2025/09/18 のログ
ご案内:「無名遺跡」にフェブラリアさんが現れました。
■フェブラリア >
九頭龍山脈、その山中を歩む、実に山の険しさに不釣り合いな、小柄な少女の姿がひとつ。
とても登山するには不釣り合いな可憐な水色のドレスに、あまりに軽装な装備。
山賊が眼にすれば迷わず襲う世間知らずか、或いはその異様さに逆に距離を取るのだろうか。
まるで近所の街に散歩にでも行くかのごとき気軽さで、その少女は山道を悠々と進んでいく。
そのスカートの下から長く伸びた、青白い人外の尾だけが、彼女が人間ではないことを如実に表していた。
「ふぅ、記録によれば此処のあたりの筈ですが……。
流石に先史以前の坑道ともなると、記録など充てにはできませんか」
其処はとっくの昔に人が歩む山道からは実に擦れた場所。
歩みを進めたその少女は、遺跡の残骸が幾らか転がるその場所をどうやら探索しているようだった。
■フェブラリア >
「……とはいえ、何も収穫なしとは行きませんね」
長い尾を揺らし、少女は何かを探すように周囲を探り始める。
道のない道を進み、時に足場が崩れるような場所へ。
しかし、その足取りに迷いはなく、少女はまごつく様子もまるでない。
ただ時折、山肌の露出した場所で脚を止め、何かを確かめれば歩を進める。
その繰り返しを何度も繰り返しながらに時間が経過していく。
ご案内:「無名遺跡」にルティナさんが現れました。
■ルティナ > 険しい岩山にのみ咲くという希少な花
錬金術の素材になるというその花の採取依頼は、長らくギルドの掲示板に張り出されたままだった。
報酬は良いものの、それ以上に採取に気を遣わないとすぐに傷んでしまうとあって、
一般の冒険者からは面倒がられているのがその実態だった。
それでも、報酬に釣られる冒険者というのも、一定割合はいるもので……
「うーん、この辺りなら生えていておかしくないと思ったんですけど……」
九頭龍山脈の山中
森が途切れ、山肌が露出し始めた辺りをうろうろと少女がひとり彷徨い歩いていた。
大きなリュックを背負った姿は、見るからに冒険者といった風情
ただ鎧などではなく、ローブに三角帽子という出で立ちで。
多少の魔法を使えようとも、少女がひとりでうろついていれば、山賊に目を付けられないはずもなく。
遠巻きに、厳つい男たちの姿もちらほらと見え隠れしており。
■フェブラリア >
空色の尾を揺らす少女がそれを見つけたのは日が少し傾き始めた頃合い。
明確な収穫を得る事無く、そろそろ下山を考えるかと思考を始めた時間。
ふと視線を元の山道のある筈の場所へと向けた時、その少女──フェブラリアはあるものを見つけた。
「ふむ、冒険者の方ですかね」
距離はそれなり、声は確実に届くまいという程度の遠くに三角帽の姿を見つける。
同時にそれを狙うかのような、山賊の姿も視界の端に。
「……気が付いては、いないみたいですね」
さてどうするかとフェブラリアは思案する。
彼女自身に"それ"に手を出す理由はなく、明確な利になる要素も殆どない。
ただ、見て見ぬふりするのは少々、"人"としてどうしたものかと。
一先ず静観するように、その進展を脚を止めて眺めていた。
■ルティナ > 高地のしかも水はけのよい場所にだけ咲くという花
岩ばかりがごろごろとしたそこは、辺りに身を隠すところがないだけに、逆に山賊たちも隙を窺って動けずにいて。
状況が変わったのは、少女が小さく「あっ!」と声を挙げたのがきっかけだった。
どうやら目当ての花を見つけたらしく、ある場所でしゃがみ込む。
これを逃せば好機はないとばかりに、山賊たちが一気に雪崩れ込んできた。
――その数は5人
さすがに雄叫びを上げて走ってくる相手に気付かないというはずもなく。
慌てて杖を掲げると、握り拳大の火の玉が先頭の男に炸裂する。
続いて、二発目も小太りの山賊を吹き飛ばすのに成功
けれど少女のターンはそこまで。
続く三発目の呪文は詠唱が間に合わず、ナイフを振り被られる。
それを杖代わりの箒でどうにか受け止めたものの、背後に回られた4人目に羽交い絞めにされてしまい。
「やっ……!? やめて、くださいっ!!
