2025/06/06 のログ
ご案内:「魔族の国」にルージェさんが現れました。
ルージェ > 夜。
曇り空に月暈がぼんやりとした光輪を雲の向こう側から透かしていた。

魔族の国、数多いる領主の、そのどこかの居城。
気まぐれに招きに応じた女は単独で、広間の喧騒を泳いでいた。
人の世界のように随伴がいなければならないなどという礼もないのだから当然といえばそう。

豪奢な衣擦れの音を伴い、静かに歩む。

己のように人型のもの、大型の魔物を伴うもの、その稜線が特徴を帯びたもの。───集ったその色形は様々だ。
それらが一堂に会しているのだから、静寂などというものとは縁遠い。

愉快に思うか、不愉快になるかはそれぞれのものだろう。
ウェルカムドリンク代わりの花一輪を携えて、一通り、耳に過る会話──情報を得る為に広間をゆったりと泳ぐのは、己もまたそういった有象無象の一柱であることを認識するようでもあるが。

概ね、女は静かにその佇まいらしく振舞っていた。