2026/03/21 のログ
影時 > 「否。そこまでゆくとな、フィリ。
 例えば地下に封じられた大魔術師の成れの果てか、大魔族か。……俺とて一筋縄ではいかん類だぞ。
 そうもなりゃぁ、逃げるよりも刃を交える方がずっと興が乗るだろうが、と、いや全く。上がりが欲しくなる」
 
そうかね?と。運が良い方ではないほう、と宣う少女の声に首を傾げつつ、そっと息を吐く。
迷宮に生じる、配置された宝箱がさて、何処からやってくるのか。――文字通りに永遠の謎である。
魔物が実は古の遺物の守護者である説、ケースも皆無ではないにしろ、余りに曖昧模糊過ぎて断定が出来ない。し難い。
しかし全く。売れるかどうかは抜きにしても、何かいいもの、ばかりはついつい願ってしまうもの。
あり得るかもしれないが、有り得た場合の対処を冗談交じりに述べながら、思考を巡らせる。

――内部の雰囲気、在り方的に現状の階層は砂漠、ないし荒野の中に埋もれた墳墓、神殿にも近い風情がある。
こんなところに出る魔物が、他に何があり得るか。生じるか。霊体に次いで聖別された骸がありうるなら、神聖の影すらも有り得ないとは言い難い。
可能性は皆無と想定すると、危険度が旧来よりも跳ね上がっている可能性が一気に跳ね上がる。
それが、男が無理に先を進まないと決めた理由のひとつでもある。ただただ突っ走るには余りにリスクが現状高い。
装備、練度。その双方を備えたパーティが必要になる。だが、同時にこれは一つの期待感を高める。宝箱の中身、だ。

「鎚の場合は、書を紐解いた限りだとかなり手ェ加えてるから、単純に進んでる、とは言い難いがね。
 魔術的機能を保持してる……っていう括りなら、当て嵌まるだろうなあ。
 あとは、爪や甲殻に鉄やら何やらと金属を含有してる魔物の骸を鍛えて、一本の曲刀、大鉈とかにしてる例もあるか。
 勿論、フィリが言うように尋常な生き物じゃあない。深い山や火山地帯、で、こういう迷宮とか。
 
 ……解明できるかどうかはさておき、ユメは……広いなァ」
 
魔物魔獣神獣霊獣化身。人知が及ばぬ、越えた奇跡/不条理は、その骸すら何かのチカラを秘め得る。
手元に残さず売りに出したものに、そうした遺骸を活用したものがない、とは言わない。
武具に限らず何らかの日用品、装身具でも同様だ。それを組み込んでいるから、普段の生活がずっと楽になる、というものも大いにありうる。
とはいえ、人間矢張り真っ先に考えるのは、研げば使えそうな爪、ハサミ、巨大蟷螂の鎌とかの活用だろう。
原始的であり、事の初めとしては単純明快。だが、下手な粗製乱造の武具よりも強いとなれば、決して安くみられない。

「是非是非頼む。いや、床がこうでなけりゃァ下ろして待たせるんだがね? ……砂浴びはするなよ。な?

 遠くまで飛んでもらうにゃドラゴン様ラファル様とお願いするで間違いはないが、妥協点でドラゴン急便に便乗させてもらうとか、かねぇ。
 ま、今直ぐ行くでも無し。のんびり考えりゃあいい。南方に特産物を買い付けに行く実習――とかでもありだろう。
 砂漠は、な。……フィリが思う以上にしっかりしておくに越したことはないなあ。
 さっき倒した奴は思うに、“がぁでぃあん”……守り手、衛兵の類やもしれん。古の墳墓、神殿に行くならまた遭うやもな。
 
 作れはするが、元々からあるものを使う方が労力としては楽になるんだぞ、……と」
 
毛玉達にはお風呂の習慣はない。適宜匂い消しやブラッシングはする。
ただ、同種の親戚のような手合いは砂を浴びて、老廃物を取り除くとか物の本で読んだ記憶がある。
興味がありそうなツラは……してそうだと思えば、念のためん釘を刺しておこう。
少女の方に飛び移るまえにぶるぶる首を振り、ばっちこいとばかりに身構える姿にぴょいん。飛び移って二つの瞳と共に飼い主の姿を眺め遣る。
その一人と二匹の視線を受けつつ、男はごそごそと作業を進める。鍵穴を弄りだす時ばかりは無言だが、合間に返す余裕はある。
そして、かちりと。蓋を開けば覗き込む――と。

「!? ええい、驚かすないッ。……黄金造りの曲刀と、錫杖の類……と。貨幣類はまあ、普通に金になるとして、だ。
 刀の方はまぁ些少はって塩梅だが、琥珀を飾ってるのか……何か、居るな……。サソリ、か」
 
素っ頓狂な悲鳴か叫びが上がる。びょいんとモモンガが飛び上がり、男の襟巻に飛び移っていく始末。
そして、残るシマリスと一緒にきらきら爛々と輝く少女の眼を見つつ、熱ある言葉の迸りに耳を傾ける。
鞘に収まった曲刀――シャムシールなる類であろう。両手持ちも出来そうな長さの其れは悪くないが、今の男の腰のものには格が落ちる。
細工は奇麗だが、この場の白眉はなんといっても短杖。何かを封じ込めた琥珀を宝玉として飾るもの。
中身は、この辺りでは見慣れぬもの。蠍を封じ込めた琥珀。ないし、同様の宝石。
それに何かふと、ざわつくものを、胎動するものがあると見えるのは気のせいか――そう思いつつ、財貨は取りだす革袋に纏める。
此れは一端、雑嚢に捻じ込む。鍵開け道具を元通りに仕舞い、見つけた二本の品を取って立ち上がる。
黄金の曲刀は男の左腰に鞘ごと捻じ込み、残る短杖は少女の手に預け、耳を澄ませる。

……さらさら、さらさら、と。部屋の外、奥の方から何か流れ、蠢く音がする。暴いたものを見つけ、排斥しようとするように砂が躍る音だ。

フィリ > 【継続させていただきます】
ご案内:「無名遺跡-古き遺跡」からフィリさんが去りました。
影時 > 【次回継続にて】
ご案内:「無名遺跡-古き遺跡」から影時さんが去りました。