2025/07/03 のログ
■影時 > 「割と人聞きが悪いと思うが? 大病、死病を患わずして薬を求むるってのはよう。
……まぁ、その気概は買おうか。実際、まだまだ強くなれる、鍛える余地が大いにある現状だ。
篝、知っているかね?
人間の筋力とは、己自身を壊さぬよう普段は全力を抑えていると云う。
それが死地に際して発露するのが。火事場の馬鹿力とか言う奴だな。
忍者の技はそれをわざと出せるようにしているものが多いが、常態化したら、どうなるか想像出来よう?
尋問だったとは言え、貴族を殺すのが道楽とか言うのは、真っ当の定義を疑わずには居れんなぁ……。
休みはちゃんと欠かさないなら、いい。出来たら気にかけてくれと、俺の一番弟子にも言っとくか」
何を言っているのかねおまいわ、と。声に出さずとも、思いっきり胡乱な眼差しを向け遣れば。
ちょうどぺたんと耳を伏せて、尻尾を垂らす有様にぽんと肩を叩いてみよう。
説教じみてしまうのも善し悪しだが、云わずにおれないこともあるのもまた確かで悩ましい。
全力の出し方とセルフコントロールの重要さとは、改めて座学の席でも設けながら解くべきかもしれない。
奨励する一日休みの使い方は自由だが、何もせずに休む、寝るような。そんなことも出来ればと思うが、今はまだ難しそうだ。
「ああ、都度お前さんが必要と感じたときで構わんよ。
……――然様か。まぁ、夏が深まったらちょっと数日休みを取るか。
思えば心中に、傍にあるのは良いこととは思うが、俺個人としても思いを馳せてみたくてな」
無理もないか。父母の墓がなく、片親の末路の様に口元を引き結ぶ。
死して屍拾うものなしが忍者の末路の一つでも、この娘の有様、様相を思えば、何となく思うことはある。
親の教えが残っているさまを見れば、傍にあるという言い草は間違いではないだろう。
色々聞ければ、聞いておきたいものだ。その機会に故郷の風習に倣ってみるのも、悪くないだろう。
「変に惑わすより、手ぇ下した方が早いこともあるからなあ。
……成る程。いやなに。四大も五行もどちらが聞き覚え、馴染みがあるか、って程度の話でな?
五行を使うなら、一番使い馴染んでいるのが土行かねぇ。
ま、何にしても物は試しだ。試して合うなら良し。合って伸ばせるなら尚良し。
苦手を埋めたいと思うなら、一通りできるようになった後に向き合うが無駄は無かろうよ、と」
面倒臭がりという点も否定はできないが、幻惑の類は繊細な面も多い。そこが難点と言える。
自然を為す要素とでもいうのか。その数、位置は文化圏で違うらしい。
相生の喚起の技は、恐らくそれに則って行う方が一番無駄なく、効率的にやれるだろうと見立てる。
そう述べつつ、水分身の維持を保ちながら別の術を紡ぐ。続けざまに紡ぐ。
河原の砂利の下から、にょきと土を屹立させ、続ける術で屹立した土塊から、白く輝く金属片を突出させる。
相生の関係になぞらえて、効率よく術式を連鎖させる環境操作術の最適化の一例。それを目くらましにして、という程でもないが。
「ぉ、良い声したなぁ。スケベは否定しねえが、俺が嘘を言ったことがあったかね? 近日にでも教えてやろう」
感覚を共有している分身越しに、触れた感触を確かめながらククク、と喉を鳴らし、威嚇の眼差しに暗赤の視線を重ねる。
冷たく光るような眼差しを返しながら、分身への氣の供給を断つ。術を解く。
ばしゃりと水しぶきに変じたものを川の流れの方に戻し、真剣な気配を放ちだす弟子の方を見遣る。おう、と掛かる声に頷き返し――。
「…………っ、クク。ははは。
いやぁ、何と言うか、だ。何と言うかなァ。
体得するにあたり俺も大分苦労したンだが、後世畏るべし――ってのは、まさにこう言うことか」
問題点は、ある。色々ある。この術は娘が試しやすいように火行からの喚起に落とし込んだだけに、火種が必要になる。