だ、誰か……っ!!」
距離を詰められた魔法使いほど無力なものはなく。
じたばたと暴れるものの男の拘束からは逃れられない。
助けを求める叫びが発せられるも、辺りに人の姿などなく。
リーダーらしき5人目が、にやつきながら少女の身体を舐めまわすような瞳で見つめてきて。
■フェブラリア >
瞳を細め、竜の如き金の眼がその襲撃を視界に宿す。
三角帽の少女は、魔法使いめいた風貌そのままの能力と力量であったらしい。
複数人、それもここまで接近されれば成す術もない。
その先に彼女がどうなるかなど、火を見るよりも明らかだ。
「……ま、放っておいて、いい気分では帰れませんか」
フェブラリアはそう呟くと共に大きく息を吸い上げる。
正確にはその大気のマナを、その魔力を。
息を貯め、魔力を貯めて、言霊と共に撃ち放つ。
「《吐息》──」
竜の血を引く少女の持つ力の断片。
純粋な魔力を、破壊の力として撃ち放つだけの、シンプルな攻撃。
それはフェブラリアが知る中では最も単純な竜の魔法。
彼女が息を吸い込み、そしてそれが放たれるのとほぼ同時。
ニタついた顔をしたリーダーらしき男の身体が、周囲の山肌ごとに穿たれた。
■ルティナ > 辺りが真っ白に染まる。
そして反射的に瞑ってしまった目を開くと、そこには先程までの光景はなく。
代わりに抉れた山肌がぶすぶすと焦げた煙を上げているだけだった。
「え……? いったい、何が………」
つい先ほどまで目の前にいた男の姿は、どこにもなく。
巻き添えを食ったらしいもう一人が、吹き飛ばされた腕を抱えて呻いているのが見えた。
唯一無事だったのは、少女を羽交い絞めにしていた長身の男のみ。
それにしたとしても目の前の惨事に呆然としており。
「は、放してくださいっ!」
咄嗟に男の腕から摺り抜けると、鞄から薬瓶を取り出して投げつける。
ぼふっと粉まみれになった男は、咳き込みながらもこちらを捕まえようとするけれど、急にぱたりと倒れて動かなくなってしまい。
「た、助かりました……
それにしても、さっきのはいったい……?」
いびきをかき始めた男を放置して、その場にぺたんと座り込んでしまう。
どうにか危機は脱したけれど、さきほどの閃光は何だったのだろうと不安げな表情で辺りを見回す。
何しろ感じ取った魔力は、師匠よりも強いものだったから。
■フェブラリア >
「はふ…っと、ちょっと加減が出来てなかったですかね」
微かに抉れた山肌を見やりつつ、フェブラリアはそう呟く。
視界の端っこで残る男を少女が上手く対処したのを確認しつつ。
悠々とその歩を座り込んだ少女の方へと進めていく。
「さてさて、ご無事ですか?
