2026/03/13 のログ
ご案内:「無名遺跡-古き遺跡」に影時さんが現れました。
ご案内:「無名遺跡-古き遺跡」にフィリさんが現れました。
フィリ > 「ぉ――ぉ。それは…第一歩としては非常にぉ手軽だと思われるのです、が。一考の余地が在ると思われまして――はぃ。

…ぁ゛、わ。ぅわ……ぁ。それは流石に、少々…ぉ目に掛かりたくなぃと申しますか。
ちょっとだけ、聞かなきゃ良かった、と。思ってしまったかもしれません…」

結果として後日。目隠し状態であっちをふらふらこっちをふらふら。
庭木に正面衝突したり盛大にすっ転んだり少女の姿を、屋敷の中庭で目撃する事が出来るだろう――本日無事帰れたら、であるが。
実際ちゃんと戻れるのか、彼が居れば大丈夫だ――という確信が、ちょっぴり揺らぎそうになる情報を聞かされて。思わず額を押さえてしまう。
巨大な生き物に呑み込まれるというのは、世界中の昔話でも散見出来る物ではあるが。
洪水神話の如く、それ等に共通の起源が在るのかもしれない、と考えるとぞっとしない。
時に魚時に地蟲、その他諸々――人々を丸毎呑み込む未確認の超巨大生物が、今現在でも存在しているという事だから。
…いやまぁ。人喰いとカテゴライズされる生物であれば。極々身近にだって実在し続けているのだが。
それとこれとは別問題。やはり自分が喰われるというのは、誰だって想像したくないものである…筈だ。
お陰で微生物その他を調べる際には、自然下の細菌類のみならず。生物の消化器官に於ける常在菌も付け加えておく事にした。
――どんな物事でも。念を入れて調べれば調べるだけ、其処に損はないのだから。

「逆に――何者の意思も介在しなぃとしても、それはそれで。
如何なる理由で変化が繰り返されているのか、少なくとも動機から考ぇる事が出来なくなる…訳でして。
とぃぃますか。考ぇてぃる誰かが居るのなら。もう少しきちんと順序立てて欲しぃと思われるのです、私としては。

まぁその…他人様を騙くらかして罠に填めるなど。そんな行為自体がそもそも、趣味も性格も悪ぃのではと――ぁぁ、ぃぇ。
拠点や施設の防衛とぃぅ観点で見ましたら。罠の敷設とぃぅ行為は、効率的と言ぇば効率的とも言ぇましてー…」

憤懣やるかたなし。そう言わんばかりに鼻から息を吐き出しつつ。魔道具を仕舞って空いた両手を腰に添えふんぞり返り――かけて、やめた。
両手を持ち上げ顔の前でばたばたと振ってみせ、自身の言葉を修正するのは…それこそ。
目の前の人物が忍であり、彼の住居が罠と仕掛けに満ち溢れたからくり屋敷その物なのだと、未だ信じてやまないからである。
それに魔術士だって、手間暇掛けてこさえたオリジナルの術本やら何やらには、他人に利用されないようセキュリティを施すものだ。
だから趣味が悪いのは、罠を仕掛けるという行為それ自体ではない。仕掛けの内容その物にこそ、当事者の意思や性格が反映されてくるのでゃないかと――
さてそうすると。今後何かしらのトラップを発動させてしまう時が来たら、その時こそ。
改めて迷宮の主という仮定上の存在に対し。性格でも性癖でも問い糾す必要が出て来るのではないか。

いや。罠を踏む時まで待たずとも、それこそ――盤上の駒めいて。魔物の存在やその傾向からも覗えるのかもしれない。
先程の動く植物だけであれば、湿気と栄養さえ在れば生きていける、元より棲息していた物なのだ。そう考えても良さそうではあるが――

「ぬー…ぅ。一先ず…この足場の悪さで、転がってくる大岩に追われる、だとか。
こんなに湿っているのに、一階層丸々自爆します、だとか。言われるのは遠慮したぃもの…なのです、はぃ。
特に後者、何かを隠す悪者のぉ約束とぃぅ奴でしてー…其処までするなら、そも、隠す場所を改めるべきでは と――    」

何処に何のスイッチが在るやら知れた物ではない。
その内毎回仕掛けの謎を解かねば開けられない扉やら、逐一何かを嵌め込まないと作動しない機構やら。
何故か外して余所に仕舞い込まれたハンドルやら。そんな怪しい代物が出て来るのではないか。
ついつい想像してしまった少女の溜息が―― 彼が足を止めたのとほとんど同じ瞬間に、途切れた。

