2025/09/05 のログ
アリージュ > 「基本学園に在るのは一つ二つは古くなると思うよ?
 だって、先端を行くのは現在進行形の研究者だし、研究がまとまって初めて本になるんだから。
 それに、研究をまとめるというのは、基本研究者じゃないし。

 後……魔導の深淵の知識を、そんな簡単に広めるような研究者もいないしね。」

 基本的に、危険なものだし、危険な思考だ。
 それを考えると、下手したら捕まる事も考えられるのだ、それを公表したがるのは酔狂だろう。
 彼の言葉ににふと思う事があった。

「そういえば、神頼み、祈りが、一番原初の魔法とか、どっかで読んだような気がするよ。」

 渇望を叶える力。神に願い、求める。
 それが一番最初の奇跡であり、魔法では無いだろうか。
 それを技術的に落とし込んだのが、魔術、魔導、だったような気がしなくもない。
 神学書とか、アリージュの専門では無かったので、うろ覚え。

「とりあえず、せんせ?
 本人を前に、本人殺す算段の思考とかは、あまり良くない気がするなー?」

 できる事を思考する、魔導士もするし、判らなくない。
 でも、それを口にするのはいかがなものかと思うのだ、アリージュも大概フリーダムで自分優先な娘。
 と言っても、自分を殺すにはどうするべきか、できるぞ、と言うのは。
 他意はなくとも、気分はよくなくなるものである。
 じとーと、半眼で先生を睨んで見せる。
 けだまーズと、三人分の何言ってんだこいつと言う視線が、影時先生にぶっ刺さるだろう。

「うーん、私としても、ぶっちゃけ、このローブに十分エンチャントしてるから。
 練習台として考えるならいいけど……練習台にするには、高価過ぎないかな?
 本職の知り合い辺りに、エンチャントしてもらって、使う人に渡すというのが一番いいんじゃない?」

 腐らせないという意味でいうなら。
 この提案が良いだろう、ただし、伯母のラファルは無理だろう、着たがらない。
 鱗があるし、裸族だし。

 それに、価値でいうなら、オーブのほうが良いだろう。
 オーブを貰えるかどうかはまた別の所だ。

「えー。」

 なんであんなに得意に宝箱の鍵を開けて、罠を解除してるのに。
 一番致命的な罠を見落とすのだろう。
 ごごごごごごごごごと、揺れ始めるダンジョン。
 このダンジョンに限っての自壊装置なのは分かるのだけど。
 本日二度目の、半眼ジト目。

「どうするのセンセ?」

 ダッシュするの?と、のんびり首を傾ぐ。
 本人は、ダッシュする気は、一切無いのだ。

影時 > 「……そりゃあるかも、なァ。最新の本をすぐさま、って具合じゃあなかろうし。
 嗚呼、そりゃそうだ。アリージュ。
 今俺が云っている本ってのは研究書や魔導書の類じゃなくて、そのふと浮かんだ台詞が乗ってる戯曲だか劇だかの本だ。
 
 神頼み、祈り、願い――ひっくるめて渇望の希求こそが、力あれ、と奇跡の呼び水ともなろうよ」
 
ちょっと何かずれている気がしなくもない。はて、と少し考え、嗚呼、と苦笑を滲ませる。
学院の図書館に魔族が認めた魔書、邪本の類も紛れている噂も聞くが、最新ほやほやの論文を探す場所ではない。
己が印象に残っていた本とてまたここ数年どころのものではない、その筈である。
戯曲あるいは劇で謳うチカラとは。あまりにも未熟な、たどたどしい、鬱屈をもぶち抜くチカラ。威力(チカラ)超力(チカラ)
その意味ではきっと、原初の魔法にこそ近い。多くの願いが寄り集まって、炎のようになる魔導のはじまり。