ついつい手を…もとい、息を出してしまいましたけど」
ゆらゆらと後方で揺れる尾を隠しもせず。
実に堂々と歩む様は、少々人間離れした雰囲気を隠せていない。
「私はフェブラリア=フェブルリア=フェブルアーリア。
貴女のお名前をお聞かせ願えますか?」
ただ少女の前まで辿り着いたフェブラリアは、実に手慣れたカーテシーと共にその名を名乗る。
指の先まで行き届いたその所作は、彼女が相応の身分であるらしい事を示していた。
■ルティナ > ゆったりとした足取りで近づいてくる少女が視界に入る。
見た目は自分とそう変わらない年若い少女
場違いなドレス姿に視線が向きかけたところで、揺れる尾に気付き。
「え……? そ、そんな……」
まだ未熟な自分でも分かるほどに強力な魔力が溢れている。
そのことに息を呑む。
揺れる尾を見るまでもなく、こんな強大な魔力を人が持ち得るはずもなく。
そんな人知を超越した存在に話し掛けられると、「ひゃぅっ!?」と短い悲鳴を上げ。
「えっ、あっ、そ、その……ルル、ルティナ・クローヴと、いいますっ!
その……た、たた、助けて、いただいて……っ」
貴族のマナーには詳しくないものの、目を奪われるような優雅な所作
一瞬だけぽかんと見惚れてしまったけれど、名前を問われれば慌てたように名乗りを上げる。
ただ抜けてしまった腰はそのまま。優雅な相手とは裏腹に、へたり込んだままの情けない格好で。
■フェブラリア >
名乗りを返しつつも、まだ腰の抜けた様子を見ながら、フェブラリアはくすりと微笑んだ。
「礼を言われるような事ではありませんよ。
……それよりも、立てそうですか?」
その手を差し出し、ウィンクと共にそう尋ねる。
細く、容姿相応に小さな手。
先ほどの光景と揺れる尾が無ければ本当にただの貴族の少女のよう。
されど決してそれだけでは無い事を、目の前の少女は悟っている。
その事をフェブラリアはその表情からなんとなしに読み取った。
「別にとって食べたりは致しませんから。
私はただ、此処には調査に赴いただけですので」
■ルティナ > 先程までとは別の意味で、足が震えてしまっている。
それでも差し出された手を放置することなどできずに、恐る恐るそこに手を重ねる。
想像とは違い、見た目どおりの柔らかな感覚に、瞳を瞬かせ。
「で、でも……あのままだったら、大変な目に遭ってたと、思いますし……」
そういうことは幾らでも聞く機会がある。
だからこそ、お礼を言うくらいでは済まないのだけれど。
優しく微笑まれれば、それ以上は言うこともできず。
仮に言えたとしても支払えるようなお礼など持ち合わせてはおらず。
どうにかふらつく足に気合を入れて、立ち上がると、ぎこちなくお辞儀を返し。
「たたた、食べるなんて……そんなこと思って……
調査、ですか……? この辺りに、何か…?」
自分なんて食べても美味しくないですとばかりに、首を振る。
感じ取れる魔力は強大ではあるけれど、気さくな雰囲気に思わず聞き返してしまう。
人外の存在が調べるようなものがこの辺りにあるなんて聞いたこともなく。
■フェブラリア >
「あのまま放って置いたら、そう…目覚めが悪かった、という奴です。
言ってしまえば私の気分で、手助けしたようなものですからね」
謝礼の為に助けた訳では無い。
ただ己が気持ちよく今日を終えられぬからというだけの理由だとフェブラリアは語る。
「……ま、でも礼を受け取らぬのも違いますかね。
いずれ何かしらでお返ししてもらう、という事で」
その上でニコリと、笑いながらに少女の身体を片手で支える。
まるで石造りの手すりのように、フェブラリアの手は体重をかけても微動だにしなかっただろう。
「ここ九頭龍山脈において魔術鉱石が採れる事は知っていますか?