次いで、ごぼん、と。大きく泡立つ水の音。…どうやら。
彼の背後という立ち位置を維持すべく、ほんの数歩だけT字路の左側に後ろ歩きした、其処が。
黒に近しい水面の下で、落とし穴の如く一気に深くなっていた――らしく。

影時 > 「ははは、或いはあれか。手間はかかるが窓を閉め切り、隅々まで墨黒で塗り篭めた光なき暗室……か。
 一からそういう場を拵える位なら、面倒が少ない方がまだお手頃だろうかねきっと。
 
 ……――俺とて、何度も見たい類のものじゃあなかった。お目にかける機会がないことばかりを祈りたいものよ」
 
暗夜の戦闘の訓練は大きく三つ。実地実施時刻に合わせた文字通りの夜間戦闘。
次に暗室と化した訓練場を拵えての模擬戦。その次は、前者二つよりも遥かにお手軽な目隠しのお稽古。
実際にその最後を試しにさせてみて、二匹の齧歯類共々にアチャー……とばかりに顔を手や前足で隠す有様が見られただろう。
閑話休題(きをとりなおして)。至極単純なハナシ、思考実験として、建造物の材質が石や煉瓦のみであるとは言えない。限らない。
木材と漆喰、紙もある――のはまだ、いい。強度加工性入手のし易さ。それらの要素が折り合った結果であるとも言える。
だが、そうした歴史的な裏付けの真逆、在り方すら異とする構築領域、建造物などは、一体どういうことであろう。
……たまさか、少女が幻想、夢想したような巨大生物の内臓、腹の中であった――ともする方がいっそまだ、現実かもしれない。

……そう。如何に迷宮が現実離れしているといっても、それ以上の非現実を否応なく体感させる事例であった。

この男をして、そう思わせずにはいられない。いずれまた遭うかもしれないが、今はまだ少女や毛玉達を伴わせるには難度も脅威も高すぎる。

「……その例を考えンなら、あー。迷宮の核心、中枢が魔術仕掛けの絡繰りであった場合が割と近しいやもしれん。
 絡繰りは狂わぬ限り、定められた通りに動く。傍目からすれば果てしなく馬鹿馬鹿しいことであっても、だ。
 だが、其れに干渉して“思うように狂わせられる”としたなら、順序もへったくれも無かろうなァ。
 
 フィリお嬢様よ、罠ってのはどうしたって黙くらかす、転じて人がどう動くかをある程度考慮して仕掛けるものよ。
 裏の裏の、さらに裏をかく、とかなったら、悪辣を通り過ぎて狂気の沙汰じゃあなかろうが。
 ……敷設といや、かなり前にラファルに罠の仕掛け方に関する教本与えたことあったな……フィリも要るか?」
 
詰まる所どういう意図、コンセプトがあるか、だ。
混沌と化した悪辣の権化たる遺跡や迷宮は逃げ帰りたくもなるものは、どうしても多々ある。
その点について、高名な冒険者の何某等、色々な人物が説を残している――みたいなものを、読みかじりの記憶から掘り出す。
調査役、或いは学者の卵めいた様相がぷんすかと遣る姿は愛らしく、続く仕草も見れば気にするな、と首を振って笑おう。
悪辣非道、脈絡のなさに説明を付けようとした者も、一応は居る。見識のタネを残している。
実例に基づいたとされるそれは確かに、得心も出来るが、自身の論の逃げ道を残しているのか、――なお、此れはあくまで一例である、という但し書きを添えている始末。
稚気じみた発想が介在してしまうと、余計に混沌と化す中で、狙い澄ました罠が生じるのも悪魔的な所業以外の何物でもない。

この場では解除する仕事が多い身としてしみじみとなりつつ、ふと昔のことを思い出す。
一番弟子の面倒を見始めた頃だ。諸事情あって、特に拠点防衛に向いた罠の敷設に関する手書きの教本を与えた記憶がある。
もし読む気があるなら、興味があるだろうか? 行動の合間に少し、問うてみようか。

「転がる大岩はちと現実的にも洒落にもならんなぁ。敢えて有り得そうとすれば、自走する大岩なんだろうが、
 ……一層纏めて吹っ飛ばすは、それこそ物語の悪党の末路以外の何物でも、ッ……ぉぃ!?」
 
