2025/06/23 のログ
■リリー > ずっと人のままで調教されているのだとしたら、どこかで反発が起きたかもしれない。
けれど、一度自我を奪われて、獣へと堕とされた後で、ゆっくりと理性と知性を再度与えられるようなやり口での躾と調教。
そして、その中でも常に感じるものは、愛。
何をしても愛でてくれる。どんな反応を返しても、愛してくれる。
それも、精神性の愛は元からもらえていたものの、その元からの愛の何倍も、何十倍も、何百倍も降り注げば、心も当然そちらへと傾いていく。
そして、今まで欲しがっても与えられてこなかった肉体的な愛も、無制限に与えられているのだ。
もはや、恋人へのパスは薄くなり、程なく切れるだろう。
そして、新しいパスは、ご主人様(スルーシャ)へとつながれていく。
なぜなら、自分の全てを愛してくれて、自分の全てを認めてくれるのだから。
その愛に答えるために、己は与えられる力を身に着けるべきなのだと、取り込まれ(精神汚染され)ていく。
力を持ちながらもその力を振るう先を知らなかった雌犬は、その力を正しく振るう先を知った忠犬へと姿を変えて、
光り輝く光輝の盾は、一影、二影差していき、段々と光を失って、闇の、魔の色を取り込んでいく。
体の内側から作り替えられていく感覚は、本来おぞましく、全てを暴かれる恐ろしいもの。
だが、既にその『盾』は汚染されることで陰りを見せて、新しいご主人様(スルーシャ)の寵愛が欲しいがために、自ら身投げをするように、堕ちていく。
新しい価値観が、新しい関係性が、そして、新しい役割が、そのふたなりレズちんぽから、触れ合う唇から、貪られる乳頭から伝わってくる。
二度目のマーキングの気配と共に、本当に自らご主人様(スルーシャ)に忠誠を誓うのかと試されるかのような隙。
押しのけて見せろと、逃れて見せろというかのような。
この陰りを捨てて、光輝を取り戻したいのなら、というかのようなその隙を感じ、理解したうえで。
「はうううううんっ♡♡♡」
獣じみた声よりも、多少人の理性を取り戻した、それでも快楽に蕩けた声を張り上げて、両腕、両足でご主人様(スルーシャ)にしがみつく。
押しのけるのではなくて、しがみついだのだ。
それと同時に、元カレへのパスが完全に切れて、新しく、スルーシャへのパスへと書き換えらえれた。
奪われた理性が、知性が注ぎ込まれるように取り戻される。
だが、奪われた理性も、知性も、一度ご主人様(スルーシャ)の中で闇を注がれてから戻ってきたがゆえに、
光輝はより陰り、闇がより強まっていく。
「いいんですぅ♡ 私は、この先が、知りたいのっ♡
ずっとずっと、知りたくても知れなったのだものっ♡
だから♡ だからぁ♡……」
より膨らんで、間もなく膣内に射精するぞ、するぞと言っているかのようなご主人様(スルーシャ)のふたなりレズちんぽ。
「だせっ♡ だしてっ♡ にんげん、やめます、からぁっ♡
……初めてのチンポアクメもっ♡ 初めてのドレインアクメもっ♡
ぜんぶぜんぶおしえてっ♡ 私は、ご主人様の、魔力タンクっ♡
いつでも必要なだけ、吸い上げて、くだ、さ……っ♡♡♡♡♡
あお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛っ♡♡♡♡♡♡♡」
ぎゅぅぅっ♡ と己が膣肉で絞り上げて、まるで牛の乳しぼりをするかのように、自らその精を飲み込むように。
そして初めての膣内射精の悦び(チンポアクメ)と、己が魔力を吸い取られる悦び(ドレインアクメ)を同時に浴びて、
甘く高い快楽の声から、太く、低い真なる絶頂の声を張り上げて、体を激しく痙攣しながら深い深い絶頂を味わっていく。
凌辱されて、捕食される被虐の悦びは、より深く、より深く、魂を腐らせていく。