最終的には火種もなく、印を組み、力を走らせることで起動できれば、それが良い。理想ではある。
だが、それでも。それでもだ。自分が考えていた以上に教え、提示した術を発動させて見せるさまは何と評価すべきか。
何事も最初が肝心であり。慣れぬことに無駄もある。そもそも何人も出せるような時点で、尋常ではないともされるものでもある。
結果として、衣装も持ち物も揃った双子のような姿がこの場に出来る。
続けざまに言葉を発する様を、遠くの天幕の下で聞く二匹の毛玉が尻尾を振り立てて見遣る。
二匹にとっては分身の術は見慣れたものだが、それでも新顔がこうも早く至れる、出来てしまうのは驚きだったらしい。
「十点中九点、だな。――合格点を遣ろう。よく出来たな。
一点分はこっから述べる事等、云うなりゃ注意点と“でめりっと”の分と思え」
実戦には使える域と。この出来栄えはそう評価するに足る。
余分、余剰となっている氣の回し、分配は何度か試し、最適化を図れば何にも問題はない。
ずずいと口々に話しかけてくる有様に、両手を伸ばす。
左右の手で本体と分身体、どちらの頭にも手を乗せ、わしゃわしゃーと撫でてみよう。
■篝 > 「言葉は聞いたことがあります、想像も……できる。そうなったことが無いので、半信半疑ではありますが。
常に力を振り絞る状態が続けば、道具、身体、どちらも壊れると考えます。……危険です。
そ、れは……う、うー……。先生、意地悪が過ぎます。
はい。……一番弟子」
耳の痛くなる話は聞こえないが、伸びしろがあるとの言葉は聞こえたようで、慰めの肩ポンもあればすぐに尾も耳も元気を取り戻す。
七割、八割で日々を過ごす意味を喩え話から理解できたか、納得して首肯を返し、後は素直に話を聞くのみ。
自分の下手な嘘の失敗を掘り返されれば罰悪そうに眼を逸らし、時々話に出る一番弟子なる者を想像しながら、確か竜の血がどうとか言っていたと思い出す。
多分、その弟子も女子なのだろうなと思うと、「女好きめ」と師を見る目が無意識に冷たくなっていた。
「? 私は、どちらでも構いませんが。
……休みが出来れば、また術を教えてくれますか?
他人の故人に、思いを馳せる……ですか。よくわかりません。
でも、先生が望むなら、記憶にある範囲でよければ……父の話はできます」
変わる表情をまじまじと不思議そうに眺めては、数度瞬きを繰り返し首を傾げる。
惜しむ、悼む、その心の機微はわからずとも、己の父母のことを考えているのは見て取れて。
母の記憶はないので話せないが、父のことなら少しはと思い口にする。
何故、師の望みを叶えようと思ったかまではわからないまま、自分の申し出に後になって困惑した。
「先生は、搦手が苦手? 手っ取り早い方が楽なのは、同意です。
土行―― おぉ、おー……少し、びっくりした。……分身、も解けてない。んー……集中力の問題?」
水の次は土。話しながら、分身も維持したままで別の属性で術を成す。器用なものだ。
きっと己では火と近しい属性でも、同時に使いこなすには相当な訓練がいるだろうことは想像に難くない。
河原に現れた白銀の突起を眺め、後ろにある水の分身を一瞥し、顎に手を添えて考え込む仕草。
「う、うー……嘘は、言ったことないです。でも、教えるって……それは、うー……」
また意地の悪い笑い方を。威嚇をしてもなんのそので言葉を返され、分身が解けて川に戻るのを見送る。
拒否しますと言えないのは、それで氣が増えるならと思う所だけではない。分身に触れられて濡れた尾の上を意識しては、大きく頭を振って雑念を振り払い。――修行に集中。
少女が作り出した分身は鏡合わせのように見たままの姿。一人の人間と大差ない思考を持ち言葉を交わす。
採点を待つ少女らは師を仰ぎ見て、機嫌の良さそうな顔を見れば安堵し、二人まとめて両の手で頭を撫でられれば尾を立てて小さく先を震わせる。まったく同じ反応をして。