這いずる音は、二足歩行の足音と断定するには、そもそもにして違う。片足を引き摺るにしても音が違う。
であるならば先程も遭遇した類の親戚、同類と見た方が良い。例えば、自分から餌を求めて徘徊するウツボカズラめいた植物の魔とか。
どうせやるならば、出会いがしらに斬って倒す方が一番面倒が少ないか。
そんな内心の目測、予想が――思わぬ音と気配の動きに、崩れる。気付くのは一者二匹は同時に。判断は刹那に。
男が動くさまに何を察したのか。二匹が一斉に深々と襟巻の中に潜って、ぎゅっと耳と瞼を閉ざす。
その上で、ごぼんと泡立った中に振り上げた右手を貫手に突っ込み、身を捻じ込ませてゆく。

そこに、ある。あった。下層に通じる階段……ではない。落とし穴、シューター、等とも呼ばれる類。一方方向の経路。
何かを踏んで急に作動したのかどうかは、知れない。分からない。
高き所から低き処に落ちる道理そのままに、落される。放り出される。第四層――何処か潔癖感もある白い大理石風の壁が連なる、草生した廃神殿の如き領域へ。

フィリ > 「まだ其方の方が、手頃なのでしょぅか。…部屋を閉めきって、こぅ――ぅぅ。
何故だか余計な事まで思ぃ出してしまぅ――かもしれません。四隅を探って、移動して…居なぃ筈の五人目が、だとか。

――ぁぁこぅ。一旦良からぬ想像をしてしまぅと、釣られて次々思ぃ浮かんでしまぅ、と言ぃますか…その。
少し気分転換の必要を感じてしまぅの、です、が。それの出来そぅな場所も無く…」

人間どうしても視力に頼る部分の大きな生物なので。それを奪われる事は紛れもなく、恐怖に直結するだろう。
古より夜闇や影に恐怖が怖れられ、見えない所に何かが潜んでいるかもしれないという想像が、オカルトという代物の根底なのではないか。
暗室を手探りで移動する。そんな行為を思い浮かべた少女が、降霊術を連想してしまう辺りも。正しくそんな思想の伝統が受け継がれている証。
とはいえ広い屋外で行うよりは、一定範囲で区切られた一室に限定する方が。取り敢えずは初心者向けである事は間違い無い。
……まぁだからといって即座に実行しようものなら。所狭しと物に溢れた少女の部屋で、何処ぞに足の小指をぶつける惨劇が。頻発する事になりそうなのだが。

かといって。見えればそれで安心出来るのかというと、必ずしもそうではないだろう。
正しく、目にしたくない、としか言い様のない光景を想像させられて。湿気に冷やされたかのように、背筋を震えが這い上がって来る。
願わくば。今探している下層への階段なり何なりの先が。突然臓腑や肉壁で構築されていませんように。

「――……ぁー…それも確かに。在り得るかと思われます。
狂わぬ限りと言ぃますか――基本、どのような仕組みでも仕掛けでも。定期的に手を入れなければ、次第にズレたり狂ったりしてぃく物なのでして。
どれ程昔から存在してぃるのか判りませんが…古くなって、それでも未だ、ぉかしなまま動き続けてぃる――等であれば。
法則性の無さにも、納得せざるを得なぃとぃった所で――す、はぃ。

それはもぅ。裏を掻く、虚を突く、等でぁる事は。重々承知の上なのです が。
以前でしたか、獣相手の罠につぃて等、ぉ話させてぃただきましたけど――それも、獣の習性を見越した物で。
そして、ヒト即ち考える事こそが、本質であり習性です。考ぇれば考ぇるだけ罠に嵌る、等となれば。正しく本分なのではと思われ――  は、っ。
読み物、つまり読み物なのでしょぅか――!? それは、もぅ是非、はぃ是非是非、目を通させてぃただければど――」

狂っている。歪んでいる。壊れている。そう考えたくなる迷宮の様。
もう正常でない事は受け容れてしまうとして、では異常の原因が何処に在るのか。
経年劣化や自然現象によるものか。それとも――何者かの意思が介在する意図的な物なのか。
考えれば考えるだけ興味は尽きないが。何処まで続くか判らない深淵の果て、ヒトがその原因を突き止められる日が来るのかは…何とも怪しい。
だがそれでも。解き明かそうと挑み続ける行為は無意味ではないし、那由多でも恒河沙でも、正しく無限でも永劫でも、ヒトの挑戦は続く事だろう。
知りたいという欲求。解き明かしたいという願望。それ等もまた人間の大いなる原動力なのだ。

…という性質を、人竜の少女もまた体現するかの如く。読み物が存在すると聴かされると、それこそダンジョンの暗中でも判る位に目を輝かせるのだった。
この場合は探求心というだけでなく。活字中毒という悪い性質も出ている気がしないでもないが…まぁ、中毒とはいえそれこそ菌だの毒だのではないのだ。
決して身体に悪影響を及ぼす代物ではないので、大目にみて欲しいものである。