汚染され、制圧される、己の子宮。それは、自分が人の道を自ら悦んで踏み外したことを示していた。
そして、実感する。己が新しく生まれ変わったことに。
今まで大切に思っていたものを穢しつくすることの方にこそ、喜びを感じていることに。、
「ふふっ……うふふふふふっ♡……」
ハイライトの消えていた瞳に新たに新しい意志の色が宿った。
だが、その色は、漆黒のごとき闇の色にして、人としての道を捨てた、魔の光を讃えていた。
■スルーシャ > 反発はそのままであれば確実に起きていた。
何故ならそれは寵愛。恋人同士のお互いを認め合う対等な恋愛感情とは異質の人と言う資源を、道具を愛でて手入れし、躾け、仕上げ、従わせていく矯正の強制。
だがそれは濁流の如く注がれて啓示を受けた信徒めいて脳を焼き心を蝕み思考を奪う。
これは祝福なのだと心の隙間に粘ついた闇が染み込んで従わされる愛に満ちていく。
「貴女は強くしなやかで美しく逞しい”芯”を心身に宿している……♡
それが盾役として必要な水際で踏みとどまれる強さを造りあげる……♡
だから分かるでしょう……♡ 今まで落ちたことのない貴女が、道を踏み外した羅どうなるかと言う背徳を期待していたことを……♡
私に愛されなさい♡ 私に満たされなさい♡
……もう二度と、満たされない毎日に戻りたくないでしょう♡」
歪み蝕む洗脳、汚染。その果てに、そこから逃げ出した果てにどこに行きつくのかを囁く。
人として清く、正しく、尊敬され、仰がれ、
乾いた日々に戻るのだと。
手を離せばもう二度と与えられない甘露で満たして身も心も蝕んで、ただ一方的に愛でられる愛玩の忠犬になる幸福を想起させて。
囁きの中で、しがみつく。己のものとなる。未だ理性も言葉も完全に戻らぬままの選択に頬へ口づけを落として。
「私の元へ堕ちなさい♡」
健気に手足を絡めてしがみつき密着するリリーのむっちりとしたお尻を両手で鷲掴みにしての杭打ちピストン。
本気で膣内射精してマーキングするご主人様の遠慮も配慮もない剥き出しの欲望が処女卒業の不貞マンコへ刻み込まれて
恋人ととの蜜月から不倫契約へ上書きされていく。
不倫。盾役にとって大事な腰の盤石さ。
その全てをご主人様に捧げて腰砕けになり、一方的に染め上げられる寝取られ交尾の果てに与えられる
汚染ザーメンによる子宮掌握。
言葉として明確に宣言するその先を知りたいという言葉へ応えるように恋人の粗末な候ちんぽでは味わえないほどの大量のザーメン凌辱が盾役を性処理愛玩奴隷へと歪めながら首筋から魔力も理性も吸い上げて供給源とされる悦びを思い知らせていく。
しがみつく以上にご主人様がその頭を、腰を、巨乳を抑え込んで逃がさないと言う強烈な意思表示でっ所有権を主張する淫靡なボディトーク。
貴女の体を十全以上に欲し、活かし、味わい、奪い、染め上げていくご主人様の両手がしがみつく手を解くと、
盾役の両手と指を絡ませ合って求められる悦びに脳を蝕んで。
「どう♡ 人としての愛を捨てて道具としての愛に染まった感想は♡」
余韻に浸らせるようにピロートークを行いながらふたなりレズチンポがねっとりと蠢いて膣孔を余さず充たして押し広げて未だ泡立つ粘質音を響かせて絶えず雌としての悦びに蝕んでいく。
「貴女の心も体も私のもの♡ でもまだ人間のまま♡
……けれど今でも充分今までより強力な力を実感できているでしょう♡
一度恋人のところに戻りなさい♡ そして人としての生活の中でどれほど今までこだわっていたものが無価値だったかきちんと噛みしめなさい♡
……それが終わったら、私は冒険者として貴女と恋人と共に一度冒険者としての仕事をこなしましょう♡
その出先で♡ 恋人の前で……」
耳元に唇を寄せて
「人間を辞めさせてあげる♡」
■リリー > 丹念に丹念に施された調教と洗脳。
