2026/02/16 のログ
ご案内:「タナール砦」にクレイさんが現れました。
クレイ >  
 その戦場に轟くのは混乱と絶叫。
 タナール砦、一時人族の手に渡ったそこは既に陥落寸前になっていた。
 城門は崩落寸前。完全包囲状態。まさに壊滅必須。そんな状況でもこの男は不敵に笑う。

「ほらほらどうするんですかご主人様。早く選ばないと」

 小馬鹿にするような敬語を言いながらニタニタ笑うのは1人の傭兵。
 壁にもたれながらこの男は戦う気もないとばかりに欠伸までしていた。

「俺を雇うか、それともまとめて死ぬか。折角死んだらご主人様の大事な女の子達、みーんな魔族の奴隷ですね可哀想に。1人位俺が逃がしてあげても良いですけどね」

 この男は2人ならこの程度の包囲からは確実に逃げ切れる自信がある。故にここまで不敵なのだ。
 さて、なぜこの男が戦っていないか、戦う気もないか。理由は明白だった。

「それとも、ご主人無敵の最強騎士団で何とかしてみます? ……あぁ、もうほぼ全滅でしたっけご愁傷様」

 最強騎士団がいる私に貴様の様な傭兵など不要! そう言い切られ戦場で契約を突然切られた。故にこの男戦う気がないのである。
 傭兵とは契約に生きる者。契約がないのなら戦う必要など皆無であった。

「えー、俺? 嫌ですよ契約もないのに戦うの。1人2人抱えてもこの状況から脱出できるし……え、アンタ連れて逃げろって。100万」

 ほら払えと手を出す。貴族のボンボンでも突然払えるわけがない。
 悔しがる様子を見てケタケタ笑っていた。

クレイ >  
「ま、もう少し考えてみてくださいよ。まだ少しは俺はいますよ」

 誰しもが絶望するこの戦場。言い方を変えれば最高の稼ぎ場だ。
 それに目の前のこの貴族のボンボン。使える。欲望に染まっているのに能力が絶望的に低い。
 こういうのを貴族側に仲間として用意しておくのは便利ではある。いざというときに悪事の片棒を担がせられる。
 とはいえ、こいつの自身の過大評価は問題だ。だからこそここで頭を下げさせる。それが何よりも必要。それが出来ないならここで見捨てた方が良い。

「ん、この状況から勝てる確立? ……そうですねぇ」

 戦場を見る。
 戦場の端から端まで。それを見て考える。

クレイ >  
「俺が全軍を動かして良いならほぼ100。そっちなら……まぁ10万って所だな」

 ニヤリと笑う。
 そして貴族にグイッと迫る。

「ほら、さっさと言えよ貴族様。この状況、ひっくり返せばあんたは英雄だ。どうするよ」

 最後の揺さぶりをかける。10万程度なら貴族のボンボンでも払えるギリギリだ。だからこそひっかけた。
 もしもこれで折れないならこの男は見捨てる。だが、貴族は震えなgらも、頷いて自身の服についたブローチを千切り男に投げつける。
 宝石のついたそれは10万程度の値にはなるだろう。

「契約完了だぜ英雄様」

 トントンと男は貴族のこめかみ辺りを数度叩く。
 貴族は目を見開いて驚いている。

「魔法だ、今俺の声はどこにいてもお前に届いている。俺の指示通りに軍を動かせ。少しでも不審な動きをしたら俺は逃げる。良いな。英雄か負け犬か。好きな方を選べよ」

 ドンと軽く貴族の胸元に拳を入れると男は戦場へと降り立つ。
 腰の双剣を抜き放った。

「さーて、真打登場だぜ」

 ニヤリと笑った瞬間。城門が決壊する。そこになだれ込む魔族に同じく切りかかるはまさしく獣であった。



 数日後、王都に彼らは帰還する。
 絶望的な戦場を勝利へと導いた”英雄”と呼ばれる貴族。その陰に1人の傭兵がいたことを誰も知らない。
 男は後日授業で語る”英雄”なんてのはなるものじゃない。面倒なだけ。作って動かすもんだよああいうのはと。

ご案内:「タナール砦」からクレイさんが去りました。