2025/09/13 のログ
リセ >  一抹の不安が十抹の不安に、変わった――。
 今度は軽く肯く彼を見上げる目が不安でいっぱいになった。
 これは……やばい方では?
 悪い人ではなさそうだが、やばい人ではある…と認知。
 ドミノ式に自分の人生が崩れていきそうな気がした。

 けれど、こちらの内心に不安をよそに着々と彼は術式を練り対策を講じ始めたようである。
 取りあえずは、成り行きに任せてみるしかない。いよいよやばいとなったら……舌噛んで死のう。
 とこいつもこいつでやばい思想に塗れながら、手の甲を突くように打つ指の動きに反応し。

「は、はぃ……っ」

 はい、というよりも、はひ、というような何とも情けない発音になりながら肯き。
 
「―――っ……!」

 背中で弾ける閃光。カッ、と夕闇を一瞬眩く照らし出し。そして背後にいた人物から悲鳴が上がる。
 追跡しようにも目が眩んでその何者かは蹲っていた。
 まるで光に押されるように駆け出したが――遅い。とても非常に遅い。
 コンパスの差が顕著にしてもほとんど手を引く彼に引っ張られる形で。

「ぅ、あ……ちょ、っと…待っ……」

 転げそうになりながらはあはあと荒い呼吸。ほぼ走れてないのでは?というような鈍足。
 当人的にはいっぱいいっぱい。
 そのまま背後の輩は撒けたものの――第二の危機、襲来。
 かと思い戦々恐々としたが、辿り着いた場所はお茶が飲めるお店。
 いきなりベッドが出て来ることはなかった。舌噛んで死ななくて済んだ。

 でもまだ、完全に安全圏ではないような気がしないでもなかったけれど。
 汗をびっしょりと滲ませて、はあ、はあ、と息も絶え絶え。お店に駆け込むと、身体を折るようにして両手を膝について、ぜえぜえとしばし返事も出来ないへろへろ具合。体力なんてほぼほぼない虚弱女子。

オズワルド > 「うわ足おっそ。
 …いや、淑女的な足取りだね?」

思わず道中で言ってしまった。そんな一幕。

ひとまず店内まで入り込めば、一度だけ扉から外を覗くも、追手の姿は確認できず。
その結果が、先の一言となる。

「しかし君――、うん、とても淑女だね…。」

流石のナンパ男ですらオブラートに包んで、体力ないねと言わざるを得ない虚弱っぷりを見せた少女を前に。

「とりあえず椅子までは運ぶね。」

大変申し訳ないが、入り口をふさいでいるわけにはいかないので。
ひょいと横抱きで抱え上げて、空いている席まで運び、椅子に座らせよう。
抵抗できる余裕はちょっとなさそうだったから、多少強引でも問題ないだろう。

運んで座らせてしまえば、片手を上げてウェイターさんに声をかける。

「すいませーん、一端水二つお願いしまーす。」

この状態では暖かいお茶より水だろうと、ひとまず水のご注文。

リセ > 「す、すみ、すみませ……」

 碌に声にならない。自分でも知ってる。亀だということは。
 体育の授業は何よりも苦手。大抵は見学。団体競技では心底嫌がられる部類。
 運動神経の死んでいる女子は、そこまで走り込むのでも精一杯で、途中で泣きそうになっていて。
 なんでしたら途中でちょっと泪目にもなっていた。

「っは、は、はう……は……ほんとぅに、すみまs……きゃっ……」

 情けないのは百も承知。ぜいはあしながら青春のそれではない、ただの疲労からの汗と泪でべしょべしょしてしまいつつ。
 謝罪は唐突に抱えあげられて悲鳴に変わる。

「ぁ、の、あのっ……じ、自分で……… すみません……」

 席にくらいなんとか自力で向かえたが。有無を云わさず暫定恩人に席へと担ぎ込まれた。
 小さくなって申し訳なさそうに下を向いて。

 そして速やかに水の注文。さっさと運ばれてくると、それを前にして。
 先に深々と頭を下げ。

「……ほんとうに、すみません……大変お世話をおかけいたしました」

 テーブルに額をぶつけそうな平身低頭振り。貴族感は微塵もない。

オズワルド > 「良いって良いって。
 ま、まずはこれね。」

はい、と。運ばれてきた水のコップの隣に、ハンカチを置いた後。
まだ座らないでいた自分は、椅子を貴方の隣に運んできて。
他の客先からあなたが見えないように、身体で隠すようにして背を向けて座った。

