2025/12/06 のログ
ご案内:「タナール砦」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ >  
 雪が降っていた。
 凍てつく空気 鼻腔をツンと感じさせる尖り具合。
 雪に慣れた者ならわかるほどの、凍える日。

 無風の灰色の空 ちらつく程度の雪はまばらに地面を白くさせる。
 完全な銀世界には程遠く、湿り気と泥を生み出す半端な水雪でもない。
 踏みしめれば固くなり、いずれ地面の熱で消える程度の雪の世界の中
 ―――怪力令嬢(メイラ・ダンタリオ)は今日も赤い飛沫を上げさせる。


   「―――シッィッッ!!」


 歯の並びの先が外側に剥いた乱杭歯並ぶ、異形の女兜
 黒い頭部いの額には赤い宝玉が縦割れ瞼のように埋め込まれている。
 女の彫り造形は美しく作られているのに、トラバサミのような開閉型の兜は上下顎で並んだ歯と貌がまるで
 お前の肉を喰らい引き裂くというかのようで、境目から覗く白いギザ歯が噛みしめられて
 細く歯列の隙間から白い息が左右から零れている。

 手にする特大剣型の、元は巨人族の槍の穂先。
 先端に行くほど鋭く薄く、付け根ほど太くなまくらなそれ
 剣の腹からぶち上げるようにして食い込み、抜き切ることで先端へと力が掛かり流れて
 その端の々まで断ち切れて、胴体が掛かった力を受け止めきれず、ぐるんっぐるんっと回って地面へ落ちる。

 多少の鉄纏いでは、多少の筋肉では鉄塊のようなその剣の物質量と力の軌道を前にして
 切断という結末のみが、赤く彩られる。
 あの男が作った兜も鎧も、雷撃傷のように全身に彫られた其処が血を吸い上げて、メイラのことを鉄錆塗れよりも
 酷く、酷く、香らせる。

メイラ・ダンタリオ > 愛も変わらずの、防衛、奪還戦。
全てが終わったころ、息遣いも荒々しく、兜の中でその音は強く籠っていて
まるで獣のようになっている姿。
血潮浴びた造形は踏みしめる雪の部位が全て赤くにじむようで、剣に触れるなら赤いみぞれのように残るか
砦で拭い落とされるまでの間、メイラの圧が途切れることはなかったという。

ご案内:「タナール砦」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」に魔王ニルヴァローグさんが現れました。
魔王ニルヴァローグ >  
──どうやら砦は人間が取り戻しに来たらしい。

これまで、魔王は時折現れ暴虐を振るうもそれは享楽の延長であることが殆ど。
邪悪な思想を持ち、駐屯する兵に滅びを与えるために何度も執拗に訪れる者は少なかっただろう。

しかしその魔王は明確に邪悪な意思を持ち、砦へと現れる。それも、執拗に。

これまでは単身、手ずからに。
しかし今宵は、黒肌の魔物を多く引き連れて現れる。
アビスオーガ、アビストロル。それらを分類する上でそう呼称されることになる、強力なる亜種。

「蹂躙しろ」

冷たく呟かれる言葉一つ。
魔王の手によって門が、そして城砦の射手が吹き飛ばされ──巨大な魔影が次々と砦へと雪崩込んでゆく。

「……どれほど持つかな」

最初の興味の対象は、王国軍の耐久力。
持ちこたえるか、あるい逆に壊滅させる力があるのか。
後者であるなら──更に強力な個体を産む必要が在る。

魔王は俯瞰で戦場を見下ろす位置に浮遊し、その戦況を眺めていた。

魔王ニルヴァローグ >  
並の矢や魔法では怯みすらしない黒肌の巨躯達
オーク、オーガ、トロル、ミノタウロス──そのどれもが黒曜の肌を持ち、紅蓮の瞳を輝かせる異形。
その体躯は原種のものに比べても大きく、より屈強。
魔王の魔力によって大きく強化されたそれらの軍勢は破竹の勢いで戦場を食い破ってゆく。
時折、対魔族の心得があるのだろう戦士などが善戦はするものの──そもそもの物量もある。
人間としても奪い返したばかりの砦を失うことは避けたいのだろう、撤退に転じることはせず、徹底抗戦の構えを見せていた。

「……ふむ」

思いの外…と言うべきか。
長年この地で魔族と争っているわけではないらしい。
数百年前は…どうだったか、記憶は朧気である。

「…存外にやるものだな」

眼下で繰り広げられる死闘。
暇を潰すにはそれなりに、退屈を削ぐ光景ではあったか。