2025/09/21 のログ
ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」に宿儺姫さんが現れました。
宿儺姫 >  
小雨振るシェンヤンが八卦山の麓。
轟音とどろき大気が震える──その発生源は、真っ二つに割れた大岩。

ガラガラと崩れはじめる岩の前に立つは、浅黒の肌を雨に濡らした女鬼。

「──ふむ」

今しがた大岩を見事に砕いて見せた己が拳を見下ろし、眉根を顰める。

宿儺姫 >  
肩は隆起し、腹は割れ、下肢は力強く盛り上がる。
鍛えれば当然のように肉体は強くなる。…しかし。

全盛に備わっていた超常的な剛力は未だ封じられている。
世界の理すら捻じ曲げよう程の純粋なる力。
それを封じられ、闘争を何よりの悦とする女鬼はさぞ落ち込むかと思えばそうでもなく。

「くく、麓に戻らされたとて、登頂を放り捨てる山好きもおらぬわな」

再び鍛えあげ、強者を喰らい登り詰める。
不死身ともいえる女鬼にはそうして愉しむ時間はいくらでもあった。

崩れた岩の、一際大きなそれにどっしりと尻を下ろし、手土産に王国の人間から貰った酒瓶を手に、飲み始める。
いつしか小雨も止み、陽は沈んでいるが、大きな丸い月が煌々と山の麓を照らしている。
八卦山の麓で月見酒、というのも乙なものだろう。

宿儺姫 >  
一人酒も慣れたもの。
古の時代(数百年前)に在った、女鬼の生まれた戦鬼の小さな集落は廃墟となり、
同族の鬼どもの姿は今はもう此処にはない。
広い八卦山には他の鬼やあやかし、山の頂付近を臨めば、妖仙どももいようが…連中とはあまりウマが合わない。

「余程、向こう(王国)のほうが良い飲み相手に恵まれるな」

此方では余り味わえぬ葡萄の酒を煽り、ふ…と酒精を帯びた呼気を零す。

宿儺姫 >  
封印から解けて以降、幾度か廃墟となった集落に訪れてみてはしたものの。
その光景はより風化するばかり。
かつての隆盛を誇った戦鬼達の姿はついには見られなかった。
シェンヤンの道士達に滅ぼされたか、あるいは何処かへと棲家を変えたか。
混沌宮の連中に…ということは、気性としてもないだろうと。

ぐびりと飲み干し、空になった酒瓶を放る。

後ろ髪を引かれぬわけではない。
かといって、女々しい感情がそこに根付いているでもない。
しかしかつての同族がもういないと理解れば…最早此処は帰る場所に非ず。

「──まァ」

「楽しい物が居るほうへと、歩むか」

ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」から宿儺姫さんが去りました。