「落ち着いたら教えてね。ゆっくりでいいよ。」

要するに、他の客から貴方が見えないようにして。
色々と乱れてしまっている顔等を整えて、水を飲んで一息つく時間を用意したのだ。
まあ、貴方がそれに気づけるかまではあんまり、気にしておらず。ひとまずハンカチが活きてくれれば良いなというくらいだけれども。

リセ > 「え、あ……あ、りがとう、ございます……
 ぁ、で、でも……わ、わたしも……ちゃんとっ……」

 おかれたハンカチ。それを見下ろして頭をまた下げた後。
 ごそごそごそっ、と背負っていた鞄を下して中を探って引っ張り出したレースのハンカチ。
 じぶんの、ありますっ、と取り出してそれから目尻やこめかみや額を拭う。
 汗や泪で人様のハンカチを汚すわけにもいくまい。
 こしっと拭って、はー…と一息つけば。
 急速に喉が渇いて、失礼していただきます、とグラスを手にしてこっこっこ…と半分ほど補水しては。
 ふぅう…と脱力し。

「………も、もぅ……大丈夫です……お気遣いいただき痛み入ります……」

 他の席からはべしゃべ者な貌とか見えないようにしてくれていたらしい。
 再度またお礼を述べては、彼からのハンカチはお気持ちはありがたくとそっとお返しして。

「ぁ、あの……お世話になった、お礼に……なにかごちそうさせてください、ぜひ…っ……」

 今月のお小遣い……まだ大丈夫。メニューの上から下までという暴挙に及ばれなければ。

オズワルド > 背後から聞こえてくる音に、ひとまず意図は伝わったようで一安心。
こちらを伺ってくる店内のほかの客に、おーん?なんか用か?ってガンたれ返したりしながら楽しく時が過ぎ去るのを待ち。

「ん? だいじょうぶそ?」

痛み入りますとの事なので、くるり、椅子に座ったまま体の向きを変える。
そうするとつまるところ、お隣の位置で同じテーブルに向き合う形になるのだ。
返されたハンカチは、別にいいのにー、なんて言いながら受け取って、片手に下げっぱなしだった夕飯予定だったサンドイッチが入ってる籠の中に戻す。ついでに籠くんはテーブルの上に置いておこう。端っこのほうに。

「ん? 別に気にしないでいいのに。
 でも拒否するのも何だしな。んー。」

ちょっとばかり考えこみながら、テーブルの上に置かれている簡素なメニュー表を手に取り、開く。ふむ…。

「じゃあこのカップル向けケーキセットで。」

紅茶付き、甘味マシマシのシフォンケーキのセットメニューだ。ただしフォークは1本しかついてこない。
あーんして食わせるためである。

リセ > 「お陰様で……っ」

 はい、とこくこく肯いて。テーブルに並ぶ格好の彼の方を軽く見上げるようにして。
 滅相もない、とハンカチは自前があるので大丈夫ですとお返しして。
 使った自分のハンカチは鞄にしまい直す。
 思わずテーブルの端に置かれた籠の方を見やると……お夕食でしたか…?と恐縮した様な気づかわしそうな目線を向け。

「お、お世話に、なったのでこのくらいは、せめて……っ」

 ていうかそれで貸し借りなしですよ?ということにも思えなくもないかもだが。
 けれどそんなに過剰な要求をしてくるようにも思えないから、先手を打ってお礼をしておかねば。
 お礼できずに終わったらそれはそれで申し訳ない。
 
「甘いものお好きなんですね」

 カップル向けをよどみなく選んだ彼に一人でそんなに食べるのか、と感心する。
 あと、カップル向けとかしれっと頼める男子は珍しい生き物であると。
 思わずまじまじと隣の涼し気な顔をした男子を見やる。未知の生き物を観察する目だ。

 そしてカップル向けを一人で食べるのか、とナチュラルに認識した天然は。

「わたしは……夕食前なのでお茶だけいただきます」

 ひとりでカップル向けケーキを制覇するであろう男子を至近距離で観察する絶好の機会ではある。
 物珍しさ全開で観察しよう。

オズワルド > 「お夕飯でした。 まあ帰ってから食うよ。」

そう言葉を返しながら、片肘ついて顔をのっけて、顔の高さを下げる。
行儀悪いけど、背中丸めるよりはマシだろう。
気づかわし気な目線に、笑い目で見つめ返して。

「甘いものゲットだ、やったぜ。
 ふつーに好きだよ。学院近くの喫茶店で、クリームサンド出してる店知ってる? あそこの生クリームたっぷりフルーツサンドがマジ美味い。とか。そんな話できるタイプ。」