「…私的には寧ろ、自走するとぃぅ方が。とてもとても不思議に聞こぇるのですがー…生ぇると?岩から脚でも生ぇてくると?
ぉ約束。はぃ、古式ゆかしぃ、悪の組織の伝統芸能とぃぅ奴でして。取り敢ぇずこんな場所です、誰かが居るならどぅ考ぇても、そんな悪ぃ手合に決まって――  」

傾斜が在れば岩だって転がす事は出来るだろうが。転げきったその後再利用出来なさそうと考えると、トラップとしては不便極まり無さそうだ。
…もし変な想像をしてしまった通り。岩が自分でえっちらおっちら所定の位置に戻ってくるのだとすると。シュールでこそあれ罠として機能はしそうだが。
そんな妙ちきりんな想像に、意識が取られてしまった事もあるだろう。墨を溶かしたかの如く、自身の爪先さえ見通せない暗中の水面が、直ぐ下に。
浅瀬の大陸棚から一気に海溝へと落ち込むかの如き段差を隠しているとは、全く想像出来ていなかったのだった。
人為的な落とし穴なのか。単純に落差が存在していただけか。どちらにせよ踏み締めるべき足元が存在しなかった為、落下に等しい勢いで少女は水中に没してしまう。
――以前、真夏。海辺で訓練を行った時も。こうして海中に没し、力が爆ぜて、だが直ぐに助けて貰った――そんな事を。思い出す暇も有ったかどうか。
勢い呑み込まれていく感覚は、少しでも光が有れば、目まぐるしい――と呼べる代物になったのだろうが。実際には完全に真っ暗で何一つ見えず。
その内沈んでいるのか落ちているのかも、向かっているのが下かも上かも、まるで見当が付かなくなって―― ――やがて。

後を追った彼が放り出された其処が、次の階層であるというのなら。確かにこの迷宮の不可思議が作用して、上の層とはまるで別物の光景が広がっていた。
人工的だ。垂直と平面で形成された空間、それを形成する石壁は磨き抜かれ、ぼんやりとはいえ姿を映し出す程の物。
とはいえ未だ迷宮なのだ、その事実だけは変わらないと言わんばかり。壁と壁の間は狭く、そして複雑に折れ曲がった、迷路じみた作りである…らしい。
先程までとはまた違った意味で、訪れた者に対する意地悪さを感じさせる、物理的に遮蔽され見通す事の出来無い空間。
これで本当に単純な孔が空いていたのみであったなら、上階から水が雪崩れ込み、瞬く間に水没してしまいかねないのだが――
人だけを呑み込んで、水が落ちてくる事はないらしい。成る程単純な落とし穴という訳ではなく。何かしら空間を歪めた、本物の罠であったに違いない。
其処に落ちてしまった、入ってしまった、という事は――即ち。

「……っげほ、けほっ、く んぐっ、 ぅげ、ふ、こふ――っ…
ぁ――、ぁ、ぅぅ、申し訳、なくっ… …こんな一方通行の出口に、嵌ってしまぅ なんてっ――」

そう。戻りたければ別の方法を探さなければならないという事だ。
…一応空間を歪め鞄の先に、という件の方法も試す価値は有るものの。構造を把握するという今回の目的を考えたなら。それは最後の手段にするべきだろう。
取り敢えず。天井から床まで位は空気中を落下し、その高さで尻餅を着く事になったらしく。
濡れ鼠に加え下半身の痛みに座り込んだ侭――何とも申し訳なさげな少女の姿が在った。ポータルめいたその罠が、入った者を分断するような物でなかったのだけは幸いか。

影時 > 「……それ、ありうるとすりゃ、あー。いや、あり得るか。こっそりラファルが混じってたオチが。
 
 その辺りは、すまんなぁ。想像の種をバラ撒き過ぎたか。
 無事に事を終えたなら少し休むか。またどっかの宿とか何とかで……てぇのも、な?」
 
竜の眷属ならば見えずとも働く感、第六感云々――なんて無理無茶難題を求める気はない。
暗夜への適応は訓練を続けるならばいつか、でもあるにしても、今直ぐ出来てしまうなら苦労はしない。
少女が宣う怪談じみた恐怖だが、有り得なくもない。
こういうことをやっているときっと、ひょっこりともう一人混じっているというオチが、だ・
怪談話の如き降霊術じみた下りを妄想するより、ずっとあり得そうと思える路線なこと疑いなし。