愛を利用し、愛情を寵愛へと歪め、意識を祝福し、何よりも、知ってしまった毒の甘露の味を失いたくないと唆す。
丹念に施されるがゆえに、洗脳は、完了する。
「ええ♡ ええ♡ もう戻りたくない♡ もどれないっ♡
こんな素敵なものを知ってしまったのだもの♡ もう、この愛なくては、生きていけないっ♡
……はい、私はスルーシャ様に、愛されます♡ スルーシャ様に満たされます♡
私の全ては、スルーシャ様のもの♡ 踏み外した快楽は、とっても甘美で、心地よくて♡」
紡がれる言葉をそのままに。
失いたくないがゆえに繰り返し、そして、ついに
「……もう、乾いた日々には戻れない。戻りたく、ないの……」
本来の現実に完全に背を向けた。
ただひと時の甘露こそすべて。
ご主人様にいただける寵愛が、いただける快楽が、いただける@絶頂;ドレインアクメが、リリーの全てとなったのだ。
頬に落ちる口づけが、ご主人様へのパスを、強化する。
不倫契約に上書きされて、それが全てを理解して。
己が子宮を掌握されて。
魔力も理性も吸い上げられる快楽と、ご主人様の糧となる幸せを嚙みしめて、
何よりも、ご主人様が所有権をしっかりと主張してくれるから、そこに愛情を感じて。
激しい絶頂の痙攣が終わった時、手と手を恋人つなぎにつながれて、満たされた肉体のみならず、精神の充足をも与えられれば
「……とっても、すごかった♡ です♡
今まで思い悩んでいた言葉、馬鹿みたい♡」
清廉にして清楚な心根は、完全に腐り落ち、道具としての愛こそが全てと新たな価値観を流し込まれたリリーは、疑うことなく口にした。
このあと、完全に堕としてもらえるのだろう、と思っていた矢先に向けられる言葉。
しばし目を瞬かせるものの、続いた言葉の最後、全てをおぜん立てされたその先での、人間廃業の約束を得て、
口元が弧を描く。今までにないほどに、邪悪で、淫靡で、性根が腐り落ちた女が見せる笑顔をご主人様に向ければ
「はい♡ 一度、戻ります♡
先のご主人様との約束通り、あの男の肉棒も受け入れます。
如何に無価値なものを後生大事にこだわっていたのか、その全てを噛みしめて、ご主人様の道具の悦びを噛みしめて♡
……来たる日に、私を、人間をやめさせてください♡」
はっきりとそう口にすれば、そっと背を伸ばし、ご主人様へと愛情のキスを向けてから、
夜が明けるまではまだまだ沢山注がれて、より黒く、より光を失う快楽を味わいつくしてから、夜が明けた時、連れ立って宿を出る。
そして、次の再開を約束し、その約束の日を一日千秋の思いで待ちながら、いかに恋人を裏切ろうかと内心でほくそえんでいた。
■スルーシャ > もはや毒と知りながら甘露を飲み下す様はこれまで長らく満たされなかった被虐嗜好を存分に刺激された背徳故だろうか。
誰でもいくらでも望めば全てを守るほどの堅牢な盾たるリリーを賞賛することは出来るだろう。
だがそれは賞賛される偶像へ向けられる賛辞であり、リリー本人を満たすものではない。
これほどに優れた存在であるリリーを人として満たせる者がいない。
それこそが人間の限界であり魔族の資源として良く管理されるべきなのだと寵愛を施しながら実感する。
「もっともと踏み外した先の奈落を教えてあげる♡
人が恐れる闇を♡ 悪徳を♡ たっぷりと味わって嗜める存在になりなさい♡」
もはや寵愛を受けて開き切った魔力パスは短距離であれば精神感応による対話も可能となる程に汚染は進んでいく。
ここまで愛しい存在であれば淫紋は無粋。人間であれば知性を失い堕淫の家畜となり果てるのは惜しい。
そして魔力パスを弄び舐めしゃぶるほどにリリーの絶対防御を読み取って、
同時に手駒とする上での弱点補完の為に与える力を思案する楽しみも生まれる。
「貴女の心を繋ぎ止める程度には恋人は人間性は恵まれていたのでしょうね?