男子なら珍しいか~?って肩をすくめて。

「じゃ、注文しよっか。すいませーん。」

一旦片肘ついた姿勢を解除して、手を上げてウェイターさんを呼ぶ。
注文内容は、先の言葉の通り、カップルケーキセットと、貴方が頼んだ紅茶を一杯。

なおその背景で、とあるカップルが仲良さげな雰囲気で階段を昇って行った。

「…ところで自己紹介まだだったな。 オズワルドです。よろしく~。」

ひら、と手を振った後、また片肘ついて頭の位置が引くい姿勢に戻す。

リセ > 「ぁ、す、すみません、お誘いしてしまって……」

 そうだ、この時間にお茶もない。食事の邪魔をすることになってしまったか。
 またもや恐縮するが。
 相手は至って鷹揚な対応であってちょっと安堵する。

「あ、そうなんですか? いえ、あんまり学院の近くのお店……詳しくなくって……フルーツサンドですか、いいですね。今度チェックしてみます。
 ……ひょっとして、女の子とよく行くからいろいろとご存じなので?」

 ナンパの常套だろうか。これまでの会話で多少はお察しだ。
 軽い話方や気遣いや……最初にお声をかけてきたこと諸々で。
 良く云えば気さく、悪く云ってしまえば軽薄。
 けれど憎めない感じなのは人徳だろうか。お友達も多そうで羨ましい。

「オズワルド……さん、? 申し遅れました、わたしはリセアリア……リセと呼ばれます。よろしくお願いしますね。
 えっと……同じ学院、の方……ですよ、ね……? 魔法科の生徒さんでしょうか?」

 会釈して名乗り返しては、首疲れませんか?と頭を低くしてくれている様子にやはり若干恐縮気味に問いかけつつ。

オズワルド > 「良いって良いって。 こうしてケーキセットゴチになるしね。」

言葉がたいそう軽い。ふわふわしてる。
けら、と楽し気に笑う様子からも、この状況を楽しんでいることが察せるだろう。

「そうなんだ?もったいない。
 今度一緒に行こうぜ。今なら秋のフルーツサンドが狙えると思うし。
 こんな感じで誘う感じではあるけど、女の子と良く行くって程じゃないな。」

なお、ついてきてもらえるかについては言及しない。
自分の学内の評判を知っているなら知ってそうなものだけど…目の前の彼女は知らなさそうなので、よし!
ただ、貴方が安堵した様子を見せた一瞬に、ん、と嬉しそうに目元が笑んだ。

「リセちゃんね、よろしくー。そだね、オレも学院の生徒。
 魔法系の授業も受けてるけど、所属する学科としては冒険者の方になるかな。
 そっちは…魔法科の生徒さん?」

知らない顔だし、冒険者や戦技をやってるようには見えないしで、消去法。
首の疲れについては、

「そっちが見上げ続けて話したら首疲れるでしょ。」

とのこと。相手に気は使うタイプだ。一応。

リセ > 「そ、そんなので良ければ……えっと、お優しいんです、ね」

 滅法軽いが。なんならチャラいという部類にもなるんだろうけれど。
 その点については親切と云う変換で対応する温室な精神の持ち主。

「何分ひとりではなんだか持て余してしまうので……
 ぇ、あ……わ、いい、ですね。じゃあぜひお勧めなのをいただきたいです。
 そうなん、ですか? でも、女の子にとても人気がありそうにお見受けします。明るくてお優しいですし」

 飽くまで軟派というよりもご親切と脳内変換な天然素材。
 女の子に優しいだろうからおもてになるのでしょう、なんて能天気に思考していた。実情?穿った見方はしないし、噂話は耳に入ってこない。だっていじめられっ子だから。
 
「さっき魔法を使われていたようなので……わ、冒険者さん……ですか、すごいですね。わたしは碌に王都を出たこともなくって……
 あ……いえ……魔法はからっきしなので……でも愚かにも憧れはあって……魔術概論だけ受講しています」

