2025/10/24 のログ
ご案内:「タナール砦」にバティスタさんが現れました。
バティスタ >  
その日、砦には余り見慣れぬ軍勢が剣と盾を構えていた。
純白の布地に睡蓮の花弁を縛る鎖の意匠──そんな騎士団旗を掲げて。

ノーシス主教が宗派の一翼。
聖女バティスタを教祖とする騎士修道会──ひいてはその聖堂騎士団であった。

本来、こういった戦場に彼らが立つことは殆どない。
王国からの強い要請があったとしても突っぱねる姿勢を崩さない。
そんな彼らがこの場に訪れていた理由は───。

『魔族と契約を交わし、王国に腐敗の種を撒いた異端者を断罪せよ──』

禁忌を冒し、それが明るみに出た者──異端者。
魔族と取引をし、砦を超えて魔族領へと亡命しようとしているそれを狩るため。
断罪の剣と白翼の盾を携えた聖騎士達は、こうして人と魔の闘争の地へと並び立ったのである。

バティスタ >  
数々の奇跡を体現し、騎士修道会のグランドマスターたる聖女もまた、その場に姿を見せる。
異端者狩り、とはいえ…大規模な戦場への聖堂騎士団の派兵は稀である。

「──たまには小さなものではなくて。派手な奇跡も見せつけておかないとね」

誰に聞こえるでもない小さな言葉を呟き、聖堂騎士団を迎え撃つべく揃えられた魔物の群れへと相対する。

「……ふふ」

「その程度で、止められるとでも…?」

薄く細められた双眸。
清らかな鈴の音のような聖女の言葉が、聖堂騎士達の脳裏へと直接響き渡る。

『異端者に死を。神の仇敵に滅びを』

──それを切欠に、怒号と共に戦場が動く。

「(ぶっちゃけちょっとイっちゃってるからね、こいつら)」

恐怖を忘れ、痛みを忘れ、身体が動く限り限界を超えて戦い続ける。
尊き信仰のため、神の騎士として、そして我らが聖女のため───信仰と狂気は、実によく似ている。

バティスタ >  
同時に聖女もまた、動く。
高位聖職者(ハイプリースト)の使う法術、浄化、聖魔法。
指先を踊らせるのみでそれらを自在に行使し、自軍全体への治癒、支援を満遍なく行う。

──更に、閉じた聖書(バイブル)が開き、光り輝く(ページ)が飛翔する。
戦場を覆った光──退魔の力は魔物達の力を急激に抑えつけてゆく。

「──穢れし者、"退け"」

魔物、魔族、悪魔、そして魔王──。
それらの力を大きく抑制させる力。
聖なる力、奇跡…と言ってしまえば、知らぬ者はそう納得をするだろう力。しかし───。

バティスタ >  
その結界は、ノーシス教…ひいては主神ヤルダバオートの加護などでは決してないことを知る者は知る。

しかし聖堂騎士団の中にそれを知る者はいない。
神…ヤルダバオートの加護である。
聖女の起こした奇跡である。
そう信じて疑わない。
王国の土地に残る加護の正体を知っている人間すら、殆どいないのだ。

「神の僕達よ。──進め」

継続治癒、身体増強、そして狂信による恐怖心の隔絶。
大きく弱体化を受けた魔の軍勢がそれを押し止められる術はなく──戦線は見る見るうちに瓦解してゆく。

バティスタ >  
「ふむぅ……。こういう催しも悪くないかしら。
 聖女様の加護を受けた聖騎士達が…なんて、風説に乗せればいい噂になりそう」

早い内に大勢の決した戦場。
くすりと口元に笑みを浮かべる聖女の眼前には、異端者の首を断罪の刃が刈りとり掲げる勝利の光景が広がる。

「…ま、こういった特別な事情がない限りは基本的に派兵は断るとして…。
 ──たまにはこういう方向でのアピールも、いいかもしれないわね♪」

聖バティスタ派騎士修道会──その聖堂騎士団は砦の魔物の群れを残さず壊滅。
魔族の国へと逃げようとした異端者二人を断罪し、神聖都市へと凱旋することとなる。

裏に隠された聖女の思惑、そして聖女の行使する結界と加護への疑念。
それらに感づける者は、少なくとも聖堂騎士団の狂信者の中には居らず──。

ご案内:「タナール砦」からバティスタさんが去りました。