「評価、感謝します。術を改良してもらったこと、基礎があったことが大きいと感じます。
はい。デメリット……内容、お聞きします」
済まし顔で尾を揺らしながら聞く本体が述べる。
その隣にいる分身はと言うと、
「……せんせ、もっと褒めて」
ゴロゴロと喉を鳴らし、撫でる手を両手で握って、ぐりぐりと頭を押し付ける。
それを隣で見ていた本体はぎょっとして、止めさせようと慌てて分身に手を伸ばし、腰に腕を回して引きはがさんと、ずりずり引きずり河原に二本の線を引く。
■影時 > 「ま、基本的には――起こったらいけねぇ非常時、だ。
思い通りにならぬものを、思い通りに呼び起こせるのは、陳腐な言い方だが諸刃の刃である。
……つまりは、そう。危険と隣りあわせだ。よくよく心しておけ。俺も心掛けておく。
ははは、何分あの言い草は色々印象深かったからなァ。
おう、一番弟子だとも。……今もし、ここで名ぁ呼んだらすっ飛んでくるかもなあ。風が吹いたら、気をつけることだ」
こうも続けば、何だかこの娘の育て方、伸ばし方が分かってくるような気がしてくる。
耳が痛くなるような話より、長所を伸ばせるような処を褒めて、そこから伸ばす方が一番危なげない気がしてきた。
馬耳東風ならぬ猫耳東風めいた様相を尾っぽと耳の有様から認め、ったくと苦笑を滲ませる。
気に掛かる処は都度、よくよく目をかけよう。娘が云う“主”の管理の状況が、気に掛かってきた処だ。
過日の嘘の失敗に対する反応に肩を竦め、続く反応に何を言いたいのかを視線の冷たさから察する。
つくづく、否定できない事項だ。そう思いつつ、ちらと意味ありげに空を仰いでみせようか。
「ああ、いいとも。術もそうだが、座学もいいな。……火薬の仕込みもいい。
他流の使い手だからというのもあるが、親の話とは聞いておくべきだろうよ。
俺は、お前さんと違って親の顔を知らん。だから、かね。興味がある」
術もいい。座学でもいい。とりとめのない話でもいい。
弟子と師がひとつ部屋で語らい、話し合う場とは定めて持っておくに越したことはないと考える。
忍術に限らず、火薬を仕込み、道具の手入れをする機会でも問題ないだろう。
そう考えながら、己が娘の親の話を聞いておきたい所以のひとつを声に出す。
己は血のつながりのある親の顔を知らない。だから、か。娘が話す親の話には奇妙に興味が向く。
「得意な部類じゃねぇなあ。……策が必要な時は、出来る奴に任せてもいたか。
土から金属が産ずる。即ち、土生金の相生を利して金属を錬成してみせた。
五行回しの理屈はこんな処か。――よく気付けたな。偉いぞ。集中と認識の振り分け方、だな」
踏み倒せる面倒事は強引に解決してしまえばそれで万々歳――とも限らないが、避けられるなら避けたいものでもある。
幻惑含む搦め手は、何分繊細な要素を孕んでしまうがために得意分野とは言わない。言い難い。
気質的には実働向き、前線向きなのだろう、と自認している。
そう思いながら、いずれ図面に表しながら説明が必要だろうなあ、と考えつつ、術の概念を述べる。
同時に瞠目されるべきは、複数の術を並列駆動出来るセンスなのだろう。この分なら、近いうちに至れそうだが。
「そうとも。俺は嘘は云わん。
とはいえ、無理に教えても、なァ。……――尻尾の付け根を摩って欲しくなった頃に、教えてやろうか」
無理やり教えるにしても、難しい。難がある事項でもある。
根本的に小難しく考えながら抱く、というのもお互いの有様を思えば、大変難しい気さえするほど。
だが、やるとするなら、その頃合いは娘の発情期に重ねた方が気っと無理がないかもしれない。そう考えよう。
そして、だ。出来た分身は術をあらかじめ編纂しておいたことも大きいにしても、十分と云えるクオリティを持つ。