 実践関係の科目しかとっていないようであれば彼との接点はなかろう。
 ふる、と首を振って微苦笑気味に伝えて。

「い、いえ、わたしは、大丈夫、です、よ……? あ、で、では、こぅ、背筋伸ばしておき、ますので……こ、れで少、しは……?」

 びし、と背筋を伸ばして気持ち目線、上。
 そうこうしている内にケーキセットと紅茶がやってきて。すっごく甘そうだし量の多いカップル向けに。

「わあ……」

 男子が一人でこれ。
 心底……わあ。

オズワルド > 「そっちが律儀って見方もあるけどね。」

こうやってお礼に奢ってくれるあたり。
話している分には、普通の子だなあ、という印象もあるが…かわいいからなんでもいいか!
男は美少女に弱かった。

「お、良いの?やったね。
 じゃ、連絡先貰っていい?オレは学生寮の○○棟××号室~。あ、受講してる学科の方が良かった?ガッコで声かけれるし。
 女子人気は、どうだろうな。 明るくて優しいやつ、好み?」

連絡先、と言っても手紙でやり取りするか、学校で顔合わせてか、そんな感じになるが。ひとまず連絡手段だけ掴みたがるくらいにはナンパ男。手が早い。
でも学校で会うと実情ばれそうだな…とかうっすらとは考え。

「学業と一緒に冒険者やってます。
 ま、オレの方はともかく…ふーん?なるほど、憧れを追いかける系。良いんじゃない?魔術概論ってどの辺まで勉強してる?」

この辺まで?って尋ねかけて聞いてみるのは、割と上級者レベルの項目である。興味自体はある様子。

「いや、背筋伸ばしても2㎝くらいしか変わらないような…?」

と、言っている間に届いたカップル向けケーキセット。
確かに量が多い。その通りだ。でも二人分なら問題なく入るくらいには、冒険者の胃袋は大きい。
ただし問題は。

届けてくれたウェイターさん曰く

  『では女の子の方がちゃんとあーんして食べさせてくださいね。』

フォークと一緒に、貴方に向けられたそんな言葉。
そう、カップル割が効いているのは、そんなカップルの様子を店主が見て楽しむためなので、やらなかった場合割引が効かないのだ…!

リセ > 「そう、でしょうか……? そんな律儀と云うほどでは……」

 当然のこととこいらは思っているが。小さく小首を傾げるが。
 相手はなんだか独自に納得したような気配。

「はい、わたしでよろしければ……
 ぁ、ぁ……え、えっと……め、メモします、ね……。そ、ですね、クラス、でも……わたしは貴族クラスの高等科2年生です。
 人好きされそうなタイプですよね。……え、あ……そう、ですね。明るい方は憧れますし、お優しい方は好きですよ」

 素直な感想。連絡先は軽々に自宅を伝えてしまうとそれはそれで……あの没落した古屋敷はちょっと恥ずかしい。
 所属クラスなどをお伝えしておき。鞄から寮の部屋を聞いたのでやはり生真面目にメモを取っておく。
 実際のご様子を知った所でそこそこに鈍感娘。人気者ですねえ、とのほほんとしているかも知れない。

「そ、それはとても、ご立派です。バイタリティがあるんですねえ。大変そうです。お身体にお気をつけてくださいね。
 どれだけ追っても見果てぬ夢にすぎないのは承知ですけれど。え、と…そうですね、わたしその……魔法史年表の暗記で絶賛手こずって、ます……何か覚えやすい語呂合わせとかあればいいんですけれど」

 さらっと質問された項目に肯いて。演習専門かと思いきや座学も進めているとは聡明なのだなと感心した顔で。

「2、せんちは……大きい、です……」

 背伸びできる訳でもないから背筋だけに頼っても限界はあるのですが。それでも伸ばしておいて損はない。やたらぴしとしていた。

「………? なぜですか?」

 あーんを店側から強要されて思わずきょとん、とした。意図が分からぬ、という表情である。
 この方はそんな乳幼児ではありませんけれど……とやや当惑気味に目をしばたたかせて。

「これは……食事介助がいるメニュー…なんです、か…? オズワルドさん自力摂取に問題は生じないと思うのですが……あ、良く見れば…フォーク……長いですね」

 どこかの天国仕様か?とまたまた首を捻る。
 あの世では長い箸で食べさせ合うとか伝承か何かで聞いたような。不思議なお店である。しかし、介助する女性側が忙しいのでは?と福祉目線の考え。