「すまんすまん。
 ……まああれか。どうしたって、少なくとも屠龍の刃は振るえねぇなあ。
 刃のチカラを封じるか、得物とっかえねえと俺の方も余計に危なっかしい」

過小評価も過大評価もしない。出来ない。一番弟子とは別の意味で、双子相手は熟慮が必要だ。
それ程の力があると認めている証左でもあり、下手な準備では二人同時というのはままならない気さえする。
じーとーりー、と。一人と二匹、まとめて3つの眼差しを受け止めつつ、素直に両手を合わせて拝むように謝る。
即席のエンチャントを頼むなら、屠龍ではなく訓練用に使っている業物にこそ掛ければ、多分事足りるか。
いずれ来る手合わせの時に備えて、最低限を見積もる。間に合わせでも刃の有る無しは大きい。

「ローブの下に革鎧着込んでる奴も、見かけるぞ割と。
 ……まぁ、そうだなあ。アリージュお嬢様が良けりゃあ、革鎧も引き取るか。
 商会で幾つか付与頼んで、譲るか俺が使う時に備えておくとしよう。その代わり、宝珠はお前さんに託したい」
 
最悪、宝珠は例えば温泉や風呂の熱源に使ってしまいかねない。それは余りに無体だろう。
取り敢えずは塩漬け的にストックするにしても、最低限付与さえしておけば、万一の事態にも役立つか。
そう考える。見込みのある誰かに託す、という事だってできる。
その提案の答えを聞く前に、これは己がしくじったのか。それとも、最初からこういう仕込みだったのか……。

「……――たいていの罠は外せるが、迷宮の基礎に喰い込むような魔法仕掛けとかは無理だなァ。

 こういう時は慌てず騒がず逃げる、だ!が……何か当てとか何かあるようなお顔だな?」
 
ずごごごごご。奥の奥。祭壇めいた処から向こうを見ると、何かが決壊してあかいあかい何かが溢れてる気がする。
多分きっと溶岩。きっとそう。粘度の高い灼熱が刻一刻と迫り、この階層を満たし尽くそうという意図が見える。
半眼ジト目+毛玉ーずの呆れ顔を受け止めつつ、嘆息交じりに肩を竦めよう。
物理的は兎も角、魔法理論など絡みだすと、さしもの忍者とて手に負えない処もある。
手に持ったものを戻せば収まる、道理も無し。くるりと入口に背を向けて走ろう、とする前に気づく。走る気がない様子に。

アリージュ > 「あり。」

 思考が魔導に寄っていたようだ、というか、逆に言うと、思考の中心が魔導だからかもしれない。
 ずれた所、指摘されて、てへ、と舌を出してみる。
 毛玉たちにも突込みのキックを両方から食らう。
 人の話はちゃんと聞きましょう、と言う感じで。

 まあ、あれだ。
 アリージュは聞いているようで聞いていないのかもしれない。

「訓練と言うなら、逆に実践に向けた装備のほうが良いと思うけど。
 確かに、そのドラゴンスレイヤーは……うん、怖いよね。

 ……うーむ?」

 ふと、気が付いた。
 屠龍と言う武器は、対()に関しては、概念的にブッコロ!と言う勢いの呪いのレベルの武器だと思うのだけど。
 そういえば、竜に関係ない物には、普通の刀だ。
 そういう意味で考えると、アビールには相性がいいのではないだろうか。
 彼女の装備は、普通のマジックアイテムであり、竜の所縁のものでは無いから、だ。
 それでも、鎧のない所を攻撃されれば致命的だけど、と。
 後、たとえて言うなら、アリージュの杖だって、普通にミスリルの杖だから。
 受け止めることはできるのでは、と。

「うん、まあ。
 私でいうなら、それこそ、鉄の鎧でも着れるけど。特注品なら。
 と言っても、オーブの方が高価だし、その二つ渡しても、逆にお金を出さないとと言うレベルのものだから。
 練習、では無くて、報酬として、その武器二つにエンチャントしてもいいくらい。」

 マジックアイテムと言うだけで、桁が変わるので。
 それに、魔力無尽蔵の魔法が使えるアイテムと言うなら本当に天井知らずでもある。
 くれるというならやったうれしい大好き!なのだけど。
 ちゃんと価値に関しては伝えるのが、冒険者としての矜持。