己が先程やって見せたような、分身を維持しつつの術行使は難しくとも、囮として使うには事足りよう。
分身含め両手で撫でてみたらしっかりと返る手応え、実在を思わせる感触も十分に及第点である。
「さっきも言ったように、後で弄る前の奴も教えておく。
……まぁ、気づいているかもしれんが、まず一つ。
得物まできっちり模した場合、その複製できない特殊な何かだと、敵に見破られる危険性がある。
例えば、俺の今腰にある刀がそうだ。此れの特性は写しきれない。カタチを写せるのみだ。
二つ。氣や魔力を奪う手合いに注意しろ。
俺の教え子の一人に、周囲の魔力を奪い取る武具の使い手が居る。俺も其れの下位互換を持っている。
此れがある場合、どんなに練り込んで紡いでいても、直ぐに消されちまいかねん、と……ぉ?」
編纂した術と編纂前の術の印。どちらも知っておく、教えておいて損はないだろう。
そう考えつつ、滔々と内容を語っていれば――はた、と気づくものがある。
この在りさま、この反応は、あ、これは、まさか。本体の方も気付く。気付くよなー……と。思い至ってしまう。
もっともっととばかりに己が手を握り、頭に押し付けようとするさまと、どうにか引き剥がそうとするさまと。
さながら、自分の別側面を映してしまったような有様。
思わず声なく笑い、肩を震わせながら、二者ともぐりぐりうりうりと、撫でる。
どうにか落ち着きを得たら、色々と、思いつく限りを話し、教えてみよう。分身一つだけでも、きっと多く語れよう――。
ご案内:「九頭龍山脈 山中某所」から影時さんが去りました。
■篝 > 忍の術は――。そう言われたことを思い出し、そうでなくとも薬に頼る、術に頼るは危険がつきものと心得、言い聞かせる言葉に深く首肯した。
揶揄い交じりの言葉は聞こえないふりをして、そういう様から相手が猫の取り扱いを心得る。誠、奇妙な関係か。
言葉にして詮索せずとも、視線で察して明後日を見上げる師はわかりやすく、名を呼ぶだけで来る者とは?と、首を傾げて同じく空を見上げた。
一番弟子に多少の興味がわくが、それも話題が切り替われば意識も逸れる。特に、修行のこととなれば一発だ。
「ん、学ぶことは……楽しい、です。
――…………はい。承知いたしました、先生」
術も面白いが、今日の師の教えを見れば座学も悪くないと思えるのだから、師は教鞭を振るう才があると言える。
師が己を拾うに至った興味の元は、忍の流れを懐かしむ、或いは興が乗ってのこと。
前者の理由はすぐに納得がいく。
けれど、後者はわからず黙して見上げ、興味があると語る顔をしばらく見つめた後に、一つ頷く。
もし、父に関する話がはずめば、この人はもっと色んなことを話してくれるだろうか……。
そんな下心が知らず知らずの内に芽生え、知りたいと思う欲は知識に対するものだけではないのだと、不思議に思った。
変わらず教師として教える姿に目をやり、誉め言葉には小さく会釈を返して。
師が組んだ手印の型を頭の片隅に記憶しながら、教えと共に記録する。
集中と、認識の、振り分け。実践して、理解して、手にするにはどれほど時間がかかる物か、まだまだ道は遠く見える。
――自分の体は自分が一番よくわかっているもので。
知識欲もあるけれど、それは制御が利くのでまだ良い。
肉欲は本能が強制的に押し付けて来るからたちが悪い。
「……先生のすけべ。……考えて、おきます」
進んで教えを乞うには恥じらいが勝つか、顔をそっぽに向けて返事を先延ばしにした。
色々と、閨でのことを思い出すのか、居たたまれないと言うように尾が乱暴に揺れていた。
「はい、お願いします。
……ん。道具は見た目のみ、効果は付属されない。理解しました。
氣や魔力を奪う……手合い?
魔物……ではなく? そう言う力を持つ敵を想定する、ですね。承知……っ、しました……!