けれど、人徳だのが繋ぎ止めるほどにリリーの心と体は乖離していく……♡
それを満たされなかったのだから貴女は正しく悩んでいたのよ……♡」
些事に翻弄されていたのだと嘲笑することも、リリーを射止めた恋人を軽んずることもない。
正しく把握し、理解した上で染めて、圧倒し、その全てを掌握する
だからこそ、過不足なく評価するからこそ、リリーと言う類稀なる人材を掌中に収めたくなり可愛がりたくもなるのだ。
そして次の提案に目を瞬かせるのも可愛らしくてしょうがない。
普通であればそのまま完全に染め堕とす。
だが、その間に挟む過程、新たな価値観の中で元の価値観と向き合うことで得られるものが
リリーをより上質な忠犬に仕上げるのだと。
「ええ♡ 貴女の過去があってこそ今の悦びがあることを噛みしめるためにも一度味わいなさい♡
貴女を迎え入れる為に趣向を凝らし、たっぷり楽しませたうえで人間を辞めさせてあげる♡
……その後は、人間の倫理観など捨てておしまいなさいな♡ 私に傅き股を開く牝犬として幸せにしてあげる♡」
それに、とそこで言葉を切って
「……疑うわけじゃないけど、貴女みたいな類稀なる相手に一度果てただけで終わるような人間が実在するのか、
自分の目でも確かめておきたいわ」
魔族故に、そんな情けない雄がいるのかという疑問。価値観の違い故に神話上の生物が実在する懐疑心を抱く段階まで至れば検証の必要もあるのだと。
そこまで話せば、篭絡したリリーを一晩中愛で続ける。
騎乗位で腰を振らせ、バックから組み伏せて犯し、松葉崩しで奥深くを執拗に抉り、壁に抑えつけて背後位で種を注ぎ込んで。
夜明け頃には、それでも尚漲るふたなりちんぽへお掃除フェラを上手にできた忠犬へご褒美の手マンで余韻のメスアクメをキメて一区切り。
終わりに長い濃厚なレズディープキスで締めればお互いの身なりを整えて共に連れ立って帰路へ着く。
貴女の価値観を塗り替えた洗脳寝取られセックスでさえ、まだ序の口に過ぎないことをいつ味わってもらおうかと楽しみにしながら、
次の計画まで一度別れて互いに雑踏へと消えていった。
ご案内:「平民地区 冒険者ギルド併設宿」からリリーさんが去りました。
ご案内:「平民地区 冒険者ギルド併設宿」からスルーシャさんが去りました。
ご案内:「平民地区/冒険者ギルド・酒場」に影時さんが現れました。
■影時 > 朝から降りしきる雨は止まず。昼を過ぎても止まず。
やっと止んだと思えば夕刻近く。稼ぎたいと思う冒険者は、そのころに出てくる――道理もない。
雨が降ろうが雪が降ろうが槍が降ろうが。
少しでも易く糧を得たい、稼ぎを得たいと思うものは、余程のことが無ければだいたい朝早くから動き出す。
夕刻を過ぎてギルドの門を叩くものは、何か掛け持ちしているか、前日まで大仕事に勤しんでいたか。
「……――こんな時間だってのに、いや、こんな時間だからでも、か」
平民地区にある冒険者ギルドのひとつ。
食事処を兼ねる大きな酒場を併設した其処の扉を開く着物姿の男が、肌に触れる喧噪にそう嘯く。
緞帳めいた厚い雨雲が過ぎゆき、漸く日が出ていても赤く傾いた頃合いは、人の流れも大分捌けたであろう。
そうかもしれない。そう思うかもしれない。だが、こういう日もある。強い雨脚は人の足をも遅くさせる。
御免なすって、と声を掛けつつ、するり、ゆるり、と人の流れを縫い、依頼が出される掲示板の前を通り、受付のカウンターまで進む。
先に受け付けていた事務作業を終えた、と見える事務員によう、と片手を挙げて、
「俺宛に何か手紙が来てるかね? 無かったら、ついでに最近の未処理の写しをいくつかくれると有難いが」
そう声をかけ、お待ちくださいと奥に下がる受付嬢の姿を眺めつつ、カウンターに身を寄せる。
そうしていれば、首に巻いた襟巻が二度、三度と震え、ぽこり、と。顔を出す姿が二つ。
湿気のお陰か、何だか居心地悪げにしている二匹の齧歯類が身を乗り出し、カウンターの天板の上へと飛び乗る。
無理に出かけなくても良いぞとは言ったが、寝床でまどろんでいたい気分ではなかったらしい。
わしゃわしゃーと顔を擦り、尻尾をもしゃもしゃ毛繕いし始める姿を横目にしつつ、暫し待とう。
■影時 > 待っている時間は意外と少なかった。
バックヤードに入ったと思しい受付嬢が数枚の紙束と共に、一通の赤い封筒を運んで受付に戻ってくる。
この手の封筒が来るのは偶にあることだが、昨今の状況変化を考えると、案の定であっただろうか。
戻ってきた受付嬢が差し出す封筒を受け取り、封蝋に押された刻印と記された宛名、差出人の記載を一瞥する。
