2026/02/27 のログ
ご案内:「タナール砦」に影時さんが現れました。
■影時 > ――その時は、攻める側であった。
何の側だって?二度も言わせるない。攻める側である。砦を攻める側だ。
幾度もなく飽くることなく繰り返す輪廻のよう。輪舞のよう。
駆り出されるあらゆるものが、目まぐるしく死んで、動かなくなる修羅場。
それこそが我が生きる世界、世界の真理である、と思う類も――居る。多くなくとも、居る。
そういう類こそ真っ先に死にそうな癖に、不可思議に生き延びる手合いもまた居る。
種も不思議もございません。にわか雨が降りそうなときに匂いがするかのように、そうした呼吸を悟ったりするものだ。
正面に盾や装甲された攻城兵器を押し出しつつ、砦の正門に向かって攻め入る王国軍。
敵は勿論、タナール砦に立てこもる魔族の軍。夜であろうとも煌々と焚かれた篝火故に、視界はまあ困らない。
ただ、灯台下暗し、というように。明かりの下は暗いのだ。その暗がりを走る姿が、敵にも、味方にも。
「……こういう具合は、久しいなァおい……!」
冒険者ギルドで不定期に生じる、タナール砦への参戦要請。
其れに已むを止まれぬ事情でアサインされ、戦場に向かわざるを得ない者もまたその一人。
出立前、着替えて目深にかぶったフード付きローブの裾を翻し、正面衝突する両軍の脇、砲撃や魔法の応酬で出来た陥没を縫い走る。
戦いは真っ正面からぶつかるが能ではない。弱い脇を突こう、とする考え方は今回両軍偶々持ち合わせていたらしい。
予め泥にまみれ、派手派手しい色を消した狼に騎乗したゴブリン、暗殺技能を持つ魔兵、等々。
そうした多勢を引き受けつつ、立ち回る者が目深に被ったフードの下で押さえた声で哂い、様々な攻め手を掻い潜る。
射かけられる短弓の矢は挨拶の前菜。
吹きかけられる油のスープは次か次の肉料理の準備ときて。続く氷結魔法は口休めのつもりときた。
交わした処に来る火球の魔法は危ない。ひらりとブリッジめいた姿勢で躱して、続いて殺到してくる生々しい肉人形を斬る。
斬るのは、剣ではない。ローブの袖から伸びる両手が握る刃だ。肉厚の包丁じみたものと苦無と。二度、三度、身を回しながら、
「……ふれっしゅごぉれむ、とか云ったか? 死体遣いの木偶とも違うみてぇだが、芸が無いにも程がある――」
攻め手の頭と見える、黒い肌のエルフじみた魔族に向かって抑えた声を放って飛ぶ。
両の手に握る刃を交差させるように叩き込み、頭部を破砕させながら着地する。
其れで陰で行われる攻勢は、一旦止む。先刻から繰り返される応酬の風景。他の戦場の陰でも行われることだが、この辺りはローブ姿のもの一人のみが治めている。