――う? うぅ~……っ、むぅ……」
ずりずりと分身を相手から引きずり離しつつ、話はしかと聞いていますと返事だけは真面目に返し、撫でる手から離れたくないと甘えてジタバタ藻掻き手を伸ばす分身に苦戦する。
練り込んだ氣がまずかったか、それとも重ねた術のアレンジに問題があったか。
頭を悩ませる最中、また豪快に分身ともども頭を撫でられ、分身は嬉しそうにし、本体は複雑な様子で唸り声を漏らすのだった。
ご案内:「九頭龍山脈 山中某所」から篝さんが去りました。
ご案内:「王都からほど近いセレネル海水浴場」にパニアさんが現れました。
■パニア > 色々あったが無駄に図太く元気いっぱいアクティブチビは、本日、王都からの直通馬車も出ているセレネルビーチに足を伸ばしていた。
いや、ホントは他の人のトコに行こうとして、先日のアレが脳裏をよぎってビビって日和ったとかそーゆー事ではない。断じて違う。
くっそ暑い日差しの中での海水浴を楽しもうという下心と、ギルドボランティアによる新米冒険者の強化合宿というイベントがあっての遠征なのだ。
今現在は、硬く踏みしめられた王都ギルドの訓練場とは異なり、受け身を含む思い切ったアクションが可能で、砂地に足を取られての体力強化も同時に狙える白浜での組手に勤しんでいる所である。
白地に半袖の体操着と、水着程ではないにせよむっちむちの太腿と大きなお尻を惜しげもなく晒した軽装は、がっつり鎧を着込んだ他参加者と比べて余程に涼しげ。
とは言え陽炎ゆらゆら立ち昇る強烈な暑気にあてられては、滲む汗で着衣が透けるのも必然だろう。
「へぇぇいっ! とぉやあ! ちょわっ! ちょ、わっ! んのあぁぁあっ!」
悲鳴なのか気合の声か、なんとも気の抜ける掛け声と共に繰り出す拳。
それに合わせてばるぅん、ぶるぅんっとダイナミックに揺れたわむ双丘に滲む汗はことさら多く、どれだけ暴れようとも直ぐに形良い半球を取り戻す形状記憶乳の肌色を、それはもう惜しげもなく周目に晒していた。
ある意味では水着よりもエロい健康美。
ブルマ食い込む半ケツから、ちらっとショーツの白が覗いているのもまた審査員のポイントをアップさせる一因だろうか。
さて、そんな小娘が絡むのは、本講習の指導教官か、はたまたパニアと同じ新米か。単にこの地に遊びに来ただけの海水浴客との出会いなんてイベントもあるかも知れない。ひと夏のエッチに期待を寄せるヤリマンビッチ候補生。
ご案内:「王都からほど近いセレネル海水浴場」にシアンさんが現れました。
■シアン > ぎらぎらと照りつける太陽。きらきらと日差しに照らされ輝く青い海に白い砂浜。アツアツの潮風に吹かれているとついつい海面にどっぼーん! って飛び込みたくなる誘惑に駆られること請け合い。――況して、炎天下の中を、走り込みやらウェイトトレーニングやらシャドーボクシングやらと運動をしこたまさせられていると尚更。勿論、遊びではなく訓練である、訓練中にそんな海面にダイブなんかしたら怒られるわけだが……
『他の教官たちには内緒だぜ? あ、出来るだけ目立たないようにな』
現在、新米冒険者を見ている指導教官は話がわかる男であった。
何せ当人の格好がもう海遊びを満喫する気満々と言わんばかりの
アロハシャツ&海パン。
それも。
セレネル海水浴場マスコットプリントのピンクのアロハに、ビキニパンツ。
人相が良いとは言えない面構えは目元の赤い化粧で強面感倍でドン。
はだけたシャツからこれでもかと隆起した胸板といい割れに割れた腹筋といい……
いかに可愛らしい格好をしていても新米達は当初この指導教官は鬼教官に違いない!
とでも疑ったろうし事実訓練そのものはきついがダイブもOKだし冷たい飲み物の差し入れもちょくちょくある。
当初よりかは幾らかは疑いは晴れたのではなかろうか?