オズワルド > 「あれ、2年なんだ。もう一個下かと。オレは今年で3年目だから、一応3年生?
 よし、優しい方が好きなら脈ありだな。
 じゃ、日程に目途ついたら連絡するね。フルーツサンド食べに行こ。とはいえけっこ忙しいから…月末か10月か…何曜日暇とかある?」

質問重ねつつ、背伸びした背丈の高さを、そっと自分の手で測る。
そして自分もすっと背筋を伸ばした後、手の位置と自分の背の高さを比較して。

「やっぱオレの頭下げた方が良くない?
 あ、その辺やっぱ大変なんだ。気軽に教えてーってできない感じだな。魔術論まで押さえてる時間ないから知りたかったんだけどなー。」

2cmよりよほど頭の位置が高いという結果が明示されつつ。
何気にさらっと勉強でも逢引きを狙っていく軽い男である。

「カップル仕様だからだね?
 本来ならほら、男女カップルが互いにあーんって食べさせ合う感じよ。」

つい、つい、と自分と君を順に指差して見せて。

「リセちゃんはあんまり、カップルデートとか考えてみたことない感じ?
 彼ピにあーんってご飯食べさせたりとか、考えない?」

見た目文学少女っぽいから、小説か何かで読んでるのではとか勝手に妄想していたけれど。
これは思っていた以上に魔法優先かな?と首傾げ。

リセ > 「……い、一応は……あ、じゃあひとつ先輩、なんですね。
 怖い方はちょっと苦手、なので……
 ふふ、冒険者さんだけあって、行動力、ありますねぇ。あ、お忙しいならご無理に、とは……うん、と……そ、ですね……強いて云えば週の真ん中辺りは難しいことが多いでしょうか……」

 あとはその時々かもと首を捻りつつ。それにしても即断即決なタイプなのかとやはり感心。とことん引っ込み思案な自分とはおよそ対極に位置してる性質に見える。やや尊敬。
 お忙しいのでしたら代わりに買ってきましょうか、なんて自然にパシろうとすらする。
 く……背筋を伸ばされてしまった。目線がまた遠のく。

「い、いえ……ずっと首下げていただく、のも…悪い、ですから……
 なかなか掻い摘んで……とはいかない科目ですからね。お教えできるのももっと前段階しかわたしも難しいです。実践するにも知識はあった方がいいこともあるようですが、実際大変ですよね」

 普通は演習で手一杯だろう。そちらの方が技術としての事だから相当込み入っている筈であるし。
 勉強熱心、と下心にはとことん勘づいておらず、当人の意図してない点で好感度を上げてはいる。

「うーん……魔訶不思議です。
 でもわたしたち、カップルではありませんし。オズワルドさんも二人前どーんと召し上がりたかったまでですよね」

 そう信じて疑ってない。多分ナンパ師にとっては相当難敵な朴念仁。

「あーんってごはん………」

 云われてちょっと想像してみた。具体的に思い描いてみると……ちょっと照れた。間を措いてぽ、と赤くなって。

「そ、そそれより早く召し上がった方が……っ」

 『はよ食え?』的な視線がカウンター越しに向かっていた。
 考えて気恥ずかしくなったのを誤魔化すべく。ぐさっとシフォンケーキを丸ごと一切れ刺して、ごふっとお口にインさせようとする。カップル的な空気は皆無だし下手したら喉に詰まるし、お口開けてなかったらなかったでフォークが唇に刺さっていきそうな恐怖体験。

オズワルド > 「今18歳だけど、リセちゃんは幾つ?
 週の真ん中はつらい、覚えたわ。ただ、今月割と詰まってるんだよね…来月になるか…死ぬほど頑張れば明後日の日曜に行けるな?
 とはいえ、可愛い子のナンパチャンスは逃しちゃいけないってね。買ってきてもらうより、一緒に食べに行く方が楽しいでしょ。」

どうよ?って首を傾げながら…すいっと指先が伸びた。
あーんをされるののお返し気分で、貴方の頬に伸びた指先。すりすり、と頬のラインを撫でようとする。
ただし、目線は遠い。背筋が伸びるとやはり大変ではなかろうか…。

「じゃあ、たまに下げる感じで行こうか。
 正直ねー、平民クラスだと教えてもらえる内容に制限あるからね。貴族クラスの授業内容超気になる。とはいえ確かに、かいつまんでは厳しいからなあ。後輩に無理言うものでもないし。
 逆にオレの魔法見せるとかならできるんだけど。」