――間違いない。やはりあの老人の仕業か。
過日、住まう邸宅の警邏、警備を依頼されたが、それにまつわる一件に関しての追加の指名依頼であろう。
「中身を確認されますか?」という声に、ふるりと首を振って、ボディバッグの中へと突っ込んでおく。
空き部屋を借りて確かめても問題なかったが、このタイミングでそれには及ばない。
住処で確かめ、幾つか勘案と増えた同居人に指示を出し、差出人の元へと伺えば問題はない。
あとは、最近堆積している未処理の仕事の複写を貰い受け、礼を述べて受付を後にしよう。
着物の裾を揺らし、身を翻せば、受付嬢に前足を振って二匹の毛玉達が跳躍。見事なフォームで飼い主の背と肩に引っ付く。
「夕飯前に軽く何か引っかけるか。……何か新しい酒でも出てるかねェ?」
夕飯時には少し早い頃合いだが、この時期はどうにも蒸し暑い。よく冷えた酒でも引っかけてみたい処だ。
そう思い、右手に持つ紙束をちらちら眺めつつ、腰に差した刀の柄の上に左手を乗せて隣接する酒場へと向かう。
刻限を考えれば、そろそろ席は埋まり始める頃合いだろうか。
適当な席を見つければ陣取るように座し、鞘ごと抜いた刀を壁に立てかけては品書きを探す。
肩や背に乗った小さな姿がちょこんと卓上へと移ってくる気配を感じつつ、気づくのは壁に備えられた黒板の書き込み。
「おぅい、極冷のエールをひとつ。生ハムのサラダとナッツと、あーあと水と深めの小皿を持ってきてくれ」
魔法でギンギンに冷やした、なる謳い文句のエール酒が少しに気になる。
気になるなら頼まない理由はない。つまみとそのついでに毛玉達の食事も頼む。
品としては軽めでいい。どうせ、宿に戻ったらもう一食、更にもう一杯等とも洒落込むだろう。
直ぐに運ばれてくる品々が揃えば、そのうちの水差しから小皿に水を注いでやる。此れは二匹の分だ。
■影時 > 運ばれてくる酒杯は陶製の重々しいジョッキ。
だが、中身はよく冷えている。いや、杯もまた予め冷却しているのだろうか。その証とばかりにびっしりと露を纏う。
その有様に目を細めつつ、お先にと言わんばかりに水皿に口を付けだす二匹に苦笑を刻む。
「……ったく。まぁ、お前らにゃとっては俺らの遣ることもお構いなしでもあるか。頂きます、……と」
そういうものである。言うことは聞くが、お構いなしな所もあるのがこの二匹の齧歯類たちだ。
夏毛に気づけばすっかり生え変わっているが、暑いものは暑い。水だって飲みたくなる。
仕方がないなと肩を竦め、両手を合わせてみせては、おまちかねの酒杯を掴む。
謳い文句は、どうやら相違ない――と言ったところだろう。
中身ともども冷え冷えしい様子に目を細め、一口。また一口。
冷やすとより旨い類でも探したのだろう。苦味際立つさまは、普段好む酒のそれと違った味わいで。
「――……成る程。悪かぁない。此れ、自分でも出来ねえかね。むつかしいか?」
偶に決める分と美味しい類か。そう捉えつつ、胃の腑を灼く酒精の具合も吟味する。
この季節だと弱い分、喉越しの良さと清涼感に任せて、ついつい杯を重ねてしまいそうでもあるか。
そう考えながら、付け合わせのサラダも掻っ込む。
同じ酒を探すのは難しくないだろうが、冷やす手立てが少々心許ない。そういう魔導機械でもあるのだろうか。
考えつつ、酒場の主が気を利かせてか。敢えて出された殻付きのナッツを齧り出す二匹を見遣る。
割ってやっても良いが、それには及ばないらしい。
齧歯類の相方、シマリスの方が殻を割り、中身を相方のモモンガが小分けに砕いて分け合う。
■影時 > 宿暮らしの癖にあれやこれや欲しくなるのは、欲が張っている証か。
是非もない。欲しくなる時は欲しくなるもの。だが、それと相反する意を抱くのもまた人間の常で。
無理に買い込んで結局倉庫に詰め込むくらいなら、仕入れるのも考えものだろう。
それに、こうして飲みに行く風情をケチりたいわけでもない。どうせなら――。
「…………まだ、気も早いか、と……?」
ふと、脳裏に過ったものに苦笑を滲ませれば、不思議そうに二匹の毛玉が己の顔を見上げてくる。
何でも無ぇよと二匹の頭や背を撫でてみたところに、ふと何か視線めいたものを覚える。
視線をやり、ひらりと手を振ってみれば、遠く遠く見えるものがある。
感情の機微やら何やらに敏感な二匹も感じたのだろう。見かける装いに覚えもあるが、恐らく新顔か。
そう算段を立てつつ、手元の酒杯と卓上の料理に向き直る。
暫くは人の流れと共に行き交う料理と言葉を聞き、噂話等に聞き耳立てつつ、飲み食いに専念してみようか――。
ご案内:「平民地区/冒険者ギルド・酒場」から影時さんが去りました。