兎角、良くも悪くも暗闇は色々なものを想起させる。闇の(とばり)はその内に見えてはいけないものも覆い隠す。
向かい合う術を知りたいのなら、己は幾らでも教え、試す機会を考える。拵える。
臓腑じみたものを思うなら、もっと正常かつ本能的で、いかがわしいコトを思う歩がずっと健康的だ。

「なるほど?まぁ、斯く言う俺も該当する現物とお目にかかったわけじゃあない。
 が。発条(ゼンマイ)と歯車仕掛けの絡繰りが狂うなら、それよりも、もっとややっこく観念的すらあるモノが狂わん道理も無かろうなぁ。
 それも他から干渉する、手を加えるなどの余地がある代物なら、トンチキな沙汰になるのもまぁ、納得はする。
 
 ン……話してたなぁ。そこにちと言い足すなら、わざと、このように動かせる、進ませるよう仕向けるのもお膳立ての一つだ、と、っ。
 ックク。やっぱ喰いつく、喰いつくわなぁ。良かろう。ちと手元で堆積している要件が終わり次第で良けりゃあ、また手書いてみるかね」
 
時を数えるのも馬鹿らしい古から稼働している機関、絡繰り――魔導機械であろうともなかろうとも。
一つ何か破綻をきたせば、年月の蓄積はそれを容易く拡大し、連鎖的に次の破綻を虫食い(バグ)のように発生させる。
破綻の要因は、何でもある。何でもあり得る。長く放置され機能を失った遺跡を魔族が起こしたのがきっかけに等、色々とでも。
人間が作るものだ。古代の超文明の時代の人とて、神でもなければ何か仕損じるのだろう。
深く考え過ぎると、きりがない。故に少し楽しいことを合間に考えるに限る。
人を動かす、仕向けるという道理は罠に嵌めるだけではない。どう云う点、事柄に興味を向くのを知っていれば、提起は容易。
……かなり前に手書き与えた本の現物は、一番弟子が持っていよう。
それをそっくりそのまま写筆するか、再構成版よろしく読み解き易く仕立て直すか。匙加減は少し悩むが、きらきらおめめをしているさまを思えば、笑みも滲む。

「生えて走るでも這うでも、手足も無く蠢動して転がるでも、何でもありだ。
 ……そーゆー浪漫はまァ分からんでもないが、ここで吹っ飛ばされ――ンのは無事に帰る以前の事柄よな――ッ」
 
岩のように見える魔物も深く考えると、きりがない。岩に偽装した巨大昆虫やら甲殻類やら、魔法生物、精霊やら。
傾斜、段差と言った位置エネルギー活用の岩転がしの罠は、どうしたって再利用し難い。
それを魔物に置き換えてみるならば、どうだろうか。そんな妄想じみた思考実験をやっている暇は、もうない。
内心で……やられた、と。そう呻く。練度の差、事前の準備の差、転ばぬ先の杖の有無。何より迷宮の変化具合。
要因を脳裏に列挙してももう遅い。次の段階として向き合わなければならないのは、弟子の安全と生存を確保することである。
突入しながら逆の左手で雑嚢を漁り、手に収まる水晶飾りを取り出す。握れば生じる風の波動が、一瞬で身に纏う匂い、汚水の残滓を吹き払って。

「……フィリ! ……いやぁ、それはこっちの台詞だ。無事で何より、だ。
 気が抜けていたのは、俺の方か。泥濘の中に“しゅーたぁ”の類を仕込むとは、見えざる罠の類としては畏れ入る」
 
上層から放り出され、落ちた先は下層の何処か。
座標が知れぬ処で先に落ちた姿の傍に着地し、その無事を確かめやりながら手にした水晶飾りを持ち上げる。
そうすれば風の精霊が起こす清浄な大気に包まれる。その空気に招かれて、襟巻に潜っていた二匹がぷはぁ、と顔を出す。
身震いすれば、ばちゃちゃちゃ!と飛沫が跳ぶ中、心配げにするうちのモモンガの方が少女の頭に飛び乗る。
もそもそと取り出す魔導書を開き、一緒に取りだす魔晶石をページに当てて、記された魔術を起動しようとする。
痛い処があれば、直ぐに治してあげようという心積もりか。

フィリ > 【継続させていただきます】
ご案内:「無名遺跡-古き遺跡」からフィリさんが去りました。
影時 > 【次回継続にて】
ご案内:「無名遺跡-古き遺跡」から影時さんが去りました。