2025/06/05 のログ
ナイト > 「ふふん、図星なようね。何企んでたか知らないけど、丁度良いわ!
 最近、実戦が減って体が訛ってた所なのよ!」

そう言って柄に手を掛けるメイドと、待て待てと制しながら後ずさる三人。
とうとうどちらが被害者で捕食者かわからなくなってくる。
言い訳をしようとする声を無視し、シャンッと涼しげな音を響かせ白刃を抜き、夕日を受け煌く刃先を男の鼻先に付きつける。

「どーせアンタ達なんて貧民地区のゴロツキでしょ?
 ぼっこぼこにしたって、誰からもお咎めなしなんだから……本当、良いところで現れてくれたわね」

貧民地区のゴロツキ共と、仮にも騎士の称号を持つ小娘。
どっちが正しく見えるかはさておき、大義名分は此方にあると信じて疑わず。

「――さ、構えなさい。死なない程度に遊んであげる」

メイドはダンスにでも誘うように楽しげに笑うのだった。

ナイト > ――そうして、夕日が地平線の彼方へ沈んだ頃。

「はぁーっ、……スッキリした!」

一汗かいて晴れ晴れとした輝く笑顔を浮かべるメイドと、腹を抑えて地面に蹲るゴロツキ三名の姿があった。
鼻歌でも歌い出しそうな上機嫌で剣を鞘に納め、ノックアウトされてグロッキー状態の三人の首根っこを掴むと、有無を言わせず――否、言う元気はもうないが――ズルズルと彼らを運んで行く。

目指すは詰所。
こう言う中途半端な小悪党の馬鹿どもは、近くの騎士団にでも引き渡して、こってり絞られれば少しはまともになる。
騎士団は正義なのだ。正義の力で浄化……されるかはわかんないけど、多分大丈夫。
正直、ちょっと見かけただけの馬鹿のために割ける時間はこれでも多いくらい。
何を隠そう、メイドには本来の仕事が残っているのだ。早く屋敷に帰らねば。

「…………」

買い出し途中だったのに、これでメイド長に叱られたらコイツ等のせいだ。
恨み事が胸中に湧けば、最後にもう一発、ゴツンッ!と手近にあった一人の頭に握り拳をお見舞いする。

「ふんっ!」

怒ったり、笑ったり。最後は結局怒ったまま。
なんやかんやとありながら、今日も日常が過ぎていく――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からナイトさんが去りました。