2025/08/08 のログ
ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」に宿儺姫さんが現れました。
宿儺姫 >  
──かつて在り、今は廃墟となった鬼の集落。
そこに突き立てられていた巨大な石碑へと、何の前触れもなく轟雷が落ちる。

一瞬の轟音の後に静寂が訪れ、その場にあった石碑はま白き灰となり崩れ落ちた。
そんな灰の山から、這い出す者がいる。

「………」

浅黒の肌を晒した、一糸まとわぬ女鬼が灰の山から腕を擡げ、そしてその身を持ち上げ、現れる──。

「…二度経験しても慣れぬな」

裸身のままに八卦の山の天を仰ぐ。
同時に感じる──己の身を縛る、呪詛の楔。

「…あの妖仙くずれの言った通りじゃな。……小癪な」

宿儺姫 >  
かつて道士どもがこの身に施した、剛力縛りの呪詛。
鬼が不滅の存在であることを鑑み、二重に掛けられていた仕掛け。
つまりは自死により肉体の滅びによって呪詛の効果を消滅させる…ということが可能であったために。
それを条件として時限式にもう一つの術が発動する様、仕込まれていた。

「………」


雷音が鳴り、大粒の雨が降り始める。

めき、と音を立てる己の右掌に視線を下ろし……そのまま無造作に腕を振り上げ──近くに在る岩塊へと、強烈に叩きつけた。

稲妻の音に混じり、轟音が響き…岩塊が罅割れる。
…しかし鬼姫の全盛の力を以ってすれば、割れるどころでなく粉々に砕ける筈であった。

「──やれやれ。こいつは…前以上じゃな」

ぷらぷらと手を振りながら、憎々しげに言葉を零す。

宿儺姫 >  
「あの腐れ妖仙の言うことが真実であれば…厄介なことじゃぞ」

深々と溜息を吐く。

この呪詛は、血の螺旋を礎とするもの。
術をかけた道士達が寿命で潰えてもなお、その血に連なる者がいれば効果を発揮する。
つまり──。

道士どもの子孫を見つけ出し──殺し、喰らうことで呪詛は解呪されてゆく。──と。
女鬼が封印の術を喰らったのが数百年前。
子孫なぞ、それこそ散り散りになっていてもおかしくはない。
国境すら越えている者もいるだろう。

「──………」

「ええい、細々としたことを考えていてもわかるものか。
 ……気晴らしに酒でも探しに往くか……」

細かいことを考えるのが苦手な(基本的に頭の悪い)女鬼はそうしてその場を去ってゆくのだった。

ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」から宿儺姫さんが去りました。