2025/10/16 のログ
サロメ >  
前師団長の頃に一度失敗し、第七師団壊滅の危機に瀕した魔族領への侵攻に王国の上層は消極的だ。
それに加えて城塞都市アスピダで起こっている一件。
此処タナール砦への重要な補給拠点となっているあの都市が現状使えない。

「──アスピダの奪還を優先すべきか。しかし……」

第七師団がその為に動くことに、王国の官僚…そして他の師団は良い顔をしないだろう。
他の師団の面子を潰す真似はしたくはないが、目に見える光明のない状態が続いているのも事実。
魔族との戦闘に特化させている第七師団の戦術などを対人戦に合わせ直す必要も出てくる。

「前師団長が健在であれば、どう動いたのやら」

天井を仰ぎ、決して良い上司であったとは言えなかった大馬鹿者の顔を思い浮かべる。
考えはじめてみてすぐに、あんな無茶苦茶な男の頭の中を想像するなど無理があると小さく首を左右に振った。

サロメ >  
その場にいた他の師団員からも様々な意見が飛び交う。
しかしどれもこれも、現実味はない。気の荒い連中を集めていることもあるが、血の気の多い意見ばかりだ。

そんな中で、古い顔ぶれからは現状のアスピダの状況を確認することだけでも必要だという言葉が向けられる。
それを口にしたのはアスピダ陥落の主犯とされている、暁天騎士団の団長のかつてを知る者達である。

「……そうだな」

暁天騎士団がアスピダへと転属させられる以前。
自身がまだ一人の新米騎士であった頃か。一度だけ王城でお会いしたことがあった。
清廉潔白を絵に描いたような人物で、騎士たればこう在るべきだと一種の憧れを抱いたことを覚えている。
その後の顛末については自身も思う所はあったものの…覆い隠されたであろう何らかの策謀を暴くには至らなかった。
第七師団の長であるという立場であるからこそ、今起こっている問題に濫りに触れることはせずにいたが──。

サロメ >  
「…前師団長、そして第七師団の宿願である魔族の根絶の為には補給拠点であるあの街の解放は必須。
 すでに一度掛け合ってはみた話だが…もう一度陳情してみるとしよう」

それが望み薄であることは知りつつ、そう言葉にする。
お前達はこの砦で魔族の相手をしていろ、と一蹴されるのは目に見えている。
連中からは第七師団をこの場に縛り付けておきたくもあるのだろうが──。

「(そう何時までも、大人しくしているつもりもないぞ)」

かつての師団長ほど苛烈な手段こそ取らないまでも、その理念は引き継いでいる。
無論、それで守りが薄くなっては元も子もないこと。
アスピダに派遣するのであれば少数精鋭──そしてかつてのクシフォスを知る者であることが望ましい。
自分自身も、当然その頭数として指を折ることにはなるだろうが。

サロメ >  
「……砦の保全と引き継ぎは任せる。
 捕らえた魔族の女は…引き取りに来る者がいないなら殺せ。わざわざご機嫌取りで王族に献上する必要はない。
 本当に欲しがる連中は向こうから此処まで来るか使いを寄越す」

当面の指針がとりあえずまとまれば、音もなくその席を立つ。
またしばらくは王都にいることになろう。
砦近くの駐屯地には精鋭を残し、要請があれば奪還させる。
平時な守りであれば安価で雇える傭兵や冒険者と砦に駐在する王国の兵士で十分足り得る。

翼竜(ヴィリバルド)を使う。装具の準備をしておいてくれ」

外套を翻しながら踵を返し、未だ戦火の熱の残る砦を後にすべく部屋を退室する。

さて、自らに都合の悪いことを尽く封殺する連中が何を口にするか…ある意味、楽しみとしながら。

ご案内:「タナール砦」からサロメさんが去りました。