「伊達に土属性を専攻してるわけじゃないよ?
 ダンジョンだって、地面にあるわけで。地面があるなら、土属性の独断場だよね。」

 そう言いながら、影時の手を取って。

「じゃ、さっさと帰ろうか。」

 魔力回路起動(ウロボロスエフェクト)大地潜航(アースワープ)

 アリージュは、魔導を起動する。
 地面に潜り、目的地へとワープする魔法。
 地続きならどこにでも行ける魔法だからこそ、こういう所で真価を発揮できる。
 ダンジョンが崩れ切った後、ダンジョンの入り口からぬぷん、と出てくる魔術師と忍者と毛玉たち。

 今回の冒険は、緊張感よりもむしろ、コミカルだったと言って良いのではないだろうか―――

影時 > 「早いうちに気づきゃ良かったかねェ。
 まぁ、物を見つけたら表題教えてやる。気が向けば捜してみるといい」
 
気づきが遅れた己も己、か。だから無理に怒ったりする理由もない。
怒るべきは、取返しもつかない仕出かしの直前の制止、ないし、道を踏み外すような過ちの手前か。
お前ら程々になー、と。キックしちゃう二匹に有様に苦笑のまま声をかけよう。
それを言われれば二匹はぺたり、と。反省よろしくそれぞれの前足をアリージュの頬に触れてみて。

「前に作り手にも云われたが、龍殺しを竜の子に持たせる酔狂者だぞ?俺は。
 スレイしたい訳でも無ェならば、壊れてでも最後の最後で加減を期待できる刃を頼るに限る」
 
そう。竜ないし龍相手でなければ、今腰に収まっている刀は非常によく斬れて頑丈な刀でしかない。
頼みとするのは、ただの物性のみならず、地脈を汲み上げたような域の大量の氣を受け止められること。
氣を媒体にした剣圧、装甲透過、浸透斬断――今言葉を交わす相手の持ち技にも近しい手管、手札も持ち合わせる。
気合が乗り過ぎての歯止めというのは、どこかで用意はしておく必要があるかもしれない。
その点、知己の鍛冶師の作品なら、たとえ銘無しでも信頼する。己が望んだタイミングまで、保ってもくれようと。

「つくづく規格外だわなぁ。……というか、特注品以外には着れンだろう流石に。
 心得た。俺としては取引内容に問題ない。手荒に扱うにしても何にしても、加護をくれるなら願ったり叶ったりだ」
 
鉄の鎧だから万全、というのは早合点も良い処。しかし、不沈不落を字で行く魔法使いというのはとても恐ろしい。
着る?鎧を?と思い、向こうの超ふかふかクッションを見る。成る程、此れは確かに特注が要る。
ともあれ、取引内容としての流れ、提案を鑑みれば、己としては何ら異存はない。
貴重なアイテムは、正しく使える者が所有してこそ意味がある。収まるべき所に収まるなら、願ったり叶ったりでもある。

「……成ァる程。ふむ、道理ではあるが、そこまでぶっ飛ばせるのは才能だよなぁ。
 おお、頼まぁ。景気よく一丁頼むわ、と……ぉ!?」
 
土属性、というよりは、土行ならば己も熟達がある。だが、正攻法ないし迷宮の歩き方にこだわっていたのかもしれないか。
ある種の型破りでもあるが、迷宮や遺跡から出てくる巻物にはこの手の脱出魔法が記述されているものもある。
行きに難儀し、帰りも難儀というのは、刻一刻を争うような事態には勘弁蒙りたい。

術が発動すれば――ふっと足元も何もかも消えて、気づけば、ぬぷりと。
土中潜航の忍術を解くのと同じような要領で、浮きあがっていく。自分でやるではなく他者が為す感覚は、非常に不思議な具合でもあった――。

ご案内:「無名遺跡」から影時さんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」からアリージュさんが去りました。