私はある鉱石を求めて、古い文献を探り古の坑道を探しに来たのですが……」
そう言葉にしながら苦笑して、視線を後方に向ける。
当然そこにあるのは手付かずの自然の山肌だけで、それらしいものは欠片も無いが。
「ご覧の通りでしてね、そろそろ下山を考えていたのです」
■ルティナ > 目覚めが悪いというだけの理由で、山賊から助けてくれる人間などいない。
それができる能力を持つ、彼女だからこその言葉だろう。
語られる言葉に、「そうですか」と返すわけにもいかず、困惑を浮かべていれば、
それに気づいたのだろう相手から妥協案が示されて。
「は、はい。私にできることでしたら、喜んで!」
気合いを入れるように、拳を握りしめながら、こくこくと何度も頷いた。
とはいえ、見習いの身で出来ることなど大してありはしないのだけれど。
「――魔術鉱石ですか?
錬金術で使える素材で聞いたことはありますけれど、この辺りで採れるという話は初耳です。」
嫋やかに見えて、力強いその手に支えられ。
幾分慣れてきたのか、噛まずに話せるようになる。
ただ魔術鉱石っぽい素材は知ってはいても、その鉱脈までは知らない。
力には成れそうにないと、ちょっとばかりしょんぼりとして。
「確かにそろそろ暗くなってきそうですし……
魔術鉱石なら、感知系の魔法で引っ掛かりそうなんですけど……」
下山と聞けば、小さく頷くも。
思いついたように、小さく手を挙げて。相手の了承を得られれば、そんな話を告げるだろう。
■フェブラリア >
フェブラリアからすれば貸を付けた、という形。
その気になれば此方から、それなりの事を要求できる状況なのだ。
故に実のところ中々に狡猾なやり口なのだが…
フェブラリア自身もそうした要求は、少なくとも今の所はする気は無いようだった。
「えぇ、かの無名遺跡作り出した文明は、此処に鉱石が潤沢だったからこそ栄えたいう説もあります。
遺跡の周辺も探していたのですが…今回はハズレでしたね」
肩を竦めてフェブラリアはそう語る。
現代も鉱石を掘る坑道は幾らかある筈だが、彼女が探していたのはそれとは別のモノなのだろう。
「まぁ私が探しているのは異国では"辰金"と"朱金"…伝説とされている鉱石の在処ですから。
そうそう見つからないものだとはわかっておりますので」
そう力に成れそうにない事を、改めて謝罪する少女に。
フェブラリアは大したことでもないのだと、宥める様にそう告げた。
「さて、下山するようでしたらついでです、共に降りますか?」
■ルティナ > 「そんな話があったんですね。
遺跡の奥で鉱石が採れる、とか……?」
その遺跡の周辺を探しても見つからない。
であるなら、遺跡そのもので隠されているとか。
そんな想像を語ってみる。
正直、年端もいかない子どもを拾ってきたかと思えば、数日でそれが倍になっており。
「"辰金"と"朱金"ですか……
ただのお伽噺かと思っていました。」
錬金術の古い教本にそんな名前があったかのように思う。
ただ詳しい作り方はおろか、載っている情報自体も少なかったと覚え。
「はい、ご一緒させてもらってもよろしいですか?」
先程の山賊に仲間がいないとも限らない。
そうでなくても、狙われやすい。
共にと誘われれば、喜んで頷き。
下山する道中も、他の希少な鉱石や素材の話を聞きたがることで――――
■フェブラリア >
「あり得ない話ではないですね、それも。
それこそ無名遺跡は迷宮のような構造ですし、かつての坑道であったとか」
そうであるならば、次は遺跡探索となるか。
何にせよ周辺にはそれらしきものは見当たらなかった、という事は確認できた。
フェブラリアにとって、そうした意味では完全に収穫が無い訳でも無かった。
「えぇ、そう致しましょうか。
また先ほどのような山賊が居るやもしれませんし」
ともあれ、少女が下山の言葉に頷けば微笑んで。
共に並んで下山の為の山道をゆっくりと進んでいく。
「折角の縁ですものね?」
一人ではなくなったからか、或いはフェブラリアのその姿のせいか。
その道中で再び襲われるようなことは、恐らくは無かっただろう。
ご案内:「無名遺跡」からルティナさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」からフェブラリアさんが去りました。