2025/11/23 のログ
ご案内:「タナール砦」にアマーリエさんが現れました。
アマーリエ > 戦いが終わり、やがてまた次の戦いが始まる。
遅いか早いかの違いこそあれ、このタナール砦においては一つの摂理、必然ともいえる。
王国は広いけれども、この国土で頻繁に戦火が上がる土地は中々ない。
内憂として長く横たわり続けている城塞都市の問題は抜きとして、この場は奪われ、取返しを続けている。
現状、王国が守っている砦は昨夜不意に襲撃を受け、急報を受けての戦力の追加投入を以って守られた。

いずれまた、襲撃の火の手が上がるだろう。
魔族達は愚かではない。虎視眈々と遠く遠く、監視の目を向けているのだろう。
だが、今日明日は難しい。少なくとも空から目を下ろすというのは、至難の一言に相違あるまい。

遠く、遠く。高く高く咆哮が響く。凱歌の如く勇壮で力強い竜声――。

「さぁ、乾ぁ杯ぃっ。たんまり運んでおいたから明日に響かない位に呑んじゃってー。
 ……え、何むり? またまたー。呑んでも死なない自信があるから居るんでしょうに。違う?」
 
空から響き渡る響きを受けつつ、砦の中庭に集う者達が酒を呑む。宴席を開く。
その音頭取りに木箱を積んだ段に登らされたのは、黒い騎士服姿の女騎士であった。
襟章や羽織るマントに描かれた縫い取りの意匠は砦の指揮官を除けば、この場で一番の権力を持ちうるものの其れに他ならない。
上等な仕立ての服の胸元が異様に盛り上がっている点は、さておき。武力もまた然り。
乾杯の音頭の後に無茶振りめいた言の葉を続けつつ、からからと笑って、がやがやと呑み出す光景を見つつ段を降りる。

侍従や部下たちに、後は任せたとばかりに目配せしつつ簡易に設けられた卓の折り畳み椅子に座し、そっと息を吐く。
今でこそ平穏ではあるが、この地は相変わらずだ。
今のような弛緩めいた時も溜息の後に直ぐに終わりを告げると思えば、呑む気にはなり難い。
だが、それ位のガス抜きをこの地に篭るもの、激戦を繰り返すものたちは求めるのもよく分かる。

アマーリエ > ガス抜きといえば、酒。憂さと恐れを酒精で押し流して眠りたい気持ちは、大変理解できる。
それに砦の奪還のたびに井戸、溜め水に毒を投げ込まれていないか確認、必要次第で都度浄化も行いはする。
とはいえ、其れでも喉を潤すものに不安を覚え、酒に頼りがちとなるものを否定できない。
そして女だろう。今回の戦い、直前の交戦に於いても捕虜に出来た魔族の女、雌が幾人か居る。

力の証の角を折り、無慚にどうせ魔術で再生できるからと翼を千切るなどして、尊厳を奪ったものを。
早速とばかりに檻から引き出し、手枷を付けてマわし始める手合いも居る。
師団のものではない。統制が取れている者たちは、慣れている者たちは其れが如何に危ういものであるかをよく知る。
冒険者も――いや、居ない訳ではない。思い当たる節とすれば、恐らく傭兵で相違ないだろう。
運試しとばかりに魔族の女を数人がかりで犯し、弄る。
不幸にも襲撃などで死ぬならばそれまで。生き永らえているなら、またそれを楽しみに戦う。金を得る。

「私が眺めてる前だってコト、忘れてない? 
 ……まぁ、良いわ。其れ込みで雇っているのも事実だから、素直に駄目とは言えないわね」
 
とは言え、立て続けに続いた戦いでの指揮者でもあったらしい。厳重に魔封じの上で捕縛された魔族の女のことを思い出す。
卓上に数本立てられたワインの瓶を掴み、そのラベルを一瞥してはきゅぽっと栓を抜く。
伏せられた金属のカップにどぼどぼと注ぎ、幕舎に入るでもなく頬杖を突きながらちびちびやりつつ、眺め遣る。
下着で押さえていても足元が見づらい位に大きいものが、どうにも重い。
お陰で机や卓の端に、でん、と。背を撓らせつつ乗せ置くのが癖になって、どうにもよろしくない。

はぁ、と。零れる溜息は重い。向けられる視線は――ちょっと粘っこい。

龍美を潜めれば見世物じゃないわよ、とばかりにしっし、と。手を振りながら、思おう。誰か良い女でもいないかしらと。