諦めるかー、と肩をすくめて。勉強デートは一端諦めつつ、うーん、何か会うネタないかなーと模索するくらいには、女好き。
下心たっぷり。

「いや、カップル扱いさせて意識させるの狙いだったけど。」

正直者。

「むしろそれを意識してないあたりびっくりしたね。はたから見たらカップルだよオレら。」

さらに言っちゃう。

「つまりここであーんさせるということはカップルとして見られる可能性が高まr、」

ごふっ。
お喋りしているお口にINするシフォンケーキ。甘い香りが漂う。
なお甘い雰囲気はない。かけらもない。ただし舌の上には甘い味。もぐもぐもぐもぐ…、
もぐもぐしながら、片手が貴方の手をタップタップ。
一旦引っ込めて!!!

リセ > 「今年17になります。やっぱりひとつ年上ですね。
 え、えっ……死ぬほどはがんばっちゃだめですよ……っ? お身体どうぞご自愛ください……? お忙しいのでしたら尚のこと労わらないといけません。
 チャンスは大事にしないとですね、わたしはかわいくはないですけれど……
 確かに、一人で食べるのは淋しいですし、その通りです」

 ふむ、と生真面目な顔でどこか神妙に肯いていると、わっ、と頬に指先が伸びて思わず驚いた声を上げる。
 く、くすぐったいので……と頬に触れる手に首を竦めて、ふるふる肩を震わせ。

「オズワルドさんが大変じゃなければ……
 そうなんですね、身分混合とかだとそれなりに進んでいるクラスもありそうですけれど……あ、うーんと……じゃあわたしももうちょっと頑張ってお勉強します、ね。少しはオズワルドさんの知りたいところもお教えできるようになるかもですし。
 魔法……っ。いいですね。ぁ…でも……」

 実技を見るのは好きだ。だけど、異能の類を無効化してしまう体質。場合によっては不発させる可能性もある。
 そこを考え見ると軽々に是非見せてください、ともお願いできずに口ごもり。

「なんと……それはまた、策士ですね……」

 そんなこと考える人間がこの世にいるんだ……そんな表情をありありと見せ。
 一周回って真顔になった。

「男女が一緒にいるだけで付き合ってるって、それは余りにも短絡的な思考では……」

 実は冷静沈着。
 そして隙あり。

 口が開いてる瞬間に最後まで云わせずふわふわシフォンケーキを放り込む。ちなみに案外とケーキ類は誤嚥の可能性が高い食材であるそうな。
 
 手をタップされた。もう一切れですね!ともちろん爽快に誤解した。
 
「どうぞ!」

 せめてもう一口…にして差し上げて?というほどの容赦のなさ。
 まだきっとお口の中一杯だろう彼に追撃のもう一切れ。一度フォークを引っ込めてはもう一切れを華麗にぶっ刺して。にこにこしながら、えいや♡とぶち込むという――ちゃんとした拷問。

 そんな惨状にカウンター越しに愕然としているお店の人がいた。

オズワルド > 色々な会話や言葉が本当ならあった、あったんだが。
今や口の中はシフォンケーキ一色。言葉を紡ぐ隙が無い。
もぐもぐもぐもぐもぐもぐ。
どうにかこうにか咀嚼して飲み下してはいる、いるのだ。
その速度を上回る形で、シフォンケーキがぶっこまれた。

ごふっ! げほっ、えほっ。

むせかえりながらに、鼻で頑張って息しながらケーキを咀嚼する。
こここそがまさに、ケーキの地獄であった…!

そうして辛うじて、辛うじてできた隙間時間に、紅茶を口に流し込む。飲むとかじゃない、流し込む。そうでもしないと喉に詰まって死ぬ――!

「うぇっほ。」

ようやく飲み下して変な声出た。
そうして、しっかり。オイタをした貴方の手を捕まえて。

「やりすぎ。」

えいっ。ぎゅっ。
これ以上追撃されないように、フォークを握ってる手を握りしめた。

リセ >  わーすごい、男の子はやっぱりよく食べます。
 などと内心ですっかり感心して。甘いものが好きと云っていたし、このくらいはきっとぺろりかとなんだか楽しくなってきたようで。
 高速でもぐっている口の動きに見入って。
 頬がケーキでいっぱいに膨らむのがリスみたいでかわいい、なんてのほほんと思っておれば。

