2025/11/12 のログ
ご案内:「無名遺跡」にオルヴィさんが現れました。
■オルヴィ > ――ふわりと上がって、蹴り出されるように押し出される。
何故そうなったのか。そうなってしまったのか。
思い当たる節はいくつもある。というかあれしかない。きっとそれしかない。
自分だけなのか。それとも全員そうなってしまったのか。
取り敢えず、言えることはひとつ。……どうしよ、ほんとに。
無名遺跡。最近発見された遺跡群のうち、割合探索が進んだと思われるものに挑む冒険者の募集があった。
年齢性別種族関係なし、力あるもの来たれ、みたいな謳い文句のようなもの。
それに喰いついたのが運の尽きだったらしい。参加に名乗りを上げるものは多く、即席でパーティを組むことになった。
回廊を縫うように進み、玄室に踏み入り、魔物を殺してその場を陣取る。戦利品を漁る。
ルーチンワークじみた工程を二回ほど繰り返した後の、三回目。そこで見つけた宝箱が、きっと原因だ。
歳をくった男が鍵開けに挑み、「……あ」と迂闊そうな声を零したのはきっと空耳じゃない。
そこでぱぁと光が飛び出て、浮遊感に包まれて――――。
「なんで、こうなる、かな……――いや、そんなものだけどさ」
――ここに居た。第何階層かとは分からない、平滑な石壁に包まれた玄室。そこに一人放り出された少年がため息交じりに嘯く。
身の回りのものは、良かった。剥がされていない。離れてもいない。問題なのは、独りであるということだ。
それに対して恐らく魔物は、より多いことだろう。直ぐ近くには――きっと、まだ居ない。
■オルヴィ > 組んだ人たちのことは、気にはなる。気にはなるけれども――現実的な問題がある。
他人の心配よりも自分の心配だ。ここで使って、ぱっと地上に戻れるなんてものはない。持っていない。
恐らく、喰らったのは転移の罠であろう。遺跡に数多存在する罠の中で、厄介視されるものだ。
毒や麻痺を喰らうならいい。それは適切な薬、ないし癒し手を同伴していれば回復出来る。対処できる。
(……空中とか水の中に放りされてたと考えると、ぞっとしないな)
転移という概念、効果が広域過ぎるのだ。識者曰く、土中に放りだされることもあるとか無いとか。
魔物の群れの中に放り出されるというのも、彼我の戦力差で次第で考えられる最悪にも繋がる。
それはまさに自分ではないか、と思ったりすると、笑えない。銀髪がかかる長耳が、しゅんと撓る。
嘆息交じりに現状を確かめる。
右手に握りしめたままの弓は、ある。腰の矢筒も――ある。矢は少し心許ないが。
剣も鞄も、良かった。無くしていない。坩堝めいた死地の中で丸腰で立ち回れるのは一握りのもの。
自分は、そうではない。いずれそうなれればいいとは思うけれど、あと何年、何十年かかるやら。
「ええと。こういう場合の打ち合わせって、してたっけ。……してないか」
浅い階層にこんなものがある、とは思っていなかった、遭遇していなかったらしいのが裏目に出たか。
調査結果、記録もまだまだ当てにならない。もっとも未踏の遺跡に決まりきったものがある方が可笑しい訳だが。
尻もちをつくように座り込んだ姿勢から、注意深く身を起こして立ち上がる。
節々は痛いところもあるが、力尽きて動けない、という程はない。
人気も魔物の気配もない玄室の入口までひたひたと歩み、半端に開けられたままになっている扉の隙間から奥を視よう。