2025/11/30 のログ
ご案内:「王都自然公園」にタン・フィールさんが現れました。
■タン・フィール > 王都平民地区の一般人に解放された、木々や花々がほどよく配置された、日当たりの良い自然公園。
商店街や住宅地など賑わっている通りから離れているために、休日や学業・仕事明けなどに人が多く集うことは稀だが、
デートスポットや家族と過ごす場所として知る人ぞ知る名所。
その自然公園のなかでも、ピクニックの休憩所などに使われる小道の脇でちょこんと設置されているのは、
「花と薬と」の看板が掲げられた移動式薬屋の住居 兼 店舗のテント。
「よぉーし! やるぞぅ!!」
その小さな店の少年店主が店の前で夕食のために焚き火を組んで、野宿のキャンプを初めていて…
今日のメニューは本日はじめての実験料理。
肉と野菜を、店で余った数種類の薬効のあるスパイスと共に煮込んでみようという挑戦。
鍋にバターを入れて、安く仕入れた鶏肉と玉葱を入れてじっくり炒めていき、薬屋の商品でもあるスパイスを引っ張り出し、
コリアンダー・クミン・ターメリック・シナモン・クローブ・ナツメグ…その他多数。
具材が香ばしくなってきたら牛乳と砂糖・塩とワインを加え、じっくり弱火で煮込んでいく。
出来上がったのはごろごろ野菜とホロホロ鶏肉が映える、食欲そそる香ばしい褐色の汁物。
それをシェンヤン地方の古米を炊き上げたものにかけてみると、茶色と白のコントラストが美しい。
美しくはあるが……王都では貧民層から富裕層まで、あまり見慣れぬ褐色部分のビジュアルはややショッキング。
「ぅ―――おいしい、筈、なんだけど……もぐっ ―――……っおいし!!!!
…おいしい!けど!……ちょっとよくばって、つくりすぎちゃった…かもっ」
初めて味わうその香ばしさと甘さ、塩味、酸味、辛味、ほろ苦さ…すべてが複雑に混じり合い、しかし食べやすい。
場所と時代とが違えば、大衆食として人気を得ることもあるかもしれぬ料理を偶然生み出してしまった。
……が、考えなしにあれこれ具材をぶち込んでしまったためか、その量は一食で食べ切れるものではなく。
■タン・フィール > 「―――っていうか……ちょと、からい……っ」
ひー、と、桃色の短い舌を突き出して外気の涼やかさを少しでも口内と舌に呼び込みつつ、
最近仕事用に仕入れた香辛料の中のいくつか……
シェンヤンをはじめ、いくつかの都市では安価で質の良いものも出回り始めたペッパーの類が悪さをしていて、
幼子の味覚と痛覚の許容を超えた辛味を生み出し、味蕾を焼く。
「ミルク、ミルク… っ んんくっ……」
熱さと辛さで悲鳴を上げた舌と味覚を癒やすために、本能的に水分を求めて飲み干すのは朝にとれたてのミルク。
知ってか知らずか、真水を飲むよりも辛さでダメージを追った舌を休めるのに適した乳成分が、
ひりひりした舌を優しく覆って拡がり、膜を作り、荒れた粘膜にも染み渡って辛さを取り払っていく
「ふーっ……これ、ライスにも合うけど……パンとかにもいいのかも。」
具材の幅もきくし、栄養も満足感も上々……となれば、携行食や旅の合間の食事にも使えるかもしれないとばかりに、
普段は薬草や薬効のある動植物のデータを収めている薬師のメモ帳に、いそいそと適当にぶちこんだ具合やスパイスを書き殴る。
もうすこし料理の手順や素養に長けていれば、レシピらしいものに書き上がっていたのだろうが。
ご案内:「王都自然公園」からタン・フィールさんが去りました。