 めっちゃ噎せてる。
 さすがにぶっこみすぎに違いなかった。
 普通はキレる。
 
 紅茶を急いで流し込む様子に。やっぱり無理があったのか、と背中をぽんぽんしようとしたが。
 その前にお手々は確保された。

「………だ、だめでしたか……すみません、つい……ちょっと楽しくなってしまいました……面目ありません……」

 おこられた。そりゃそうだ。
 しょん…としながらしおらしく謝罪した。
 すっごい頬張っている姿が……思いの他よかったのでつい。

オズワルド > 「如何に冒険者とはいえ死が見えたね。」

幻視した死神は鎌を持った美少女だったからついついていくところだった。
ふう、大仰に息を吐いて見せて。

「まあ楽しくなるのはわかるけど。」

判っちゃうけど。

「これはもう一個お返ししても文句言われないのでは?
 具体的にはお二階に連れ込むとか。」

ぎゅぅ、した手を自分の胸元に引き寄せる。くいっ。
なお、行ければ連れ込むだけの緩い手につき、ほいほいついてこないのであればお返しはほどほどになる。
まあ、ほいほいついて来たら食っちゃうくらいにはナンパ男ではあるが。

リセ >  まさかの臨死体験。ケーキ殺人者になるところであった。
 ひぃ、と彼の感想に慄いて。改めて申し訳ございません状態で深々と低頭の姿勢。

 そしていっそ怒られた方が大分マシなのでは?という……ナンパ100%純度まじりっけなしの下心での反撃を受けた。

「そ、それはいくらなんでも等価とはいかない、のでは……過剰請求に当たるかとですよ……?」

 ナンパ師舐めたら痛い目に遭うという実例。
 捕まった手が胸元まで引き寄せられた。
 身の危機。
 ――というほどは強引ではないのは、やはり根は優しい青年なのだろう。
 逃げる余地があったりとか嫌がるのを無理矢理という鬼畜じゃないのはその力加減でも分かった。

「ぇ。っと……このお詫びはフルーツサンドで……お返し、します……」

 お詫びをしないと云うような軽薄ではないから丁寧に謝罪して。――なんにせよ今日はもう帰らなくてはすでに大分遅くなってしまった。
 すっかり暗くなってしまった窓の外を見て叱られてしまう、と少し焦り帰宅を申し出るのであった。

オズワルド > 「いやあ、ギリ正統なる請求でしょう。」

ナンパ男基準は死の気配に敏感であった。

「まあフルーツサンドで返されるのも良いんだけど…。
 でもフルーツサンドも口に突っ込まれる予感があるから、代わりにちょっと窒息の気分を味わってもらおうか。」

言うや否や、もう片方の手が貴方のあご先に伸び、くいっと上向きに持ち上げて――

傾けた顔を近づけて、唇をうばう、ちゅぅ。
無理やりにでも逃げなければ、ちょっと息が詰まるくらいの時間まで続くちゅーである。

なお、その後は特に追撃するでもなく。お会計を終えたのを確認してから、退店することになるけれど――
途中まででも送り届けることになったかどうか、提案はしたけれど、其方次第になることと。

リセ > 「大分暴利ですよ?」

 そのギリ…の基準が大分わからなかったけれど。
 とにかくこちらの主観では異なると主張しておこう。
 そんな齟齬をやりとりしていたかと思えば――大変油断も隙も無い。顎を持ち上げられて。

「ぇ、あ、きゃああぁー!!」

 悲鳴とともに間髪入れずもう一発シフォンケーキを口に突っ込んでケーキ防御かましましたとか。
 きゃあきゃあ云いながら無作為に見えるのになんだか命中率は無駄に高い乙女殺法。
 最終的に皿とか投げたかもしれない。
 普通に殺されると思った可能性が高いので結構命がけである。

「何するんですかオズワルドさん!!」

 
 なにすんのはお前だろうと云われかねない過剰防衛。
 やるだけやったのでその後気まずくなった可能性が大。
 ともかく――支払いを済ませると多分、無事に帰れたことだろう。なぜこんなに遅くなったのか家人からこってり絞られただろうが。

ご案内:「黄昏時の通学路」からリセさんが去りました。
オズワルド > んぐーっ。

ふたたび口に突っ込まれるシフォンケーキ。

こうしてナンパ男のナンパ的行動は、ケーキに妨げられることになったのであった…。

ご案内:「黄昏時の通学路」からオズワルドさんが去りました。