2025/10/05 のログ
ご案内:「魔族の国」にルージェさんが現れました。
■ルージェ > 夜の森、影絵の城館。
広がる庭園は主のために。
注ぐ月明かりを浴びる白肌は、ほの蒼く、血の気はあまりない。
そよぐ夜風に遊ばせる癖のない黒髪が、月光に照り映える。
禍々しくも命の色を宿す双眸を伏し目がちに。下ろした瞼を彩る睫の影は濃く。
女性らしい曲線を描く体を包むのは、夜を織り上げたような黒色のドレス。
軽く裾を引き、歩む庭園に咲くのは、変わらぬ月に咲く花
風が通りたびに仄かな香りが揺蕩い、揺れる。
「──────……」
それらを愛でるように、裾を手繰るのとは逆の指先が花弁をなぞる。
さらり、さらりと、触れるたび、香気を宿した花弁が萎れ、散ってゆく。
女主の通った後に残るのは、命の残骸が降り積もったような情景だった。
■ルージェ > ふ、と吐息が揺れる。
庭園を歩む歩が止まり、そこで一度空を仰ぐ。
夜に染まった、藍色の空。
月の色だけが鮮やかに浮かんでいるのを、その蒼褪めた光とは真逆の色を湛えた双眸がとらえ、それからまた目を閉じる。
────手放したものを、取り戻すために必要な、その時間。
そうであると同時に、女にとっては心地よい静けさが満ちてゆく。
つい、と裾を話した掌を上に向け、何かを受け止めるような動き。それから手首を返し、指を伸ばす。
美しく伸びた爪の容は歪みひとつなく。
それがく、と鉤爪のように曲がり───。
庭園から離れた森のどこかで響いた悲鳴は、魔族にしても、魔獣にしてもなにがしかの意思を持ったモノのそれ。
「─────まったく……困ったものね」
そぞろ歩きの途中ならともかく、ここは明確に己の影響が大きい場所だ。
この夜に閉ざされた場所の中なら──針が落ちるような異変も聞き逃すことはないだろう。
余計な目を、自身の影から伸びた死棘が塞いだだけ。