「パニアとかいったっけか? い~い気合だ、グッド! しかしちょいっと気合い入りすぎだな、ほら力抜け抜け。
んでもうちょっと脇を締めながら拳も伸ばし切るな、若干余裕を残してな……」
そして訓練は褒めて伸ばすタイプ、まずは褒めてから直すべきところをちょこちょことアドバイス入れていくスタンス。
ばるぅん! ぶるぅん! と拳よりも乳やら尻やらのほうがダイナミックに揺れている新米に向かって近づいて行き、
ちょいとその乳掴みながら指導……とかでなく肩や背中をぽんぽんと叩いてから、こんな風にやると良いぞ、何て声掛け。
「うっお! ハハハ! 汗でびっちゃびちゃだな! あと数セット頑張ったら海で涼んでくるといいぜ」
(にしてもすんげぇ乳とケツしてんなぁこの娘……)
顔付き身体付きどこもかしこも厳ついのだが表情そのものは緩すぎるぐらいの、へんにょり、って感じの笑みを浮かべつつ。
指導内容も真面目ではあるのだがまぁやっぱり視線はたまに彼女の顔より下に落ちてしまうのは男としては致し方ないところ。
■パニア > 海男。
そんな言葉が自然と脳裏に浮かんだのは、厳つい顔上を彩るワカメ―――もといドレッドヘアによるものか、程よく焼けた感じの肌色ゆえか、はたまたカラフルなアロハのエロっちく開けた胸元、そこから覗く胸筋腹筋の色っぽさゆえか。
正直触りたい。力いっぱいぱちきをかましてその反動を楽しみたい。若干おかしな衝動をたわわの内に隠しつつ、鬼教官の許可が出た途端遠慮なく海に飛び込む軟弱者共に心底羨ましげな目を向ける小娘は、他の連中が早々にリタイアした結果のマンツーマンで貴重な教えを受けていた。
「あざッス、教官! そうっス! パニアっス! 隙ありッスぅぅうあぁああッ!?」
最後の悲鳴は隙と見せかけ晒したデコイに面白い程あっさりと引っ掛かり、軽くいなされた爆乳チビがバランスを崩してわたついた際のウォークライである。
この男、単なる脳筋かと思いきや、思いの外教えるのが上手。
他の教官の中でも紛れもないアタリであろう。
膂力においてはそこらの見せかけマッチョに勝ろう小娘だが、ガントレットを主武器に据えた格闘技は師の一人とて存在しない見様見真似。
へっぴり腰と稚拙にどた付く足運び。
振るう拳はフェイント一つ掛ける事なき一直線の見え見えで、その癖力の連動もなるでなっていないテレフォンパンチの見本みたいな代物。
そんなヘボパンチが初日からしてめきめきと、何となく見てくれだけはそれっぽく整えられて来ている事からして、シアンと名乗った大男の腕は確かと言えた、のだが
「――――ひんっ!?♥ ちょ、あれ? い、今どさまぎで乳揉んでかなかったッスか?? え、あ、は、はいッス! こうっスかね??」
小躯の泳ぎを矯正する中、もにゅんっと果汁たっぷりの肉果実を揉まれる不意打ち。思わず変な声を漏らしたチビは黒瞳を瞬かせつつ巨躯を見上げ、そしてあっさり言いくるめられた。チョロい。
「ッス! ありがたくお言葉に従うッス! こんだけ汗かいた後の海水浴は、想像するだけでもうたまんねーッスね!」
着衣は実に緩いのに、間近に寄れば気圧されずにはいられぬ魁偉。
だのに浮かべる笑みは実に人好きのするもので『こやつ、モテるな!』と、最近処女喪失したばっかの半生娘が訳知り顔でアナライズ。
■シアン > 栄養たっぷりといった黒黒としたワカメ――もとい黒黒としたボリューミーな髪は日光をたっぷり受けて汗ばみ、へたれぎみ。じっとりと汗ばんだヘッドバンドといわず顔と言わず首と言わずあちこちの浅黒めな肌には玉のような汗が浮かび流れて、まるでケツみたいに割れて膨らんだ胸筋を、その下に刻まれた八つに割れた腹筋を、彼女の胴回りよりちょっと細いか? 程度の二の腕を、筋骨の凹凸を伝って流れ落ちていっている。『暑ぃよな? わかる。俺もくっそ暑ぃから』と言って憚らずリタイアも責めやしないが数居る脱落者の中で頑張る新米には特別指導もしたくなるというもの。
「隙あり? 隙なーし! ハーッハッハッハッ!」
タックルばりに踏み込んだ一歩からの背中まで回った大振り全力パンチに、一歩だけ斜め後ろに引いて――
拳を避けつつ彼女の拳も腕も伸び切って身体がぐらついたところを軸足目掛けサンダル履きの足刀で払う。
そのまま涼しい海ではなくアツアツの砂浜めがけて顔からいくところを手を伸ばして支え。
