外へ引っ張り出そうとしている。
それを無下になんて、信頼していないようで出来るわけもなく。
やや、不安そうな面持ちではあったけれど隣の金色を抱き寄せて膝裏へ腕を通せば己の腿の上に姫抱きの状態で座らせた。
「ごめんなさい──。 プシュケに一杯、一杯考えさせて、勇気を振り絞らせて……。
本当に嬉しいわ……。 私、見てみたいもの、プシュケと同じ服も着てみたいし、同じものを食べたい。
──同じものを見て、同じことをしたい。」
そう、何度も頷いて紡いだ。それから抱いた金色の髪へと口づけを落とす様に触れて、ありがとう。と小さく囁く。
小さな体が振り絞ってくれた勇気が嬉しくて、少しだけその髪にあたたかな雫が触れた。
それが何かを見せるわけにはいかないからすぐに袖で拭う事にしたのだけれど。
■プシュケ > 約束を破らなくてはならない。その言葉を口にするのはとても怖かった。
でも、出来たらいいなと思っていて、キタもそうしたいんじゃないかなと思ったからこそ、
怖くても口にすることが出来た。
そして、その言葉への返答様子に最初は大分緊張した面持ちでいたけれど、
紡がれる言葉が続くにつれて、安堵が、安心が表情に浮かぶ。
彼女の膝上へと運ばれることを受け入れて、
膝の上で少しだけ嬉しそうに甘える様子を見せれば
「うん……私も見てみたかったし、見せてみたかったの。
だから、そう言ってくれてとてもうれしい。
家族にきちんと相談するわ。
人を動かせるし、キタが安心して街を回れるようにするわね。
だから、一緒に色々楽しみましょう。
その準備ができたら、また連絡するね。
私がキタと同じ服を着るのも楽しみだし、いっしょに街に出るのも楽しみ!」
そう言葉にして、髪へと落ちる口づけに嬉しそうに微笑んで。
その体勢だったから、すぐにぬぐわれた雫には気づけなかったけれど、甘えるように身を寄せて。
今日はこのままこの体勢のまま今しばらく楽しい話が繰り返されただろう。
キタの衣装の事、このお社の事、王都の事、プシュケの家族の事などなど、沢山の話が。
その後、日が傾いて、そろそろ夕刻、となる頃に、名残惜しそうにはするけれど、
でも本来約束は守るべきものなのだから、と帰宅の途に就くことになる。
でも、いつもと違っていくつもの約束が出来た今日に、とても深い満足感を覚えていて。
だから、最後に一度だけ、ぎゅぅっ、としっかり抱きしめて、その優しい気持ちを、穏やかな体温を、好きな香りをしばし堪能してから、またね!と家路へと消えていった。
■キタ > 「本当に、本当にありがとう。プシュケ」
こうなってしまうと、彼女の方がよっぽど大人びて見える。
共に着る白衣も、これから出かける事になるのだろう街への散策も。
これから先楽しい事と、少し怖い事がたくさんあるのだろう。
抱き寄せたままの姿で色々とこれからの事を話しながら、それでも傾くのは時間の流れ。
「約束、ちゃんと守ってくれて嬉しいわ。」
しっかり守り続けるからこそ、破る事に意味が出てくる。それが出来る子なのだと、微笑を浮かべ、離れる間際までぎゅ、とお互い抱き合いながら。駆け出すその背中を追って森の入り口まで。その姿が視界から消えるまでずっと、手を振っていた。
ご案内:「廃神社」からプシュケさんが去りました。
ご案内:「廃神社」からキタさんが去りました。