2025/06/04 のログ
ご案内:「タナール砦」にクレイさんが現れました。
■クレイ >
この日王国側は大勝を収めていた。だが砦の中の雰囲気は最悪の一言。もしかしたら戦闘中の方がまだいい空気が流れていた。そう思われかねないほどにとてつもない空気がこの砦の中を満たしていた。
「……さて、もう一度聞きたいが、聞き間違いじゃねぇんだな」
その中心人物がこいつを中心とした雇われの傭兵集団。
今回の大勝の立役者でもある彼らである。特にこの男は砦を占領していた魔族の首を落とし、勝利を決定的にしたと言っても過言じゃない。
だがその男の見せる怒気は戦場の時のそれを超えていた。
「簡単な話じゃねぇか旦那。お前が俺たちにちゃんと報酬を払う。お前は勝利の名声を引っ提げて帰る。俺たちは大金を手にして帰る。誰も損をしない。楽しい世界だ」
技を演技チックに手を広げて見せる。だがそのまま手をダラリと下ろす。それはロングソード、彼の得物の傍に下ろされる。
そして刺すような視線が貴族に突き刺さる。
「でも俺達が役に立たなかったって悪評を広め、それを理由に報酬を払わない……そうなるとどうなるか。ここの勝利は消えて、不思議と砦は魔族の手に落ちる。そう、不思議と……な?」
ニヤリと笑う。捕らえられ散り散りになっている魔族。それをまとめるには内部から脱走を手助けする奴らが必要。
そして彼らは傭兵。金をしっかりと貰えるなら別に雇い主がどっちだろうと傭兵たちには関係ない。
ここで悪評を広められる位なら魔族に組して王国軍を殲滅。全滅させた上で魔族は強かった。そう言いふらした方が男たちとしても得だ。
貴族も意味を理解したのだろう。憎たらしいといった顔をしながら金貨の袋を投げつけてくる。それをこともなげにキャッチして。
「後で確認させてもらう。それじゃ契約通り俺達は南棟にいる」
そう言えばさっさと傭兵は引き上げていく。南棟へと。
とはいえ騒動の臭いがある。ならばと必然ミスが増える。もし牢屋に力の強い魔族がいたらうっかり怖くなって鍵を落としてしまい、。そして南棟への道もうっかりと空いている。これはミスだ。そうミスだ。
だがもしかしたら王国側にこっちが正しいと言い出す奴もいるかもしれないし、同じ雇われ側が遊びに来るかもしれない。
どう転んでもいいように彼は布石を幾つも用意しておいた。
ご案内:「タナール砦」からクレイさんが去りました。