もにゅんっ♡
彼女本人の頭と同じぐらいか或いはそれ以上のたっっっぷりと実った乳肉に触れたのは、事故か故意か。
『ん~~~?』とかすっとぼけた、わざとらしいぐらいの知らんぷりは故意のほうがかな~り疑惑高いが……。
「おお、そうそう、その感じだ。いいか? 剣にしろ槍にしろ、拳にしろだ、一撃必殺なんてのはそうそうない。
二撃目三撃目に四に五に六に。連撃が基本となるから連撃のために引く速度のほうが大事になるから、突きを素早く戻せるように、突き控えめなのさ」
タメになる薀蓄を交えてアドバイスしていけばころっと忘れてくれるチョロさには、ついつい可笑しくって笑みが余計緩まる。
「あと乳は揉んだな、わざと!!」
そして忘れた頃にネタバラシする意地悪さと、誂い。
ごめんごめん、と謝罪に手を立てているが……
ちっとも悪びれていない様子でからからと笑い声を上げるし。
「まぁ詫びといっちゃなんだが、あと訓練超頑張ってるしな、
何か冷たい飲み物以外に甘いもんでも買ってやろうか? 何か食いたいもんあるか?」
また揉んじゃうぞ~? と言わんばかりに右手は謝罪で立てているくせ左手のほうは、わきわき、いやらしげに動いているし。
結構ろくでもない教官かもしれない。指導内容は真面目なのだが……ご褒美とかもちゃんとあるのだが……。
■パニア > 『うちのおっぱいも大概ッスけど、雄っぱいも規制とか必要じゃねーッスかね!? 誘ってんスか? 誘ってるッスね!? うちは売られた喧嘩は買うタイプッスよ!?』
というチンピラムーブは爆乳の中。エロスを見せつけるアロハの襟ぐりに、空振りフックをフェイントとして頭突きを敢行する。
それまでの見せ技を伴わぬ愚直とは全く異なる筋肉フェチ疑惑のヘッドバッドは、凄腕教官をして心胆寒からしめる神の一手。
そんな偶然のキラメキが汗濡れた額とごっつい胸筋との密着を許すなら、その一瞬をゾーンにまで落とし込んで、額に返る感触をガッツリ保存するつもりだ!
『ちょ、やめろッス! 腕のエロさも見せつけんの反則ッスよ!?』
よし、合宿中にあの腕に噛みついてやる! そんな意気も燃えようか。
「――――んぁんっ!♥」
そんな調練の所々に挿し込まれる疑惑の乳揉み。
デカさに反比例するどころか比例してんじゃないかとすら思える感度の良さは、毎度毎度乙女の童顔を悩ましく歪ませて、オスの股間にびくんっと来る甘やかな吐息を零させる。
度重なるいたずらに擡げるジト目。へいっちゃらでとぼけるワカメ。
しかして誤魔化すかのアドバイスは実に的確て、聞き逃して良い代物ではないとド素人にも感じられる物なので
「なるほど……一撃必殺ではなくて、連打、連撃、速度が大事……」
朴訥で素直。
強くなる事への渇望も相応に滲む吸収力は、教師としても好ましく映ろうか。先のジト目もさっと開いて、黒玉の上目遣いは男の金言をこくりこくりと頷き食んで、猛禽の眼前、小さな拳の素振りを見せる。
しゅしゅしゅしゅしゅしゅっ。
どぅるるるるるるりゅぅんッ!
ファランクス、もしくは土石流。
そんな印象も浮かぶだろう赤拳の槍衾は、鍛えあげれば必殺の手札足り得る可能性を見せつけるも、オスの目からすればそれに合わせて大いに荒ぶるおっぱい様の方にこそ目が向こう。
なにせ、10代半ばの成長途上でありながら、そこらの娼婦が裸足で逃げ出す二子山が、濡れ透け体育着のぱっつんぱっつんも惜しげもなく、半流体柔肉の激しいダンスを見せつけるのだ。金貨を積んでもなかなか見られる光景ではない。実に、エクストリーム(イミフ)
「――――て、わざとかよッ!!」
ここぞとばかりにドスッ、ドスッ!
タダ揉みへの代金として受け取る胸筋頭突きx2だ。
おかわりの三発目に行こうかという所で向けられた提案には
「アイスッスね! ここはアイス一択ッスよ! てか教官、手がエロいッス! 受付嬢さぁん、教官の手がエロいんスけどォお!?」
両手でぱっと駄肉を包む様はコミカルなれど、運動によるものか、恥じらいの欠片によるものか、赤熱を見せる日焼け頬は若干色っぽく、可愛らしい(自称)。
ついでなので、ワカメのセクハラ行為を偶然通りかかった出張受付嬢にも告げ口だ。その口元に浮かぶにひひ笑いをみれば、なかなかに良好なコミュニケーションが築けている事は分かろうはず。